まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ

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特別編6

第2話『球技大会当日』

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 7月12日、水曜日。
 球技大会当日になった。
 起きた直後に観た天気予報によると、今日の天気は一日中曇り。雨が降る心配はないとのことだ。俺が西山達と一緒に出場するサッカーは屋外で実施する予定なので、天気が崩れる恐れがないのは嬉しいな。
 優奈と一緒に、優奈が作ってくれた朝食を食べる。とても美味しいし、しっかりと食べられたので今日の球技大会を頑張れそうだ。それを優奈に伝えると、優奈はとても嬉しそうな笑顔で「良かったです!」と言った。
 朝食を食べ終わり、後片付けをした後、俺は自分の部屋に戻って着替えることに。ただし、高校の制服ではなく体操着に。
 今日は球技大会があるので、特例として体操着やジャージ姿で登下校してもいいことになっている。制服で登下校してもいいけど、制服で登校する場合は朝礼が始まるまでに更衣室で着替える必要がある。
 一日ずっと大会だし、学校の更衣室で着替えるのも手間なので、俺は1年のときから球技大会の日は体操着で登下校している。優奈も1年のときから大会当日は体操着やジャージを着て登下校しており、今日も体操着姿で登下校するとのこと。
 体操着に着替え、忘れ物がないかどうかチェックする。

「……うん、大丈夫だな」

 忘れ物がないことを確認できたので、俺はバッグを持って自室を出て、弁当などを取りに行くためにリビングへ向かう。
 リビングに行くと、そこには体操着姿の優奈がいた。優奈の体操着姿は学校の体育の授業で見たことがあるけど、家では初めてなので何だか新鮮だ。

「優奈も着替え終わったか」
「はいっ。……体操着姿の和真君、家で見るのは初めてですから新鮮です」
「俺も同じことを思ったよ。学校で何度も見ているのにな」
「そうですねっ」

 そう言葉を交わして、優奈と声に出して笑い合う。
 優奈が作ってくれたお弁当と、今日は球技大会なのでスポーツドリンクが入っている水筒をバッグに入れた。

「よし、これでOKだな」
「和真君も準備OKですね。では、学校へ行きましょうか」
「そうだな」

 俺達はリビングを出て玄関へ向かう。
 外での体育の授業で履くシューズを履いたところで、

「じゃあ、行くか。……せーの」
『いってきます』 

 と声を揃えて言って、いってきますのキスをする。学校へ行くときの習慣となっているキスだけど、このキスもまた今日の球技大会の力になりそうだ。優奈も同じだったら嬉しい。
 学校に向かって家を出発する。
 マンションを出ると……今日は曇っているので、ここ最近の雨が降っている日よりも蒸し暑さはマシだ。屋外でサッカーをするので、このくらいの天候で良かった。

「今日は雨が降る心配がないようで良かったです」
「ああ。外でサッカーをするからな。まだ梅雨も明けていないから、雨が降る心配がないのは運がいいなって思うよ。曇りだからそこまで蒸し暑くないし」
「そうですね」

 優奈はニコッと笑いながらそう言った。

「話は変わりますが、体操着で登校しているので今日は特別な日だと実感します」
「そうだな。体操着で登下校していいのは球技大会と体育祭の日くらいだし」
「ええ。……最後に体操着姿で登校したのは去年の体育祭ですか。あのとき、次に体操着姿で登校するときは和真君という大好きな夫がいて、住んでいる家が違うなんて想像もしていませんでした」
「想像できないよな。俺も想像してなかった」

 去年の体育祭の日の俺に今の状況を伝えても、何を言っているんだと信じてもらえなさそうな気がする。

「和真君と一緒に登校していますから、これまで以上に特別な感じがしますね」
「そうだな」
「あと、高校の球技大会は今回が最後なので、和真君と一緒に登校できて本当に良かったと思います」

 優奈は言葉通りの嬉しそうな笑顔で言ってくれる。だから、今の言葉が本心なのだとすぐに分かって。なので、胸がとても温かくなる。
 あと、優奈の言うように、俺達は3年生なので今日の球技大会は高校最後だ。だから、ちょっと寂しい気持ちもあって。

「俺も優奈と一緒に登校できて本当に良かったよ。あと……最後の球技大会だから楽しみたいな。一緒にサッカーをする西山達はもちろん、優奈や井上さんや佐伯さん達とも」
「そうですね! 一緒に楽しみましょう!」

