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第23項 トリニティ
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硝煙舞う砂塵の中、現れたのは真紅のドレスを身に纏った女性。
少し胸が開いた部分に紅玉――ロクスティが手にしていたものが胸に埋め込まれていた。
胸と腰だけに甲冑をつけたなんともデザイン的な衣装だ。
火山灰を連想させるような髪色。幻想的な翼。
彼女の姿は気高ささえも醸し出していた。
帝都の富裕層にいてもおかしくはない。右手の得物を除けば。
決して低くない彼女の身の丈以上にある幅の広い剣。
バルガスの持つ両手斧よりもひと回り大きいそれを片手で悠々と持っていた。
「まだ、終わっちゃいないようだな……」
思わず苦笑いを浮かべるバルガス。
サラマンダーが女性になるなんて聞いた事がない。
だが、そんな事、今はどうでもいい。
目の前に迫り来る脅威。黒いオーラを発し、ヒールを一歩ずつ鳴らすたびに身体が重くなる感覚に襲われているのだ。
唐突に、巨大な両手剣を横に薙ぎ払う。
ーーブオォンーー
硝煙を一振りで霧散させる烈風。
「やれやれ」
と、立ち上がったゼクス。彼女へ向かって歩き出す。
「ちょ、ちょっと。どこにいくのよ」
「どこって……決まってるだろ。戦いに行くんだよ」
左手から回復薬を取り出して一気に煽り、一息吐く。
「戦いにって……無茶よ。あんたボロボロじゃない! もう限界よ!」
「あのな、ミーナ。無茶だろうが、限界だろうが、関係ないだろ。俺は決めたんだーー」
腰から青緑の剣を抜き、彼女向かって構える。
「ーー何がなんでも変わってやるって」
鍛冶屋のバルバに鍛え直してもらった長剣が鈍く光る。力任せに振るっているせいですでに刃毀れを起こし始めている。
「こりゃあまた鍛え直してもらわないな。鍛冶屋の親父に叱られっかな」
ゼクスはこの街に来て、アイリと出会った時を思い出した。
『本当に変わりたいと思った瞬間、もう動いているものよ』
(俺はあの時、行動を起こした。そしてアイリの気まぐれか受け入れられた。あれから俺は……少しでも変われたのだろうか……未だ何もできていない俺が……それをここで……試す!)
大盾を出現させて、剣を2、3回振り、身体強化の魔法をかける。
「行くぜ、サラマンダー」
ゼクスはグッと踏み込み、一気に大地を蹴り突進した。
ゆらりと大剣を構え、斬り下ろす。
衝撃から火花が散り、鈍い音が鳴り響く。
「ウ……ア…………ッ」
身体強化をしていても押しつぶされてしまいそうな重さ。武器と彼女の筋力が桁違いの破壊力を生み出しているのだ。
鋒を緩め、軌道を少しずらす。抑えがなくなった大剣は地面を抉り取った。
左半身が前に出ると大盾をガントレットのように突き出し、頭部を狙う。
が、彼女は手を離し上体を反らして避けた。そのままサマーソルトを放ち、大盾を上へと跳ね上げたのだ。
逆立ちの状態になると、そのまま腕を捻り起点にしてゼクスの空いた脇腹にヒールを直撃させた。
「グッ……」
細く、引き締まった脚からは想像もできない威力。思わず苦悶の表情を浮かべる。
(なんて動きをするんだ! こいつは)
回避と同時に次の攻撃に繋げるための技を繰り出す。判断力と発想。それを実現させる身体能力。全てが常軌を逸したものでないと不可能だ。
ゼクスは二、三歩後退をする。彼女も蹴り抜き、側転と同時に大剣を拾いあげた。
