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千客万来?
第29話 未知との対話
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半年以上も、いくつものパソコンとにらみ合いをしていた十数人からなる女性達。
本来は、エリート街道を突き進むはずだった官僚候補生の女性達だったが、魔素が満ちた日を境に、立場が揺らぐ。
魔素を操る才能がない。
或いは、弱いと言う判定を受けた彼女達は、会議室のような部屋で、モニターを監視する仕事を主に割り振られることになった。
とは言え、不満はない。
魔素を多少でも操る才能がある人間は、命の危険を覚悟しつつ、日本各地を行き来している。
魔素を操る才能に富む者は、少女趣味な服を着せられて、対魔物の最前線で、体力とそれ以上の精神力を削られているのだ。
安全な部屋で、モニターを監視するだけの仕事に、文句を言うのはバチが当たる。
中々成果が上がらないのが、唯一不満だったが……。
「……間違いない。
来た!!」
待ち望んだモノが遂にやって来たのは、そんな時だった。
叫びを上げる1人の女性職員の元へ、室長の美山さやかは慌てて掛け寄り、モニターを覗き込む。
「……フォーティン」
ハンドルネームとIPアドレスを慎重に確認する。
大半の国が協力的な中、自己中心的な一部の国は、日本の足を引っ張るために、彼の人物になりすまし、ウイルス感染を狙う組織もあるのだ。
……携帯会社等を通す関係上、フォーティンの情報が漏れるのは、しょうがないが、頭の痛い話だった。
「間違いないなさそうですね。
あなたはマニュアル通り、フォーティンへと呼び掛け続けなさい。
例の専用ルームへ招待してね
そっちのあなたは、発信場所の逆探知。
他の人間は、この掲示板への他者の侵入を塞ぐように。
私は総理へ報告します」
相手が渦中の助言者であるフォーティンだと確信した美山は、隣室で政務に励む総理を呼びに走った。
謎の助言者フォーティンとの接触を、図るために開設された内閣府特別情報収集室。
その室長を引き受けている美山さやかに、フォーティンとの接触を、示唆された現総理大臣である山崎浅葱《やまのさきあさぎ》は、他の政務を中断して、特別情報収集室へやって来た。
特別情報収集室の大型モニターには、
フォーティン:つまり、現在私とコンタクトを取って見えるのは、地上にある日本国と言う国の政府機関であるとのことですね
JP:その通りです
と、フォーティンとのやり取りが映る。
既に、事前に用意したプライベートチャットへの誘導が、完了していたことに安堵のため息が漏れる首相と室長。
いきなり、政府関係者を名乗って誘導しても、ハイそうですかと上手くいく保証はなかったが、思いの外、相手は融通が効くようであった。
フォーティン:私のいる土地のトップと話し合いができるのは幸運です
幾つかの掲示板をみた感じでは、こちらの同胞が迷惑を掛けているようでしたので、既に友好的な関係を築くのは難しいかと思案していました
「……同胞ですか。
まさか、こんなあっさりとダンジョンとの繋がりを認めるとは……」
「ダンジョンとの関係を追及すると言う目的の1つが、あっさり達成できましたね」
ダンジョン関係者であると判明すれば、こちらの信用を一瞬で失いかねない。
だから、それを認めることはないだろうと言うのが、日本政府側の予想であった。
故にIPアドレスの発信源を逆探知し、言い逃れを封じる準備をしていたのだが、
「……マイクを」
腑に落ちないと言う顔をしながら、音声入力用のマイクを求める山崎首相。
速やかに用意されるそれを受け取って、
JP:「友好的な関係を築きたいとのことですが、その割には、こちらからの呼び掛けに応えてくれることがなかったではありませんか?」
首相の問い掛けが、タイムラグなく打ち込まれるが、
「「「……」」」
しばらく、返信が返ってこない。
首相を初めとした十数人が、ひたすら動きのないモニターを見つめる。
フォーティン:呼び掛けに応じようとは考えていましたが、こちらが応える頃には、その掲示板が閉じられてしまうのです。
信じ難いかも知れませんが、私がいる場所と地上では時間の流れが異なります
とある理由に寄り、私の住む場所は地上の24倍を掛けて時間が経過します
こちらで文章を作成するのに1分掛かれば、そちらでは24分もの時間が経過してしまいます
「どう思います?」
「信じ難い話ですが、魔法としか言えない不思議な力がありますので……」
あまりにも、突拍子もなさそうな話過ぎると、美山室長へ意見を求める山崎首相。
室長も信じて良いのか困惑しているものの、あり得ないとも言い切れない。
