放浪(元)騎士、世界を救う!?

風無シオン

文字の大きさ
37 / 40

第30話 夜明けの光 前編

しおりを挟む
 異形の者と化したアーデルがこちらに向き直る。
 戦う意志を見せつけた三人を嘲笑うと「かかってこい」と言わんばかりに巨大な剣を向けた。
 それを合図にゼクスとサラは左右に展開して駆け出した。
 互いに干渉しないよう、そして敵の注意を片方に惹きつけるように。
 剣の扱いに長けていたゼクスはアーデルの右――剣側に接近。唸りを上げて目の前に迫る剣を身をかがめて避けると懐に入り込み、脇腹に一閃を叩き込んだ。
 金属にも似た斬撃音が響き、ゼクスの長剣は弾かれる。
「かってぇなおい」
 駆け抜けたところを尻尾で追撃されるがバックステップでなんとか避ける。注意を引きつけた所をサラが飛翔し首元を狙う。
 予想よりも動きが早い! 巨体に見合わぬ素早さで盾で防がれ接近を許さない。
 空中で宙返りをするとすかさずブレスを放つ。紅蓮の閃光が巨大な盾を赤熱化させた。
 巨大な盾ゆえに視界が遮られてしまう。
 サラは盾を迂回してガラ空きになった胴から肩を切り裂いた。
 ゼクスと同様に金属音が鳴り響き、着いたのは小さな引っかき傷のみだ。
 小回りが利かないことをいいことに体に密着して斬撃を与え続けるが、まったくもって効き目がない。
 アーデルは大振りの得物を投げ捨て、自らの体を武器にして刺突などを繰り出し始めた。
 ゼクスとサラは息をあわせて同時に距離を置く。
 アイリが魔法陣を展開し、強力な一撃を準備していたのだ。
「プラティンフォーゲル」
 アーデルを光の筒が囲う。中のものを焼き尽くすようにプラチナの爆発が巻き起こる。
 空震が起き下を覆う海面が乱れ波が生まれた。
 一瞬で爆発は消え去り、アーデルの体が影になって映し出される。
「フハッ!! ヌルい!!」
 何事もなかったように鼻息を荒くして笑っていた。
「そんな……それほどの力なの!?」
 驚愕するアイリ。だがすぐに次の策を練り始める。
 アーデルは両手を上に掲げ、掌に黒球の魔力を溜めた。地面に投げるように叩きつけると衝撃波が巻き起こる。
 アイリは展開していた防御壁のおかげで耐えたが、前衛にいた二人は衝撃派をモロに受けてしまった。
 サラは翼を駆使してなんとか空中で姿勢制御ができたおかげで数メートル吹っ飛ばされただけで済んだ。
 ゼクスはそうはいかなかった。全身で受けたせいで機器類に全身を打ち付けてしまった。「ぐぁっ」と短い声を上げると身体を起き上がらせることが出来ない。
 
「ゼクス大丈夫!?」
 アイリが急いで駆け寄りなんとか座らせる。
「あ、ああ。浮遊剣でなんとか衝撃を逃がしたが、痛いの食らっちまった。まだふらつく」
「気休めだけど治癒するからじっとしてて」
 治癒を始めるアイリ。ゼクスはアーデルを見据えていた。
 サラの機動力を活かして縦横無尽に飛び回り、かく乱してくれていた。
「チッ、ハエのように鬱陶しいヤツだ!」
 尻尾や爪でなぎ払うが追いつけていない。
「くそっ、やっぱ盾が必要だな。今度いいヤツでも仕入れなくちゃな」
「今そんなこと言っても仕方ないでしょ!? ……直接手を合わせてどう感じた?」
「……ハッキリ言ってシエラよりもつえーかも知れねぇ。限界以上の力を引き出してるっぽい、頭のほうが力についていけてない感じがしたな。この手の敵は長期戦に向かないだろ?」
「ええ、そうね。でもこっちが持ちそうもないわよ?」
 スピードはサラが一枚上手のようだが、徐々にその矛がサラを捉え始めていた。
 ゼクスもアイリと同意見だった。このまま長期戦に移行してもジリ貧になる前に力でねじ伏せられてしまう。
「あいにく私たちは目的がある。それを達成できれば……でも、あいつがそう簡単に許してくれるとは思えないわよ」
 目的――海流操作装置の破壊だが、簡単に壊れそうにない。ましてやアーデルが阻止してくることは明白だ。まずはヤツの排除を優先したいが、硬すぎて攻撃が通らない。
 刹那、ゼクスの脳裏にサラのブレスが盾を赤熱化させた光景が思い浮かぶ。アイリの攻撃では起こり得なかった現象だ。
(龍人の力には弱い?)
 一つの仮説が思い浮かんだ。だからといってサラのダガーナイフはまったく効かないし、ブレスを吐き続けろといっても到底無理な話だ。
 自分の考えが馬鹿らしいと思いつつやってみる価値がある。そう思ってしまったゼクスは――
「もう十分だ。サラに重荷をかけ続けさせるのは良くないからな」
 ――笑ってみせた。なにか勝算があるような、そんな笑み。
 アイリは「分かった」と言うと距離を取りつつ再び魔法陣を生成した。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...