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続編-螺旋百合-
第1話『アルバム』
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母さんからの電話で、明日から従妹の桃花ちゃんが家に泊まりに来ることになった。もちろん、それは美来からのお許しがあってのこと。
最後に桃花ちゃんと寝泊まりをしたのは少なくとも10年は経っている。当時はお互いに子供だったから何とも思わなかったけど、今は桃花ちゃんも20歳くらい。人によっては立派な女性と言うくらいの年齢になっているのだ。昔は定期的に会っていた従妹とはいえ、何だか緊張してきた。
「それにしても、智也さんの従妹ですかぁ。昔の智也さんとよく会っていたということみたいですから、色々な話を聞きたいです」
「桃花ちゃんにとっては小学生のときまでの話だけど、実際に、6歳のときのことをはっきりと覚えている女の子がここにいるからね。桃花ちゃんから、たくさん話が聞けるといいね」
むしろ、そうじゃないと、美来がずっと不満や不安を抱いたまま過ごすことになりそうだから。桃花ちゃんはどちらかというと大人しい方で、優しい子でもあるから、その性格が変わっていなければ、美来とすぐに仲良くなれそうだ。
「桃花さん……というのですね、従妹さんのお名前」
「うん、そうだよ。恩田桃花ちゃん。母方の従妹だから苗字も違うんだ」
「なるほどです。将来は親戚同士になるんですよね。ご挨拶するのにいい機会です。ちなみに、どういうお顔なのか知りたいのですが、アルバムってありますか?」
「うん、寝室の棚にアルバムがあったはずだよ。そういえば、引っ越してからは色々とあったから、アルバムを見てなかったね」
それに、前の家では押し入れの奥にしまってあったから。
「ですね。じゃあ、さっそくアルバムを見ましょう!」
「分かった。取りに行くね」
僕は寝室の棚からアルバムを取り出して、リビングで美来と一緒に見ることに。一人暮らしを始めるときに両親が持たせてくれたけど、まさか美来と一緒に見るときが来るなんて。
カバーには汚れている部分があるけれど、記憶を辿れば旅行とか、運動会とか、学園祭とか、卒業式とか……節目のときには両親がこのアルバムに写真を挟んでくれたな。大学生までの僕の姿がこのアルバムにまとまっているということか。思い出が鮮やかに蘇ってくる。
「うわあっ……小さい頃の智也さん、とっても可愛いですね!」
アルバムを開いた瞬間、美来は歓喜の雄叫びとも言える大きな声を上げた。この新居だからいいけれど、以前住んでいた部屋だったら、苦情が来てもおかしくないな。
「美来、興奮するのは分かるけれど、声のボリュームを落としてね」
「す、すみません。ただ、智也さんの赤ちゃんの姿や幼稚園に入る前の姿があまりにも可愛らしくて。ほら、この卒園式の智也さんなんて、とっても可愛いじゃないですか」
美来はその写真を指さす。そこには幼稚園の制服を着た僕の姿が。写真を撮られるからなのか、当時の僕は滅茶苦茶緊張しているな。
「幼稚園を卒業するくらいってことは僕と出会った頃の美来と同じくらいの年齢かな」
「そうですね。あと、昔の写真って右下に日付が入るんですね。卒園式の日付のときは私が生まれる前です」
「そ、そうだね。美来の生まれる16年以上前だから昔だよね。あと、僕の小さい頃に発売されたフィルムカメラには、右下に日付を入れられる機能のあるものが多かったんだよ。もちろん、今でも使っている人はいると思うけどね」
「へえ……」
何だろう、このジェネレーションギャップのような感覚は。僕と美来、8学年しか違わないのに、もっと年の差があるように思えてしまう。
「はぁ、食べちゃいたいくらいに可愛らしいです。智也さんがこのくらいまでにちっちゃくなっちゃえばいいのに」
美来はうっとりとした表情を浮かべながらそう言うけど、全身に悪寒が走る。食べたいとか、ちっちゃくなってほしいとか……何てことを言うんだ、この子は。