 ニコニコとした笑顔でそう言ってくれる優奈。そのことで、胸に抱く寂しい気持ちが霧散していった。
 球技大会の話などをしながら、学校に向かって歩いていく。
 校舎が見えるところまで来ると、周りにいるのは学校に向かって歩く生徒ばかりだ。今日は球技大会なのもあり、大半が体操着姿だ。ジャージを上に羽織ったり、ジャージのスラックスを穿いていたりする生徒もちらほらと。数える程度だけど、制服姿の生徒もいる。こういう光景もまた、今日はいつもと違うのだと思わせてくれる。
 校門を通り、俺達のクラスの3年2組の教室がある第1教室棟に入る。
 昇降口で上履きに履き替え、階段で教室のある6階まで上がっていく。
 6階に上がって、後方の扉から教室に入った。

「あっ、優奈と長瀬来た! 2人ともおはよう!」
「おはよう、優奈、長瀬君」
「おはよう、長瀬、有栖川」

 教室に入ると、優奈と俺の席の近くである後方の窓側にいる佐伯さん、井上さん、西山が朝の挨拶をしてくれた。ちなみに、佐伯さんと西山さんは体操着姿で、井上さんは体操着にジャージの上着を羽織っている。

「みなさん、おはようございます」
「おはよう、みんな」

 優奈と俺はそう挨拶して、西山達の方へと向かっていく。その中で教室を見渡すと、教室にいる生徒はみんな体操着やジャージを着ている。教室の中はエアコンがかかっていて結構涼しいので、井上さんのようにジャージを着ている生徒はそこそこいる。教室や体育館はエアコンがあって涼しいから、俺はバッグの中にジャージの上着を入れている。
 優奈と俺は自分の席にバッグを置き、西山達のところへ。

「優奈。今日もおっぱい……いい?」
「いいですよ、萌音ちゃん」
「ありがとう」

 井上さんは笑顔でお礼を言うと、優奈の胸を軽く触り、優奈を抱きしめて胸に顔を埋めた。登校したときの恒例の光景だけど、今は体操着やジャージ姿なので新鮮だ。

「あぁ、今日も優奈のおっぱいいいわ。体操着だから制服のとき以上に柔らかい」
「ふふっ。それは良かったです」

 優奈は優しい笑顔でそう言い、井上さんの頭を撫でる。
 それから少しの間、井上さんは優奈の胸に顔を埋めたり、顔をスリスリしたりして優奈の胸を堪能していた。

「……ふぅ。今日も優奈の素晴らしいおっぱいを堪能できたから、球技大会を頑張れそう。まあ、試合前にも堪能するつもりだけど」
「去年までも試合前は堪能していましたもんね」
「あたしの胸もね。萌音は試合前にメンバー全員の胸を堪能するんだよ、長瀬、西山」
「おっぱいを堪能すると心身共に元気になって体が軽くなるからね」

 俺や西山にキリッとした表情を向けて言う井上さん。

「井上さんらしいな」
「そうだな、長瀬」

 2年生までの優奈達のバスケットボールの試合を思い出すと……井上さんの動きは結構良かった記憶がある。小柄だけどシュートを決めていたし。あれは優奈や佐伯さん達チームメイトの胸のおかげだったのか。今年も井上さんの活躍に期待だな。

「いよいよ球技大会当日になったね! 試合するの楽しみだなぁ!」
「俺も楽しみだぜ!」

 佐伯さんと西山は明るい笑顔で言う。2人とも部活でやっている競技に出場するから、学校のイベントでも試合をするのが楽しみなのだろう。西山は去年までも同じクラスで一緒にサッカーに参加したけど、滅茶苦茶楽しんでいたのを覚えている。

「俺も楽しみだよ。今年も西山達とサッカーに出場するし」
「私も楽しみです。千尋ちゃんや萌音ちゃん達と一緒にバスケができますし」
「私もよ」

 俺、優奈、井上さんがそう言うと、佐伯さんと西山の笑顔が嬉しそうなものに変わる。

「今年は高校最後の球技大会だし、今までで一番の結果を出したいぜ」
「今までで一番ってことは……去年のベスト4よりも上ってことか」

 球技大会のサッカーは全学年でのトーナメント戦だ。
 去年は準決勝で2年生のクラスに負けてしまい、3位決定戦に臨んだけど……3位決定戦では3年生のクラスに負けてしまいベスト4に終わった。キーパーだったし、連敗という形で終わった悔しさがそれなりにあったけど、1年生のときは初戦突破をして2回戦敗退だったから、それに比べればかなり勝ち進めた喜びも結構あったな。

「最後の大会だし、3位以上になれたら嬉しいな」
「そうだな! 頑張ろうな、長瀬!」
「ああ、頑張ろうな」
「そして、キーパー頼むぜ!」
「ああ、任せろ。西山は得点頼むぞ。サッカー部エース」
「おう!」

