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続々編-蒼き薔薇と不協和音-
第22話『青薔薇からのメッセージ』
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10月2日、日曜日。
ゆっくりと目を覚ますと、カーテンの隙間からうっすらと光が入り込んでいた。陽が昇り始めたくらいなのかな。
スマートフォンで時刻を確認すると、今の時刻は午前5時40分か。昨日も美来と夜遅くまで体を重ねていたけど、ちゃんと早く起きることができたな。
美来はぐっすりと眠っており、可愛らしい寝顔を見せてくれている。昨日の夜の美来もとても可愛かったな。今日も美来は文化祭だし、朝食ができるまで眠ってもらおう。そんな彼女の頬にキスをした。
顔を洗ったり、歯を磨いたりした後に僕は朝食の用意をしていく。
その際にテレビを点けておくけど、日曜日だからなのかのんびりとした旅番組をやっていた。これから寒くなっていくし、美来と一緒に温泉に入りたいなと思いながら味噌汁や玉子焼きを作る。
「……よし、美味しそうにできた」
「智也さん、おはようございます」
「おはよう、美来……って、その姿だと風邪引いちゃうよ」
振り返ると、そこには黒い下着姿の美来が立っていたのだ。昨日はベッドの中でイチャイチャしたらそのまま寝ちゃったからな。さっき、僕が起きたときには美来は一糸纏わぬ姿だった。
「まだ朝早いですから制服を着る気分にはなれなくて。ただ、裸なのもちょっと。でも、何だか寒いですね。このままでは、智也さんの言うとおり風邪を引いてしまいそうです。なので、私のことを抱きしめて温めてくれませんか、智也さん」
「分かったよ」
僕は美来のことをぎゅっと抱きしめる。下着姿だからなのか、いつもよりも美来の温もりや甘い匂い、柔らかさをしっかりと感じられる。
「智也さん、温かくて気持ちがいいです」
「美来も温かくて柔らかいね」
「ふふっ、そう言ってくれて嬉しいです」
「美来、体調はどうかな? 昨日の文化祭では大活躍だったし、夜も僕とたくさんイチャイチャしたから。疲れが残っていないかと思って」
「いえいえ、そんなことありません! むしろ、そんな一日を過ごして、ぐっすりと眠ったからか、今はいつも以上に体が軽いです」
「そっか。さすがは美来だね。今日も文化祭でメイド喫茶とコンサートを頑張ってね。僕も行くから。一緒に楽しもうね」
「はい! 約束ですよ、智也さん」
すると、美来の方からキスしてくる。美来の下着姿は可愛らしいし、昨日の夜にたくさんイチャイチャしたからか、このままだと興奮しすぎて、美来のことを押し倒してしまうかもしれない。
「美来、このくらいにしておこう。夜のテンションになっちゃうから」
「もう、智也さんったら。再会した頃に比べると、だいぶエロくなりましたね」
「……美来の足元にも及ばないよ。昨日だって美来はバナナを厭らしく食べていたし」
「だって、智也さんと一緒に棒状のものを食べるんですよ? 興奮しちゃうじゃないですか」
「……さすがだね」
「ふふっ、褒め言葉として受け取っておきますね。まだ時間もありますから、シャワーを浴びてきますね」
「分かった」
美来はシャワーを浴びるためにリビングを後にする。その後ろ姿はとても美しかった。
美来がいつでも朝食を食べることができるように配膳をし、僕はスマートフォンで昨日の文化祭で撮影した写真を見ていく。
「昨日だけでもたくさんあったな。美来は可愛いし……」
同じような時間を今日も過ごすことができると思うと幸せだ。メイド喫茶と声楽コンサートは必ず行きたいな。
「智也さん、昨日の写真を見ているんですか?」
「うん。昨日は楽しかったなって」
気付けば、制服姿の美来がすぐ側に立っていた。シャンプーやボディーソープの匂いが香ってくるので、シャワーを浴びるだけじゃなくて髪や体を洗ったのか。
「よし、じゃあ一緒に朝ご飯を食べよう。ご飯と味噌汁を用意するから、美来は2人分の日本茶を用意してくれるかな」
「分かりました!」
僕は2人分のご飯と味噌汁をよそい、食卓へと持って行く。すると、そこには淹れたての日本茶が置かれており、美来は椅子に座っていた。
それぞれの席にご飯と味噌汁を置き、僕らは朝食を食べ始める。
「お風呂でさっぱりして、朝ご飯も美味しくて。今日はいい一日になりそうです」
「そっか。今日のメイド喫茶の接客担当の時間は昨日と同じなの?」
「いいえ、今日は午前9時から11時までです。乃愛ちゃんも亜依ちゃんも一緒です。ただ、昨日のコンサートもありましたし、11時を回っても接客をしないといけないかもしれません」
「そうなんだ、分かった。接客する時間は昨日と同じ2時間だけど、連続だとなかなかキツそうだね。コンサートもあるし、休憩できるときにはするようにしてね。乃愛ちゃんや亜依ちゃん達も一緒だし、無理しないようにしてね」
「分かりました」
昨日のコンサートも評判が良かったし、MCでメイド喫茶の宣伝もしていた。メイド服姿の美来を一目みたいという人は多いかもしれない。
その後も美来と一緒に朝食を食べ進めていく。すると、
――プルルッ。
うん? 僕のスマートフォンが鳴っている。確認してみると、羽賀から通話?
