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続々編-蒼き薔薇と不協和音-
第30話『カリスマカルマ』
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――初めまして、青薔薇といいます。
やっぱり、青薔薇が美来に変装していたのか。性別や年齢は分かっていないけれど、匂いは有紗さんに似ていたので若い女性なのかな。
「青薔薇……まさか、こういう形で会えるとは」
「羽賀は前に、一度話してみたいって言っていたよな」
「ああ。これまでの青薔薇の活動は非常に興味があるからな」
「ふふっ、どうもありがとう。ただ、これからの活動にも影響するから、このまま朝比奈美来の姿と声で接するからね」
正体が分からないからこそ、今までのような活動ができたんだろうし、それは仕方ないかな。どんな素顔なのか気になるけど。この先も法に触れないやり方で、様々な不正や犯罪を暴いていってほしいものだ。
「あぁ、正体も気になりますが、本人がそう言うなら仕方ありませんね。個人的には殿方だと嬉しいのですが!」
「今までも正体不明のミステリアスさが受けていましたし、謎のままでいいと思いますよ、千尋さん」
正体が分からずとも興奮する浅野さんに、明美ちゃんは呆れた感じで笑っている。僕も明美ちゃんと同じく、正体は謎のままでいいんじゃないかと思う。
そんなことを考えていると勢いよく扉が開き、
「智也さん!」
メイド服姿の美来が会議室の中に入ってきた。美来は顔を真っ赤にしており、肩を上下に大きく揺らすほど息を乱している。
「美来か。どうしたの、息を切らして」
「メッセージが来ているかどうか定期的に確認していたのですが、有紗さんから青薔薇が私に変装しているとメッセージが来まして。乃愛ちゃんや亜依ちゃんに事情を伝えて抜けてきたんです。ただ、エレベーターは人がたくさんいたので、全速力で階段を駆け下りてここまで来ました。はあっ、はあっ……疲れた……」
すると、美来は僕の目の前まで歩いてきて、倒れ込むような形で僕に抱きついてきた。彼女の体はとても熱くて、汗も掻いているからか彼女の匂いがいつもよりも強く伝わってくる。その匂いは僕の知る美来の匂いだ。
というか、本当についさっき青薔薇が美来に変装をしていることを明かしたのに、こんなにも早く8階から2階まで辿り着くとは。さすがは美来というべきか。
「これが本物の朝比奈美来の匂いかぁ。……うん、いい匂いだね。私の匂いとは違うね。これじゃ、恋人の氷室さんには別人だってバレるか」
「へっ? 今、後ろから私の声が聞こえたような……って、私だ」
「初めまして、青薔薇です。ざっくり言えば、花園千秋さんを見守るためにこの天羽祭に来ていたの。それで、今はあなたに変装しているんだよ」
「そうだったんですか。噂通り、姿も声も瓜二つに似せてきますね」
「匂いまではさすがにできなかったけどね」
本物の美来のことを抱きしめているのに、目の前に美来と瓜二つな人がいると本当にシュールだなと思う。夢を見ているんじゃないかとも思える。
「もしかしたら、あなたも解いているかもしれないけど、花園千秋さんは、体は女の子だけど心は男の子でね」
「そうなんですか。ということは、2枚の赤い紙の意味は、天羽女子の生徒の心と体の性別を表していたんですね」
「そういうこと。しかも、体の方は病気とか、性同一性障害などの理由ではなく、母親による身勝手な理由で、男の子の体から女の子の体に変えさせられちゃったの」
「それは……ひどい親御さんですね。こう言ってしまっていいのか分かりませんが、人の形をした何かだと思います」
美来、娘の花園さんの前でよくその言葉を言ったな。もし、ご本人に直接言ったら、激昂されそうだけどダメージは与えられそうな気がする。
