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特別編-浅野狂騒曲-
第4話『女子会-中編-』
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とても美味しいカレーを食べることができて満足です。
今は月村さんと一緒にビールを呑んでいるのですが、彼女はお酒が弱いからなのかちょっと眠そうです。
「いいなぁ、美来ちゃん。智也君と恋人として付き合うことになって、一緒に暮らすことができて……」
彼女は愚痴をこぼしています。氷室さんと付き合えなかったのは悔しいのですね。だからこそ、朝比奈さんのことが羨ましいと。おそらく、羽賀さんも同じことを思っていると……勝手に妄想しておきましょう。
「たまには、これまでと同じく3人で過ごそうと決めたじゃないですか」
「……ううっ、美来ちゃんは優しいなぁ。聖女のようだよぉ」
月村さん、酔うと泣き上戸になるのでしょうか。朝比奈さんのことを抱きしめながら感涙していますね。
「氷室さんには申し訳ありませんが、3人で過ごすにはもうちょっと広いお部屋の方が良さそうな気がします」
「好きな人と過ごすなら、このくらいの方がいいんですよ」
「……なるほど」
お熱いですね、まったく。
この部屋に3人で過ごすとなると、寝るときは……あぁ、氷室さんと朝比奈さんがベッドで一緒に寝て、月村さんがふとんを敷いて1人で眠るという感じでしょうか。ベッドとふとんが逆の可能性もありますけど。
氷室さんと朝比奈さんが付き合い始めたのに、月村さんがこの部屋で寝泊まりをすると言うことは相当仲が良いのですね。そんな関係に羽賀さんが羨ましがっていると……勝手に妄想しておきましょう。
「美来ちゃん。何だか眠くなってきちゃった。でも、お家に帰りたくないの。もっと智也君の家にいたいよ……」
「そうですか。有紗さん、とりあえずちょっと寝ましょうか。私が起こしますので安心して眠ってください」
「うん……」
月村さんはベッドで横になります。すると、程なくして寝息が聞こえ始めました。そんなに眠気に襲われていたのでしょうか。それとも、ベッドがとても気持ちがいいのか。
「智也、くん……」
えへへっ、と月村さんは楽しそうに笑っています。どうやら、夢の中で氷室さんと楽しく過ごしているのでしょう。しかし、今の笑い方を見た限りでは、月村さんも十分にこちらの世界でやっていけそうな素質があると分かります。
「月村さん、酔うと眠くなってしまうタイプなんですね」
「ええ。初めてお会いしたのは、智也さんと外で2人きりで呑んだときでした。有紗さんの家の最寄り駅になっても眠っていたままだったので、優しい智也さんは彼女のことをここに連れてきたんですよ」
「なるほど……」
ですから、お酒で酔った月村さんを目の前にしても落ち着いて対処できたと。きっと、初めて会ったときも、月村さんはこうしてベッドで気持ち良さそうに眠っていたんですね。
「有紗さんがここに来てから1ヶ月くらいですが、色々なことがありました。いじめがあって、智也さんが逮捕されて……智也さんと付き合うようになって」
「……激動の1ヶ月でしたね」
その話は羽賀さんから、氷室さんの事件の捜査のときに聞いていましたけどね。
「しかし、10年ぶりに再会した女の子だとはいえ、いじめが解決するまで一緒にいてくれて、いざというときには学校に乗り込むなんて氷室さんはかなりの漢ですね」
一見、羽賀さんが攻めで氷室さんが受けというイメージを持ちますけど、実際には氷室さんの方が攻めなんですか! 何というギャップ萌え!
「智也さんは何度も私のことを助けてくれました。その度に智也さんのことが好きになっています。いじめの事実を隠匿しようとした担任に、強い口調で立ち向かい、担任を黙らせたときにはキュンとしてしまいました!」
「確かに、氷室さんって見た目に似合わず堂々としていますよね。拘留中も、佐相警視と渡り歩いていましたし。あのときは羽賀さんが側にいたからかもしれませんが」
「そうだったんですか。羽賀さんは常に落ち着いていますし、そんな親友が近くにいるのは心強いのかもしれません」
「羽賀さんはとてもしっかりされている方ですよ。2歳年下でも、自分の上司であることにも納得がいきます」
頭が良くて、仕事もできるのが大きな理由ですが、それ故に羽賀さんが自分よりも年上の方のように思えてしまうのです。だから、彼が私の上司であることにもすんなりと受け入れることができたのです。同期の子からは、年下の人が上司だとやりにくくないかと言われますけど、全くそう思いません。
「羽賀さん、かっこいい方ですが、彼女さんはいないらしい……ですよ?」
朝比奈さんは何か感付いたように、ニヤリと笑みを浮かべて私のことをチラチラと見てきます。
「そんな風に言いますけど、私は羽賀さんのことは何も想っていませんよ」
BLという意味では気にしていますが。だから、今……氷室さんや岡村さんとどんなことになっているのか凄く気になってしまうんですよ!
