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第48話『ゲームセンター』
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お昼ご飯は高野駅の北口近くにある全国チェーンのイタリアンレストランで。
このレストランは、リーズナブルで美味しいことから学生にも人気がある。だから、うちの高校の含め制服姿のお客さんがかなりいて。だから、イタリアンがメインの学生食堂のような雰囲気だ。今は12時半くらいとお昼時だけど、運良く待たずにテーブル席に座ることができた。
俺はもちろんのこと、優奈もこのレストランに来たことが何度もあるという。今日みたいにお昼に学校が終わった日や休日に、井上さんや佐伯さん、陽葵ちゃん達と一緒に来るとのこと。
俺は明太子パスタ、優奈はカルボナーラを注文。
明太子パスタはさっぱりとした味わいで美味しく、優奈と一口交換してもらったカルボナーラもミルクとチーズが濃厚で美味しかった。
優奈が美味しそうに食べていたし、一口交換のときには優奈と食べさせ合ったので、とても満足できたお昼ご飯になった。
レストランを後にして、駅の南口の近くにあるゲームセンターへ向かい始める。
「カルボナーラも明太子パスタも美味しかったですね!」
「どっちも美味しかったな。美味しいから、あのレストランに行くとスパゲティを頼むことが多いんだ」
「私もスパゲティを頼むことが多いですね。美味しいですし、スパゲティが好きですから。うちでもスパゲティ料理を増やしましょうか」
「そうだな」
一度、優奈の作ったナポリタンを食べたことがあるけど、とても美味しかったな。
高野駅の構内を通り、俺達は駅の南口に行く。
「南側に来たし、ゲームセンターはもうすぐだよ」
「はい」
「そういえば、優奈は普段、ゲームセンターやカクイとかのゲームコーナーには行くのか?」
「たまに、陽葵や友達と一緒に行きます。高野にあるゲームセンターも、萌音ちゃんや千尋ちゃん達と一緒に行ったことがありますね」
「そうなんだ。じゃあ、これから行くゲームセンターも知っているところかもな。優奈ってゲームセンターに行くと、どんなゲームで遊ぶんだ?」
「クレーンゲームが一番好きで、よく遊びますね。ぬいぐるみとかお菓子とかが取れますから」
「色々な景品があるよな」
優奈が言ったぬいぐるみやお菓子だけでなく、おもちゃやフィギュア、バッグとかマグカップといった日用品など多岐に渡る。
「千尋ちゃんが一緒だと、エアホッケーやダンスゲームもやりますね。千尋ちゃんはそういったゲームが好きなので」
「そうなんだ」
佐伯さん……バスケ部に入っているだけあって、体を動かすタイプのゲームが好きなんだな。そういったゲームを楽しそうにしている佐伯さんの姿が容易に思い浮かぶ。かなり強そうなイメージだ。
「和真君はどんなゲームをやりますか?」
「俺もクレーンゲームは結構やるよ。好きなお菓子の大袋とか、好きなキャラのグッズとか取るよ」
「そうなんですね」
「友達とか真央姉さんと行くときはエアホッケーとか、太鼓を叩くリズムゲームも結構やるな」
「太鼓のゲームも面白いですよね。特に好きな曲でやると」
「面白いよな」
好きな曲のリズムに乗せて太鼓を叩いたり、高得点を出したりするのが気持ちいいんだよな。
南口から近いところにあるため、優奈と話しているとすぐにゲームセンターの前まで到着した。
「ここだよ。優奈はこのゲームセンターには来たことある?」
「あります。萌音ちゃんや千尋ちゃんなどと一緒に来たのはここです」
「そっか。ここは駅から近いし、大きいもんな。入ろうか」
「はいっ」
俺達はゲームセンターの中に入る。
店内に入ると、太鼓のゲームやクレーンゲーム、エアホッケーなど定番のゲームの筐体が並んでいるのが見える。小さい頃から家族や友達と一緒にたくさん来ているから見慣れた光景だ。様々なゲームから発せられることでカオスになっている音も。ただ、お嫁さんの優奈と一緒に来るのは初めてだから、ちょっと新鮮で。
