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不死の獣・一
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むけかえる人混みの中、クロはある女子高生の後を追っていた。
何をそんなに急ぐのかと思うほど、せわしなく行き交う人々の流れに飲まれて見失わないように注意しながら、華奢なその背中から目を離さない。
対抗してくる通行人をかわし、背負ったリュックが大きく揺さぶられたことで、静かにしていると約束したはずの茜が不満の声を漏らした。
「ねぇ、まだ追いつけないの?相手は女の子でしょ?何やってんのよ」
繁華街の活気ある雰囲気が苦手な彼女は、女子高生が駅前の大通りに紛れた段階で不機嫌になった。「人が多いとこって、うるさいし、臭いから嫌いなのよ」とぼやき、リュックの内側からクロの背中を蹴った。
「あれ、マジで女子高生か?俺、かなり速足なんだけど」
とても十代の少女の歩調とは考えられない速さで人の群れをぬうように歩く少女に、体力には自信があるクロも弱音を吐いた。そんな彼の苦労など知らない茜は、一度口にしてしまって歯止めのきかなくなった不満を垂れ流し続けた。
「文句言うなら自分で歩いてくれよ」
大きな溜息をついたクロは、最近の茜の変化を思い返した。
ここ数日、彼女は片時もクロから離れようとしない。いつもと変わらず悪態をつき、小馬鹿にすることはあるが、常に何かに神経を尖らせ、落ち着かない様子だった。
以前は頓着しなかったくせに、シロとクロが二人きりになることを邪魔するようになった。
いや、前もちょっかい出してこないこともなかったが、それは自分を放っておかれたことに腹を立てたことであって、最近のように用もないのに打ち合わせに張り付いてくることはなかった。
いったい、なぜ・・・
若者の目を引く蛍光カラーの電飾でデコレーションされた派手な看板が並ぶ雑居ビルの脇で、一瞬、追跡していた女子高生の姿が人混みに隠れた。そして消えてしまった。
「ヤバい!」
考え事のせいで注意力が落ち、ほんのわずかな間視線が離れてしまったようだ。
ここで見失ってしまっては、また一から再捜索するのは骨だ。なんとか追いつかないと。クロは慌てて人をかき分け走った。
ちょうど女子高生が消えた雑居ビルの付近の路地に着いた。建物へ入ったか路地を曲がったか、その行方の判断に迷っている時だ。
「お兄さん、誰なの?」
唐突に雑踏から声がした。
鋭く刺さるナイフのような冷めた声の方にふり返ると、そこには腕組みして仁王立ちしている女子高生がいた。
「ずっと尾行してたの、気づいてたんだからね!キモい!そういうのやめてくれない?」
眉間にしわをよせ、地面に転がったゴミでも見るような視線でクロを睨んでいる。
この年頃特有の潔癖さがそのまま表されている表情に、クロは「参ったな、キモいか」と頭を掻きながら苦笑いした。
「いや、俺さ、君を追っていたわけじゃねぇんだよ。言っていいのかな・・・実はさ、俺は君の中の・・・別の彼女に用があるって言えば分かると思うんだけど」
クロは立ち止まったついでに煙草をくわえ火を点けた。
君の中の・・・
彼の言葉に、女子高生の顔色はみるみる変わっていった。
「・・・お主、もしや・・・このワシが何者か分かると申すか?」
ついさっきまでの張りのある少女の声が、突然かすれた老婆の声に変ったことにも驚かず、煙草の煙を足元に吐いたクロは、覇気のないぼんやりとした目を彼女に向けた。
「あ、自己紹介してなかったな。俺、西上総って研究所から派遣された調査員っスよ。艶姫さん」
何をそんなに急ぐのかと思うほど、せわしなく行き交う人々の流れに飲まれて見失わないように注意しながら、華奢なその背中から目を離さない。
対抗してくる通行人をかわし、背負ったリュックが大きく揺さぶられたことで、静かにしていると約束したはずの茜が不満の声を漏らした。
「ねぇ、まだ追いつけないの?相手は女の子でしょ?何やってんのよ」
繁華街の活気ある雰囲気が苦手な彼女は、女子高生が駅前の大通りに紛れた段階で不機嫌になった。「人が多いとこって、うるさいし、臭いから嫌いなのよ」とぼやき、リュックの内側からクロの背中を蹴った。
「あれ、マジで女子高生か?俺、かなり速足なんだけど」
とても十代の少女の歩調とは考えられない速さで人の群れをぬうように歩く少女に、体力には自信があるクロも弱音を吐いた。そんな彼の苦労など知らない茜は、一度口にしてしまって歯止めのきかなくなった不満を垂れ流し続けた。
「文句言うなら自分で歩いてくれよ」
大きな溜息をついたクロは、最近の茜の変化を思い返した。
ここ数日、彼女は片時もクロから離れようとしない。いつもと変わらず悪態をつき、小馬鹿にすることはあるが、常に何かに神経を尖らせ、落ち着かない様子だった。
以前は頓着しなかったくせに、シロとクロが二人きりになることを邪魔するようになった。
いや、前もちょっかい出してこないこともなかったが、それは自分を放っておかれたことに腹を立てたことであって、最近のように用もないのに打ち合わせに張り付いてくることはなかった。
いったい、なぜ・・・
若者の目を引く蛍光カラーの電飾でデコレーションされた派手な看板が並ぶ雑居ビルの脇で、一瞬、追跡していた女子高生の姿が人混みに隠れた。そして消えてしまった。
「ヤバい!」
考え事のせいで注意力が落ち、ほんのわずかな間視線が離れてしまったようだ。
ここで見失ってしまっては、また一から再捜索するのは骨だ。なんとか追いつかないと。クロは慌てて人をかき分け走った。
ちょうど女子高生が消えた雑居ビルの付近の路地に着いた。建物へ入ったか路地を曲がったか、その行方の判断に迷っている時だ。
「お兄さん、誰なの?」
唐突に雑踏から声がした。
鋭く刺さるナイフのような冷めた声の方にふり返ると、そこには腕組みして仁王立ちしている女子高生がいた。
「ずっと尾行してたの、気づいてたんだからね!キモい!そういうのやめてくれない?」
眉間にしわをよせ、地面に転がったゴミでも見るような視線でクロを睨んでいる。
この年頃特有の潔癖さがそのまま表されている表情に、クロは「参ったな、キモいか」と頭を掻きながら苦笑いした。
「いや、俺さ、君を追っていたわけじゃねぇんだよ。言っていいのかな・・・実はさ、俺は君の中の・・・別の彼女に用があるって言えば分かると思うんだけど」
クロは立ち止まったついでに煙草をくわえ火を点けた。
君の中の・・・
彼の言葉に、女子高生の顔色はみるみる変わっていった。
「・・・お主、もしや・・・このワシが何者か分かると申すか?」
ついさっきまでの張りのある少女の声が、突然かすれた老婆の声に変ったことにも驚かず、煙草の煙を足元に吐いたクロは、覇気のないぼんやりとした目を彼女に向けた。
「あ、自己紹介してなかったな。俺、西上総って研究所から派遣された調査員っスよ。艶姫さん」
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