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第30話 夜明けの光 後編
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増援に向かい同時にサラに目配せをする、視線に気づいたサラは意識をゼクスに向ける。
送受信はできないが、受信だけはできる獣人――彼らの能力ビーストリード。
彼のやろうとしていることを読み取ったサラ。無表情ながらもゼクスを心配した。無理なようでできそうな事、失敗したら死ぬ。それは願ってもない話だが約束は全て果たせる訳ではない。
決して死ぬようなことは考えていないゼクスを信頼して――
彼めがけてブレスを放った。全身全霊の一撃を。
ゼクスは間に蒼い粒子の浮遊剣タッシュを重ね合わせ、サラの攻撃を防いだ。
直撃した剣はブレスを渦巻き、同調を始める。蒼い粒子はブレスと混じり紫に変色。そして、紅へとその姿を変化させた。
「ブレイズタッシュ」
魔力の融合。それをやってのけた。魔力と魔力を混ぜ合わせる行為は相手のマナを理解しなければ成功し得ない。シエラの記憶――つまりは彼女のマナの奔流に飲まれたゼクスはそれとなく理解していた。それゆえ母娘でマナの質が似ていたサラとの魔力の融合ができたのだ。
接近してアーデルの前腕をブレイズタッシュで赤い軌道を描いて斬りつける。そしてあっけなく腕は切り落とされた。
「グオオオォォォッ!?」
急に切れ味の増した浮遊剣に驚愕、何歩か後退。
浮遊剣の追撃を避けるのだが、全ては避けきれずアーデルの身体を刻んでゆく。
アーデルを狙いつつ本命は装置!
「いけぇっ!!」
「あまい!」
大きく息を吸い込み…………咆哮を放つ。
バン、と短く破裂するような音とともに浮遊剣は霧散した。かき消された――
「お前の狙いも無に帰したな。これで終わりだ」
残ったもう片方の腕をゼクスに向ける――
勝利を勝ち誇った笑み。
「かかったな。バカが」
視線の先にサラにぶら下がって上空を飛ぶアイリの姿。
「賭けだった。俺が魔力融合できなければそこで死んでいた。そして二人に気づかれてもだれかが死んでいた。よかったよ、お前が無能で」
「クソォ!!」
アイリは降下してクロイツランツェを海流操作装置に叩きつけた。
真っ二つに切り裂かれた裂傷に装置にサラのブレスが放たれ、爆発を起こす。
もうもうと煙を吐き出す装置。息を止めたように装置は光を失ってゆく。
その光景を見つめるアーデル。
「――いい……」
微かに呟く声は届かない。
「もういい……お前らがこうしたんだ……」
巨体を揺らしながら壁に向かう。残った手で壁をなぎ払い、海風が地下に流れ込んでくる。
翼を大きく広げ、海へ飛び立つ。
「しまった! 逃げる気だ!!」
一つ烈風を起こし飛び去る。だが、向かった先は遥か彼方ではなかった。
ほぼ鎮圧仕掛けたディネールの中央広場。
「な、なんだコイツ!?」
突如現れた異形の存在にリリィ連合は動揺を隠せない。
「もっと、もっとだ!! 俺に力をヨコセェェェッッ!!」
叫びとともに住民の首元――錯乱の呪符からゆらゆらと薄紫のモヤが浮かび上がり、魔物シュレムが出現。そして、アーデルの元に集まる。
シュレムを一体掴むと一口。頭から丸呑みした。
アーデルの傷ついた無残な体はみるみる元の姿を取り戻していく。腕は再生し、両手でシュレムを喰い始める。