お昼ご飯を食べたイタリアンレストランと同様で、店内にいるお客さんは制服姿の人が多い。平日のお昼過ぎだし、うちの高校みたいに定期試験を実施した学校が結構あるのかもしれない。
「どのゲームからやろうか? 優奈は何かある?」
「そうですね……クレーンゲームのあるところへ行きたいですね。一番やっていますし。どんな景品があるのか気になりますから」
「時々、新しい景品が出るもんな。クレーンゲームのところに行こう」
「はいっ」
俺達はクレーンゲームが並んでいるエリアに向かう。
クレーンゲームは定番であり、人気のゲームでもあるから非常に多くの数の筐体が並んでいる。ゲームの中にはお菓子やアニメグッズ、アクセサリー、日用品など様々な景品が置かれている。今もプレイしているお客さんが何人もいて。
「あっ……」
優奈は声を漏らすと、その場で立ち止まる。
「可愛い……」
甘い声で呟きながら視線を向ける先には……クレーンゲームの中に猫のぬいぐるみがいくつも置かれている。白猫、黒猫、三毛猫など柄は様々だ。猫は寝そべったデザインをしており、優奈が抱きしめたらちょうど良さそうな大きさだ。
「猫ちゃんのぬいぐるみ、可愛いです……」
うっとりとした様子で、優奈は猫のぬいぐるみを見つめている。ぬいぐるみも可愛いけど、優奈はもっと可愛いと思う。今の優奈を見ていると、このぬいぐるみをゲットして優奈にプレゼントしたくなる。
「優奈、このぬいぐるみ……ほしいか?」
「はいっ、ほしいです! 特に三毛猫ちゃんのぬいぐるみが……」
「そうか。もしよければ、俺がゲットしようか?」
「いいんですか?」
ぱあっ、と明るい笑顔になって、優奈は俺のことを見てくる。その笑顔も可愛くてドキッとする。
「ああ。昔から真央姉さんとか友達に頼まれることが多くて。500円分くらいプレイすれば、大抵のものは取れるようになったよ」
「それは凄いですね! 私も景品はゲットできることが多いですが、1000円以内でゲットできたらラッキーという感じで。難しくて諦めたこともあります」
「そうなんだ」
諦めた経験もあるから、俺がゲットしようかと言ったら、あんなに明るい笑顔になったんだな。
「和真君。三毛猫のぬいぐるみを取ってもらえますか?」
「分かった。じゃあ、横に向いてうつぶせになっているこの三毛猫のぬいぐるみにしよう。横に向いているものが取りやすいんだ」
「はいっ」
よし、可愛いお嫁さんのために頑張るぞ。できればかっこいいとも思われたい。
クレーンゲームに100円を投入し、右方向、奥行きの順番でアームを動かしていく。
「ここかな」
奥行きのボタンを離すと、アームが開き、三毛猫のぬいぐるみに向かってゆっくりと降下していく。
降りきると、アームは閉まり、ぬいぐるみの下にアームの爪が入り込んでいく。その瞬間、優奈は「わぁっ」と可愛らしい声を出した。
アームがゆっくりとした速度で上がる。それに伴い、ぬいぐるみも持ち上がる……かと思いきや、アームの位置が手前過ぎたため、猫のお腹が見えただけで、アームから落ちてしまった。アームは何も持たないままスタート地点に戻る。
「手前過ぎたか……」
「お腹が見えましたね。ただ、一度目で目的のものが持ち上がるなんて凄いですよ! 私なんて、一度目は狙ったものにアームが触れないことが普通ですから」
「そうなんだ」
今の言葉を聞くと、ぬいぐるみは取れなかったけど、あまりショックはないな。
「幸い、ぬいぐるみはあまり動かずに済んでる。だから、今度は奥行きの位置を調整しよう」
「頑張ってください!」
優奈は両手を拳にして応援してくれる。凄く可愛いなぁ。より頑張らないと。
クレーンゲームに100円を投入し、2回目の挑戦を始める。
右方向、奥行きの順番で、ボタンを押してアームを下ろす位置を決めていく。1回目は手前過ぎたから、今回は奥にアームを動かすボタンを少し長めに押す。
「ここだ」
そう呟き、奥に動かすボタンを離した。さあ、どうだ。
アームは開き、ゆっくりと降りていく。
1回目と同じく、アームは三毛猫のぬいぐるみに当たり、爪がぬいぐるみの下に入り込む。さあ、今回は持ち上がるか?
