廻って異世界

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ゲーム世界に転生?

第7話 奇妙な夜会

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 涼しげな夜風を浴びながら、箱庭を眺める。
 初日こそ、寝付きの悪かった主も3日目を過ぎると、暗くなると同時に眠気に襲われるのが当たり前になったようで、既に夢の世界へ旅立っている。

 娯楽のない世界。
 星明かりくらいしかない夜に、貴重なエネルギー資源を浪費して、わざわざ起きている理由もないのだから必然かもしれない。
 そんな主を小屋に残し、宵の散歩に興じる雛菊と言う妖怪。
 いや、それに化けているモノ。

 そんな彼女には、周囲から粘り付くような殺気が向けられているのだが、特に気に掛ける素振りもみせない。

「どういう風の吹き回しだ?」

 不意に、言葉が飛んでくる。
 少女の背後に顕れた白い壁。
 ……のようにさえ感じられるほど巨体の動物が放った問い掛けであった。

「と言うと?」
「我らのことごとくを排斥し、彼の者の血を独占。
 その後は、主従で結界の中に閉じ籠っていた女狐が、今更外に出てくるとは思わなかった。
 何かを企んでいるだろう?」

 背後に巨大な狼がいるとは思えないほど、気軽な促しの雛菊、逆に優位な状況のはずの巨狼は、緊張に緊張を重ねた声で問い質す。

「別に結界の中に閉じ籠っていた訳じゃないわ。
 下手に横やりが入らない程度の、簡単なおまじないはさせてもらったけどね?」

 小馬鹿にしたように嗤う雛菊。

「高等結界をおまじない呼ばわりか?
 つくづくふざけた女狐だ」

 対する狼は、忌々しいとばかりに吐き捨てる。
 しかし、

「それで何を考えている?」

 それでも先を促す。
 どう考えても、目の前の華奢な少女に化けた怪物を出し抜ける案が浮かばなかった。

「さすがの私でも、1人だけで快適な生活を、主に提供するのは難しかったのよ。
 下手なことをして、ストレスを与え過ぎれば主が壊れてしまうかもしれないし、かと言って洗脳レベルの思考支配は効果がないもの……」

 慣れない世界からの逃避で、私を求めてくれるなら、愛欲の沼でドロドロに融かして上げるのに……。
 雛菊の纏う空気が雄弁に語っている。

「どう見ても性欲にしか見えんな……。
 しかも、融けているのはおまえの方だろ?」

 身体を抱き締めるように身震いする雛菊の皮を被った化け物に、別の意味でドン引きする巨狼。

「グチョグチョニトケアッテ、イツシカコドモガウマレ。
 ……グフグフグフッ!」

 逝った眼で語る姿に思わず、

「本当に気持ち悪いな」

 巨狼の本音が溢れた。

「ギャフ!」

 何処かへ旅立った眼をする病み狐の戯言に、冷静な一言をぶつける狼。
 さすがに、精神的なダメージはあったらしいが……。
 狼系の魔獣が持つ解呪の力を乗せたものを浴びた雛菊は、変な声を上げて突っ伏す。

「やるじゃない。
 中級程度の通常個体が、私にダメージを与えるなんて思わなかったわ」
「ただの自爆による精神ダメージだろ?
 ……補正値込みで物理ダメージがないとか、貴様はどんだけ高位の大魔獣だ?」

 戦慄した小芝居の雛菊だが、本当に戦慄しているのは、狼の方である。

 狼は追う神。
 種族特性として、全ての魔物に対して優位な立ち位置。
 加えて破邪の咆哮は、火気に分類される。
 火克金で、毛虫《けちゅう》且つ金気を持つ狐には2重の優位補正。
 それを持ってしても、目前の怪物を退けるに敵わない。

「元固有種で基礎能力が高い上に、今は従魔だからね。
 契約前なら別だったと思うけど、……争奪戦には参加しなかったの?」
「……外様のおまえと違って、我々の自我がハッキリしたのはついこの間だ。
 おまえの言う争奪戦に参加していたのは、本能優先の下級連中くらいだろう」

 実はチャンスがあったのだと、漁夫の利を掠め取った本人に言われて、苦い顔になる狼。
 しかし、そんなことを気にする雛菊ではないようで、

「そうなのね。
 うん、結構な知性もあるし、問題はなさそうね。
 あなたを第2の従魔にしてあげるわ」
「……そんなことを勝手に決めて良いのか?」

 目の前の少女が魔物使いであるなら、ともかく、彼女の主は、目先にある結界の中で安眠中である。

「大丈夫よ。
 弟は、姉に従う生き物だって、この本にも書いてあるもの」

 少女のような化け物が、何処からともなく取り出したモノは、巨狼の眼には金属の板にしか見えず、

「……本と言うのは、紙や木で出来ているものだろう?」

 本には見えないと問うが、雛菊は気にしない。

「これはね?
 スマホと言って、中にすごい沢山の本が入ってるのよ」

 と自慢げに笑うのだった。
 しかし、

「……どうみても人間用の道具だな?
 おまえ、主の道具を盗んだのか?」

 ジト目で呆れる巨狼。
 どうにもこの女狐が信用できないのであった。

「盗んでなんかいないわよ。
 少し借りているだけで、返せと言われたらすぐ返すわ」
「それなら……」

 意外と信頼されているようであると巨狼は判断した。
 肉親ごっこをしている点も、主のケアのためかと思う狼。
 ……雛菊が、スマホを持っているなんて、当の晴彦は欠片も知らないのだが。
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