「そうですね……」
少し考えた末に、再びマイクのスイッチを入れる山崎首相。
JP:「その話を信じるとしますと、出来れば直接の対話がしたいところなのですが?」
「……なるほど、向こうに悪意がないのであれば、会談に応じてくれる可能性がありますね」
山崎首相の要望は、試金石となり得るだろう。
フォーティンの言うことが、本当であれば直接会って話し合いたいと思うのは、自然な欲求に思える。
しかし、
「……難しいでしょうね。
何故、最初からそうしなかったのかと言う疑問が生じます」
首相本人は否定気味。
もっと早く協力してくれていれば、魔物による誘拐被害も少なくすんだかもしれない。
そのための行動を行おうとしなかった点がおかしいからと……。
フォーティン:残念ながら、難しいと言えるでしょう
私自身は、今の場所を離れられないと言う問題もあります
また、代理の者を送るにも、私のいる場所から地上までの間には、他勢力の勢力圏を通る必要があります
「ダンジョン内勢力も、一枚岩ではないと言うことでしょうか?」
「そう考えるのが妥当でしょうね……」
美山室長の考えに同意しつつ、本当にそんなことがあり得るのかと熟考を重ねる首相。
或いは、
「フォーティンを名乗る者が、ダンジョン内に捕らえられた第三者の可能性があるのかしら?」
「自身の救助のために、助言をしていると言うことでしょうか?」
外部へアクセス出来る立場から、ダンジョン内で高い権力を持つ者を想定してしまっていたが、囚われの虜囚が、助力のために情報を発信しているとも考えられる。
「……そうなると露骨なやり取りは危険ね」
「はい」
「だったら」
JP:「でしたら、こちらから交渉チームの派遣を行いたいと思いますが、よろしいかしら?」
交渉チームの派遣と言う形で提案を進める。
実際には、精鋭の攻略チームを派遣するつもりだが……。
「……特定は?」
「完了しています。
岐阜市の北辺りから、発信されています」
首相の意向を汲み取った室長は、派遣すべきダンジョンの場所特定を進めていた部下に訊ねる。
「東海地区の魔法使いから、選別チームを用意する必要がありそうね……」
それを聞いた首相は、意外と遠い場所に眉を潜める。
新幹線の運行数も減っている現在、東京から見た岐阜は、かなり遠い場所になっていた。
フォーティン:決して安全を保証できるものではありませんが、こちらとしては願ってもないことです
丁度、フォーティンの連絡が入る。
意外なほどあっさりとした歓迎の言葉に、戸惑いながら、準備を始めることを決めた山崎首相であった。
本来は、エリート街道を突き進むはずだった官僚候補生の女性達だったが、魔素が満ちた日を境に、立場が揺らぐ。
魔素を操る才能がない。
或いは、弱いと言う判定を受けた彼女達は、会議室のような部屋で、モニターを監視する仕事を主に割り振られることになった。
とは言え、不満はない。
魔素を多少でも操る才能がある人間は、命の危険を覚悟しつつ、日本各地を行き来している。
魔素を操る才能に富む者は、少女趣味な服を着せられて、対魔物の最前線で、体力とそれ以上の精神力を削られているのだ。
安全な部屋で、モニターを監視するだけの仕事に、文句を言うのはバチが当たる。
中々成果が上がらないのが、唯一不満だったが……。
「……間違いない。
来た!!」
待ち望んだモノが遂にやって来たのは、そんな時だった。
叫びを上げる1人の女性職員の元へ、室長の美山さやかは慌てて掛け寄り、モニターを覗き込む。
「……フォーティン」
ハンドルネームとIPアドレスを慎重に確認する。
大半の国が協力的な中、自己中心的な一部の国は、日本の足を引っ張るために、彼の人物になりすまし、ウイルス感染を狙う組織もあるのだ。
……携帯会社等を通す関係上、フォーティンの情報が漏れるのは、しょうがないが、頭の痛い話だった。
「間違いないなさそうですね。
あなたはマニュアル通り、フォーティンへと呼び掛け続けなさい。
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他の人間は、この掲示板への他者の侵入を塞ぐように。
私は総理へ報告します」
相手が渦中の助言者であるフォーティンだと確信した美山は、隣室で政務に励む総理を呼びに走った。
謎の助言者フォーティンとの接触を、図るために開設された内閣府特別情報収集室。
その室長を引き受けている美山さやかに、フォーティンとの接触を、示唆された現総理大臣である山崎浅葱《やまのさきあさぎ》は、他の政務を中断して、特別情報収集室へやって来た。
特別情報収集室の大型モニターには、