「あっ」
アームが上がり始めた瞬間、ぬいぐるみは俺達に背中を見せた状態になり、すぐに元の状態になってしまった。虚しくも、アームは何も掴まずにスタート地点に戻っていった。
「今度は背中が見えましたね」
「ああ。どうやら、奥過ぎたみたいだ。調整を誤ったな……」
「感覚を掴めたかと思ったら、アームを下ろす位置を間違えたっていうこともありますよね」
「あるよな……」
「ただ、今回もぬいぐるみがちょっと持ち上がりましたから、和真君は凄いですよ」
「そう言ってくれて嬉しいよ。ありがとう」
優奈の頭を優しく撫でると、優奈は柔和な笑顔を見せてくれる。2連続で失敗しているのに、優奈は褒めてくれて。優奈は褒め上手だ。
「……よし。手前過ぎ、奥過ぎってボタンの押す長さが分かったから、次でぬいぐるみを取るぞ」
「頑張ってください!」
再び、優奈は両手を拳にして応援してくれる。優奈に何度も応援されるのはいいものだ。
100円を入れて、3回目の挑戦。
まずは右方向に動かすボタンを押していく。これについてはバッチリだったので、これまでと同じくらいの時間ボタンを押した。
続いて、奥へ動かすボタンを押していく、1回目は手前過ぎ、2回目は奥過ぎだったので、その中間あたりで――。
「よし、今度こそ」
そう呟きながら、アームを奥へ動かすボタンを離した。
アームが開き、ゆっくりと降下していく。
やがて、三毛猫のぬいぐるみに当たる。その直後、アームの爪はぬいぐるみの下に入り込む。ここまで、2回目までと一緒だ。さあ、ここからどうなるか。三度目の正直という言葉通りの展開になってほしい。
アームがゆっくり上がると、アームに掴まれた三毛猫のぬいぐるみも上がっていく。
「おっ!」
「上がりましたね!」
優奈はちょっと興奮した様子で言う。可愛いな。
奥行きに動かす調整が上手くいったな。あとは取り出し口の上までぬいぐるみが運ばれることを祈るのみだ。
「頑張って……!」
優奈は手の指を組んだ状態で、アームを見守っている。祈るほどに猫のぬいぐるみがほしいのだろう。あと、こんなにもアームに祈りを捧げる人を見るのは初めてだ。
猫のぬいぐるみはアームに掴まれた状態で、スタート地点に向かってゆっくりと動いている。
そのまま、ぬいぐるみは特に落ちる気配もなくスタート地点に帰ってきた。アームが開かれ、三毛猫のぬいぐるみは取り出し口へと落ちていった!
「よしっ!」
「やりましたね!」
とても嬉しそうに言うと、優奈は俺に向かって両手を掲げてくる。ハイタッチしようってことかな。俺は両手を掲げて、
――パンッ!