「青薔薇さんは花園先輩の心と体のことについて、いつどうやって知ったんですか?」
「先月のことだよ。元々は花園化粧品が脱税をしているという情報を手に入れたの。彼女の敏腕ぶりは凄いけど、自分中心の考え方や待遇の差などで反感を持つ社員が何人もいて。そこからのリークなの」
「そうなのか。脱税……もしかして、それを示しているのが、裏側をアイブロウペンシルで黒く塗った500円玉ということか」
「その通りだよ、羽賀尊。金銭関係について、見えないところで不正が働いているという意味を込めたの。黒いアイブロウペンシルで塗れば、化粧品会社のことだっていうのは分かると思ってね。もちろん、花園化粧品から販売されたものを使ったわ」
「……なるほど。あと、美来さんの声で私の名前を呼び捨てで呼ばれると、何だか変な感じがするな……」
羽賀でさえも違和感を覚えるほどなのだから、青薔薇の変装術の完成度は本当に高いのだと思う。今は制服姿の方が美来に変装をしている青薔薇だと分かっているけど、同じ服装だったり、目を瞑っていたりしたら、僕も美来が話しているようにしか思えない。
あと、500円玉については、やっぱりお金絡みの問題を示していたのか。花園化粧品ほどの企業だと、脱税の額はかなり大きそうだ。
「脱税の話を聞いてから、花園化粧品という企業についてと、創業から現在まで一族経営だから花園家の人間について調べたの。その中で、社長・花園雪子の娘である花園千秋さんは元々『息子』だったということが分かってね。渡航歴などを調べると、20年ほど前から数年くらい、日本に不在だった時期があって。現地に住んでいる知り合いに調査を頼んだら、花園千秋さんは産まれたときの性別が男だと分かったの」
どうやら、青薔薇は単独で調査しているのではなく、多くの人が協力あって今までのような活動ができているようだ。
「脱税の件についても証言や証拠が揃ってきたから、天羽女子の生徒に変装して、学校の中で花園千秋に接触し始めた。それが、半月近く前のことだったかな、花園千秋さん」
「そうですね。その少し前に美春ちゃんから告白をされました。ただ、それは学校外でのことだったこともあり、花園家の関係者に聞かれてしまったんです。護衛という名目でSPが私の近くにいるのですが、そうなったのは性転換の本当の理由について両親と話してからなので、実際は監視の意味合いが強いでしょうね。学校の中では自由でしたが」
そういったことも分かっているから、青薔薇は天羽女子の生徒に変装して、学校の中で花園千秋さんと接触したのだろう。
「もちろん、私が返事を保留していることも知られました。ですから、その直後に母から美春ちゃんからの告白を断り、友人として付き合うようにと言われてしまったのです。そのときは、どんな返事をすることにも勇気が必要ですから、時間をくださいとお願いして猶予をいただきました。もちろん、美春ちゃんのことが好きで、恋人として付き合いたいのが本心ですが……」
「もしかして、赤城先輩が告白してから花園先輩と距離ができてしまったのは……」
「……うん。その命令や、心と体の性別の事情もあったから、美春ちゃんとこれまで通りに接するのが辛くなったの」
それもあって、赤城さんとの距離を取ってしまう形になってしまったのか。そんな状況に赤城さんも悩むようになり、美来達にしたと。
「体を勝手に女性にしたことも許せませんでした。でも、女性だからこそ入学することのできる天羽女子の生徒になり、美春ちゃん達と出会ったことで何とか心が救われた気がします。思い返せば、私も1年生の頃から美春ちゃんのことが好きになっていたのでしょう。だから、美春ちゃんが告白してくれたときはとても嬉しかった」
しかし、その言葉とは裏腹に、花園さんは初めて怒りの表情を見せる。それは昨日見た彼女からは信じられないような光景だ。