お互いに距離を取る。
脇腹を蹴られた痛みはあるが、耐えられないほどではない。
いつものゼクスであればすでにあばらが何本か折れていてもおかしくはなかったのだが、無意識に直撃部に魔力を集中させてダメージを緩和させていたのだ。
等の本人もそんな芸当ができたのが不思議なくらいだった。
無自覚の成長に震える。
しかし愉悦に浸ってはいられない。
顔を上げると一気に駆け出していた彼女が目前に迫っていた。
勢いを乗せた振り下ろしを盾で受ける。
隕石が落下したような一撃。
振り下ろした勢いを殺さず体を回転させる。
息をつかせぬまま、回転下段蹴りが飛んでくる。
踏ん張ってグリーヴで弾く。
と思ったら上段から一閃が襲いかかる。
これを盾で防ぐ。
大剣と脚の連撃。さらには拳を混ぜてくる。なんとも予測できない縦横無尽な攻撃だ。
上、上、下、横……一つのミスさえも許されない攻撃を一つずつ処理していく。
辺りには鉄がぶつかり合う音だけが、ただただ響き渡る。
ゼクスは手を出せない。いや、出さなかった。
下手に攻勢に転じると一瞬の隙を突かれて敗北が確定する。
今は耐えるべきだ。
だが、連戦により体はボロボロ。そう長くは持たない事を心の中ではわかっていた。
彼女の攻撃を捌くうちにパターンが読めてきた。
大剣の後に下段がくる。体勢を崩そうとしているのだろう。
そこから拳か大剣の二択。
(大剣から下段蹴りのパターンが来れば……!)
上段から盾に衝撃を与える。
(きたっ!)
想像通り。下段の蹴りが飛んでくるのを目視した。
ゼクスは防ごうとせず、一歩前に出て支柱となっている脚に向かって足払いを放った。
左手をかざし、体勢を崩した彼女に向かって火球を放った。
二人の間に爆風が起き、距離があく。
ドレスには焦げ一つもできなかったが、目論見は達した。
距離があくとゼクスは彼女を中心に走り出す。
盾をしまい、左手の魔法陣を露見させると、火炎を放つ。
一つ飛翔させるとほぼ同時にもう一つの陣が展開し、今度は二発。
さらに展開させ4発……と倍々で増えてゆく火炎弾。
だが、彼女はただ立っているだけ。
何かしているようでもない。
彼女に当たった瞬間ーー正確には彼女のドレスに触れた瞬間、オーラのようなものに触れて爆発している。
サラマンダーの鱗のようなものだろう。
ゼクスの攻撃をうっとおしそうな表情で受け続けていると、大きく、火の粉を巻き込むように空気を吸い込みーー
ーーガアッーー
線のように細いブレスを放った。
「ーーッぶねっ!」
ブレスはゼクスの目の前で瓦礫を溶解させた。
攻撃を中断させられ、警戒をするーーが、硝煙が晴れた場所に彼女の姿はない。
「ゼクスっ! 上っ!!」
ミーナが叫ぶ。
翼を広げ、星を背に空高く舞い上がっていた。逃げた……訳ではなさそうだ。
刀身を下に向け、抱えるように彼女は乗っかるように構えた。
あれはヤバイ。ゼクスの直感がそう叫んだ。
再び大盾を出現させると、片手を地面につき魔法陣を展開させる。
ドーム状に見えない壁が出現。盾に同じ紋章を刻む。
ゼクス最大の防御術。「トリニティ」
周囲に魔法陣を展開させ、同じ紋章を盾に刻む。左手に刻まれた拡張の魔法陣と同調させて自身の身体能力を向上させる。
大盾を構えた瞬間、彼女が落下を始めた。
「Fallin Star」
剣先に火炎の渦を纏い、徐々に加速を始め落下。はたから見ると流星を見ているような美しさだった。
ガィィィィイィィィンッ!!