と、音が鳴るくらいに、優奈としっかりハイタッチした。
俺は取り出し口から三毛猫のぬいぐるみを取り出し、
「はい、どうぞ」
「ありがとうございますっ!」
優奈に手渡した。
俺から三毛猫のぬいぐるみを受け取ると、優奈は物凄く嬉しそうな様子で抱きしめる。そんな優奈を見て俺も凄く嬉しくなって。可愛い笑顔にキュンとなって。あと、優奈に抱きしめられている三毛猫が羨ましくも思えた。
「実際に抱きしめるとより可愛いですっ! 大切にしますね!」
「ああ。そうしてくれると、この三毛猫も喜ぶだろうな」
「ふふっ。……あっ、お金払いますね。3回プレイしましたから300円ですね」
「気持ちだけで十分さ。その三毛猫は俺からのプレゼントだ。日々の感謝と課題や定期試験前の勉強会で教えてくれたお礼に。……どうかな?」
300円では到底釣り合わないくらいに優奈には感謝しているけど。せめてものお礼に。
「分かりました。では、和真君からのプレゼントとして受け取りますね。ありがとうございます!」
「いえいえ」
「それにしても、300円でゲットできるなんて凄いですっ」
「そう言ってもらえて嬉しいな」
「ふふっ。あと、アームを操作しているときの真剣な和真君がかっこよくて、素敵でした」
優奈はそう言うと、持ち前の優しい笑顔で俺を見つめてくる。優奈の笑顔は頬を中心にほんのりと赤らんでいて。ぬいぐるみを抱きしめているのもあって本当に可愛い。
優奈にかっこいいと思われたい気持ちもあってクレーンゲームに臨んだから、かっこいいとか素敵だと言われたのがとても嬉しい。その気持ちを胸に抱きながら優奈を見るとキュンとなって。体が熱くなっていく。
「優奈にかっこいいって言ってもらえて嬉しいよ」
「ふふっ」
「そのぬいぐるみも、ぬいぐるみを抱きしめる優奈も可愛いから、スマホで写真を撮ってもいいか?」
「はいっ。1枚でもいいので送ってもらえたら嬉しいです。これは和真君がゲットしてくれて、プレゼントしてくれたぬいぐるみですから。その記念に」
「分かった」
その後、俺はスマホで三毛猫のぬいぐるみを抱きしめる優奈の写真を何枚も撮った。ぬいぐるみはもちろん、優奈もとても可愛くて。
撮った写真の中でも特に可愛いと思う写真2枚を、LIMEで優奈に送った。
優奈はさっそく確認すると、ニッコリと笑って。そのことでまた嬉しくなるのであった。
このレストランは、リーズナブルで美味しいことから学生にも人気がある。だから、うちの高校の含め制服姿のお客さんがかなりいて。だから、イタリアンがメインの学生食堂のような雰囲気だ。今は12時半くらいとお昼時だけど、運良く待たずにテーブル席に座ることができた。
俺はもちろんのこと、優奈もこのレストランに来たことが何度もあるという。今日みたいにお昼に学校が終わった日や休日に、井上さんや佐伯さん、陽葵ちゃん達と一緒に来るとのこと。
俺は明太子パスタ、優奈はカルボナーラを注文。
明太子パスタはさっぱりとした味わいで美味しく、優奈と一口交換してもらったカルボナーラもミルクとチーズが濃厚で美味しかった。
優奈が美味しそうに食べていたし、一口交換のときには優奈と食べさせ合ったので、とても満足できたお昼ご飯になった。
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「カルボナーラも明太子パスタも美味しかったですね!」
「どっちも美味しかったな。美味しいから、あのレストランに行くとスパゲティを頼むことが多いんだ」
「私もスパゲティを頼むことが多いですね。美味しいですし、スパゲティが好きですから。うちでもスパゲティ料理を増やしましょうか」
「そうだな」
一度、優奈の作ったナポリタンを食べたことがあるけど、とても美味しかったな。
高野駅の構内を通り、俺達は駅の南口に行く。
