アリア

桜庭かなめ

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特別編-ラブラブ!サンシャイン!!-

第35話『ラヴメイドコス』

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 美来が髪と体を洗い終わったので、一緒に湯船に浸かる。

「気持ちいいですね」
「そうだね」

 お湯の温かさがちょうど良くて、また眠くなってきた。眠ってしまわないためにも、あまり長い時間浸からない方がいいかも。

「何だか、ここまで気持ちがいいと夢か現実なのか分からなくなってきた」
「ふふっ、智也さん……酒入りコーヒーを全部呑みましたもんね。あまり長い時間入らない方がいいかもしれません」
「ごめんね、何だか」
「いいですよ。髪と体はもう洗いましたし……それに、きっと汗はまた掻くでしょうから。そのときにゆっくり入りましょう」

 確かに、この後……美来とイチャイチャすれば汗は掻くかもしれないな。

「……そうだね。じゃあ、あと30秒したら出ようか」
「ふふっ、何だか子供に戻った感じがします」

 心の中で30秒数えればいいと思っていたけど、美来は口で30秒数えるつもりでいるようだ。楽しそうな表情をしているし。

「じゃあ……一緒に数えようか。30秒」
「はい! せーの!」
『いーち、にー、さーん――』

 結構大きな声で美来と一緒に1から30まで数え続けた。僕もこんなことしたの、小さい頃に父さんと一緒に風呂に入ったとき以来だよ。懐かしい気分になる。

「さんじゅう! はい! じゃあ、お風呂から出ましょうか」
「……そうだね。美来がお母さんになったらこんな感じなのかなって思ったよ」

 途中からとてもはしゃいでいるようにも見えたし。子供と一緒に数えても、自分の方が楽しくなっちゃう感じ。

「へっ? そ、そうですか……」

 美来は顔を真っ赤にして僕のことをチラチラと見る。

「もしかして、今夜だけは激しくイチャイチャしたいってことなんですか……? 私のことをお母さんにしたいとか?」

 とても恥ずかしそうに、美来は僕にそう言ってきたのだ。あぁ、お母さんだったらこうだったのかなって僕が言ったからか。

「それは結婚してからね」
「……そ、そうですよね。私、何を言ってるんだろ……」

 あははっ、と美来は作り笑いを見せる。

「ただ、さっきの美来を見て……素直に美来がお母さんになったら、こんな感じなんだろうなって思ったんだ」
「そう……ですか。は、早く出ましょう! のぼせちゃいますから」
「はいはい」

 僕は美来と一緒にお風呂を出る。
 バスタオルで髪と体を拭くと、僕はバスローブ、美来は家から持参した夏仕様のメイド服着る。まさか、旅先の部屋で美来のメイド服姿を見られるとは思わなかったな。

「暑かったりしたら、メイド服を脱いでくれていいからね」
「分かりました。でも、できるだけこの服装で智也さんにご奉仕するつもりです」
「よろしくお願いします。あっ、そうだ……せっかくだから写真を撮るよ。もちろん、他の人に見せても大丈夫な感じで」
「分かりました」

 部屋に戻って僕はスマートフォンとデジカメでメイド服姿の美来の写真を撮る。旅先の部屋で、メイド服姿だなんて普段以上にシュールだなぁ。

「何だか面白い写真が撮れましたね」
「そうだね」

 この写真を有紗さんに見せたら、旅先まで何をやっているんだと呆れられそうだ。

「智也さん」
「うん?」
「私は今……智也さんのメイドです。智也さんのしたいことを何でも言ってきてください。精一杯ご奉仕しますので」
「気持ちは受け取っておくけど、美来はメイドじゃなくてメイド服を着た僕の大切な未来の妻だよ」
「そうですね。……あなた」
「じゃあ、まずは……キスしようか」
「はい」

 僕は美来とキスする。こうしていると、ホテルの部屋なんだけど……普段と変わらない時間を送っているような気がしてくる。
 そのままメイド服姿の美来とイチャイチャする。

「今回の旅行がより一層思い出深いものになりました」
「それなら良かったよ」

 今夜も美来のことをたっぷりと堪能できたな。メイド服姿の美来とイチャイチャしたのは新鮮だった。服を着た彼女とするのもそそられるのだと分かった。

「ああ、今頃……水着とか制服姿の私とイチャイチャしたいと思ったでしょう」
「……そ、それもいいかもね」

 そんなことは考えていなかったけど、美来に言われると、水着姿や制服姿の美来がベッドに横たわっている光景を想像してしまう。

「想像してましたね、水着姿や制服姿がベッドの上で横になっている私を」
「……もう、美来には僕の心は読まれているね」
「智也さんの未来の妻ですから」

 未来の妻か。それに、美来は8年近くも僕のことを陰で見ていたから、僕が何を考えているのか僕の顔を見ただけでおおよその想像ができるのかもしれない。

「まったく、あなた達はとてもいいカップルね」

 この聞き覚えのある声は、やっぱり。
 僕と美来が体を起こすと、正面に浴衣姿の水代さんが顔を赤くしながら立っていたのであった。
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