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本編-ARIA-
第90話『自吐く-前編-』
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――氷室を逮捕してほしいと頼んだ。
――父親はそんな自分の頼みを聞いてくれた。
つまり、真犯人は柚葉さんで協力者は父親の佐相警視か。ただ、それだけを聞いて、この事件を解決したとは到底言えるはずもない。
「柚葉さん。近くの公園に行って、事件のことについてゆっくりと話をしたい。大丈夫だろうか?」
「……もちろんです。あと、朝比奈さん。嫌なことをしてごめんなさい……」
どうやら、柚葉さんは嘘を信じ込んで美来さんをいじめてしまったことに相当堪えているようだ。その心があるだけ、まだいいのかもしれない。
すると、美来さんは真剣な表情をして柚葉さんのことを見て、
「佐相さん。あなたの言葉を借りるなら……今、あなたが今の状況に置かれているのは当然の報いなのかもね。私をいじめたことの罰なんだと思うよ。1回謝れば済む話じゃないのはあなたも分かっているはずだよね。許すつもりは全くない。学校からの処分や法の裁きをしっかり受けて。そして、一生をかけて償いなさい」
厳しい言葉を柚葉さんにぶつける。おそらく、自分がいじめられたことだけでなく、氷室を逮捕させたことも含んでいるのだろう。
「さあ、公園に行きましょう」
「……そうだな」
重い空気が漂っているが、それも仕方ないことか。あとで、3人に好きな飲み物を1つずつ買ってあげるとしよう。
柚葉さんの家から歩いて2、3分の所に大きい公園があり、そこには木製テーブルと長いベンチがあった。私、美来さん、浅野さんの3人で並んで座り、テーブルを挟んだ向かい側のベンチに柚葉さんと詩織さんが座る。
「もう一度確認するが、氷室を恨んだことを理由に、父親の佐相警視に氷室が逮捕されるように頼んだのだな」
「……はい。朝比奈さんのことも、う、恨んでいたので……被害者は朝比奈さんということで逮捕してほしいと言いました。そうすれば、朝比奈さんや氷室さんにより精神的なダメージを与えられると思ったので」
「なるほど。……あと、美来さん。落ち着かないなら、詩織さんや浅野さんと一緒にちょっと離れたところに行ってもいいが。あそこに自動販売機があるから、好きな飲み物を買って気分転換でも……」
「いえ、大丈夫ですから。このまま話を続けてください」
美来さん……柚葉さんのことを殺すと言わんばかりの表情をしながら睨んでいる。そうなってしまうのは当たり前か。浅野さんが美来さんの手をぎゅっと掴んでいる。
逮捕されるだけでも氷室にショックを与えることは可能だと思うが、被害者が美来さんというところが重要なのだろう。しかも、罪状はわいせつ行為による児童福祉法違反。そうすることで美来さんにもダメージを与え、氷室は世間から強いバッシングを受けることになる。最近は性的なことの犯罪に対する世間の目はとても厳しいからな。
「佐相警視に頼んだのはいつのことだろうか?」
「月曜日の夜です。先週の木曜日に氷室さんと朝比奈さんのお父さんと学校で会いました。ですが、金曜日の朝にはテレビで朝比奈さんのいじめが報道されて、ホームページにもいじめのことが掲載してあって。学校に行ったらクラスでいじめに遭いました。詩織ちゃんだけが守ってくれましたけど……」
「報道では、当事者が未成年なのもあって、いじめられた生徒もいじめた生徒も名前は出ない。しかし、1年1組の生徒は事情が分かっている。そして、美来さんをいじめたという口実で、次なるいじめのターゲットが君になった」
「……何度も言われました。お前のせいで朝比奈さんはいなくなったんだって」
「……そうか」
実際には昨日、氷室が逮捕されたことが影響して、再び美来さんのことを悪く言う生徒もいたそうだが。都合良く人を悪く言う生徒が多いようだ。1年1組には。