「それなのに、母は美春ちゃんの好意を劣情であるかのように罵り、庶民の女性と付き合うために天羽女子に通うことを許したわけじゃないと言われました。自分の体の事実を知ったときとは比べものにならないくらいに、怒り、悲しみ、憎しみなどの感情が強く湧き出ました。私に対して身勝手な行為や言動を振りまく母に、どうかにして復讐したいと思いました。そんな矢先に青薔薇さんと出会い、会社の脱税について知ったんです」
「自分の体を、母親の花園雪子の身勝手な理由で男性から女性に変えたことについては本来、花園千秋さんの意向次第では公表しないつもりだった。でも、彼女は自身の体のことも含め、花園雪子が行なったことについて、できるだけ多くの人に知らせて、法的なことはもちろん、社会的な裁きを受けてほしいと言ってきた。なので、その方針にしたんだ」
「そんな青薔薇さんのおかげで気持ちが軽くなって……文化祭の準備のときには、今まで通りではなかったけれど、美春ちゃんとも楽しく過ごすことができました」
花園さんにとって、青薔薇は正義のヒーローであり、心の支えになったんだ。だからこそ、昨日の文化祭では楽しそうにしていて、今もここにいることができるのかもしれない。
「しかし、今までとは違って、天羽女子に花園さんの体のことと、花園化粧品の脱税疑惑について、2枚の紙と500円硬貨という形で天羽女子に送った。そのような方法を取ったのはなぜだろうか? 今までのように警察やマスコミに、証言や証拠を送りつける形でも良かったのではないか?」
確かに、羽賀の言う通りだ。証拠や証言が集めることができているのだから、花園化粧品の脱税と花園さんの心と体の性差について、捜査機関やマスコミに直接流せばいいだけのこと。わざわざ謎めいたメッセージを出し、遠回りする形にしたのは何故なのか。
「脱税の調査を行なう中で、国税庁に花園茂雄という親戚が勤めていることが分かった。彼が脱税に協力していた証言も掴んでいる。それだけなら良かったけど、実は親類の中に金田正明という警察庁の人間がいることが分かった。彼は人事部の監察官で、むやみに証拠を出しても圧力がかけられて、捜査が行なわれない可能性があった。でも、警察官が動かなければ、逮捕までもっていくことはかなり難しい。そこで目を付けたのが、羽賀尊。あなただったの」
「……そこに私が出てくるのか」
羽賀は真剣な表情で腕を組む。
羽賀は優秀なキャリア組の警察官だからな。青薔薇もそんな羽賀の存在を知っていたのだろう。ただ、それ以外にも何か理由があるはずだ。
「6月上旬、私は別の案件の調査をしていたけど、氷室智也が誤認逮捕されたことや、捜査妨害であなたが逮捕されたことについて概要は把握していた。事件捜査の中心となった羽賀尊が、上司の警察官の不正を暴き、真犯人の高校生2人を逮捕した。不正や圧力に屈しなかった警察官として、しっかりと覚えていたよ」
「やはり、6月の事件がきっかけだったか。当初は誤認逮捕された氷室だけだったが、捜査妨害で公務執行妨害の罪で逮捕されたことで、私のことも大々的に報道されたからな」
「まさか、こんなところにまで6月の事件が関わっているなんてね」
ただ、あの事件には警察や裁判所の不正も絡んでいたから、青薔薇にも情報が入ってきたんじゃないかと思う。
「ということは、美来のことも?」
「もちろん。虚偽の事件としての被害者が朝比奈美来であり、いじめが原因で別の高校に転入したことも分かっていた。朝比奈美来について調べてみたら、彼女が氷室智也と同棲していることや、転入した高校が天羽女子であることも分かった。だから、一般人も来ることのできるこの天羽祭を利用する手はなかったの」
「でも、どうして1日目と2日目の間にこの封筒を送ったのだ? 準備が終わった金曜の夜から、土曜の朝でも良かったのでは?」