「面白いことを言うね。できれば、今の僕で満足してくれると嬉しいな」
「ふふっ、そういう日が1日くらいあると面白いかなって思っただけです。もちろん、今の智也さんはとても素敵ですよ」
笑顔を浮かべながらそう言ってくれる美来が一番可愛くて素敵だよ。あと、美来が今の僕が一番いいと言ってくれたことにほっとする。
「でも、3年くらい前に、実際に体が小さくなった経験をした高校生がいると噂を聞いたことがあります。ちょうど今くらいの時期に、数日ほど小さくなったそうですよ」
「えっ」
そんな超常現象的なことが実際にあったというのか。事実は小説よりも奇なりとも言うし、僕と美来も旅行中に幽霊に会って触れたことがあるからな。でも、体が小さくなるなんてきっと都市伝説だ。そう思っておこうじゃないか。
「今、色々と考えましたよね」
「……幽霊と出会って触れたから、体が小さくなるのもあり得そうで怖いなって」
「ああ、そういうことですか。てっきり、小さくなったら私に色々なことをされると思っているのかと」
「小さくなった僕にしそうなことって、普段とあまり変わらないんじゃない?」
「そうですね。一緒にお風呂に入ったり、寝たり、ご飯を食べたり、キスしたり、夫婦の営み的なことをしたり」
「そのブレなさに安心するよ。とりあえず、桃花ちゃんが写っている写真を見つけよう。あるとしたら、僕が小学生か中学生くらいのときだけれど……」
アルバムをめくり、小学生のときの写真を見ていくと……あった。
「これだ、美来」
「そうですか。……この写真に写っている智也さん、右手で黒髪の女の子、左手で茶髪の女の子と手を繋いでいますが、どちらが桃花さんなのですか?」
「黒髪の女の子だよ。茶髪の子は確か……桃花ちゃんの家の近所に住んでいた結城仁実ちゃんだったかな。桃花ちゃんと同い年なんだ」
そういえば、桃花ちゃんの家に行くと仁実ちゃんが遊びに来ていたことが多かったな。写真の通り、ポニーテールに結ばれた茶髪がチャームポイントで、活発な性格の女の子だった。
「そうなんですか。2人ともとても可愛いですね。両手に花ではないですか」
「桃花ちゃんも仁実ちゃんも可愛いからね。2人ともタイプは違うけれど、いい子だったよ。桃花ちゃんは1人っ子だからか、お兄ちゃんって呼ばれていたっけ」
桃花ちゃんはそう言ってくれたけど、仁実ちゃんは名前で呼んでいたな。
「おにいちゃんっ! ……みたいな感じで呼ばれていたんですか?」
「うん、そんな感じだね」
「……智也さんが希望するのであれば、私もそう呼びますが」
何だ、桃花ちゃんに対抗しているのか? そんなことをする必要はないのに。
「今のも可愛かったけど、美来にはやっぱり名前で呼んでほしいな。それに、美来は僕の妹じゃなくて妻になるんだし」
「……そうですか。智也さんがそう言うのであれば」
ふふっ、と美来は嬉しそうに笑う。それに、メイド服を着た将来の奥さんが「お兄ちゃん」と呼ぶなんてカオスだよ。美来がどういう存在か分からなくなりそうだ。
「ただ、この写真に写っている桃花さんが、この写真の雰囲気を保ったまま成長していたら、これはかなりの要注意人物ですね」
「要注意人物って……僕の従妹をそういう風に言わないでほしいな。それに、さっきだって言ったじゃないか。美来は僕の妻になるんだって。僕の妻になる女の子は美来以外に考えられないよ」
「智也さんのことは信じています。では、今夜は営んでくれますか? 明日以降、桃花さんがいる間はできないでしょうから、たっぷりと」
「……そうだね」
僕は美来のことを抱きしめ、キスしてくる。もし、2人と一緒に写っている頃の僕がこの光景を見たらどう思うのかな。
「さっきは洋酒入りのチョコレートに酔いましたが、今のキスで、今度は智也さんに酔ってしまいそうです。もちろん、10年前のあの日から智也さんにはゾッコンですが」
「上手いことを言うね、美来。美来はたっぷりしたいって言ったけど、明日のためにも二日酔いにならない程度にしようか」
「はい! でも、まずはお風呂に入って体を綺麗にしてからです」