盾と剣が激しく激突し、鈍く、鋭い音が劈く。
歯を食いしばり、耐えるゼクス。
彼女の翼が大きく広がり、先端から火炎が放たれ、さらに加速。
第二撃が盾に重くのしかかる。肌を焦がすような熱気。
(ーーコロシテ)
ゼクスの脳裏に直接響いてくるような悲しい声。
(オネガイ……モウ、ダレもキズツケタク……ない)
彼女の心から流れてくる感情。
少し胸が開いた部分に紅玉――ロクスティが手にしていたものが胸に埋め込まれていた。
胸と腰だけに甲冑をつけたなんともデザイン的な衣装だ。
火山灰を連想させるような髪色。幻想的な翼。
彼女の姿は気高ささえも醸し出していた。
帝都の富裕層にいてもおかしくはない。右手の得物を除けば。
決して低くない彼女の身の丈以上にある幅の広い剣。
バルガスの持つ両手斧よりもひと回り大きいそれを片手で悠々と持っていた。
「まだ、終わっちゃいないようだな……」
思わず苦笑いを浮かべるバルガス。
サラマンダーが女性になるなんて聞いた事がない。
だが、そんな事、今はどうでもいい。
目の前に迫り来る脅威。黒いオーラを発し、ヒールを一歩ずつ鳴らすたびに身体が重くなる感覚に襲われているのだ。
唐突に、巨大な両手剣を横に薙ぎ払う。
ーーブオォンーー
硝煙を一振りで霧散させる烈風。
「やれやれ」
と、立ち上がったゼクス。彼女へ向かって歩き出す。
「ちょ、ちょっと。どこにいくのよ」
「どこって……決まってるだろ。戦いに行くんだよ」
左手から回復薬を取り出して一気に煽り、一息吐く。
「戦いにって……無茶よ。あんたボロボロじゃない! もう限界よ!」
「あのな、ミーナ。無茶だろうが、限界だろうが、関係ないだろ。俺は決めたんだーー」
腰から青緑の剣を抜き、彼女向かって構える。
「ーー何がなんでも変わってやるって」
鍛冶屋のバルバに鍛え直してもらった長剣が鈍く光る。力任せに振るっているせいですでに刃毀れを起こし始めている。
「こりゃあまた鍛え直してもらわないな。鍛冶屋の親父に叱られっかな」
ゼクスはこの街に来て、アイリと出会った時を思い出した。
『本当に変わりたいと思った瞬間、もう動いているものよ』
(俺はあの時、行動を起こした。そしてアイリの気まぐれか受け入れられた。あれから俺は……少しでも変われたのだろうか……未だ何もできていない俺が……それをここで……試す!)
大盾を出現させて、剣を2、3回振り、身体強化の魔法をかける。
「行くぜ、サラマンダー」
ゼクスはグッと踏み込み、一気に大地を蹴り突進した。
ゆらりと大剣を構え、斬り下ろす。
衝撃から火花が散り、鈍い音が鳴り響く。
「ウ……ア…………ッ」
身体強化をしていても押しつぶされてしまいそうな重さ。武器と彼女の筋力が桁違いの破壊力を生み出しているのだ。
鋒を緩め、軌道を少しずらす。抑えがなくなった大剣は地面を抉り取った。
左半身が前に出ると大盾をガントレットのように突き出し、頭部を狙う。
が、彼女は手を離し上体を反らして避けた。そのままサマーソルトを放ち、大盾を上へと跳ね上げたのだ。
逆立ちの状態になると、そのまま腕を捻り起点にしてゼクスの空いた脇腹にヒールを直撃させた。
「グッ……」
細く、引き締まった脚からは想像もできない威力。思わず苦悶の表情を浮かべる。
(なんて動きをするんだ! こいつは)
回避と同時に次の攻撃に繋げるための技を繰り出す。判断力と発想。それを実現させる身体能力。全てが常軌を逸したものでないと不可能だ。
ゼクスは二、三歩後退をする。彼女も蹴り抜き、側転と同時に大剣を拾いあげた。
お互いに距離を取る。
脇腹を蹴られた痛みはあるが、耐えられないほどではない。
いつものゼクスであればすでにあばらが何本か折れていてもおかしくはなかったのだが、無意識に直撃部に魔力を集中させてダメージを緩和させていたのだ。