「天羽祭は、花園千秋さんを含め生徒や職員、スポンサーなど多くの人が作り上げたイベント。せめても、1日目は純粋に楽しんでほしかったの。あなた達が天羽祭に来るかどうかも確かめたかったし。まあ、実際に勧誘したら、今日も来てくれるって言ってくれたけどね、お兄ちゃん」
「……まさか、昨日、天羽女子に来たときに勧誘しに来た妹喫茶の女子生徒。あれも青薔薇の変装だったのか」
「大正解だよ! お兄ちゃん!」
青薔薇は嬉しそうな笑みを浮かべる。今の青薔薇を見て、美来にお兄ちゃんと言ってみてほしいなと思ってしまった。
そういえば、ナース喫茶の勧誘をされた後に、妹というイメージとはかけ離れたスタイルのいい子が勧誘していたな。あれが青薔薇の変装だったのか。
「それに、私も高校の文化祭をひさしぶりに楽しみたくてね」
美来に変装をしているからか、その笑顔が可愛らしく感じてしまう。
あと、ひさしぶりに文化祭を楽しみたいということは、若くても僕らぐらいの年代なのかな。こういう話を聞くと青薔薇も普通の人なんだなと思える。
「自分が訪れた場所にメッセージを送れば、羽賀尊達は絶対に調査という名目で天羽女子に向かう。警視庁の管轄外である都外でもね。ましてや、1日目を楽しんだと書けば。また、そうすることで、世間からもより注目が集まると思ったの。今までとは違った謎のメッセージを出せば尚更。予想通り、学校の前には複数のメディアが駆けつけた。そんな中で事実を公表すれば、より多くの人間に花園雪子や花園化粧品の罪が知られることになる」
「なるほど。私もテレビで今回のことを知り、調査を行なおうとすぐに決めた。私達は見事に青薔薇の思い通りになったということか」
「ええ。そして、親友の氷室智也達と一緒に、見事にメッセージの謎を明らかにしてくれた。私の期待通りだったよ。途中、月村有紗が水泳部の部費関連が怪しいと推理したときは、心の中で大爆笑したけど」
「あれ、聞かれていたんだ……」
有紗さんは顔を赤くしてはにかんでいる。
きっと、天羽女子の生徒などに変装して、花園さんを見守るだけではなく、僕らの動向を伺っていたんだ。
「私は復讐という言葉は好きではない。ただ、花園さんや青薔薇がやろうとしていることは、きっと正しいのだろう。青薔薇が掴んだ情報について、私が責任を持って捜査をしていく。法に触れると判断されれば、関係者を逮捕するよう全力を持って捜査する。今ら、金銭関連で調査してくれている知り合いの警察官に青薔薇が教えてくれたことを話す」
羽賀はスマートフォンを手にとって、その警察官に電話をする。これで、順調に捜査が進んでいけばいいな。
――プルルッ。
うん? 誰かのスマートフォンが鳴っているな。バイブ音ではなくメロディーなので僕のじゃないのは確かだ。
「私です。玲奈ちゃんから? はい、もしもし」
花園さんのスマートフォンだったか。もしかして、玲奈ちゃんは花園さんのことを探しているのかな? 花園さん、しばらくこの会議室にいるし。
「そうだったんだ。ごめんね、私、用事があってずっと会議室にいて、1時間近く美春ちゃんとは会っていないの。……うん、またね」
「玲奈ちゃん、花園さんのこと探しているの?」
「ええ。お茶会の担当の時間になっても来ないので、担当が終わった部員達が学校の中を探しているんですけど見つからないみたいで。連絡も取れないそうなんです」
「そうなんだ。それは心配だね」
学校内にいたとしても、校舎がとても広いし、今日みたいに文化祭で人が多いと見つけるのも大変そうだ。連絡が取れないというのが気になるな。
「赤城美春が見つからないの?」
「ええ。美春ちゃんは宿題を忘れたことはあっても、部活をサボったり、お茶会の時間を忘れたりするなんてことはないのですが」
「それは心配ね。昨日、お茶会に行ったけど、彼女はしっかりとお茶を点てていたな」
僕らと同じように、青薔薇も茶道部のお茶会に行っていたのか。