「……うん。そうしようか」
その後、僕と美来は……たくさんイチャイチャした。本当に美来は可愛くて、優しい女の子だ。そんなことをする中で、僕とずっと一緒にいてほしい人はやっぱり美来なのだと改めて確認するのであった。
最後に桃花ちゃんと寝泊まりをしたのは少なくとも10年は経っている。当時はお互いに子供だったから何とも思わなかったけど、今は桃花ちゃんも20歳くらい。人によっては立派な女性と言うくらいの年齢になっているのだ。昔は定期的に会っていた従妹とはいえ、何だか緊張してきた。
「それにしても、智也さんの従妹ですかぁ。昔の智也さんとよく会っていたということみたいですから、色々な話を聞きたいです」
「桃花ちゃんにとっては小学生のときまでの話だけど、実際に、6歳のときのことをはっきりと覚えている女の子がここにいるからね。桃花ちゃんから、たくさん話が聞けるといいね」
むしろ、そうじゃないと、美来がずっと不満や不安を抱いたまま過ごすことになりそうだから。桃花ちゃんはどちらかというと大人しい方で、優しい子でもあるから、その性格が変わっていなければ、美来とすぐに仲良くなれそうだ。
「桃花さん……というのですね、従妹さんのお名前」
「うん、そうだよ。恩田桃花ちゃん。母方の従妹だから苗字も違うんだ」
「なるほどです。将来は親戚同士になるんですよね。ご挨拶するのにいい機会です。ちなみに、どういうお顔なのか知りたいのですが、アルバムってありますか?」
「うん、寝室の棚にアルバムがあったはずだよ。そういえば、引っ越してからは色々とあったから、アルバムを見てなかったね」
それに、前の家では押し入れの奥にしまってあったから。
「ですね。じゃあ、さっそくアルバムを見ましょう!」
「分かった。取りに行くね」
僕は寝室の棚からアルバムを取り出して、リビングで美来と一緒に見ることに。一人暮らしを始めるときに両親が持たせてくれたけど、まさか美来と一緒に見るときが来るなんて。
カバーには汚れている部分があるけれど、記憶を辿れば旅行とか、運動会とか、学園祭とか、卒業式とか……節目のときには両親がこのアルバムに写真を挟んでくれたな。大学生までの僕の姿がこのアルバムにまとまっているということか。思い出が鮮やかに蘇ってくる。
「うわあっ……小さい頃の智也さん、とっても可愛いですね!」
アルバムを開いた瞬間、美来は歓喜の雄叫びとも言える大きな声を上げた。この新居だからいいけれど、以前住んでいた部屋だったら、苦情が来てもおかしくないな。
「美来、興奮するのは分かるけれど、声のボリュームを落としてね」
「す、すみません。ただ、智也さんの赤ちゃんの姿や幼稚園に入る前の姿があまりにも可愛らしくて。ほら、この卒園式の智也さんなんて、とっても可愛いじゃないですか」
美来はその写真を指さす。そこには幼稚園の制服を着た僕の姿が。写真を撮られるからなのか、当時の僕は滅茶苦茶緊張しているな。
「幼稚園を卒業するくらいってことは僕と出会った頃の美来と同じくらいの年齢かな」
「そうですね。あと、昔の写真って右下に日付が入るんですね。卒園式の日付のときは私が生まれる前です」
「そ、そうだね。美来の生まれる16年以上前だから昔だよね。あと、僕の小さい頃に発売されたフィルムカメラには、右下に日付を入れられる機能のあるものが多かったんだよ。もちろん、今でも使っている人はいると思うけどね」
「へえ……」
何だろう、このジェネレーションギャップのような感覚は。僕と美来、8学年しか違わないのに、もっと年の差があるように思えてしまう。
「はぁ、食べちゃいたいくらいに可愛らしいです。智也さんがこのくらいまでにちっちゃくなっちゃえばいいのに」
美来はうっとりとした表情を浮かべながらそう言うけど、全身に悪寒が走る。食べたいとか、ちっちゃくなってほしいとか……何てことを言うんだ、この子は。
「面白いことを言うね。できれば、今の僕で満足してくれると嬉しいな」
