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特別編-浅野狂騒曲-
第3話『女子会-前編-』
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午後7時半過ぎ。
氷室さんのお宅の前までようやく着くことができました。お酒があるかどうか分からなかったので、ここの最寄り駅近くのコンビニで迷っていたら時間が掛かってしまいました。あまりお酒は強くないのでビールとサワーくらいですが。
――ピンポーン。
『はーい』
インターホンを鳴らすとすぐに家の中から、朝比奈さんの声が聞こえました。家主がいないのに、女性3人で女子会をしていいのでしょうか。まあ、朝比奈さんがいるのできっと問題ないでしょうね。
「お待たせしました」
「遅くなってしまいまし……た?」
玄関の扉が開くと、中から姿を現したのはメイド服姿の……朝比奈さんで合っているんですよね? 髪は金色ですし、顔も見覚えがあります。
「あの……失礼ですが、朝比奈美来さんで合っていますよね?」
「はい、合っていますよ。そういえば、浅野さんにはこのメイド服姿で会ったことはありませんでしたね」
「よく似合っていますよ」
「ありがとうございます」
ふふっ、と朝比奈さんは上品に笑います。気品のある本物のメイドさんのようです。
まさか、こんなところでメイド服姿の女子高生を見られるなんて。てっきり、秋葉原以外ではそうそうお目にかかれないものだと思っていました。
「失礼ですが、そのメイド服は……何かのコスプレですか?」
「いえ、そういうものではありません。母の手作りです」
「お、お母様の手作りですか」
斜め上の返答でした。コスプレでもなければ、一般で売っているものでもないと。
「……失礼ですが、朝比奈さんの家って、どこかの家に仕えている家系なのですか?」
「いえいえ、そんなことはありません。これは母の趣味です。私の母、服を作るのが大好きなんです」
「なるほど……」
趣味が高じてメイド服まで作ってしまうなんて。見た感じ、細かいところまで丁寧に作られていますし。服作りがとても好きであることが伺えます。
「ということは、そのメイド服は好んで着ていると」
「はい。家にいるときはほとんど着ていますよ。智也さんもこのメイド服姿を気に入っていただいて……本当に嬉しいです」
きゃっ、と嬉しそうに話してくれます。メイド服姿のときに氷室さんと何かいいことでもあったのでしょうか。
「……って、思い出しました。氷室さんが拘留中、羽賀さんとここに家宅捜索をしたときに聞きました。朝比奈さんが家ではメイド服を着ていると」
「そうです。あと、羽賀さんは私のこの姿を見たことがありますからね」
氷室さんの無実も証明されたので、すっかりと忘れていました。
「さあ、中に入ってください。有紗さんもいますよ」
「お邪魔します」
氷室さんのお宅に入るのは2度目ですが、さすがに人がいると温かい雰囲気ですね。カレーのいい匂いがするからでしょうか。
「お酒とジュースとお菓子を買ってきました。ちょっと多めに買ったので、余ったら氷室さんと一緒にいただいてください」
「分かりました」
部屋に入ると、そこにはワイシャツ姿の月村さんがいました。ただ、今夜も暑くて、ここにいるのは女性だけなのか第2ボタンまで開けています。それもあってか、谷間の始まりが見えますね。いい眺めです。
「浅野さん、お疲れ様です」
「お疲れ様です、月村さん」
私は月村さんの側に座ります。
こうして月村さんのことを間近で見ると、彼女……とても綺麗で可愛らしい方です。氷室さんを巡り、朝比奈さんと争っていたのも納得できますね。
「どうしたんですか? 私の顔をじっと見て」
「いえ、何といいますか……月村さんのような女性がIT関連の企業で働いているのが意外だと思いまして」
「そうですか? まあ、あたしも文系出身ですから、地元や学生時代の友人から意外だと言われますけど。ただ、物作りは幼い頃から好きでしたから、この職業で良かったです。たまに残業続きで大変な時期もありますが」
「そうなんですね……」
何なんですか、その立派な理由。今の若い人は立派だなぁ! といっても、私と月村さんは1つしか年齢が違わないのですが。私が警察官になった理由なんて、警察組織が男の園だからという邪な理由なのに。
「浅野さんこそ意外な感じがします。浅野さんはどうして警察官になったんですか?」
「え、ええと……」
やっぱり訊きますよね! 私が警察官になった理由。どういう風に答えればいいのでしょうか。ええと、警察官になるときの面接試験ではどう答えた……のかな?
