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娘の心配パパ知らず、パパの心配娘知らず

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康成が家に着くと棗も私用から帰宅したところだった。


「今日もあっちに行ってたのかい?どうだった?」


「知り合いになった鬼人族の家族にラーメン作ってきたよ。案外好評だったわ。あとおじやも作ってきた。」


「話してる内容も色々と変だけど、それを自然と受け入れてる私も変なのかねぇ……
鬼もラーメン食べるんだね……」



「また夜に土産話を聞かせるさ、まずは娘の迎えに行ってくるよ」


「はいよ、早く行っておいで今日は私がご飯を作るよ。近所から美味しそうな野菜を沢山もらったんだ。カレーにでもしようか」


「あいよー、それじゃあ頼んだ」


康成は一旦話を切ると娘の迎えに保育園へ向かった。


…………………


「彩愛ちゃん、パパが迎えに来たよ」


先生が声をかけると玄関脇のホールから娘がトテトテと走って出てきた。


帰宅の準備も終わっており、先生へ挨拶をすると手を繋ぎ2人は保育園を後にした。


「パパ!今日はね、みんなと散歩に行って沢山お花見つけたの!あやちゃんが一番で見つけたんだよ!」


「そっかぁ、何色の花が綺麗だった?」


「きいろ!パパは何色がすき?」

「パパも黄色が好きだよ。彩ちゃんと一緒だね」


「うん!一緒だと楽しいね!」


「今日はなつばばがカレー作ってくれるってさ」


「ホントに?あやちゃん、なつばばのカレー好きだよ」


「ちゃんと野菜も食べれる?」


「カレーならがんばるもん……」


「あやちゃんの年で野菜たくさん食べれたら凄いなー、凄く良い子だなー」


「頑張って食べたらいい子?」


「良い子だし、凄い子だよ」


「あやちゃん、ちゃんと食べるからパパ見ててね!約束だよ!」


さすがに野菜の塊は難しいだろいし。刻んで食べやすくしてあげよ。



家に着くとカレーの良い匂いが漂ってきた。



「なつばば!ただいま!」


「はい、おかえり。まだ煮込んでる途中だし米も炊いてる所だから先にお風呂はいってしまいな」



棗に促され康成と彩愛は着替えをもち風呂へ向かった。



あっ……俺、今日風呂2回目だ。


まぁ風呂も娘との団らんの時間だ。何度入っても良いだろ。



そういえば甚平さんが「最近娘が一緒に風呂に入ってくれない」って言ってたな。


娘もそのうち、パパやだ!とか言うのかな?


はぁ……考えただけでテンション下がるわぁ……


「あやちゃんはいつまでパパとお風呂に入ってくれる?」


「なんで?あやちゃん、パパとおっきくなってもお風呂入りたいよ?」


「そっかそっかぁ」


康成は彩愛の頭を撫でると何で?と不思議そうな顔をしていた。



まぁ、その時が来たら考えよ。


あー、うちの娘、超可愛い。



………………


風呂をあがり、野菜カレーに苦戦している娘を見ながら晩酌をしているとテレビで超能力特集をしていた。


投稿映像を見て、専門家が「これはトリックだ」「これはCGだ」などと話している。

テレビを見ていると舞台がスタジオに変わり、教えて守護霊さんとかいう良くある自称見える人が芸能人の守護霊に質問をするコーナーに移った。


テレビ越しではさすがに霊は見えなかったが、康成は甚平の話を思いだすと未練や後悔で現世に残ってしまう霊も数多くいるのなら、家族が心配で未練が残り、それが守護霊になるのではないか?と康成は考えた。



うちの親父は家の中では見えないし、母ちゃんについてる訳でもないならとっくに成仏してんのかな?


蔵で見つけた親父のエロ本はしっかり息子が受け継ぎ大事にしてますよー、多分成仏してるだろうけど心配すんなよな。


ちらっと仏間の方を向き、多分届かないんだろうなと思いながらも康成は心のなかで父親へ合掌した。

要は気持ちの問題だ。




「ごちそうさまー、パパ?あやちゃん全部食べたよ。」


娘が得意気な顔でこちらを見ながら空のカレー皿を見せてきた。


「凄いじゃん!野菜も全部たべたね」

「なつばばのカレー美味しかったよ」


孫に褒められて嬉しくないはずもなく、棗は缶ビール片手に笑みを浮かべていた。


「ご飯食べたから歯磨きしよっか」

「はーい」


夕食を食べ、歯磨きが終わると時間も8時を過ぎていた。


いつもより少し早いが保育園でたくさん遊んだのか娘もうとうとし始め、寝室まで抱っこすると布団に下ろした時には、すでに寝ていた。


…………

娘も寝たため、いつものように縁側で晩酌の続きをしていると。

蔵の方から扉を叩く音が聞こえたような気がした。


初めは気のせいかと思ったが
ガンッ!ガンッ!と、叩く音もだんだん大きくなる。


康成はこの間の悪霊の件を思いだしていると。


「何の音だい?」


棗も蔵の異変に気がついたのか、縁側に出てきた。


「俺が見てくる……泥棒か?」


玄関よりバットを持ち出し、蔵に近づくと更に音は大きくなる。


「誰だ!」

蔵に向かい康成は大声で声をかけると、蔵の中から声が聞こえた。


「康成!康成か!?俺だ!華凛だ!頼む!助けてくれ!」


何で華凛がこっちに?と康成は思ったが、泣きそうな華凛の声が聞こえた康成は躊躇なく扉に手をかけた。


「華凛!?待ってろ!すぐに開けるからな!」


康成は蔵の木製の関貫を外すと、中から華凛が出てきた。

泣き崩れるように康成へ抱きつくと、酷く息切れをしており、手を見ると血豆が破れたのか真っ赤に染まっていた。


………………


縁側に華凛を座らせる水を飲ませると5分程で息も整い華凛は話し出した。


「夜になったら急に村が襲われたんだ……」


「はっ?どういうことだ?」

「わかんねーよ……急に空が明るくなったと思ったらたくさんの火の玉が空から降ってきて……」


「村のみんなは?大丈夫なのか?」

「母ちゃんとか女、子供は今日行った森へ避難してる。」

「甚平さんは?」

「村に残って他の男達と火消しと防衛をしてる。俺も手伝うっていったんだけど……森に逃げなさいって言われて……どうしても手伝いたくて……父ちゃんが心配で……」


「それで俺の所に来たわけか……」

「康成が家の蔵がこっちに繋がってるって言ってたのを思い出して、いちかばちか井戸を降りたら来れたんだけど、いつもより力が入らないし……真っ暗だし……俺の霊砲で扉を叩いてもびくともしなくて……困ってたら康成が来てくれたんだ……声が聞こえたら急に涙が出てきて……」


華凛が説明をしてくれていると今まで黙っていた棗が口を開いた。


「康成、これ以上女の子に恥かかせるんじゃないよ。あんたはあっちでは凄く強いんだろ?女の子が助けを求めて康成の所に来たんだ。助けてって言われたら理由なんて聞かずにすぐに返事をしてやりな。融通の利かないバカ息子が」


「うるせーなぁ、今返事をしようと思ってたんだよ。言うなよカッコ悪い」


「康成……一緒に来てくれるか?」

華凛はまた泣き出しそうな顔で康成を見る。



「あったりめーだ、すぐに行くから待ってろ。またみんなでラーメン食うぞ」





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