「羽賀から電話がきてる。何かあったのかな」
「警察の方ですし、何か事件があったのかもしれません」
「そうかもしれないね。……おはよう、羽賀。朝早くにどうかした?」
『氷室、今すぐにテレビを点けてくれ。青薔薇が天羽女子にメッセージと、2枚の紙、500円硬貨を送りつけたのだ』
「えっ、青薔薇が?」
天羽女子という単語もあったので、僕はすぐに美来の方を見る。すると、美来は真剣な表情をして自分のスマートフォンの画面を見ている。
「智也さん、乃愛ちゃんや亜依ちゃんからメッセージが届いていて。天羽女子に青薔薇さんがメッセージなどを送りつけたそうです」
「そのことで羽賀から電話が来てる。別のチャンネルで報道しているらしい」
テレビのチャンネルを次々に変えていくと、『青薔薇』のことについて報道している番組があった。羽賀はこれを見て連絡してくれたんだな。
「羽賀、こっちも今、ニュースをやっているチャンネルに変えた」
『そうか。今朝、文化祭のために、いつもより早めに来た職員が、職員室の中に置いてあった青い封筒を見つけたそうだ。その封筒の中には、2枚の赤い紙と、裏側だけ黒く塗られた500円玉。メッセージが印刷された文書が入っていた。ちなみに、2枚の赤い紙のうち1枚は中心に青い点が1つ打たれている』
「……そうか。ただ、青薔薇がそういった謎めいたメッセージを送ったことなんてなかったよな?」
『ああ。今までは犯罪や不正の証拠を送り、たまに青薔薇からの声明文が印刷された文書が同封されていたことはあった。ただ、私の知る限りではこのような謎多きメッセージを来るのは今回が初めてだ』
「そっか……」
今までになく、はっきりしないメッセージを天羽女子に送った青薔薇。どんなことがあり、何を考えて青薔薇はそんなことをしたのか。
『氷室、今から青薔薇からの声明文を読み上げるみたいだ』
「分かった。美来もテレビを見ようか」
「分かりました」
美来と一緒にテレビの方を見ると、青薔薇からの声明文が読み上げられ、テロップでも表示されている。
『昨日の天羽祭、私・青薔薇も楽しませてもらいました。たくさんの屋台。クラスや部活・同好会による出し物。特に体育館で行なわれたステージは素晴らしいものでした。
私からこのようなメッセージを送らせていただきましたが、今日も通常通りに天羽祭を開催してほしいと思います。天羽女子の生徒や職員の方は何も悪くありませんから。私自身が天羽祭を壊すことはしないとお約束します。
この内容を学校のホームページで載せたり、マスコミに流してもらったりしてかまいません。ただ、私が言うのも何ですが、そのことで、天羽女子の生徒さんや職員、来客の方などの迷惑にならないようお願いします。
本日も楽しい天羽祭になることを願って。
青薔薇』
それが青薔薇からの声明か。昨日、美来が冗談話で青薔薇が天羽祭に着ているかもと言っていたけど、まさかそれが本当だったなんて。
「学校のホームページを確認してみましたが、今日の天羽祭は通常通り開催するという胸のお知らせ記事が、今日付でアップされていました」
「そっか。まあ、青薔薇は犯罪者じゃないからね。天羽祭が開催されることになったのは良かったね。ただ、青薔薇のメッセージが公開されたことで、昨日のように楽しい文化祭になるのかどうか……」
「これまでの青薔薇さん通りであれば、何らかの不正や犯罪を意味しているでしょう。ただ、天羽女子には青薔薇さんのファンはそれなりにいますし、意外と昨日よりも盛り上がるんじゃないでしょうか」
「……そうなることを願うしかないね」
青薔薇自身も楽しい文化祭になることを願っている。青薔薇のファンが多いのであれば、美来の言う通りに天羽祭はかなり盛り上がるかもしれない。
「羽賀は警察官として、このメッセージの意味を調べるつもりなのか?」
『そうだな。ただ、天羽女子は神奈川県だから……親友の恋人が通っている天羽女子の文化祭に来ている休暇中の警察官として調べるつもりだ。青薔薇の現れるところ、必ず犯罪ありとも言われるほどだからな。もちろん、浅野さんも連れて』