「……せ、正義のヒーローに憧れて?」
「へえ、素敵ですね!」
うわあ、月村さん……とても好意的な反応を示してくれています。
確かに、昔、特撮番組を見て正義のヒーローには憧れましたし、魅力的だとは思いましたよ。ただ、見た後にヒーローと助けられた青年の絡み合いを妄想して――。
「はあっ、はあっ……」
「浅野さん、大丈夫ですか? 顔が赤いですし、呼吸も荒いですけど……」
「大丈夫です。ちょっと興奮してしまっただけですので……」
やはり、あの2人は私にとって指折りのカップリングです。昔から幾度となく妄想しているのに、今もなおここまで興奮できてしまうなんて。はあっ、はあっ。
「仕事が終わって、3人で一緒にご飯を食べることが嬉しいんですか?」
「まあ……そんな感じですね」
「あたしも嬉しいですよ。智也君にフラれて、美来ちゃんと付き合うことになったのに、今もこうして智也君の部屋でご飯を食べることができますから。肝心の智也君がいないのはちょっと寂しいですけどね」
「氷室さんは羽賀さんや岡村さんと3人で呑んでいますもんね……」
当初はそっちの方に行く予定でしたので、ここにいて寂しい気持ちを抱いてしまう月村さんも納得できます。
「さあ、カレーライスですよ。今日はチキンカレーにしてみました」
カレーライスを持ってきてくれる金髪のメイドさん。これはいいですね。ただ、アパートの一室にメイド服を着た女子高生がいるのはシュールですが。
金髪のメイドさん……いえ、朝比奈さんがカレーライスを目の前に置いてくれます。いい匂いがして食欲が増してきますね。
「美味しそうね、美来ちゃん」
「確かに、美味しそうです」
「ありがとうございます。味見をしたので大丈夫だとは思います。辛みが足りなければ、このスパイスを使って辛さを調節してください」
あぁ、私が実家にいたとき、うちの父親がやっていたなぁ。母と私が甘めが好きで、それに合わせてカレーを作っていたこともあり、辛いカレーが好きな父親はいつもスパイスを足して食べていました。
「いただきまーす」
「いただきます」
さっそく、朝比奈さんの作ったチキンカレーを食べてみます。匂いからして美味しそうなのは間違いなさそうですが、実際にはどうなのでしょうか。
「……美味しいですね! 私にとってはちょうどいい辛さです」
「それは良かったです」
この美味しそうな匂いは嘘を付いていませんでしたね。
「やっぱり、美来ちゃんのカレーは美味しいよ。社食のカレーよりも美味しいんじゃないかな。これを食べたら社食のカレーは食べられなくなる」
「ふふっ、有紗さんいつもおかわりしますもんね」
いつもと言われるほど月村さんはここに来ているのですか。でも、着替え一式、ベッドの下の収納スペースに入っていましたもんね。
確かに、これは……とても美味しいカレーですね。月村さんがおかわりしてしまうのも分かる気がします。スプーンがどんどん進んでしまいますね。こういった美味しい料理を食べられる氷室さんは幸せだろうと思ったのでした。
氷室さんのお宅の前までようやく着くことができました。お酒があるかどうか分からなかったので、ここの最寄り駅近くのコンビニで迷っていたら時間が掛かってしまいました。あまりお酒は強くないのでビールとサワーくらいですが。
――ピンポーン。
『はーい』
インターホンを鳴らすとすぐに家の中から、朝比奈さんの声が聞こえました。家主がいないのに、女性3人で女子会をしていいのでしょうか。まあ、朝比奈さんがいるのできっと問題ないでしょうね。
「お待たせしました」
「遅くなってしまいまし……た?」
玄関の扉が開くと、中から姿を現したのはメイド服姿の……朝比奈さんで合っているんですよね? 髪は金色ですし、顔も見覚えがあります。
「あの……失礼ですが、朝比奈美来さんで合っていますよね?」
「はい、合っていますよ。そういえば、浅野さんにはこのメイド服姿で会ったことはありませんでしたね」
「よく似合っていますよ」
「ありがとうございます」
ふふっ、と朝比奈さんは上品に笑います。気品のある本物のメイドさんのようです。
まさか、こんなところでメイド服姿の女子高生を見られるなんて。てっきり、秋葉原以外ではそうそうお目にかかれないものだと思っていました。
「失礼ですが、そのメイド服は……何かのコスプレですか?」
「いえ、そういうものではありません。母の手作りです」
「お、お母様の手作りですか」
斜め上の返答でした。コスプレでもなければ、一般で売っているものでもないと。
「……失礼ですが、朝比奈さんの家って、どこかの家に仕えている家系なのですか?」
「いえいえ、そんなことはありません。これは母の趣味です。私の母、服を作るのが大好きなんです」
「なるほど……」
趣味が高じてメイド服まで作ってしまうなんて。見た感じ、細かいところまで丁寧に作られていますし。服作りがとても好きであることが伺えます。
「ということは、そのメイド服は好んで着ていると」
「はい。家にいるときはほとんど着ていますよ。智也さんもこのメイド服姿を気に入っていただいて……本当に嬉しいです」
きゃっ、と嬉しそうに話してくれます。メイド服姿のときに氷室さんと何かいいことでもあったのでしょうか。
