廻って異世界

フォウ

文字の大きさ
128 / 139
地上での生活

第125話 日本の抱える問題

しおりを挟む
「……雛菊さん、人工授精は不可能なのでしょうか?」

 ホテルへ移動する車内。
 助手席に座る山崎さんが、俺の隣の雛菊へ声を掛けてくる。

「……不可能ではないわ。
 魔素を完全に遮断した容器へ封入し、同じく魔素を完全に遮断したボックス内で、十月十日育成すれば、理論的には可能と言う感じね。
 酸素よりも浸透性が高い魔素を、どう遮断するかが問題だけど……」

 雛菊の回答を聞いていたが……。
 いや、そんなの無理だろう?

「実質、不可能と言うことでしょうか?」
「私はそう認識しているけど……。
 それは、古代文明期でそういう技術が必要なかったせいだわ。
 現代のように必要に駆られて研究すればあるいわとも思う」

 必要なかったから、研究されていないのか……。
 希望はあるけど、古代文明の知識が使えない分、研究に苦労しそうだな。

「必要なかったと言うのは?
 古代人と現代人では生殖能力に差があるのですか?」
「……それもあるわね。
 現代でも排卵誘発剤ってあるでしょ?」

 他人事な俺と異なり、山崎さんは必死に情報の深堀りを始める。
 雛菊も、特に情報を絞る気はなさそうで良かった。

「ありますけど、あれは個人差や薬効にバラつきがありますね……」
「古代文明だと、魔法で受精までエスコート出来るから、母体が望めば確実に妊娠できるわけよ」
「……すごいですね。
 現代の自然妊娠の受胎率は30%未満と言うのが一般的ですのに……」
「意外と低いんですね?」

 山崎さんの言葉に俺が驚いた。
 けど、京都でのやらかしを考えるに、眞緒とシャイ子さん達6人で、行為に及んだのは合計7人。
 うち、シャイ子さんとムー子さんの2人がと考えると、2/7で3割弱だからそんなものなのかもしれない。

「……そこから流産の確率が15%くらいあると言われているわ。
 だから、自然妊娠で子供が産まれる確率は10~20%くらいね。
 これは大災害前の数字だから、大災害以降はもっと下がってる可能性が高いけど……」

 俺に説明してくれていた山崎さんだったが、途中から、どんよりと顔を曇らせる。
 うん。
 気持ちは分かる。
 結構、全滅寸前じゃないか、人類。

「流産の危険ね……。
 ……現代人は大変ね。
 私達の感覚だと、故意でもないと胎児が死傷するなんてあり得ないんだけど……」

 雛菊も少し同情気味である。
 あれ?

「胎児は魔素に弱いんだろ?
 魔法が使えないなら、流産の確率は同じくらいじゃ?」
「魔素には弱いけど、魔法は使えるわよ?
 治癒魔法は他人にも掛けれるでしょ?」
「そういえば……。
 ややっこしいな」

 拠点作りの時も、俺やミコトが簡単な治癒魔法でシャイ子さん達の擦り傷を治療してたな。

「後は、労働時間の問題もあるかしら?
 今、この国の労働時間は相当長いんじゃない?」
「いえ、灯りの消耗とかもありますから、就労時間は8時間前後だと思いますけど……」

 燃料がないから、電気代とかも跳ね上がってるもんな……。

「……長いじゃない。
 古代文明期の労働時間は、2時間弱くらいよ?
 その影響で、子供を育てる欲求が強かったのかもしれないけど……」
「そんな労働時間でよくやってけたな?」

 雛菊の言葉に驚いた。
 そんな短い時間でよく社会が回ったと思う。
 しかし、

「……結の存在を忘れているでしょ?」

 と呆れられた。
 そうだったわ。
 食料供給だけなら、結のような拠点管理システムで十分賄える。

「古代文明期の社会は、基盤に結のような拠点管理システムがあって、それの手の届かない所を補助生物、莧達のような存在ね。
 その統制を労働人が行い、更に上に一般人がいるって構図だったわ」
「労働人? 一般人?」

 変な話が出てきたぞ?

「古代文明期もどうしても、子供を産めない人間はいたのよ。
 そういう人間が労働人にされるわ。
 彼らは、一般人とパートナーになることは禁じられていたし、労働人同士でパートナーになっても、生活補助はなしだったわね。
 労働人と言っても、特別労働時間が長かったわけじゃないけど……。
 暇だから、労働中毒になることが多くてね」

 やっぱり何処か階級主義的な要素があったんだな。
 ……雛菊達のような人のようで、人でない存在がいる以上はしょうがないかもしれないけど。
 けど、

「暇って……」 
「そりゃ、ゲームのような消費型コンテンツもあったけどね?
 消費型コンテンツってことは、自分がいなくなったら消えるのよ?
 当然、創作活動を行う人もいたけど、それが全部後世に残ると思う?」

 ……残らないよな。
 よほど、世界的に認められでもしない限り……。

「つまり、仕事ってのは、自分のいた証を遺すための行動なのか」
「そういうことだと思うわ」

 子供を産めないから、その代償行為が仕事へ没頭する行動だったわけだ。

「……色々と課題が山積みなのは分かりました。
 やはり、一夫多妻制度は必要なんですね……」
「そうね。
 後は、労力の確保。
 拠点管理システムを獲得しないと、一夫多妻にしたところで、人口は増えないわ」

 話を本筋に戻した山崎さんの言葉に、追い討ちを掛ける雛菊。
 まあ、どうにかしないと詰むのは事実だからな。
 ……雛菊なりの助言なんだと思う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生?したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

処理中です...