「そうか。じゃあ、今日は羽賀とは待ち合わせはせずに天羽女子に行くよ」
『分かった。我々は先に天羽女子に行くことにする。岡村は……我々の助手という形で同行させるか。彼も、女子校に行けば覚醒するかもしれん。過去に彼の華麗なる推理が割と当たっていたこともある』
「そ、そうか。じゃあ、僕は有紗さんと明美ちゃんと詩織ちゃんの4人で行くよ。仁実ちゃんはバイト、結菜ちゃんは友達との約束があって行かないから。あと、僕の方も考えてみる」
『了解した。では、また後で。何かあったら連絡してくれ』
「分かった」
僕の方から通話を切った。羽賀がいれば、青薔薇のメッセージが解けるのも時間の問題かな。
仮に犯罪や不正を意味するメッセージだとしたら、どうして今回は謎めいた形で天羽女子に送ったのだろうか。天羽女子の生徒や職員は悪くないとも言っているし。しかも、文化祭中に。何かあったのは確かだろうけど。
「文化祭が予定通り開催されるとのことなので、私はいつも通りに学校に行きますね」
「分かった。羽賀と岡村、浅野さんは青薔薇のことで昨日よりも早く行くそうだけど、僕らは昨日と同じくらいに行くね。今日も美来が接客しているときにメイド喫茶に行こうと思ってる」
「分かりました! では、学校で待っていますね」
「うん。さあ、朝ご飯がまだ残っているから食べようか」
「そうですね」
その後も青薔薇の報道を見ながら朝食を食べていく。
今回のような形でメッセージを送るのが初めてだからか色々と言われているな。実は天羽祭に何か裏があったり、何か犯罪が行なわれたりするんじゃないかとか。
昨日の天羽祭も楽しんだそうだし、こうしてメッセージが送られているってことは、青薔薇は今日も天羽祭に来るのかな。昨日よりも人が多くいると覚悟した方がいいかな。
「ごちそうさまでした。今日の朝食も美味しかったです」
「それは良かった。僕もごちそうさまでした」
「亜依ちゃんとの待ち合わせもありますから、私はそろそろ出発しますね」
「うん、いってらっしゃい。ただ、青薔薇がメッセージを送ったし、何があるか分からない。何かあったら周りの人に助けを求めたり、僕や有紗さん達に連絡したりするようにしてね」
「分かりました!」
「……またあとで会おう」
僕は美来に口づけをする。家を出発するときにキスするようにしているけど、いつもよりも長めに。
ゆっくりと唇を離すと、そこには頬を赤くしてうっとりとした様子で僕のことを見つめる美来が。
「このまま2人で寝室に行きたい気分です」
「それは夜になったらね。青薔薇のことはあるけれど、今日の文化祭も楽しみにしてる」
「はい。……智也さんと羽賀さんが天羽女子にいれば大丈夫な気がします。6月のこともありましたから」
「ははっ、そっか。僕も羽賀がいれば何とかなるんじゃないかって思ってるよ。僕も状況によっては動くかもしれないから、会える時間が減るかもしれない」
「そうなったら仕方ないです。でも、全然過ごせなかったら、いつも以上に私と2人きりのときは色々なことをしてくださいね」
「……約束するよ」
僕はもう一度美来にキスして、彼女のことを学校へ送り出した。
青薔薇がメッセージで送っていたように、今日も天羽女子の生徒や職員、来客の方が楽しめる文化祭になればいいな。そう想いながら朝の家事をするのであった。
ゆっくりと目を覚ますと、カーテンの隙間からうっすらと光が入り込んでいた。陽が昇り始めたくらいなのかな。
スマートフォンで時刻を確認すると、今の時刻は午前5時40分か。昨日も美来と夜遅くまで体を重ねていたけど、ちゃんと早く起きることができたな。
美来はぐっすりと眠っており、可愛らしい寝顔を見せてくれている。昨日の夜の美来もとても可愛かったな。今日も美来は文化祭だし、朝食ができるまで眠ってもらおう。そんな彼女の頬にキスをした。
顔を洗ったり、歯を磨いたりした後に僕は朝食の用意をしていく。
その際にテレビを点けておくけど、日曜日だからなのかのんびりとした旅番組をやっていた。これから寒くなっていくし、美来と一緒に温泉に入りたいなと思いながら味噌汁や玉子焼きを作る。
「……よし、美味しそうにできた」
