新しい嫁探し?バツイチお父さんは娘の為に霊界で伝説になる。

ふなむし

文字の大きさ
15 / 19

娘の隣はまだパパの席?

しおりを挟む


康成は素早くリュックにバットやドリンクを詰め蔵に向かった。

蔵の前には華凛がスタンバイして待っていた。


「華凛、準備はいいか?」

「さっきはカッコ悪いとこ見せて悪かったな。もう大丈夫だ。康成もらったブルブル飲んだら力もみなぎってきたぜ」


「準備もできたし、そろそろいくか。んっ?華凛、少し背が低くなってないか?折れた角もあんまり目立たないし……」

「よくわかんねーよ、こっちに来たらこうなってたんだよ。力も弱くなってるしな。もとの力ならあんな扉簡単に開けられるのに……」


これは、現世に来た影響か?


「今考えてもしかたないか。よし、井戸に入るぞ」


………………


井戸から出ると夜なのに村の方向がオレンジ色に明るく染まっていた。


「まだ火の勢いは弱いな」

「でも、早く村に急がねーと…ッキャ!」


「悪いな華凛!急ぐんだろ?負担にならないようにするけど少し揺れるぞ!しっかり掴まってろ!」


康成は華凛を肩に担ぐと村へ走り出した。


「康成!どこ掴めば良いんだよ!一応俺も女だぞ!肩に担ぐって何か変じゃねーか!?」


「大丈夫だ。全然重くねーよ!」


「そういうことじゃねーんだよ!」

………………………



村では鬼人族の男達が半分は火消しに、もう半分は大きな盾と棍棒を担ぎ防衛にあたっていた。


「ふぅ……さすがに骨が折れますね……」



定期的に火の玉が飛んでくる。

それを盾で防ぐと今度は人影が槍を構え空から攻撃を繰り出す。


「まったく……相性で言えば最悪ですね……近距離が得意な鬼人族は空は飛べない、空から一方的に攻撃されたらジリ貧ですよ……ねぇ?天狗族さん方?」


甚平が声をかけ、空を見ると火事の火が夜空を照らし人影がはっきり見える。


白い肌に漆黒の羽を持つ天狗族が30人程空より甚平を見下ろしている。



「おとなしく村と食料を明け渡せば女、子供の命は保証しよう!」


「そう言われましても困ります。人の親である以前に私はこの村の長です。簡単に明け渡すわけがないでしょう?」


甚平が呆れ顔で反論すると、天狗族は槍を構え。

「ならば……死ね!」


1度に5人が5方向から甚平へ槍を突き出す。


「甚平さん!」


鬼人族の男が甚平の後ろに付き、2槍を止める。

前2人は甚平が止めたが残りの1人の槍が甚平の肩を掠める。


「このっ!」

鬼人族の男が天狗族へ棍棒を振るうが既にそこには誰もいない。

一進一退

先程から甚平達を悩ませる攻撃だ。
1度攻撃したらすぐに空へと戻り再度攻撃のタイミングを伺う。


そして、槍が戻ると気をためていた天狗族が火球を放つ。


火球を止めると再度槍が降ってくる。

5人1組の槍と火球のコンビネーションで、それが3組

選択を間違えましたかね?やはり華凛に残って貰い、霊砲で空へ牽制して貰えればだいぶ楽なのですが……
やはりダメですね。これは狩りではないのです。娘を危険な戦場に置くことはできません。


普段鬼人族の村では狩りの際、鈍器を用いる事が多く霊砲は華凛しか持っていない。


それに霊力を込めて放つにはそこそこの霊力が必要であり、霊力を放出するのは制御が大変で鬼人族には難しく、扱える物も少ない。


私も霊砲は力加減が難しくあんまり好きではありませんね……


「無い物ねだりではありませんが、本当にジリ貧ですよ。まったく……」



何度か槍、火球の連携を止めてかわしていると槍捌きにフェイントを混ぜたりタイミングをずらしたりと、捌くのが難しくなり少しずつ手傷が増えてきた。


甚平は康成のラーメンで一時的だが肉体を持つ事ができたため体力も身体能力も上がっている。だが他の鬼人族は違う。

振るう棍棒も空を切る時が一番体力を削られる。

少しずつ狂うタイミングについていけず体力も失われ、槍に盾を跳ばされてしまう。



「いけない!」

槍部隊が引くと準備されていた火球が甚平達を襲う。


火球は既に放たれた。甚平は盾を落としてしまった鬼人族の男を掴むと攻撃の範囲外へ投げた。


「甚平さん!逃げて下さい!」


投げた甚平が盾を拾う時間はない。


「さすがに直撃したら熱そうですね……」


死にはしないだろうと思いつつ、衝撃に備え甚平は腕を畳み火球を迎えうつ。



その時、一筋の閃光が火球を撃ち抜く。


「父ちゃん無事か!」


どこから来たのか、勢い良く滑るように華凛は甚平と天狗族の間に入った。


「華凛!どうして来たのですか!あなたが1人来ても何も変わりません!華夜さんやみんなと逃げて下さい!」



「まったく……いつまでも子供扱いして、ケチ臭いこと言うなよな。それに……1人じゃねぇ!」


火球を消されたことに動揺したのか、天狗族は再度槍を構え降下してきた。



降下を始めた瞬間



ズガガガガガガッ!



降下を始めた天狗族へ激しく何かがぶつかる音がし、天狗族は地面に叩きつけられた。


「やべっ!死んでねーよな?力加減間違えたかな?良かったぁ……息してる……」


「康成……君?」


「あいよ!強力助っ人、康成君の登場だ。甚平さんは、これでも飲んで休んでてくれ」


康成は甚平へ持ってきたブルブルを渡すと華凛の隣へ立った。


「身長戻ったな」

「あぁ、こっちに来たらすっかり元通りだ。それよりも俺を遠慮なく投げやがったな?」


「でも、間に合ったろ?しかも抜群のタイミングで、間に横入りするとか超かっこいいじゃん」



「まぁな、仕方ねぇから今日は許してやんよ」


「ありがとさん」

突然乱入者が現れ仲間が一気に5人も落とされた天狗族は動揺を隠しきれない。


「なんなのだ貴様らは!突然横槍を入れおって!」


「うるせーなぁ、なぁ父ちゃん?誰も死んでねーよな?」


「えぇ、疲労困憊で擦り傷と少しの火傷だらけですがみんな生きてますよ」


「なら問題なしだ。康成!誰も殺すなよ?ちゃんと手加減しろよ?できるか?大丈夫か?」


「さっきより弱めにするから大丈夫だろ?多分……」


「本当に頼むぜ?なぁ父ちゃん?今更逃げて隠れなさいなんて野暮なこと言わねーよな?」


「ふぅ……私は疲労困憊で何も見えてませんし、聞こえてませんよ」


「そっか、それならしかたないな!」


「殺す気はないけど何で生死の確認をしたんだ?」


「康成、これはまだケンカなんだ。ケンカなら殺す必要はない。死んでなければどうにかなる。
ただ……1人でも死んじまうと……それはケンカじゃない、戦だ……収まりがついたから解決にはならねーんだよ」


「なるほどね、それじゃあ殺さない程度に遠慮なくボッコボコにしたらいいんだな?」

「まぁそういうことだ、本当に手加減しろよ?」



「わかってるよ、それじゃいくぞ!」


康成と華凛は天狗族へ振り替えるとケンカの一歩を踏み出した。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...