廻って異世界

フォウ

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千客万来?

第39話 迷宮攻略会議

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 ルビー、サファイア、クォーツ、アメジストにオニキス。
 日本で最も早くに魔法使いとして、活躍を始めた5人へ送られたコードネーム。
 次いで頭角を表したエメラルドとアンバーの2人。
 ジュエルズと言えば、彼女ら7人を指すことが多い。
 そんな7人。

 活動地域も活動内容もバラバラの彼女らが、名古屋へ集まることになった。
 加えて、大災害以降東京を離れることが出来なかった山崎首相もやってくるとなり、てんやわんやの名古屋市庁舎であったが、その尽力により、今後の日本の行く末を左右するかもしれない会議は無事に開催へと漕ぎ着けた。

「こうして一堂に会せるのは、皆さんの尽力により、魔法使いが増えて少なからず余裕が出来た結果です。
 まず、国を代表して感謝を」

 深々と頭を下げる山崎首相。
 政治家として、自ら国のために立った自分とは異なり、偶然フォーティンと交流を持ってしまった一般人。
 それでも敢えて表舞台で、戦うことを選択してくれた彼女達への敬意を込める。
 知らないふりは出来た。
 実際、あの掲示板へ接続していた人間の数は10人程度では収まらないのだ。
 しかし、彼女達以外に手を上げてくれた人はいなかった。
 とは言え、根は一般人なので、いきなり首相に礼をされても戸惑ってしまう。
 お互いに目配らせをした結果、

「いえ、自分達の身を守るためでもありましたから……」

 代表して応えたのは、ジュエルズルビー。
 年長組のルビーとクォーツ、その中で魔法使いが増えるように尽力となると、矢面に立っていたのは、やはり彼女だろう。
 元々、山崎首相と面識がある点でも相応しい。

「それでも感謝させてください。
 ありがとうございます」
「はい。
 その言葉をお受けします。
 それで今回私達を集めた理由についてですが……」

 堂々巡りを避けるために、首相の言葉を受け取り、本題を促す。
 やむなく矢面に立った彼女らだが、元は陰キャ気質のネット民なのだ。
 あまり持ち上げられると、下手なお願いでも断れなくなってしまいかねない。

「……そうですね。
 つかぬことをお尋ねしますが、最近寝付きが悪い等の不調はありませんか?」

 もう少し、心を開いて欲しかったと思う山崎総理であったが、やり過ぎれば逆効果と判断したらしい。
 本題の前振りへ話を進める。

「「「……」」」

 わざわざ、日本中からジュエルズメンバーを集めておいて、最初の質問が睡眠時間に関して。
 当然、困惑して互いの顔を確認するジュエルズ達。
 そこで気付く。
 もしかして、皆同じなのかと……。
 そして、

「……そうですね。
 最近は妙に寝付きが悪いです。
 これまでは沢山の魔法を使っていましたが、人手が増えて余裕が出来たから、疲労困憊するようなことも減りました。
 その影響かと考えています」

 ジュエルズ発足当初は、失神するように寝ていたのだ。
 その状況に馴れた身体が、寝たいと言う心に付いてきていないと考えるルビー。
 眠れないせいで悶々しているのだろうと、自分の心に折り合いを付けていた。
 性的な欲求を隠すことを、美徳とする日本的な志向。
 ましてや、彼女達はコミュニケーション能力が低めの娘が多いのだから、実は逆なのだと言う発想は逆さに振っても出てこない。

「その点に関しては、こちらの力不足であったとお詫びいたします。
 ですが、その寝不足についてと言いますか、少し言いにくい話なのですが、最近性犯罪率が急増しています。
 ……ご存知ですか?」
「「「……」」」

 ネットでもテレビでも騒がれているので、彼女達も知っている。
 むしろ、警官とバディを組むことが多い彼女らは、ニュース以上に多いと実感しているくらいだろう。
 とは言え、それと自分達の状況を重ねると、目の前の首相へ聞き出すのは辛い。

「……ふぅ。
 よく知っています。
 不思議なことに、女性から男性への行為が多いとも……」

 無言の擦り付け合いの結果、結局ルビーがそのまま対応を続けることになった。

「その原因についてですが、フォーティンから興味深い情報の提供がありました。
 魔素は生命力とも言うべきものと親和性が高いと……」
「待ってください!
 それでは!」

 ルビーに促された山崎首相が説明を始めたタイミングで、急遽クォーツが話を遮る。
 決して褒められた行為ではないと自覚しているが、身内の不幸から女医を目指した彼女に取って見過ごせない情報だった。
 しかし、

「……いえ、納得が出来ました。
 現代医療では、治療どころか原因特定さえ出来なかった病気に、治癒魔法が有効だった理由付けにもなりますし……」

 それは、今言うべきことじゃないと飲み込む。
 実際、大災害以降は生命が軽くなってしまっているのだ。
 同じような境遇の者はここにもいるだろうと考えた。

「図らずもではありますが、クォーツさんの言葉で、信憑性が増してしまいましたね。
 さて、問題は体内の魔素量が過多になるとどうなるかです。
 フォーティン曰くですが、生命力に余裕がありすぎると判断した身体は、今のうちに子孫を増やそうとするスイッチが入るとのことです」

 ある意味では自然の話なのかもしれない。
 生物の究極的な本能こそ、種の保存だろうから、本能毎取り払われでもしないと、なくならない。

「……なるほど、政府の方針が魔素の貯蔵から使用へ切り替わったのは、資源不足以外にもそんな理由があったんですね?」

 ルビーから引き継ぐ形になってしまったクォーツが、話を進める。
 元医者であるクォーツの方が適任でもあるのでしょうがないだろうけど……。

「はい。
 そこでご相談があります。
 現状の解決策を持つ可能性があるのは……」
「フォーティン。
 彼なら、打開策を持っている可能性がありますね」

 間違いなく現時点でもっとも魔素に詳しい人物だろう。

「仮に打開策を持っていなくても、リアルタイムで彼と話が出来れば、間違いなくプラスになります」
「単刀直入に聞きます。
 フォーティンの居場所は、ダンジョンの中ですか?」

 会うためにジュエルズ、戦う力が必要となれば、ダンジョンの中にいると考えるのは必然だろう。

「……はい」

 クォーツの問い掛けに悲痛な顔で答える山崎首相。
 それは、これまでとは格段に危険であるとも言えることなのだ。
 しかも、将来的な国益はともかく、ジュエルズ達自身に取っては、ハイリスクローリターンな話だった。

「自分は、行くであります」

 しかし、そんな中で真っ先に手を上げたのが、サファイア。
 彼女は、

「多分、自分達は他の人よりもそういう欲求がどんどん強くなるでありますよね?
 下手なことして、テレビにでも写ったら、恥ずかしくて死ぬるであります」
「「「……」」」

 自分オタクなんで、とフヒヒと笑うその顔はカッコ悪くて、しかし格好良かった。
 そして、それに感化されて、頷き合うジュエルズ達。

「ありがとうございます。
 心からお礼を申し上げます」

 成り行きで散々生命を懸けてもらった。
 そして、今度は自分達の意思で生命を賭けてもらう。
 国なんて言う抽象的なモノのために。
 だから、山崎首相はただ深く深く頭を下げることにした。
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