「南側に来たし、ゲームセンターはもうすぐだよ」
「はい」
「そういえば、優奈は普段、ゲームセンターやカクイとかのゲームコーナーには行くのか?」
「たまに、陽葵や友達と一緒に行きます。高野にあるゲームセンターも、萌音ちゃんや千尋ちゃん達と一緒に行ったことがありますね」
「そうなんだ。じゃあ、これから行くゲームセンターも知っているところかもな。優奈ってゲームセンターに行くと、どんなゲームで遊ぶんだ?」
「クレーンゲームが一番好きで、よく遊びますね。ぬいぐるみとかお菓子とかが取れますから」
「色々な景品があるよな」
優奈が言ったぬいぐるみやお菓子だけでなく、おもちゃやフィギュア、バッグとかマグカップといった日用品など多岐に渡る。
「千尋ちゃんが一緒だと、エアホッケーやダンスゲームもやりますね。千尋ちゃんはそういったゲームが好きなので」
「そうなんだ」
佐伯さん……バスケ部に入っているだけあって、体を動かすタイプのゲームが好きなんだな。そういったゲームを楽しそうにしている佐伯さんの姿が容易に思い浮かぶ。かなり強そうなイメージだ。
「和真君はどんなゲームをやりますか?」
「俺もクレーンゲームは結構やるよ。好きなお菓子の大袋とか、好きなキャラのグッズとか取るよ」
「そうなんですね」
「友達とか真央姉さんと行くときはエアホッケーとか、太鼓を叩くリズムゲームも結構やるな」
「太鼓のゲームも面白いですよね。特に好きな曲でやると」
「面白いよな」
好きな曲のリズムに乗せて太鼓を叩いたり、高得点を出したりするのが気持ちいいんだよな。
南口から近いところにあるため、優奈と話しているとすぐにゲームセンターの前まで到着した。
「ここだよ。優奈はこのゲームセンターには来たことある?」
「あります。萌音ちゃんや千尋ちゃんなどと一緒に来たのはここです」
「そっか。ここは駅から近いし、大きいもんな。入ろうか」
「はいっ」
俺達はゲームセンターの中に入る。
店内に入ると、太鼓のゲームやクレーンゲーム、エアホッケーなど定番のゲームの筐体が並んでいるのが見える。小さい頃から家族や友達と一緒にたくさん来ているから見慣れた光景だ。様々なゲームから発せられることでカオスになっている音も。ただ、お嫁さんの優奈と一緒に来るのは初めてだから、ちょっと新鮮で。
お昼ご飯を食べたイタリアンレストランと同様で、店内にいるお客さんは制服姿の人が多い。平日のお昼過ぎだし、うちの高校みたいに定期試験を実施した学校が結構あるのかもしれない。
「どのゲームからやろうか? 優奈は何かある?」
「そうですね……クレーンゲームのあるところへ行きたいですね。一番やっていますし。どんな景品があるのか気になりますから」
「時々、新しい景品が出るもんな。クレーンゲームのところに行こう」
「はいっ」
俺達はクレーンゲームが並んでいるエリアに向かう。
クレーンゲームは定番であり、人気のゲームでもあるから非常に多くの数の筐体が並んでいる。ゲームの中にはお菓子やアニメグッズ、アクセサリー、日用品など様々な景品が置かれている。今もプレイしているお客さんが何人もいて。
「あっ……」
優奈は声を漏らすと、その場で立ち止まる。
「可愛い……」
甘い声で呟きながら視線を向ける先には……クレーンゲームの中に猫のぬいぐるみがいくつも置かれている。白猫、黒猫、三毛猫など柄は様々だ。猫は寝そべったデザインをしており、優奈が抱きしめたらちょうど良さそうな大きさだ。
「猫ちゃんのぬいぐるみ、可愛いです……」
うっとりとした様子で、優奈は猫のぬいぐるみを見つめている。ぬいぐるみも可愛いけど、優奈はもっと可愛いと思う。今の優奈を見ていると、このぬいぐるみをゲットして優奈にプレゼントしたくなる。
「優奈、このぬいぐるみ……ほしいか?」
「はいっ、ほしいです! 特に三毛猫ちゃんのぬいぐるみが……」
