新しい嫁探し?バツイチお父さんは娘の為に霊界で伝説になる。

ふなむし

文字の大きさ
16 / 19

パパは投手ではありませんが何故か変化球は三種類くらい投げれます

しおりを挟む


康成と華凛は仁王立ちのまま天狗族と対峙していた。


「なぁ康成?作戦とかどうする?」

「何にも考えてなかったな。まぁ好きに暴れてやばくなったら共闘で良いんじゃね?」


「それが良いな、今から考えるのも面倒だしな、それじゃぁいくか!」


ドンッ!ドンッ!ドンッ!


初手は華凛が霊砲を放った。


「くっ!」


天狗族に当たることはなかったが今までの陣形を保つ事が難しくなり、一方的だった空中の制空権が崩れた。



「少し陣形が崩れた位で我らの有利は揺るがん!これしきの砲げ…ごぁ!?」


ドサッ

天狗族の男は言葉を続ける事ができずに地面に叩きつけられた。


「さっきから一体なんなのだ!どこから、何で攻撃されているのだ!」


天狗族は辺りを見渡すが遠距離武器など見当たらない。


そうだ!あの男は!?


今度は康成を探すため辺りを見渡すが見つける事ができない。


その時


ひゅんっ!


何かが天狗族の男の側を掠めた。


飛来物の飛んできた方向を見ると火を消化され煙が燻っている家の陰に康成を見つけた。


「そこか!」

「やべっ!見つかった!」


天狗族の男が康成のもとへ飛来すると、康成は地面辺りを軽く掴み野球の要領で振りかぶった。


「なっ!?」


危機感を感じ右へ緊急回避をする。


ズガガガ!


正面からの直撃は避けることはできたが、槍を持つ左腕に衝撃が走り槍を落としてしまう。


「これくらいなら怪我ですむだろ?良かったな、今回はケンカでな」


「ケンカだと!?我々を愚弄するのもいい加減にしろ!さっきから一体なんなのだ!その目にも見えぬ攻撃は!?」



「えっ?見えないの?まぁ暗いし見辛いのも無理はないか?
そんなに怯えるなよな。ただそこら辺にあった石を投げただけだよ」


「馬鹿を言うな!たかが石程度で我々を撃ち落とすなど……」


康成はもう一度石を拾うと天狗族目掛けて投擲した。

ひゅん


風切り音のみで姿の見えない投擲物が側の柱に当たる。


亀裂の入った柱には確かに親指程の石がめり込んでいた。


「ほらな?これなら怪我ですむだろ?」


背筋に寒気が走った。


ッ!馬鹿を言うな!あんなサイズの石であの威力なら手のひらサイズをぶつけられて見ろ、骨が折れるだけじゃすまないぞ!


「ほら?ケンカしようぜ?」


負けは許されないのだ!我々は…

「我々は本気だ!これはケンカなどではない!」


天狗族の男は、右手で槍を拾うと康成を横凪ぎではらう。

キンッ!

何の問題もなく康成は愛用のバットで槍を防ぐ。


「いいやっ!これはケンカだ!ケンカとして終わらせる!」


康成は槍を掴むと逆に横凪ぎに振るう。

「ぬぐぅ!」

「ぐだぐだ言ってんじゃねぇ!理由もなく里に攻撃しやがって!何時だと思ってんだ!?俺は今日、夜勤明けだぞ!もう子供も寝てるんだぞ!?人の生活リズム崩しやがって!ケンカで済ませてやるって言ってんだ!大人しく聞きやがれ!」