「それなら、どうして羽賀さんと呑めないことにがっかりしていたんですか?」
「えっ……と、それはですね……」
月村さんのことをこちら側に引きずり込もうとは思いますが、16歳の女の子もこちら側に引きずり込んでしまっていいのでしょうか。下手に話したら、朝比奈さんと氷室さんの関係に変化が生じてしまうような。
「……1つ質問です。朝比奈さん、男性同士の友情モノの漫画やアニメなどに興味はありますか?」
「はい! 男性キャラがメインのアニメは好きですよ! 水泳とか、バレーボールとか、アイドルとか!」
朝比奈さん、ウキウキとした様子で話してくれますね。最近の女子高生はアニメも大好きな子がいっぱいいるのでしょうかね。しかし、これは脈アリです。引きずり込んでみましょうか。
「じゃあ……そういった作品を見ていると、たまにこのキャラクターとこのキャラクターが付き合ったらどうなるか、と妄想したことはありますか!」
両肩を掴んで朝比奈さんにそう訊きますが……朝比奈さんは目を見開いています。なかなか答えてくれませんね。直球で訊いたのがまずかったのでしょうか。
「そ、それは……異性での話ですか? それとも、男性同士ですか?」
「……だ、男性同士でございますが……」
「なるほど……」
この反応……どうなのでしょう? 引かれてしまったでしょうか?
「……そういう考えもありですね。私はしたことがありませんが……」
「そ、そうですか……」
優しい笑顔でそう言ってくれるのは嬉しいですね。ただ、その笑顔が素敵すぎて逆に本心が読めません。朝比奈さんに対しては様子見ということにしておきましょう。
「……世の中には色々な方がいます。智也さんのことが好きな人もいれば、男性同士の恋愛が好きな人だっています。好きなことを好きだと言えることは素敵ですが、なかなか言えない人もいますよね。私はそれでいいと思いますよ」
「朝比奈さん……」
完全に私がBL好きだと知られてしまいましたね。というか、朝比奈さん……あなたは天使ですか。いい子すぎて彼女に後光が差しているように思えます。
「……すみません。私はいけないことをしていたのかもしれません」
今の朝比奈さんを見て、謝らずにはいられませんでした。何と言いますか……これまでのことを思い出すと物凄く申し訳ない気持ちになって。
気付けば、すっかりと酔いが醒めていたのでした。
今は月村さんと一緒にビールを呑んでいるのですが、彼女はお酒が弱いからなのかちょっと眠そうです。
「いいなぁ、美来ちゃん。智也君と恋人として付き合うことになって、一緒に暮らすことができて……」
彼女は愚痴をこぼしています。氷室さんと付き合えなかったのは悔しいのですね。だからこそ、朝比奈さんのことが羨ましいと。おそらく、羽賀さんも同じことを思っていると……勝手に妄想しておきましょう。
「たまには、これまでと同じく3人で過ごそうと決めたじゃないですか」
「……ううっ、美来ちゃんは優しいなぁ。聖女のようだよぉ」
月村さん、酔うと泣き上戸になるのでしょうか。朝比奈さんのことを抱きしめながら感涙していますね。
「氷室さんには申し訳ありませんが、3人で過ごすにはもうちょっと広いお部屋の方が良さそうな気がします」
「好きな人と過ごすなら、このくらいの方がいいんですよ」
「……なるほど」
お熱いですね、まったく。
この部屋に3人で過ごすとなると、寝るときは……あぁ、氷室さんと朝比奈さんがベッドで一緒に寝て、月村さんがふとんを敷いて1人で眠るという感じでしょうか。ベッドとふとんが逆の可能性もありますけど。
氷室さんと朝比奈さんが付き合い始めたのに、月村さんがこの部屋で寝泊まりをすると言うことは相当仲が良いのですね。そんな関係に羽賀さんが羨ましがっていると……勝手に妄想しておきましょう。
「美来ちゃん。何だか眠くなってきちゃった。でも、お家に帰りたくないの。もっと智也君の家にいたいよ……」
「そうですか。有紗さん、とりあえずちょっと寝ましょうか。私が起こしますので安心して眠ってください」
「うん……」
月村さんはベッドで横になります。すると、程なくして寝息が聞こえ始めました。そんなに眠気に襲われていたのでしょうか。それとも、ベッドがとても気持ちがいいのか。
「智也、くん……」
えへへっ、と月村さんは楽しそうに笑っています。どうやら、夢の中で氷室さんと楽しく過ごしているのでしょう。しかし、今の笑い方を見た限りでは、月村さんも十分にこちらの世界でやっていけそうな素質があると分かります。
「月村さん、酔うと眠くなってしまうタイプなんですね」
「ええ。初めてお会いしたのは、智也さんと外で2人きりで呑んだときでした。有紗さんの家の最寄り駅になっても眠っていたままだったので、優しい智也さんは彼女のことをここに連れてきたんですよ」
「なるほど……」
ですから、お酒で酔った月村さんを目の前にしても落ち着いて対処できたと。きっと、初めて会ったときも、月村さんはこうしてベッドで気持ち良さそうに眠っていたんですね。
「有紗さんがここに来てから1ヶ月くらいですが、色々なことがありました。いじめがあって、智也さんが逮捕されて……智也さんと付き合うようになって」
「……激動の1ヶ月でしたね」
その話は羽賀さんから、氷室さんの事件の捜査のときに聞いていましたけどね。
「しかし、10年ぶりに再会した女の子だとはいえ、いじめが解決するまで一緒にいてくれて、いざというときには学校に乗り込むなんて氷室さんはかなりの漢ですね」
一見、羽賀さんが攻めで氷室さんが受けというイメージを持ちますけど、実際には氷室さんの方が攻めなんですか! 何というギャップ萌え!