 西山は爽やかな笑顔でそう言うと、俺に向かってサムズアップしてきた。そんな西山に向けて俺もサムズアップした。
 西山はサッカー部なだけあって、一昨年も去年も攻撃の中心になっていくつも得点を挙げていた。3年生でありエースでもある今年も西山に期待したい。

「西山と長瀬を見ていたら、バスケで過去一番の結果を出したい気持ちが強くなったよ!」
「気合い入ってるわね、千尋。まあ、千尋の気持ちも分かるわ。高校最後だし、今までで一番の結果を出せたら最高よね」
「そうですね。これまでの最高の結果は……2年生のときのベスト8ですね」
「そうだね、優奈」

 女子バスケットボールも男子サッカーと同じように、全学年でのトーナメント戦だ。
 優奈、井上さん、佐伯さんにとって過去最高は去年のベスト8か。ということはベスト4以上が目標になるんだな。

「優奈達が過去最高の結果になれるように応援するよ」
「そうだな、長瀬! 今年も一緒に有栖川達を応援しような!」
「ふふっ、ありがとうございます。私も和真君や西山君達が3位以上になれるように、萌音ちゃんや千尋ちゃん達と一緒に応援しますね!」
「そうね、優奈」
「サッカー応援するね! お互いに頑張ろうね!」

 自分が出場するサッカーでの試合はもちろんのこと、優奈達が出場する女子バスケットボールの試合の応援も頑張ろう。お互いに過去一番に勝ち進めるように。

「みんなおはよう! 黒板にトーナメント表を貼るから見てね。うちのクラスと、卓球はうちのクラスの生徒に赤く印を付けてあるからね」

 担任の渡辺夏実わたなべなつみ先生の声が聞こえたので、声がした方を見ると……渡辺先生はトーナメント表が印刷された大きな紙を黒板に貼っていた。あと、今日は球技大会なので、下は赤いジャージで上は白い半袖のスポーツウェアを着ている。去年までも球技大会では今みたいな服装をしていたな。
 それから程なくして、渡辺先生がトーナメント表を貼り終えた。なので、俺達はさっそくトーナメント表を見に行く。
 全種目がトーナメント戦で、俺と西山が出場するサッカー、優奈と井上さんと佐伯さんが出場する女子バスケットボール以外にも、男子バスケットボール、女子のみの種目のドッジボールがクラス対抗でのチーム戦だ。男子卓球と女子卓球は個人戦で実施される。
 西山と一緒に男子サッカーのトーナメント表を見ていくと――。

「あったぜ、長瀬。初戦は全体の第2試合だ」

 そう言い、西山はトーナメント表を指さす。そこを見ると……赤く○で囲まれた『3年2組』の文字が。
 初戦の相手は……3年7組か。

「初戦は同じ3年生か」
「だな。7組には……サッカー部の奴が1人いるな。ミッドフィルダーだ。スタメンで試合に出ることもある上手い奴だ」
「そうなのか」
「会場に行ったらどいつがサッカー部員なのか教えるよ」
「了解」
「……それにしても、サッカー部のいる同学年のクラスと戦えるのか。ワクワクするぜ」

 その言葉通りのワクワクとした表情になる西山。全学年のトーナメント戦だし、下級生のクラスに当たった方が勝ち進むにはいいけれども……同学年のクラスと当たってワクワクできる西山はサッカー好きらしく感じた。
 相手は同学年だし、上手なサッカー部員もいるから、キーパーとしてしっかりとゴールを守っていかないとな。

「サッカーは第2試合だぜ。女バスの方はどうだ?」
「こっちは第6試合だよ。相手は3年6組」
「そっちも同学年か。こっちは7組だ」
「そうなんだね」

 と、西山と佐伯さんが言葉を交わした。優奈達の方も相手は3年生か。
 あと、優奈達の試合が第6試合で良かった。これなら、お互いに試合会場で応援することができるから。
 それから程なくしてチャイムが鳴り、朝礼が行なわれる。

「みんなおはよう! 今日は球技大会です。みんなにとっては最後の球技大会なので、楽しい大会になるように頑張ってね! 先生はみんなが勝てるよう、できるだけ応援しに行くからね!」

 渡辺先生はニッコリとした笑顔でそう言った。それもあってか、クラスメイトの多くが「はーい!」と元気良く返事していた。
 高校最後の球技大会。過去最高の結果を出せるように西山達と頑張ろう。優奈達への応援も。そして、楽しんでいこう。
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