康成は槍を持つと、槍を横に曲げるのではなく縦に持ち、あめ細工のように捻ると、ツイストドーナツのように螺旋型の槍だった物を造りあげた。


「はっ?」

槍は確かに歪むし、曲がることもあるが、よほど硬い物を叩かなければ曲がりはしない。

決して力任せに曲げて折れることなどはない。
それが武器なのだ。子供の玩具や練習用の木製武器ではない。金属製の武器が簡単に曲がることなどあり得ない。

まるで夢のような光景に天狗族の男は夢と現実の区別がつかなくなった。


「まだやるかい?」


康成は男へ詰め寄る。

「っ!……………」


男の股間がホカホカと水気を帯びた。

目の前の悪夢のような光景に男は脳が処理できずに意識を手放した。


「目の前に立って気絶とか、漫画かよ。男の失禁シーンなんて嫌な物を見ちまったな……スゲーカッコ悪いわぁ……
さて?華凛さんはどうでござんしょうか?」



康成は近くの鬼人族に男を任せると華凛の元に向かった。


……………



「まったく!キリがねーな!」

華凛がぼやき空を見ると、まだ10人程の天狗族が隊列を組み華凛へ連続で攻撃を仕掛けてきた。

華凛はそれを霊砲で牽制しつつ1人、また1人と地面へ沈めて行く。


「異常すぎるぞ!何だ奴は!何発撃てば霊力が切れるのだ!」


既に華凛は牽制を含め100発以上の霊砲を放っていた。

基本霊砲とは、遠距離支援武器である。
1発撃つごとに自分の霊力を込め、狙いを定めてから放つ、連射をすることができないこともないが己の霊力を消費するため、すぐに霊力が枯渇し激しい眩暈に襲われるのだ。



「前までだったらとっくに霊力が切れてるところだが、自分でも、まだまだ底が見えねーなぁ。やっぱりあっちの食べ物のお陰か?一体何発撃てるんだ?」


華凛本人も底が見えない自分の霊力に内心首を傾げながら霊砲を放った。



「陣形を組み直せ!こいつは危険だ!1発で決めるぞ!」


天狗族は華凛に危険性を感じ、1ヶ所に固まり霊力の気を練りだした。


華凛が霊砲を放つが槍持ちが盾となり後方の隊へ攻撃が通らない。



「しゃらくせー!」


華凛の砲撃でとうとう槍持ちも倒れ残りの部隊へ目を向けると空は巨大な火の玉で赤く染まっていた。



「これで終わりだ!沈め!」


合図と共に華凛へ向かって火球が放たれた。


華凛はニヤリと笑うと

「へへっ!そういうの嫌いじゃないぜ!」



巨大な火球から逃げることもなく華凛は霊砲を腰に抱え、腰を深く沈めると、霊砲に込められるだけの霊力を注ぎ息を止めると一気に放った。


ズンッ!


重低音が響くと

華凛が放った砲撃は青白い閃光を放ち、火球と拮抗することもなく貫いた。


貫いた閃光は天狗族の頭上を越え、遥か上空で派手に爆発した。


「ぷはっ!危なかったぁ……想像以上だったな……上に逸らせて良かったぁ……俺も康成のこと言えないな……」


想像以上の威力に華凛は当たらなくて良かったと内心冷や汗をかいていた。


霊力を使い果たしたのか、戦意を喪失したのか、天狗族はふらふらと地面に降りると膝をついた。


「我々の負けだ……もう飛んで逃げる気力も残ってはいない……我等の天狗族もこれでお仕舞いだ……」


「たーまやー」


華凛の後ろからどこか気の抜けた声が聞こえた。
後ろを向くと康成がバットを担ぎ空を見ていた。

「康成、なんだよそれ?」


「デカイ花火がうち上がったらこっちではそういうんだよ。とりあえずこれでお仕舞いか?」


「そうだな、こいつらどうする?まずは父ちゃん呼ぶか?」


康成と華凛が天狗族の処遇を話していると、先頭に立っていた天狗族が前に出て頭を上げた。



「お願いがあるっす!」



「「あるっす?」」


「私の命でどうかコイツらを助けて欲しいっす!こんな成りをしてますが北の山の天狗族、長をしているっす!お願いします!何でもするっす!殺されても奴隷でも覚悟はできてるっす!全ては私の責任っす……だからコイツらだけは……」


まだ二十歳にもならない位の女の子が康成と華凛に土下座をしてきた。


空が暗く見えなかったが、明るい所で良くみると全員痩せ細っており、あちこちがぼろぼろだ。


「さすがに俺らじゃ何にも決められねーよ」


「2人とも、無事に終わったみたいですね。康成君、華凛?この話、私が預かっても良いでしょうか?」


甚平さんが到着すると、消火が終わった他の鬼人族も集まってきた。


「まぁ甚平さんなら悪いようにはしないだろうさ、俺は甚平さんに任せるよ」

華凛も

「父ちゃんに任せるよ、俺はこれから母ちゃんの所に行ってみんなに知らせてくる!」



「それでは怪我人の応急処置が終わって、華凛達が戻って来たら広場に集まりましょう」



甚平さんがみんなに指示を出すと各々が役割を理解し動きだした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...