「金曜日はずっと嫌なことを言われて。それがとても辛くて。こうなったのは氷室さんと朝比奈さんのせいだと思い続けることで1日乗り越えて。土曜日と日曜日、家でゆっくりすれば少しは心が軽くなるかなと思ったら、月曜日が近づくにつれて学校に行きたくない気持ちが強くなって。今週の月曜日からは学校を休んでいます」
「そして、休み始めた月曜日に、恨む相手である氷室と美来さんに復讐するため、氷室の逮捕計画を佐相警視に伝えたのか」
父親がある程度の権力を持っている警察官だからこそ思いつく考えであり、実行できたのだな。
「計画を話したときの佐相警視はどんな感じだっただろうか?」
「普段はお父さんとあまり話さないので、あたしと話せることにとても喜んでいた感じでした。しかし、話す内容が内容なので……話し終わったときには凄く怒っていました。何が何でも氷室智也を逮捕して、地に落としてやると言っていました」
以前、娘がいるかどうかを確かめるため、プレゼントについて嘘の相談をしたときに娘のことを溺愛しているように思えたが、やはりそうだったのか。それなら、昨日の夕方に私達に対してあのような態度を取ったことも納得である。
「我々の捜査により、火曜日の昼前に佐相警視が美来さんの受診した病院に診断書を発行してもらったことを本人も認めている。それについては何か言っていたか?」
「……火曜日の夜、仕事から帰ってきたお父さんが明日、氷室さんを逮捕できると嬉しそうでした。逮捕状でしたっけ。それを発行することが決まったって」
「なるほど……」
虚偽の逮捕でも、佐相警視は氷室が法を犯したと捉えられるような証拠が必要だと思ったのだろう。いじめについての報道の中で美来さんが体にケガを負っていると言っていたので、どこかの病院で既に受診していると考え、美来さんが受診した病院を探し、診断書を発行してもらったという流れだと思われる。
「水曜日になって、昼前にお父さんから氷室さんを逮捕したとメールが届きました。それでテレビを点けたら、ニュースで氷室さんが逮捕されたことを確認しました。児童に対する強制わいせつ行為という理由で」
「そのときの佐相警視の様子はどうだっただろう」
「仕事から帰ってきたお父さんは、ちゃんと羽賀さんに捜査を任せられたから、氷室さんが起訴されるのは時間の問題だと言っていました。羽賀さんは優秀だから大丈夫だと。起訴されれば計画は完遂すると言っていました」
なるほど。氷室が逮捕された事件について任されたとき、児童わいせつ事件があったことさえも私の耳に入っていなかった。担当するようになってからずっと、私に担当させるように指示した人物は誰なのかと考えていたが、やはり佐相警視だったのか。ただ、今の柚葉さんの言葉……何か引っかかる。
「でも、羽賀さんに任せたのが何よりの間違いでしたね! 氷室さんの親友であり、氷室さんが無実であると誰よりも信じていましたから!」
「きっと、お父さんもそこまでは予想できなかったと思います」
「……ちょっと待ってくれ」
やはり、水曜日の佐相警視の様子を話してくれたときの柚葉さんの言葉……1カ所、違和感がある。
「……佐相警視は、私にちゃんと捜査を任せられたと言っていたのか?」
「ええ、そうですけど」
「それだと、まるで端から私に捜査をさせるつもりだったように思えるのだが」
この事件の担当を任された水曜日には、私は特に事件の捜査はしていなかったが。
「ええ。だって、そうしろって言われましたから」
柚葉さんの言葉に一瞬、耳を疑った。
「そうしろと言われた?」
まさか、前提から間違っていたというのか? 私はずっと真犯人は柚葉さんで協力者は佐相警視だと思っていたが。
「柚葉さん。氷室の逮捕の計画を考えたのは君ではないのか? 君の考えに佐相警視が助言したというわけでもないのか?」
「はい、そうですけど」
「では、私達が証拠として受け取っている2枚の写真や、美来さんの診断書というのも」