――プルルッ。
さっきと同じメロディーが鳴っているので、花園さんのスマートフォンが鳴っているのか。
「非通知ですね。誰だろう? ……もしもし。……えっ?」
そう声を漏らした瞬間、花園さんの顔色が一気に青ざめて、目を見開いてしまう。
「どうしたの、花園さん」
すると、花園さんの両眼から涙が浮かび、
「美春ちゃんが……誘拐されました」
やっぱり、青薔薇が美来に変装していたのか。性別や年齢は分かっていないけれど、匂いは有紗さんに似ていたので若い女性なのかな。
「青薔薇……まさか、こういう形で会えるとは」
「羽賀は前に、一度話してみたいって言っていたよな」
「ああ。これまでの青薔薇の活動は非常に興味があるからな」
「ふふっ、どうもありがとう。ただ、これからの活動にも影響するから、このまま朝比奈美来の姿と声で接するからね」
正体が分からないからこそ、今までのような活動ができたんだろうし、それは仕方ないかな。どんな素顔なのか気になるけど。この先も法に触れないやり方で、様々な不正や犯罪を暴いていってほしいものだ。
「あぁ、正体も気になりますが、本人がそう言うなら仕方ありませんね。個人的には殿方だと嬉しいのですが!」
「今までも正体不明のミステリアスさが受けていましたし、謎のままでいいと思いますよ、千尋さん」
正体が分からずとも興奮する浅野さんに、明美ちゃんは呆れた感じで笑っている。僕も明美ちゃんと同じく、正体は謎のままでいいんじゃないかと思う。
そんなことを考えていると勢いよく扉が開き、
「智也さん!」
メイド服姿の美来が会議室の中に入ってきた。美来は顔を真っ赤にしており、肩を上下に大きく揺らすほど息を乱している。
「美来か。どうしたの、息を切らして」
「メッセージが来ているかどうか定期的に確認していたのですが、有紗さんから青薔薇が私に変装しているとメッセージが来まして。乃愛ちゃんや亜依ちゃんに事情を伝えて抜けてきたんです。ただ、エレベーターは人がたくさんいたので、全速力で階段を駆け下りてここまで来ました。はあっ、はあっ……疲れた……」
すると、美来は僕の目の前まで歩いてきて、倒れ込むような形で僕に抱きついてきた。彼女の体はとても熱くて、汗も掻いているからか彼女の匂いがいつもよりも強く伝わってくる。その匂いは僕の知る美来の匂いだ。
というか、本当についさっき青薔薇が美来に変装をしていることを明かしたのに、こんなにも早く8階から2階まで辿り着くとは。さすがは美来というべきか。
「これが本物の朝比奈美来の匂いかぁ。……うん、いい匂いだね。私の匂いとは違うね。これじゃ、恋人の氷室さんには別人だってバレるか」
「へっ? 今、後ろから私の声が聞こえたような……って、私だ」
「初めまして、青薔薇です。ざっくり言えば、花園千秋さんを見守るためにこの天羽祭に来ていたの。それで、今はあなたに変装しているんだよ」
「そうだったんですか。噂通り、姿も声も瓜二つに似せてきますね」
「匂いまではさすがにできなかったけどね」
本物の美来のことを抱きしめているのに、目の前に美来と瓜二つな人がいると本当にシュールだなと思う。夢を見ているんじゃないかとも思える。
「もしかしたら、あなたも解いているかもしれないけど、花園千秋さんは、体は女の子だけど心は男の子でね」
「そうなんですか。ということは、2枚の赤い紙の意味は、天羽女子の生徒の心と体の性別を表していたんですね」
「そういうこと。しかも、体の方は病気とか、性同一性障害などの理由ではなく、母親による身勝手な理由で、男の子の体から女の子の体に変えさせられちゃったの」
「それは……ひどい親御さんですね。こう言ってしまっていいのか分かりませんが、人の形をした何かだと思います」
美来、娘の花園さんの前でよくその言葉を言ったな。もし、ご本人に直接言ったら、激昂されそうだけどダメージは与えられそうな気がする。