「そうか。もしよければ、俺がゲットしようか?」
「いいんですか?」
ぱあっ、と明るい笑顔になって、優奈は俺のことを見てくる。その笑顔も可愛くてドキッとする。
「ああ。昔から真央姉さんとか友達に頼まれることが多くて。500円分くらいプレイすれば、大抵のものは取れるようになったよ」
「それは凄いですね! 私も景品はゲットできることが多いですが、1000円以内でゲットできたらラッキーという感じで。難しくて諦めたこともあります」
「そうなんだ」
諦めた経験もあるから、俺がゲットしようかと言ったら、あんなに明るい笑顔になったんだな。
「和真君。三毛猫のぬいぐるみを取ってもらえますか?」
「分かった。じゃあ、横に向いてうつぶせになっているこの三毛猫のぬいぐるみにしよう。横に向いているものが取りやすいんだ」
「はいっ」
よし、可愛いお嫁さんのために頑張るぞ。できればかっこいいとも思われたい。
クレーンゲームに100円を投入し、右方向、奥行きの順番でアームを動かしていく。
「ここかな」
奥行きのボタンを離すと、アームが開き、三毛猫のぬいぐるみに向かってゆっくりと降下していく。
降りきると、アームは閉まり、ぬいぐるみの下にアームの爪が入り込んでいく。その瞬間、優奈は「わぁっ」と可愛らしい声を出した。
アームがゆっくりとした速度で上がる。それに伴い、ぬいぐるみも持ち上がる……かと思いきや、アームの位置が手前過ぎたため、猫のお腹が見えただけで、アームから落ちてしまった。アームは何も持たないままスタート地点に戻る。
「手前過ぎたか……」
「お腹が見えましたね。ただ、一度目で目的のものが持ち上がるなんて凄いですよ! 私なんて、一度目は狙ったものにアームが触れないことが普通ですから」
「そうなんだ」
今の言葉を聞くと、ぬいぐるみは取れなかったけど、あまりショックはないな。
「幸い、ぬいぐるみはあまり動かずに済んでる。だから、今度は奥行きの位置を調整しよう」
「頑張ってください!」
優奈は両手を拳にして応援してくれる。凄く可愛いなぁ。より頑張らないと。
クレーンゲームに100円を投入し、2回目の挑戦を始める。
右方向、奥行きの順番で、ボタンを押してアームを下ろす位置を決めていく。1回目は手前過ぎたから、今回は奥にアームを動かすボタンを少し長めに押す。
「ここだ」
そう呟き、奥に動かすボタンを離した。さあ、どうだ。
アームは開き、ゆっくりと降りていく。
1回目と同じく、アームは三毛猫のぬいぐるみに当たり、爪がぬいぐるみの下に入り込む。さあ、今回は持ち上がるか?
「あっ」
アームが上がり始めた瞬間、ぬいぐるみは俺達に背中を見せた状態になり、すぐに元の状態になってしまった。虚しくも、アームは何も掴まずにスタート地点に戻っていった。
「今度は背中が見えましたね」
「ああ。どうやら、奥過ぎたみたいだ。調整を誤ったな……」
「感覚を掴めたかと思ったら、アームを下ろす位置を間違えたっていうこともありますよね」
「あるよな……」
「ただ、今回もぬいぐるみがちょっと持ち上がりましたから、和真君は凄いですよ」
「そう言ってくれて嬉しいよ。ありがとう」
優奈の頭を優しく撫でると、優奈は柔和な笑顔を見せてくれる。2連続で失敗しているのに、優奈は褒めてくれて。優奈は褒め上手だ。
「……よし。手前過ぎ、奥過ぎってボタンの押す長さが分かったから、次でぬいぐるみを取るぞ」
「頑張ってください!」
再び、優奈は両手を拳にして応援してくれる。優奈に何度も応援されるのはいいものだ。
100円を入れて、3回目の挑戦。
まずは右方向に動かすボタンを押していく。これについてはバッチリだったので、これまでと同じくらいの時間ボタンを押した。
続いて、奥へ動かすボタンを押していく、1回目は手前過ぎ、2回目は奥過ぎだったので、その中間あたりで――。
「よし、今度こそ」