「ふふっ、そういう日が1日くらいあると面白いかなって思っただけです。もちろん、今の智也さんはとても素敵ですよ」
笑顔を浮かべながらそう言ってくれる美来が一番可愛くて素敵だよ。あと、美来が今の僕が一番いいと言ってくれたことにほっとする。
「でも、3年くらい前に、実際に体が小さくなった経験をした高校生がいると噂を聞いたことがあります。ちょうど今くらいの時期に、数日ほど小さくなったそうですよ」
「えっ」
そんな超常現象的なことが実際にあったというのか。事実は小説よりも奇なりとも言うし、僕と美来も旅行中に幽霊に会って触れたことがあるからな。でも、体が小さくなるなんてきっと都市伝説だ。そう思っておこうじゃないか。
「今、色々と考えましたよね」
「……幽霊と出会って触れたから、体が小さくなるのもあり得そうで怖いなって」
「ああ、そういうことですか。てっきり、小さくなったら私に色々なことをされると思っているのかと」
「小さくなった僕にしそうなことって、普段とあまり変わらないんじゃない?」
「そうですね。一緒にお風呂に入ったり、寝たり、ご飯を食べたり、キスしたり、夫婦の営み的なことをしたり」
「そのブレなさに安心するよ。とりあえず、桃花ちゃんが写っている写真を見つけよう。あるとしたら、僕が小学生か中学生くらいのときだけれど……」
アルバムをめくり、小学生のときの写真を見ていくと……あった。
「これだ、美来」
「そうですか。……この写真に写っている智也さん、右手で黒髪の女の子、左手で茶髪の女の子と手を繋いでいますが、どちらが桃花さんなのですか?」
「黒髪の女の子だよ。茶髪の子は確か……桃花ちゃんの家の近所に住んでいた結城仁実ちゃんだったかな。桃花ちゃんと同い年なんだ」
そういえば、桃花ちゃんの家に行くと仁実ちゃんが遊びに来ていたことが多かったな。写真の通り、ポニーテールに結ばれた茶髪がチャームポイントで、活発な性格の女の子だった。
「そうなんですか。2人ともとても可愛いですね。両手に花ではないですか」
「桃花ちゃんも仁実ちゃんも可愛いからね。2人ともタイプは違うけれど、いい子だったよ。桃花ちゃんは1人っ子だからか、お兄ちゃんって呼ばれていたっけ」
桃花ちゃんはそう言ってくれたけど、仁実ちゃんは名前で呼んでいたな。
「おにいちゃんっ! ……みたいな感じで呼ばれていたんですか?」
「うん、そんな感じだね」
「……智也さんが希望するのであれば、私もそう呼びますが」
何だ、桃花ちゃんに対抗しているのか? そんなことをする必要はないのに。
「今のも可愛かったけど、美来にはやっぱり名前で呼んでほしいな。それに、美来は僕の妹じゃなくて妻になるんだし」
「……そうですか。智也さんがそう言うのであれば」
ふふっ、と美来は嬉しそうに笑う。それに、メイド服を着た将来の奥さんが「お兄ちゃん」と呼ぶなんてカオスだよ。美来がどういう存在か分からなくなりそうだ。
「ただ、この写真に写っている桃花さんが、この写真の雰囲気を保ったまま成長していたら、これはかなりの要注意人物ですね」
「要注意人物って……僕の従妹をそういう風に言わないでほしいな。それに、さっきだって言ったじゃないか。美来は僕の妻になるんだって。僕の妻になる女の子は美来以外に考えられないよ」
「智也さんのことは信じています。では、今夜は営んでくれますか? 明日以降、桃花さんがいる間はできないでしょうから、たっぷりと」
「……そうだね」
僕は美来のことを抱きしめ、キスしてくる。もし、2人と一緒に写っている頃の僕がこの光景を見たらどう思うのかな。
「さっきは洋酒入りのチョコレートに酔いましたが、今のキスで、今度は智也さんに酔ってしまいそうです。もちろん、10年前のあの日から智也さんにはゾッコンですが」
「上手いことを言うね、美来。美来はたっぷりしたいって言ったけど、明日のためにも二日酔いにならない程度にしようか」
「はい! でも、まずはお風呂に入って体を綺麗にしてからです」
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