「青薔薇さんは花園先輩の心と体のことについて、いつどうやって知ったんですか?」
「先月のことだよ。元々は花園化粧品が脱税をしているという情報を手に入れたの。彼女の敏腕ぶりは凄いけど、自分中心の考え方や待遇の差などで反感を持つ社員が何人もいて。そこからのリークなの」
「そうなのか。脱税……もしかして、それを示しているのが、裏側をアイブロウペンシルで黒く塗った500円玉ということか」
「その通りだよ、羽賀尊。金銭関係について、見えないところで不正が働いているという意味を込めたの。黒いアイブロウペンシルで塗れば、化粧品会社のことだっていうのは分かると思ってね。もちろん、花園化粧品から販売されたものを使ったわ」
「……なるほど。あと、美来さんの声で私の名前を呼び捨てで呼ばれると、何だか変な感じがするな……」
羽賀でさえも違和感を覚えるほどなのだから、青薔薇の変装術の完成度は本当に高いのだと思う。今は制服姿の方が美来に変装をしている青薔薇だと分かっているけど、同じ服装だったり、目を瞑っていたりしたら、僕も美来が話しているようにしか思えない。
あと、500円玉については、やっぱりお金絡みの問題を示していたのか。花園化粧品ほどの企業だと、脱税の額はかなり大きそうだ。
「脱税の話を聞いてから、花園化粧品という企業についてと、創業から現在まで一族経営だから花園家の人間について調べたの。その中で、社長・花園雪子の娘である花園千秋さんは元々『息子』だったということが分かってね。渡航歴などを調べると、20年ほど前から数年くらい、日本に不在だった時期があって。現地に住んでいる知り合いに調査を頼んだら、花園千秋さんは産まれたときの性別が男だと分かったの」
どうやら、青薔薇は単独で調査しているのではなく、多くの人が協力あって今までのような活動ができているようだ。
「脱税の件についても証言や証拠が揃ってきたから、天羽女子の生徒に変装して、学校の中で花園千秋に接触し始めた。それが、半月近く前のことだったかな、花園千秋さん」
「そうですね。その少し前に美春ちゃんから告白をされました。ただ、それは学校外でのことだったこともあり、花園家の関係者に聞かれてしまったんです。護衛という名目でSPが私の近くにいるのですが、そうなったのは性転換の本当の理由について両親と話してからなので、実際は監視の意味合いが強いでしょうね。学校の中では自由でしたが」
そういったことも分かっているから、青薔薇は天羽女子の生徒に変装して、学校の中で花園千秋さんと接触したのだろう。
「もちろん、私が返事を保留していることも知られました。ですから、その直後に母から美春ちゃんからの告白を断り、友人として付き合うようにと言われてしまったのです。そのときは、どんな返事をすることにも勇気が必要ですから、時間をくださいとお願いして猶予をいただきました。もちろん、美春ちゃんのことが好きで、恋人として付き合いたいのが本心ですが……」
「もしかして、赤城先輩が告白してから花園先輩と距離ができてしまったのは……」
「……うん。その命令や、心と体の性別の事情もあったから、美春ちゃんとこれまで通りに接するのが辛くなったの」
それもあって、赤城さんとの距離を取ってしまう形になってしまったのか。そんな状況に赤城さんも悩むようになり、美来達にしたと。
「体を勝手に女性にしたことも許せませんでした。でも、女性だからこそ入学することのできる天羽女子の生徒になり、美春ちゃん達と出会ったことで何とか心が救われた気がします。思い返せば、私も1年生の頃から美春ちゃんのことが好きになっていたのでしょう。だから、美春ちゃんが告白してくれたときはとても嬉しかった」
しかし、その言葉とは裏腹に、花園さんは初めて怒りの表情を見せる。それは昨日見た彼女からは信じられないような光景だ。