「診断書はお父さんが火曜日に発行してもらったと言っていました。でも、2枚の写真は私がSNSで受け取ったものですよ?」
「それはこれらの写真だろうか?」
スーツの内側のポケットから、例の2枚の写真を取り出してテーブルの上に置く。
「はい、その2枚です。写真のデータは、私のパソコンからお父さんのUSBメモリに保存しました」
「SNSと言っていたが、我々の捜査ではその写真のデータはネット上にはないという結果になった」
「ちょっと私から質問してもいいですか、羽賀さん」
「いいですよ、浅野さん」
「ありがとうございます。佐相さん。SNSはいくつかありますが、具体的にはどれを?」
SNSについてのことを訊きたいのか。私はあまり詳しくないので、浅野さんが訊いてくれるのはありがたい。ただ、今後のために勉強しなければならないな。
「Tubutterです。メッセージ機能で送られてきたんです」
「メッセージ機能、というのは何だろうか?」
「メールだと思っていただければいいと思います。転送機能はありませんけど。送信者と受信者しか見ることができません」
なるほど。特定の人物しか見ることのできない場所でやり取りをしているのであれば、捜査をしても写真のデータは見つからないわけだ。
「この2枚の写真を使えば、氷室さんと朝比奈さんの関係性が証明できる。おそらく、朝比奈さんは病院に行っていると思うから、受診した病院を探せば診断書も発行できるだろうって。診断書があれば、氷室さんが朝比奈さんに暴力を振ったと説明できる。これらの証拠があれば、仮に氷室さんの無実かもしれないと考える警察官が出てきても反論できなくなるだろうと。そういうメッセージが来たんです。この通りにやれば、必ず氷室智也と朝比奈美来に復讐できると」
「そうだったのか……」
この事件に関わっている人物がもう1人いるのか。
その人物は氷室のことも、美来さんの受けたいじめのことも、柚葉さんの現在の心境も、柚葉さんのご家族のことも。そして、私が警察官であることも知っている。その人物こそ、見えないところから柚葉さんと佐相警視のことを操った黒幕か。
――父親はそんな自分の頼みを聞いてくれた。
つまり、真犯人は柚葉さんで協力者は父親の佐相警視か。ただ、それだけを聞いて、この事件を解決したとは到底言えるはずもない。
「柚葉さん。近くの公園に行って、事件のことについてゆっくりと話をしたい。大丈夫だろうか?」
「……もちろんです。あと、朝比奈さん。嫌なことをしてごめんなさい……」
どうやら、柚葉さんは嘘を信じ込んで美来さんをいじめてしまったことに相当堪えているようだ。その心があるだけ、まだいいのかもしれない。
すると、美来さんは真剣な表情をして柚葉さんのことを見て、
「佐相さん。あなたの言葉を借りるなら……今、あなたが今の状況に置かれているのは当然の報いなのかもね。私をいじめたことの罰なんだと思うよ。1回謝れば済む話じゃないのはあなたも分かっているはずだよね。許すつもりは全くない。学校からの処分や法の裁きをしっかり受けて。そして、一生をかけて償いなさい」
厳しい言葉を柚葉さんにぶつける。おそらく、自分がいじめられたことだけでなく、氷室を逮捕させたことも含んでいるのだろう。
「さあ、公園に行きましょう」
「……そうだな」
重い空気が漂っているが、それも仕方ないことか。あとで、3人に好きな飲み物を1つずつ買ってあげるとしよう。
柚葉さんの家から歩いて2、3分の所に大きい公園があり、そこには木製テーブルと長いベンチがあった。私、美来さん、浅野さんの3人で並んで座り、テーブルを挟んだ向かい側のベンチに柚葉さんと詩織さんが座る。
「もう一度確認するが、氷室を恨んだことを理由に、父親の佐相警視に氷室が逮捕されるように頼んだのだな」
「……はい。朝比奈さんのことも、う、恨んでいたので……被害者は朝比奈さんということで逮捕してほしいと言いました。そうすれば、朝比奈さんや氷室さんにより精神的なダメージを与えられると思ったので」