そのおぞましい光景に騎士は嘔吐する者もいた。
ドス黒い体液があたりに飛び散る。臓物が踊り、筋肉が引き裂かれ、骨が絶叫する。
「………………」
夜も更け、あたりも明るくなってゆく。
朝もやのように鼻息を荒くするアーデルであったもの。シュレムを喰らいその姿は醜く、血管が浮き出て、眼球が体のいたるところに現れ肉の塊と化していた。
だがその姿はどこかしか騎士にも似ていた。
腕と一体化した肉の剣。シュレムが重なり合って壁のように作られた盾。全身を覆う肥大化した筋肉は甲冑のように。
そのおぞましい姿に傭兵、ギルド、騎士団は恐れ逃げ出してしまう。
その場に残ったのは、気を失った住民と、リリィ、キャミィ、スアドのみだけとなった。
「な、なんだアレは……」
「おぞましい姿。この世のものとは思えない……」
撤退してきたバルガスとミーナが怪物を前に息を呑む。
「なにあの姿!?」
アイリが怪物の後ろ姿を捉える。
サラにゼクスとぶら下がって海辺から接近をはかる。
遠巻きだが、怪物と相対しているだれかが戦っている姿を視認できる。
「アレは……リリィさん!?」
「そんな攻撃じゃ私を倒すどころか触れることすらできないわよ?」
剣を華麗に避け、身だしなみを気にするリリィ。突き出された剣先が分かれ視界を覆い尽くすのだが、踊るように一つ一つ丁寧に避けきってみせる。避けるだけではない。彼女が動いた場所に閃光が走り細い肉の枝は切り落とされてゆく。
ただ光が通っただけのように得物すら見せずに。いや、早すぎてみえないのだ。
リリィは人差し指を向けると、肉壁の中心から爆発が起きる。
何をしているのか分からないほど――次元が違いすぎる。
「ナゼワタシヲミトメナイ! ナゼ!?」
憎しみの対象をリリィにぶつけるように怪物は叫ぶ。
「体が耐え切れていないようね。崩壊が始まってるわ」
リリィの言うとおり、アーデルの体の所々が崩れ始めている。いくつもの破片が集まった磁石が磁力を失ったように。
「キサマハッ――」
――ドォッ――
怪物の顔が爆発する。
「黙ってなさい」
リリィが小さく呟くと、怪物は沈黙した。
送受信はできないが、受信だけはできる獣人――彼らの能力ビーストリード。
彼のやろうとしていることを読み取ったサラ。無表情ながらもゼクスを心配した。無理なようでできそうな事、失敗したら死ぬ。それは願ってもない話だが約束は全て果たせる訳ではない。
決して死ぬようなことは考えていないゼクスを信頼して――
彼めがけてブレスを放った。全身全霊の一撃を。
ゼクスは間に蒼い粒子の浮遊剣タッシュを重ね合わせ、サラの攻撃を防いだ。
直撃した剣はブレスを渦巻き、同調を始める。蒼い粒子はブレスと混じり紫に変色。そして、紅へとその姿を変化させた。
「ブレイズタッシュ」
魔力の融合。それをやってのけた。魔力と魔力を混ぜ合わせる行為は相手のマナを理解しなければ成功し得ない。シエラの記憶――つまりは彼女のマナの奔流に飲まれたゼクスはそれとなく理解していた。それゆえ母娘でマナの質が似ていたサラとの魔力の融合ができたのだ。
接近してアーデルの前腕をブレイズタッシュで赤い軌道を描いて斬りつける。そしてあっけなく腕は切り落とされた。
「グオオオォォォッ!?」
急に切れ味の増した浮遊剣に驚愕、何歩か後退。
浮遊剣の追撃を避けるのだが、全ては避けきれずアーデルの身体を刻んでゆく。
アーデルを狙いつつ本命は装置!