「智也さん、おはようございます」
「おはよう、美来……って、その姿だと風邪引いちゃうよ」
振り返ると、そこには黒い下着姿の美来が立っていたのだ。昨日はベッドの中でイチャイチャしたらそのまま寝ちゃったからな。さっき、僕が起きたときには美来は一糸纏わぬ姿だった。
「まだ朝早いですから制服を着る気分にはなれなくて。ただ、裸なのもちょっと。でも、何だか寒いですね。このままでは、智也さんの言うとおり風邪を引いてしまいそうです。なので、私のことを抱きしめて温めてくれませんか、智也さん」
「分かったよ」
僕は美来のことをぎゅっと抱きしめる。下着姿だからなのか、いつもよりも美来の温もりや甘い匂い、柔らかさをしっかりと感じられる。
「智也さん、温かくて気持ちがいいです」
「美来も温かくて柔らかいね」
「ふふっ、そう言ってくれて嬉しいです」
「美来、体調はどうかな? 昨日の文化祭では大活躍だったし、夜も僕とたくさんイチャイチャしたから。疲れが残っていないかと思って」
「いえいえ、そんなことありません! むしろ、そんな一日を過ごして、ぐっすりと眠ったからか、今はいつも以上に体が軽いです」
「そっか。さすがは美来だね。今日も文化祭でメイド喫茶とコンサートを頑張ってね。僕も行くから。一緒に楽しもうね」
「はい! 約束ですよ、智也さん」
すると、美来の方からキスしてくる。美来の下着姿は可愛らしいし、昨日の夜にたくさんイチャイチャしたからか、このままだと興奮しすぎて、美来のことを押し倒してしまうかもしれない。
「美来、このくらいにしておこう。夜のテンションになっちゃうから」
「もう、智也さんったら。再会した頃に比べると、だいぶエロくなりましたね」
「……美来の足元にも及ばないよ。昨日だって美来はバナナを厭らしく食べていたし」
「だって、智也さんと一緒に棒状のものを食べるんですよ? 興奮しちゃうじゃないですか」
「……さすがだね」
「ふふっ、褒め言葉として受け取っておきますね。まだ時間もありますから、シャワーを浴びてきますね」
「分かった」
美来はシャワーを浴びるためにリビングを後にする。その後ろ姿はとても美しかった。
美来がいつでも朝食を食べることができるように配膳をし、僕はスマートフォンで昨日の文化祭で撮影した写真を見ていく。
「昨日だけでもたくさんあったな。美来は可愛いし……」
同じような時間を今日も過ごすことができると思うと幸せだ。メイド喫茶と声楽コンサートは必ず行きたいな。
「智也さん、昨日の写真を見ているんですか?」
「うん。昨日は楽しかったなって」
気付けば、制服姿の美来がすぐ側に立っていた。シャンプーやボディーソープの匂いが香ってくるので、シャワーを浴びるだけじゃなくて髪や体を洗ったのか。
「よし、じゃあ一緒に朝ご飯を食べよう。ご飯と味噌汁を用意するから、美来は2人分の日本茶を用意してくれるかな」
「分かりました!」
僕は2人分のご飯と味噌汁をよそい、食卓へと持って行く。すると、そこには淹れたての日本茶が置かれており、美来は椅子に座っていた。
それぞれの席にご飯と味噌汁を置き、僕らは朝食を食べ始める。
「お風呂でさっぱりして、朝ご飯も美味しくて。今日はいい一日になりそうです」
「そっか。今日のメイド喫茶の接客担当の時間は昨日と同じなの?」
「いいえ、今日は午前9時から11時までです。乃愛ちゃんも亜依ちゃんも一緒です。ただ、昨日のコンサートもありましたし、11時を回っても接客をしないといけないかもしれません」
「そうなんだ、分かった。接客する時間は昨日と同じ2時間だけど、連続だとなかなかキツそうだね。コンサートもあるし、休憩できるときにはするようにしてね。乃愛ちゃんや亜依ちゃん達も一緒だし、無理しないようにしてね」
「分かりました」
昨日のコンサートも評判が良かったし、MCでメイド喫茶の宣伝もしていた。メイド服姿の美来を一目みたいという人は多いかもしれない。
その後も美来と一緒に朝食を食べ進めていく。すると、
――プルルッ。
うん? 僕のスマートフォンが鳴っている。確認してみると、羽賀から通話?