「なるほど。……あと、美来さん。落ち着かないなら、詩織さんや浅野さんと一緒にちょっと離れたところに行ってもいいが。あそこに自動販売機があるから、好きな飲み物を買って気分転換でも……」
「いえ、大丈夫ですから。このまま話を続けてください」
美来さん……柚葉さんのことを殺すと言わんばかりの表情をしながら睨んでいる。そうなってしまうのは当たり前か。浅野さんが美来さんの手をぎゅっと掴んでいる。
逮捕されるだけでも氷室にショックを与えることは可能だと思うが、被害者が美来さんというところが重要なのだろう。しかも、罪状はわいせつ行為による児童福祉法違反。そうすることで美来さんにもダメージを与え、氷室は世間から強いバッシングを受けることになる。最近は性的なことの犯罪に対する世間の目はとても厳しいからな。
「佐相警視に頼んだのはいつのことだろうか?」
「月曜日の夜です。先週の木曜日に氷室さんと朝比奈さんのお父さんと学校で会いました。ですが、金曜日の朝にはテレビで朝比奈さんのいじめが報道されて、ホームページにもいじめのことが掲載してあって。学校に行ったらクラスでいじめに遭いました。詩織ちゃんだけが守ってくれましたけど……」
「報道では、当事者が未成年なのもあって、いじめられた生徒もいじめた生徒も名前は出ない。しかし、1年1組の生徒は事情が分かっている。そして、美来さんをいじめたという口実で、次なるいじめのターゲットが君になった」
「……何度も言われました。お前のせいで朝比奈さんはいなくなったんだって」
「……そうか」
実際には昨日、氷室が逮捕されたことが影響して、再び美来さんのことを悪く言う生徒もいたそうだが。都合良く人を悪く言う生徒が多いようだ。1年1組には。
「金曜日はずっと嫌なことを言われて。それがとても辛くて。こうなったのは氷室さんと朝比奈さんのせいだと思い続けることで1日乗り越えて。土曜日と日曜日、家でゆっくりすれば少しは心が軽くなるかなと思ったら、月曜日が近づくにつれて学校に行きたくない気持ちが強くなって。今週の月曜日からは学校を休んでいます」
「そして、休み始めた月曜日に、恨む相手である氷室と美来さんに復讐するため、氷室の逮捕計画を佐相警視に伝えたのか」
父親がある程度の権力を持っている警察官だからこそ思いつく考えであり、実行できたのだな。
「計画を話したときの佐相警視はどんな感じだっただろうか?」
「普段はお父さんとあまり話さないので、あたしと話せることにとても喜んでいた感じでした。しかし、話す内容が内容なので……話し終わったときには凄く怒っていました。何が何でも氷室智也を逮捕して、地に落としてやると言っていました」
以前、娘がいるかどうかを確かめるため、プレゼントについて嘘の相談をしたときに娘のことを溺愛しているように思えたが、やはりそうだったのか。それなら、昨日の夕方に私達に対してあのような態度を取ったことも納得である。
「我々の捜査により、火曜日の昼前に佐相警視が美来さんの受診した病院に診断書を発行してもらったことを本人も認めている。それについては何か言っていたか?」
「……火曜日の夜、仕事から帰ってきたお父さんが明日、氷室さんを逮捕できると嬉しそうでした。逮捕状でしたっけ。それを発行することが決まったって」
「なるほど……」
虚偽の逮捕でも、佐相警視は氷室が法を犯したと捉えられるような証拠が必要だと思ったのだろう。いじめについての報道の中で美来さんが体にケガを負っていると言っていたので、どこかの病院で既に受診していると考え、美来さんが受診した病院を探し、診断書を発行してもらったという流れだと思われる。
「水曜日になって、昼前にお父さんから氷室さんを逮捕したとメールが届きました。それでテレビを点けたら、ニュースで氷室さんが逮捕されたことを確認しました。児童に対する強制わいせつ行為という理由で」
「そのときの佐相警視の様子はどうだっただろう」