等の本人もそんな芸当ができたのが不思議なくらいだった。
無自覚の成長に震える。
しかし愉悦に浸ってはいられない。
顔を上げると一気に駆け出していた彼女が目前に迫っていた。
勢いを乗せた振り下ろしを盾で受ける。
隕石が落下したような一撃。
振り下ろした勢いを殺さず体を回転させる。
息をつかせぬまま、回転下段蹴りが飛んでくる。
踏ん張ってグリーヴで弾く。
と思ったら上段から一閃が襲いかかる。
これを盾で防ぐ。
大剣と脚の連撃。さらには拳を混ぜてくる。なんとも予測できない縦横無尽な攻撃だ。
上、上、下、横……一つのミスさえも許されない攻撃を一つずつ処理していく。
辺りには鉄がぶつかり合う音だけが、ただただ響き渡る。
ゼクスは手を出せない。いや、出さなかった。
下手に攻勢に転じると一瞬の隙を突かれて敗北が確定する。
今は耐えるべきだ。
だが、連戦により体はボロボロ。そう長くは持たない事を心の中ではわかっていた。
彼女の攻撃を捌くうちにパターンが読めてきた。
大剣の後に下段がくる。体勢を崩そうとしているのだろう。
そこから拳か大剣の二択。
(大剣から下段蹴りのパターンが来れば……!)
上段から盾に衝撃を与える。
(きたっ!)
想像通り。下段の蹴りが飛んでくるのを目視した。
ゼクスは防ごうとせず、一歩前に出て支柱となっている脚に向かって足払いを放った。
左手をかざし、体勢を崩した彼女に向かって火球を放った。
二人の間に爆風が起き、距離があく。
ドレスには焦げ一つもできなかったが、目論見は達した。
距離があくとゼクスは彼女を中心に走り出す。
盾をしまい、左手の魔法陣を露見させると、火炎を放つ。
一つ飛翔させるとほぼ同時にもう一つの陣が展開し、今度は二発。
さらに展開させ4発……と倍々で増えてゆく火炎弾。
だが、彼女はただ立っているだけ。
何かしているようでもない。
彼女に当たった瞬間ーー正確には彼女のドレスに触れた瞬間、オーラのようなものに触れて爆発している。
サラマンダーの鱗のようなものだろう。
ゼクスの攻撃をうっとおしそうな表情で受け続けていると、大きく、火の粉を巻き込むように空気を吸い込みーー
ーーガアッーー
線のように細いブレスを放った。
「ーーッぶねっ!」
ブレスはゼクスの目の前で瓦礫を溶解させた。
攻撃を中断させられ、警戒をするーーが、硝煙が晴れた場所に彼女の姿はない。
「ゼクスっ! 上っ!!」
ミーナが叫ぶ。
翼を広げ、星を背に空高く舞い上がっていた。逃げた……訳ではなさそうだ。
刀身を下に向け、抱えるように彼女は乗っかるように構えた。
あれはヤバイ。ゼクスの直感がそう叫んだ。
再び大盾を出現させると、片手を地面につき魔法陣を展開させる。
ドーム状に見えない壁が出現。盾に同じ紋章を刻む。
ゼクス最大の防御術。「トリニティ」
周囲に魔法陣を展開させ、同じ紋章を盾に刻む。左手に刻まれた拡張の魔法陣と同調させて自身の身体能力を向上させる。
大盾を構えた瞬間、彼女が落下を始めた。
「Fallin Star」
剣先に火炎の渦を纏い、徐々に加速を始め落下。はたから見ると流星を見ているような美しさだった。
ガィィィィイィィィンッ!!
盾と剣が激しく激突し、鈍く、鋭い音が劈く。
歯を食いしばり、耐えるゼクス。
彼女の翼が大きく広がり、先端から火炎が放たれ、さらに加速。
第二撃が盾に重くのしかかる。肌を焦がすような熱気。
(ーーコロシテ)
ゼクスの脳裏に直接響いてくるような悲しい声。
(オネガイ……モウ、ダレもキズツケタク……ない)
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