「羽賀から電話がきてる。何かあったのかな」
「警察の方ですし、何か事件があったのかもしれません」
「そうかもしれないね。……おはよう、羽賀。朝早くにどうかした?」
『氷室、今すぐにテレビを点けてくれ。青薔薇が天羽女子にメッセージと、2枚の紙、500円硬貨を送りつけたのだ』
「えっ、青薔薇が?」
天羽女子という単語もあったので、僕はすぐに美来の方を見る。すると、美来は真剣な表情をして自分のスマートフォンの画面を見ている。
「智也さん、乃愛ちゃんや亜依ちゃんからメッセージが届いていて。天羽女子に青薔薇さんがメッセージなどを送りつけたそうです」
「そのことで羽賀から電話が来てる。別のチャンネルで報道しているらしい」
テレビのチャンネルを次々に変えていくと、『青薔薇』のことについて報道している番組があった。羽賀はこれを見て連絡してくれたんだな。
「羽賀、こっちも今、ニュースをやっているチャンネルに変えた」
『そうか。今朝、文化祭のために、いつもより早めに来た職員が、職員室の中に置いてあった青い封筒を見つけたそうだ。その封筒の中には、2枚の赤い紙と、裏側だけ黒く塗られた500円玉。メッセージが印刷された文書が入っていた。ちなみに、2枚の赤い紙のうち1枚は中心に青い点が1つ打たれている』
「……そうか。ただ、青薔薇がそういった謎めいたメッセージを送ったことなんてなかったよな?」
『ああ。今までは犯罪や不正の証拠を送り、たまに青薔薇からの声明文が印刷された文書が同封されていたことはあった。ただ、私の知る限りではこのような謎多きメッセージを来るのは今回が初めてだ』
「そっか……」
今までになく、はっきりしないメッセージを天羽女子に送った青薔薇。どんなことがあり、何を考えて青薔薇はそんなことをしたのか。
『氷室、今から青薔薇からの声明文を読み上げるみたいだ』
「分かった。美来もテレビを見ようか」
「分かりました」
美来と一緒にテレビの方を見ると、青薔薇からの声明文が読み上げられ、テロップでも表示されている。
『昨日の天羽祭、私・青薔薇も楽しませてもらいました。たくさんの屋台。クラスや部活・同好会による出し物。特に体育館で行なわれたステージは素晴らしいものでした。
私からこのようなメッセージを送らせていただきましたが、今日も通常通りに天羽祭を開催してほしいと思います。天羽女子の生徒や職員の方は何も悪くありませんから。私自身が天羽祭を壊すことはしないとお約束します。
この内容を学校のホームページで載せたり、マスコミに流してもらったりしてかまいません。ただ、私が言うのも何ですが、そのことで、天羽女子の生徒さんや職員、来客の方などの迷惑にならないようお願いします。
本日も楽しい天羽祭になることを願って。
青薔薇』
それが青薔薇からの声明か。昨日、美来が冗談話で青薔薇が天羽祭に着ているかもと言っていたけど、まさかそれが本当だったなんて。
「学校のホームページを確認してみましたが、今日の天羽祭は通常通り開催するという胸のお知らせ記事が、今日付でアップされていました」
「そっか。まあ、青薔薇は犯罪者じゃないからね。天羽祭が開催されることになったのは良かったね。ただ、青薔薇のメッセージが公開されたことで、昨日のように楽しい文化祭になるのかどうか……」
「これまでの青薔薇さん通りであれば、何らかの不正や犯罪を意味しているでしょう。ただ、天羽女子には青薔薇さんのファンはそれなりにいますし、意外と昨日よりも盛り上がるんじゃないでしょうか」
「……そうなることを願うしかないね」
青薔薇自身も楽しい文化祭になることを願っている。青薔薇のファンが多いのであれば、美来の言う通りに天羽祭はかなり盛り上がるかもしれない。