フォーティン:つまり、現在私とコンタクトを取って見えるのは、地上にある日本国と言う国の政府機関であるとのことですね
JP:その通りです
と、フォーティンとのやり取りが映る。
既に、事前に用意したプライベートチャットへの誘導が、完了していたことに安堵のため息が漏れる首相と室長。
いきなり、政府関係者を名乗って誘導しても、ハイそうですかと上手くいく保証はなかったが、思いの外、相手は融通が効くようであった。
フォーティン:私のいる土地のトップと話し合いができるのは幸運です
幾つかの掲示板をみた感じでは、こちらの同胞が迷惑を掛けているようでしたので、既に友好的な関係を築くのは難しいかと思案していました
「……同胞ですか。
まさか、こんなあっさりとダンジョンとの繋がりを認めるとは……」
「ダンジョンとの関係を追及すると言う目的の1つが、あっさり達成できましたね」
ダンジョン関係者であると判明すれば、こちらの信用を一瞬で失いかねない。
だから、それを認めることはないだろうと言うのが、日本政府側の予想であった。
故にIPアドレスの発信源を逆探知し、言い逃れを封じる準備をしていたのだが、
「……マイクを」
腑に落ちないと言う顔をしながら、音声入力用のマイクを求める山崎首相。
速やかに用意されるそれを受け取って、
JP:「友好的な関係を築きたいとのことですが、その割には、こちらからの呼び掛けに応えてくれることがなかったではありませんか?」
首相の問い掛けが、タイムラグなく打ち込まれるが、
「「「……」」」
しばらく、返信が返ってこない。
首相を初めとした十数人が、ひたすら動きのないモニターを見つめる。
フォーティン:呼び掛けに応じようとは考えていましたが、こちらが応える頃には、その掲示板が閉じられてしまうのです。
信じ難いかも知れませんが、私がいる場所と地上では時間の流れが異なります
とある理由に寄り、私の住む場所は地上の24倍を掛けて時間が経過します
こちらで文章を作成するのに1分掛かれば、そちらでは24分もの時間が経過してしまいます
「どう思います?」
「信じ難い話ですが、魔法としか言えない不思議な力がありますので……」
あまりにも、突拍子もなさそうな話過ぎると、美山室長へ意見を求める山崎首相。
室長も信じて良いのか困惑しているものの、あり得ないとも言い切れない。
「そうですね……」
少し考えた末に、再びマイクのスイッチを入れる山崎首相。
JP:「その話を信じるとしますと、出来れば直接の対話がしたいところなのですが?」
「……なるほど、向こうに悪意がないのであれば、会談に応じてくれる可能性がありますね」
山崎首相の要望は、試金石となり得るだろう。
フォーティンの言うことが、本当であれば直接会って話し合いたいと思うのは、自然な欲求に思える。
しかし、
「……難しいでしょうね。
何故、最初からそうしなかったのかと言う疑問が生じます」
首相本人は否定気味。
もっと早く協力してくれていれば、魔物による誘拐被害も少なくすんだかもしれない。
そのための行動を行おうとしなかった点がおかしいからと……。
フォーティン:残念ながら、難しいと言えるでしょう
私自身は、今の場所を離れられないと言う問題もあります
また、代理の者を送るにも、私のいる場所から地上までの間には、他勢力の勢力圏を通る必要があります
「ダンジョン内勢力も、一枚岩ではないと言うことでしょうか?」
「そう考えるのが妥当でしょうね……」
美山室長の考えに同意しつつ、本当にそんなことがあり得るのかと熟考を重ねる首相。
或いは、
「フォーティンを名乗る者が、ダンジョン内に捕らえられた第三者の可能性があるのかしら?」
「自身の救助のために、助言をしていると言うことでしょうか?」
外部へアクセス出来る立場から、ダンジョン内で高い権力を持つ者を想定してしまっていたが、囚われの虜囚が、助力のために情報を発信しているとも考えられる。
「……そうなると露骨なやり取りは危険ね」
「はい」
「だったら」
JP:「でしたら、こちらから交渉チームの派遣を行いたいと思いますが、よろしいかしら?」
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実際には、精鋭の攻略チームを派遣するつもりだが……。
「……特定は?」
「完了しています。
岐阜市の北辺りから、発信されています」
首相の意向を汲み取った室長は、派遣すべきダンジョンの場所特定を進めていた部下に訊ねる。
「東海地区の魔法使いから、選別チームを用意する必要がありそうね……」
それを聞いた首相は、意外と遠い場所に眉を潜める。
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