「仕事から帰ってきたお父さんは、ちゃんと羽賀さんに捜査を任せられたから、氷室さんが起訴されるのは時間の問題だと言っていました。羽賀さんは優秀だから大丈夫だと。起訴されれば計画は完遂すると言っていました」
なるほど。氷室が逮捕された事件について任されたとき、児童わいせつ事件があったことさえも私の耳に入っていなかった。担当するようになってからずっと、私に担当させるように指示した人物は誰なのかと考えていたが、やはり佐相警視だったのか。ただ、今の柚葉さんの言葉……何か引っかかる。
「でも、羽賀さんに任せたのが何よりの間違いでしたね! 氷室さんの親友であり、氷室さんが無実であると誰よりも信じていましたから!」
「きっと、お父さんもそこまでは予想できなかったと思います」
「……ちょっと待ってくれ」
やはり、水曜日の佐相警視の様子を話してくれたときの柚葉さんの言葉……1カ所、違和感がある。
「……佐相警視は、私にちゃんと捜査を任せられたと言っていたのか?」
「ええ、そうですけど」
「それだと、まるで端から私に捜査をさせるつもりだったように思えるのだが」
この事件の担当を任された水曜日には、私は特に事件の捜査はしていなかったが。
「ええ。だって、そうしろって言われましたから」
柚葉さんの言葉に一瞬、耳を疑った。
「そうしろと言われた?」
まさか、前提から間違っていたというのか? 私はずっと真犯人は柚葉さんで協力者は佐相警視だと思っていたが。
「柚葉さん。氷室の逮捕の計画を考えたのは君ではないのか? 君の考えに佐相警視が助言したというわけでもないのか?」
「はい、そうですけど」
「では、私達が証拠として受け取っている2枚の写真や、美来さんの診断書というのも」
「診断書はお父さんが火曜日に発行してもらったと言っていました。でも、2枚の写真は私がSNSで受け取ったものですよ?」
「それはこれらの写真だろうか?」
スーツの内側のポケットから、例の2枚の写真を取り出してテーブルの上に置く。
「はい、その2枚です。写真のデータは、私のパソコンからお父さんのUSBメモリに保存しました」
「SNSと言っていたが、我々の捜査ではその写真のデータはネット上にはないという結果になった」
「ちょっと私から質問してもいいですか、羽賀さん」
「いいですよ、浅野さん」
「ありがとうございます。佐相さん。SNSはいくつかありますが、具体的にはどれを?」
SNSについてのことを訊きたいのか。私はあまり詳しくないので、浅野さんが訊いてくれるのはありがたい。ただ、今後のために勉強しなければならないな。
「Tubutterです。メッセージ機能で送られてきたんです」
「メッセージ機能、というのは何だろうか?」
「メールだと思っていただければいいと思います。転送機能はありませんけど。送信者と受信者しか見ることができません」
なるほど。特定の人物しか見ることのできない場所でやり取りをしているのであれば、捜査をしても写真のデータは見つからないわけだ。
「この2枚の写真を使えば、氷室さんと朝比奈さんの関係性が証明できる。おそらく、朝比奈さんは病院に行っていると思うから、受診した病院を探せば診断書も発行できるだろうって。診断書があれば、氷室さんが朝比奈さんに暴力を振ったと説明できる。これらの証拠があれば、仮に氷室さんの無実かもしれないと考える警察官が出てきても反論できなくなるだろうと。そういうメッセージが来たんです。この通りにやれば、必ず氷室智也と朝比奈美来に復讐できると」
「そうだったのか……」
この事件に関わっている人物がもう1人いるのか。
その人物は氷室のことも、美来さんの受けたいじめのことも、柚葉さんの現在の心境も、柚葉さんのご家族のことも。そして、私が警察官であることも知っている。その人物こそ、見えないところから柚葉さんと佐相警視のことを操った黒幕か。
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