そう呟きながら、アームを奥へ動かすボタンを離した。
アームが開き、ゆっくりと降下していく。
やがて、三毛猫のぬいぐるみに当たる。その直後、アームの爪はぬいぐるみの下に入り込む。ここまで、2回目までと一緒だ。さあ、ここからどうなるか。三度目の正直という言葉通りの展開になってほしい。
アームがゆっくり上がると、アームに掴まれた三毛猫のぬいぐるみも上がっていく。
「おっ!」
「上がりましたね!」
優奈はちょっと興奮した様子で言う。可愛いな。
奥行きに動かす調整が上手くいったな。あとは取り出し口の上までぬいぐるみが運ばれることを祈るのみだ。
「頑張って……!」
優奈は手の指を組んだ状態で、アームを見守っている。祈るほどに猫のぬいぐるみがほしいのだろう。あと、こんなにもアームに祈りを捧げる人を見るのは初めてだ。
猫のぬいぐるみはアームに掴まれた状態で、スタート地点に向かってゆっくりと動いている。
そのまま、ぬいぐるみは特に落ちる気配もなくスタート地点に帰ってきた。アームが開かれ、三毛猫のぬいぐるみは取り出し口へと落ちていった!
「よしっ!」
「やりましたね!」
とても嬉しそうに言うと、優奈は俺に向かって両手を掲げてくる。ハイタッチしようってことかな。俺は両手を掲げて、
――パンッ!
と、音が鳴るくらいに、優奈としっかりハイタッチした。
俺は取り出し口から三毛猫のぬいぐるみを取り出し、
「はい、どうぞ」
「ありがとうございますっ!」
優奈に手渡した。
俺から三毛猫のぬいぐるみを受け取ると、優奈は物凄く嬉しそうな様子で抱きしめる。そんな優奈を見て俺も凄く嬉しくなって。可愛い笑顔にキュンとなって。あと、優奈に抱きしめられている三毛猫が羨ましくも思えた。
「実際に抱きしめるとより可愛いですっ! 大切にしますね!」
「ああ。そうしてくれると、この三毛猫も喜ぶだろうな」
「ふふっ。……あっ、お金払いますね。3回プレイしましたから300円ですね」
「気持ちだけで十分さ。その三毛猫は俺からのプレゼントだ。日々の感謝と課題や定期試験前の勉強会で教えてくれたお礼に。……どうかな?」
300円では到底釣り合わないくらいに優奈には感謝しているけど。せめてものお礼に。
「分かりました。では、和真君からのプレゼントとして受け取りますね。ありがとうございます!」
「いえいえ」
「それにしても、300円でゲットできるなんて凄いですっ」
「そう言ってもらえて嬉しいな」
「ふふっ。あと、アームを操作しているときの真剣な和真君がかっこよくて、素敵でした」
優奈はそう言うと、持ち前の優しい笑顔で俺を見つめてくる。優奈の笑顔は頬を中心にほんのりと赤らんでいて。ぬいぐるみを抱きしめているのもあって本当に可愛い。
優奈にかっこいいと思われたい気持ちもあってクレーンゲームに臨んだから、かっこいいとか素敵だと言われたのがとても嬉しい。その気持ちを胸に抱きながら優奈を見るとキュンとなって。体が熱くなっていく。
「優奈にかっこいいって言ってもらえて嬉しいよ」
「ふふっ」
「そのぬいぐるみも、ぬいぐるみを抱きしめる優奈も可愛いから、スマホで写真を撮ってもいいか?」
「はいっ。1枚でもいいので送ってもらえたら嬉しいです。これは和真君がゲットしてくれて、プレゼントしてくれたぬいぐるみですから。その記念に」
「分かった」
その後、俺はスマホで三毛猫のぬいぐるみを抱きしめる優奈の写真を何枚も撮った。ぬいぐるみはもちろん、優奈もとても可愛くて。
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※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
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