「……って、思い出しました。氷室さんが拘留中、羽賀さんとここに家宅捜索をしたときに聞きました。朝比奈さんが家ではメイド服を着ていると」
「そうです。あと、羽賀さんは私のこの姿を見たことがありますからね」
氷室さんの無実も証明されたので、すっかりと忘れていました。
「さあ、中に入ってください。有紗さんもいますよ」
「お邪魔します」
氷室さんのお宅に入るのは2度目ですが、さすがに人がいると温かい雰囲気ですね。カレーのいい匂いがするからでしょうか。
「お酒とジュースとお菓子を買ってきました。ちょっと多めに買ったので、余ったら氷室さんと一緒にいただいてください」
「分かりました」
部屋に入ると、そこにはワイシャツ姿の月村さんがいました。ただ、今夜も暑くて、ここにいるのは女性だけなのか第2ボタンまで開けています。それもあってか、谷間の始まりが見えますね。いい眺めです。
「浅野さん、お疲れ様です」
「お疲れ様です、月村さん」
私は月村さんの側に座ります。
こうして月村さんのことを間近で見ると、彼女……とても綺麗で可愛らしい方です。氷室さんを巡り、朝比奈さんと争っていたのも納得できますね。
「どうしたんですか? 私の顔をじっと見て」
「いえ、何といいますか……月村さんのような女性がIT関連の企業で働いているのが意外だと思いまして」
「そうですか? まあ、あたしも文系出身ですから、地元や学生時代の友人から意外だと言われますけど。ただ、物作りは幼い頃から好きでしたから、この職業で良かったです。たまに残業続きで大変な時期もありますが」
「そうなんですね……」
何なんですか、その立派な理由。今の若い人は立派だなぁ! といっても、私と月村さんは1つしか年齢が違わないのですが。私が警察官になった理由なんて、警察組織が男の園だからという邪な理由なのに。
「浅野さんこそ意外な感じがします。浅野さんはどうして警察官になったんですか?」
「え、ええと……」
やっぱり訊きますよね! 私が警察官になった理由。どういう風に答えればいいのでしょうか。ええと、警察官になるときの面接試験ではどう答えた……のかな?
「……せ、正義のヒーローに憧れて?」
「へえ、素敵ですね!」
うわあ、月村さん……とても好意的な反応を示してくれています。
確かに、昔、特撮番組を見て正義のヒーローには憧れましたし、魅力的だとは思いましたよ。ただ、見た後にヒーローと助けられた青年の絡み合いを妄想して――。
「はあっ、はあっ……」
「浅野さん、大丈夫ですか? 顔が赤いですし、呼吸も荒いですけど……」
「大丈夫です。ちょっと興奮してしまっただけですので……」
やはり、あの2人は私にとって指折りのカップリングです。昔から幾度となく妄想しているのに、今もなおここまで興奮できてしまうなんて。はあっ、はあっ。
「仕事が終わって、3人で一緒にご飯を食べることが嬉しいんですか?」
「まあ……そんな感じですね」
「あたしも嬉しいですよ。智也君にフラれて、美来ちゃんと付き合うことになったのに、今もこうして智也君の部屋でご飯を食べることができますから。肝心の智也君がいないのはちょっと寂しいですけどね」
「氷室さんは羽賀さんや岡村さんと3人で呑んでいますもんね……」
当初はそっちの方に行く予定でしたので、ここにいて寂しい気持ちを抱いてしまう月村さんも納得できます。
「さあ、カレーライスですよ。今日はチキンカレーにしてみました」
カレーライスを持ってきてくれる金髪のメイドさん。これはいいですね。ただ、アパートの一室にメイド服を着た女子高生がいるのはシュールですが。
金髪のメイドさん……いえ、朝比奈さんがカレーライスを目の前に置いてくれます。いい匂いがして食欲が増してきますね。
「美味しそうね、美来ちゃん」
「確かに、美味しそうです」
「ありがとうございます。味見をしたので大丈夫だとは思います。辛みが足りなければ、このスパイスを使って辛さを調節してください」
あぁ、私が実家にいたとき、うちの父親がやっていたなぁ。母と私が甘めが好きで、それに合わせてカレーを作っていたこともあり、辛いカレーが好きな父親はいつもスパイスを足して食べていました。
「いただきまーす」
「いただきます」
さっそく、朝比奈さんの作ったチキンカレーを食べてみます。匂いからして美味しそうなのは間違いなさそうですが、実際にはどうなのでしょうか。
「……美味しいですね! 私にとってはちょうどいい辛さです」
「それは良かったです」
この美味しそうな匂いは嘘を付いていませんでしたね。
「やっぱり、美来ちゃんのカレーは美味しいよ。社食のカレーよりも美味しいんじゃないかな。これを食べたら社食のカレーは食べられなくなる」
「ふふっ、有紗さんいつもおかわりしますもんね」
いつもと言われるほど月村さんはここに来ているのですか。でも、着替え一式、ベッドの下の収納スペースに入っていましたもんね。
確かに、これは……とても美味しいカレーですね。月村さんがおかわりしてしまうのも分かる気がします。スプーンがどんどん進んでしまいますね。こういった美味しい料理を食べられる氷室さんは幸せだろうと思ったのでした。
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