「いけぇっ!!」
「あまい!」
大きく息を吸い込み…………咆哮を放つ。
バン、と短く破裂するような音とともに浮遊剣は霧散した。かき消された――
「お前の狙いも無に帰したな。これで終わりだ」
残ったもう片方の腕をゼクスに向ける――
勝利を勝ち誇った笑み。
「かかったな。バカが」
視線の先にサラにぶら下がって上空を飛ぶアイリの姿。
「賭けだった。俺が魔力融合できなければそこで死んでいた。そして二人に気づかれてもだれかが死んでいた。よかったよ、お前が無能で」
「クソォ!!」
アイリは降下してクロイツランツェを海流操作装置に叩きつけた。
真っ二つに切り裂かれた裂傷に装置にサラのブレスが放たれ、爆発を起こす。
もうもうと煙を吐き出す装置。息を止めたように装置は光を失ってゆく。
その光景を見つめるアーデル。
「――いい……」
微かに呟く声は届かない。
「もういい……お前らがこうしたんだ……」
巨体を揺らしながら壁に向かう。残った手で壁をなぎ払い、海風が地下に流れ込んでくる。
翼を大きく広げ、海へ飛び立つ。
「しまった! 逃げる気だ!!」
一つ烈風を起こし飛び去る。だが、向かった先は遥か彼方ではなかった。
ほぼ鎮圧仕掛けたディネールの中央広場。
「な、なんだコイツ!?」
突如現れた異形の存在にリリィ連合は動揺を隠せない。
「もっと、もっとだ!! 俺に力をヨコセェェェッッ!!」
叫びとともに住民の首元――錯乱の呪符からゆらゆらと薄紫のモヤが浮かび上がり、魔物シュレムが出現。そして、アーデルの元に集まる。
シュレムを一体掴むと一口。頭から丸呑みした。
アーデルの傷ついた無残な体はみるみる元の姿を取り戻していく。腕は再生し、両手でシュレムを喰い始める。
そのおぞましい光景に騎士は嘔吐する者もいた。
ドス黒い体液があたりに飛び散る。臓物が踊り、筋肉が引き裂かれ、骨が絶叫する。
「………………」
夜も更け、あたりも明るくなってゆく。
朝もやのように鼻息を荒くするアーデルであったもの。シュレムを喰らいその姿は醜く、血管が浮き出て、眼球が体のいたるところに現れ肉の塊と化していた。
だがその姿はどこかしか騎士にも似ていた。
腕と一体化した肉の剣。シュレムが重なり合って壁のように作られた盾。全身を覆う肥大化した筋肉は甲冑のように。
そのおぞましい姿に傭兵、ギルド、騎士団は恐れ逃げ出してしまう。
その場に残ったのは、気を失った住民と、リリィ、キャミィ、スアドのみだけとなった。
「な、なんだアレは……」
「おぞましい姿。この世のものとは思えない……」
撤退してきたバルガスとミーナが怪物を前に息を呑む。
「なにあの姿!?」
アイリが怪物の後ろ姿を捉える。
サラにゼクスとぶら下がって海辺から接近をはかる。
遠巻きだが、怪物と相対しているだれかが戦っている姿を視認できる。
「アレは……リリィさん!?」
「そんな攻撃じゃ私を倒すどころか触れることすらできないわよ?」
剣を華麗に避け、身だしなみを気にするリリィ。突き出された剣先が分かれ視界を覆い尽くすのだが、踊るように一つ一つ丁寧に避けきってみせる。避けるだけではない。彼女が動いた場所に閃光が走り細い肉の枝は切り落とされてゆく。
ただ光が通っただけのように得物すら見せずに。いや、早すぎてみえないのだ。
リリィは人差し指を向けると、肉壁の中心から爆発が起きる。
何をしているのか分からないほど――次元が違いすぎる。
「ナゼワタシヲミトメナイ! ナゼ!?」
憎しみの対象をリリィにぶつけるように怪物は叫ぶ。
「体が耐え切れていないようね。崩壊が始まってるわ」
リリィの言うとおり、アーデルの体の所々が崩れ始めている。いくつもの破片が集まった磁石が磁力を失ったように。
「キサマハッ――」
――ドォッ――
怪物の顔が爆発する。
「黙ってなさい」
リリィが小さく呟くと、怪物は沈黙した。
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