「それなのに、母は美春ちゃんの好意を劣情であるかのように罵り、庶民の女性と付き合うために天羽女子に通うことを許したわけじゃないと言われました。自分の体の事実を知ったときとは比べものにならないくらいに、怒り、悲しみ、憎しみなどの感情が強く湧き出ました。私に対して身勝手な行為や言動を振りまく母に、どうかにして復讐したいと思いました。そんな矢先に青薔薇さんと出会い、会社の脱税について知ったんです」
「自分の体を、母親の花園雪子の身勝手な理由で男性から女性に変えたことについては本来、花園千秋さんの意向次第では公表しないつもりだった。でも、彼女は自身の体のことも含め、花園雪子が行なったことについて、できるだけ多くの人に知らせて、法的なことはもちろん、社会的な裁きを受けてほしいと言ってきた。なので、その方針にしたんだ」
「そんな青薔薇さんのおかげで気持ちが軽くなって……文化祭の準備のときには、今まで通りではなかったけれど、美春ちゃんとも楽しく過ごすことができました」
花園さんにとって、青薔薇は正義のヒーローであり、心の支えになったんだ。だからこそ、昨日の文化祭では楽しそうにしていて、今もここにいることができるのかもしれない。
「しかし、今までとは違って、天羽女子に花園さんの体のことと、花園化粧品の脱税疑惑について、2枚の紙と500円硬貨という形で天羽女子に送った。そのような方法を取ったのはなぜだろうか? 今までのように警察やマスコミに、証言や証拠を送りつける形でも良かったのではないか?」
確かに、羽賀の言う通りだ。証拠や証言が集めることができているのだから、花園化粧品の脱税と花園さんの心と体の性差について、捜査機関やマスコミに直接流せばいいだけのこと。わざわざ謎めいたメッセージを出し、遠回りする形にしたのは何故なのか。
「脱税の調査を行なう中で、国税庁に花園茂雄という親戚が勤めていることが分かった。彼が脱税に協力していた証言も掴んでいる。それだけなら良かったけど、実は親類の中に金田正明という警察庁の人間がいることが分かった。彼は人事部の監察官で、むやみに証拠を出しても圧力がかけられて、捜査が行なわれない可能性があった。でも、警察官が動かなければ、逮捕までもっていくことはかなり難しい。そこで目を付けたのが、羽賀尊。あなただったの」
「……そこに私が出てくるのか」
羽賀は真剣な表情で腕を組む。
羽賀は優秀なキャリア組の警察官だからな。青薔薇もそんな羽賀の存在を知っていたのだろう。ただ、それ以外にも何か理由があるはずだ。
「6月上旬、私は別の案件の調査をしていたけど、氷室智也が誤認逮捕されたことや、捜査妨害であなたが逮捕されたことについて概要は把握していた。事件捜査の中心となった羽賀尊が、上司の警察官の不正を暴き、真犯人の高校生2人を逮捕した。不正や圧力に屈しなかった警察官として、しっかりと覚えていたよ」
「やはり、6月の事件がきっかけだったか。当初は誤認逮捕された氷室だけだったが、捜査妨害で公務執行妨害の罪で逮捕されたことで、私のことも大々的に報道されたからな」
「まさか、こんなところにまで6月の事件が関わっているなんてね」
ただ、あの事件には警察や裁判所の不正も絡んでいたから、青薔薇にも情報が入ってきたんじゃないかと思う。
「ということは、美来のことも?」
「もちろん。虚偽の事件としての被害者が朝比奈美来であり、いじめが原因で別の高校に転入したことも分かっていた。朝比奈美来について調べてみたら、彼女が氷室智也と同棲していることや、転入した高校が天羽女子であることも分かった。だから、一般人も来ることのできるこの天羽祭を利用する手はなかったの」
「でも、どうして1日目と2日目の間にこの封筒を送ったのだ? 準備が終わった金曜の夜から、土曜の朝でも良かったのでは?」