「智也さんは何度も私のことを助けてくれました。その度に智也さんのことが好きになっています。いじめの事実を隠匿しようとした担任に、強い口調で立ち向かい、担任を黙らせたときにはキュンとしてしまいました!」
「確かに、氷室さんって見た目に似合わず堂々としていますよね。拘留中も、佐相警視と渡り歩いていましたし。あのときは羽賀さんが側にいたからかもしれませんが」
「そうだったんですか。羽賀さんは常に落ち着いていますし、そんな親友が近くにいるのは心強いのかもしれません」
「羽賀さんはとてもしっかりされている方ですよ。2歳年下でも、自分の上司であることにも納得がいきます」
頭が良くて、仕事もできるのが大きな理由ですが、それ故に羽賀さんが自分よりも年上の方のように思えてしまうのです。だから、彼が私の上司であることにもすんなりと受け入れることができたのです。同期の子からは、年下の人が上司だとやりにくくないかと言われますけど、全くそう思いません。
「羽賀さん、かっこいい方ですが、彼女さんはいないらしい……ですよ?」
朝比奈さんは何か感付いたように、ニヤリと笑みを浮かべて私のことをチラチラと見てきます。
「そんな風に言いますけど、私は羽賀さんのことは何も想っていませんよ」
BLという意味では気にしていますが。だから、今……氷室さんや岡村さんとどんなことになっているのか凄く気になってしまうんですよ!
「それなら、どうして羽賀さんと呑めないことにがっかりしていたんですか?」
「えっ……と、それはですね……」
月村さんのことをこちら側に引きずり込もうとは思いますが、16歳の女の子もこちら側に引きずり込んでしまっていいのでしょうか。下手に話したら、朝比奈さんと氷室さんの関係に変化が生じてしまうような。
「……1つ質問です。朝比奈さん、男性同士の友情モノの漫画やアニメなどに興味はありますか?」
「はい! 男性キャラがメインのアニメは好きですよ! 水泳とか、バレーボールとか、アイドルとか!」
朝比奈さん、ウキウキとした様子で話してくれますね。最近の女子高生はアニメも大好きな子がいっぱいいるのでしょうかね。しかし、これは脈アリです。引きずり込んでみましょうか。
「じゃあ……そういった作品を見ていると、たまにこのキャラクターとこのキャラクターが付き合ったらどうなるか、と妄想したことはありますか!」
両肩を掴んで朝比奈さんにそう訊きますが……朝比奈さんは目を見開いています。なかなか答えてくれませんね。直球で訊いたのがまずかったのでしょうか。
「そ、それは……異性での話ですか? それとも、男性同士ですか?」
「……だ、男性同士でございますが……」
「なるほど……」
この反応……どうなのでしょう? 引かれてしまったでしょうか?
「……そういう考えもありですね。私はしたことがありませんが……」
「そ、そうですか……」
優しい笑顔でそう言ってくれるのは嬉しいですね。ただ、その笑顔が素敵すぎて逆に本心が読めません。朝比奈さんに対しては様子見ということにしておきましょう。
「……世の中には色々な方がいます。智也さんのことが好きな人もいれば、男性同士の恋愛が好きな人だっています。好きなことを好きだと言えることは素敵ですが、なかなか言えない人もいますよね。私はそれでいいと思いますよ」
「朝比奈さん……」
完全に私がBL好きだと知られてしまいましたね。というか、朝比奈さん……あなたは天使ですか。いい子すぎて彼女に後光が差しているように思えます。
「……すみません。私はいけないことをしていたのかもしれません」
今の朝比奈さんを見て、謝らずにはいられませんでした。何と言いますか……これまでのことを思い出すと物凄く申し訳ない気持ちになって。
気付けば、すっかりと酔いが醒めていたのでした。
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