「羽賀は警察官として、このメッセージの意味を調べるつもりなのか?」
『そうだな。ただ、天羽女子は神奈川県だから……親友の恋人が通っている天羽女子の文化祭に来ている休暇中の警察官として調べるつもりだ。青薔薇の現れるところ、必ず犯罪ありとも言われるほどだからな。もちろん、浅野さんも連れて』
「そうか。じゃあ、今日は羽賀とは待ち合わせはせずに天羽女子に行くよ」
『分かった。我々は先に天羽女子に行くことにする。岡村は……我々の助手という形で同行させるか。彼も、女子校に行けば覚醒するかもしれん。過去に彼の華麗なる推理が割と当たっていたこともある』
「そ、そうか。じゃあ、僕は有紗さんと明美ちゃんと詩織ちゃんの4人で行くよ。仁実ちゃんはバイト、結菜ちゃんは友達との約束があって行かないから。あと、僕の方も考えてみる」
『了解した。では、また後で。何かあったら連絡してくれ』
「分かった」
僕の方から通話を切った。羽賀がいれば、青薔薇のメッセージが解けるのも時間の問題かな。
仮に犯罪や不正を意味するメッセージだとしたら、どうして今回は謎めいた形で天羽女子に送ったのだろうか。天羽女子の生徒や職員は悪くないとも言っているし。しかも、文化祭中に。何かあったのは確かだろうけど。
「文化祭が予定通り開催されるとのことなので、私はいつも通りに学校に行きますね」
「分かった。羽賀と岡村、浅野さんは青薔薇のことで昨日よりも早く行くそうだけど、僕らは昨日と同じくらいに行くね。今日も美来が接客しているときにメイド喫茶に行こうと思ってる」
「分かりました! では、学校で待っていますね」
「うん。さあ、朝ご飯がまだ残っているから食べようか」
「そうですね」
その後も青薔薇の報道を見ながら朝食を食べていく。
今回のような形でメッセージを送るのが初めてだからか色々と言われているな。実は天羽祭に何か裏があったり、何か犯罪が行なわれたりするんじゃないかとか。
昨日の天羽祭も楽しんだそうだし、こうしてメッセージが送られているってことは、青薔薇は今日も天羽祭に来るのかな。昨日よりも人が多くいると覚悟した方がいいかな。
「ごちそうさまでした。今日の朝食も美味しかったです」
「それは良かった。僕もごちそうさまでした」
「亜依ちゃんとの待ち合わせもありますから、私はそろそろ出発しますね」
「うん、いってらっしゃい。ただ、青薔薇がメッセージを送ったし、何があるか分からない。何かあったら周りの人に助けを求めたり、僕や有紗さん達に連絡したりするようにしてね」
「分かりました!」
「……またあとで会おう」
僕は美来に口づけをする。家を出発するときにキスするようにしているけど、いつもよりも長めに。
ゆっくりと唇を離すと、そこには頬を赤くしてうっとりとした様子で僕のことを見つめる美来が。
「このまま2人で寝室に行きたい気分です」
「それは夜になったらね。青薔薇のことはあるけれど、今日の文化祭も楽しみにしてる」
「はい。……智也さんと羽賀さんが天羽女子にいれば大丈夫な気がします。6月のこともありましたから」
「ははっ、そっか。僕も羽賀がいれば何とかなるんじゃないかって思ってるよ。僕も状況によっては動くかもしれないから、会える時間が減るかもしれない」
「そうなったら仕方ないです。でも、全然過ごせなかったら、いつも以上に私と2人きりのときは色々なことをしてくださいね」
「……約束するよ」
僕はもう一度美来にキスして、彼女のことを学校へ送り出した。
青薔薇がメッセージで送っていたように、今日も天羽女子の生徒や職員、来客の方が楽しめる文化祭になればいいな。そう想いながら朝の家事をするのであった。
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