「天羽祭は、花園千秋さんを含め生徒や職員、スポンサーなど多くの人が作り上げたイベント。せめても、1日目は純粋に楽しんでほしかったの。あなた達が天羽祭に来るかどうかも確かめたかったし。まあ、実際に勧誘したら、今日も来てくれるって言ってくれたけどね、お兄ちゃん」
「……まさか、昨日、天羽女子に来たときに勧誘しに来た妹喫茶の女子生徒。あれも青薔薇の変装だったのか」
「大正解だよ! お兄ちゃん!」
青薔薇は嬉しそうな笑みを浮かべる。今の青薔薇を見て、美来にお兄ちゃんと言ってみてほしいなと思ってしまった。
そういえば、ナース喫茶の勧誘をされた後に、妹というイメージとはかけ離れたスタイルのいい子が勧誘していたな。あれが青薔薇の変装だったのか。
「それに、私も高校の文化祭をひさしぶりに楽しみたくてね」
美来に変装をしているからか、その笑顔が可愛らしく感じてしまう。
あと、ひさしぶりに文化祭を楽しみたいということは、若くても僕らぐらいの年代なのかな。こういう話を聞くと青薔薇も普通の人なんだなと思える。
「自分が訪れた場所にメッセージを送れば、羽賀尊達は絶対に調査という名目で天羽女子に向かう。警視庁の管轄外である都外でもね。ましてや、1日目を楽しんだと書けば。また、そうすることで、世間からもより注目が集まると思ったの。今までとは違った謎のメッセージを出せば尚更。予想通り、学校の前には複数のメディアが駆けつけた。そんな中で事実を公表すれば、より多くの人間に花園雪子や花園化粧品の罪が知られることになる」
「なるほど。私もテレビで今回のことを知り、調査を行なおうとすぐに決めた。私達は見事に青薔薇の思い通りになったということか」
「ええ。そして、親友の氷室智也達と一緒に、見事にメッセージの謎を明らかにしてくれた。私の期待通りだったよ。途中、月村有紗が水泳部の部費関連が怪しいと推理したときは、心の中で大爆笑したけど」
「あれ、聞かれていたんだ……」
有紗さんは顔を赤くしてはにかんでいる。
きっと、天羽女子の生徒などに変装して、花園さんを見守るだけではなく、僕らの動向を伺っていたんだ。
「私は復讐という言葉は好きではない。ただ、花園さんや青薔薇がやろうとしていることは、きっと正しいのだろう。青薔薇が掴んだ情報について、私が責任を持って捜査をしていく。法に触れると判断されれば、関係者を逮捕するよう全力を持って捜査する。今ら、金銭関連で調査してくれている知り合いの警察官に青薔薇が教えてくれたことを話す」
羽賀はスマートフォンを手にとって、その警察官に電話をする。これで、順調に捜査が進んでいけばいいな。
――プルルッ。
うん? 誰かのスマートフォンが鳴っているな。バイブ音ではなくメロディーなので僕のじゃないのは確かだ。
「私です。玲奈ちゃんから? はい、もしもし」
花園さんのスマートフォンだったか。もしかして、玲奈ちゃんは花園さんのことを探しているのかな? 花園さん、しばらくこの会議室にいるし。
「そうだったんだ。ごめんね、私、用事があってずっと会議室にいて、1時間近く美春ちゃんとは会っていないの。……うん、またね」
「玲奈ちゃん、花園さんのこと探しているの?」
「ええ。お茶会の担当の時間になっても来ないので、担当が終わった部員達が学校の中を探しているんですけど見つからないみたいで。連絡も取れないそうなんです」
「そうなんだ。それは心配だね」
学校内にいたとしても、校舎がとても広いし、今日みたいに文化祭で人が多いと見つけるのも大変そうだ。連絡が取れないというのが気になるな。
「赤城美春が見つからないの?」
「ええ。美春ちゃんは宿題を忘れたことはあっても、部活をサボったり、お茶会の時間を忘れたりするなんてことはないのですが」
「それは心配ね。昨日、お茶会に行ったけど、彼女はしっかりとお茶を点てていたな」
僕らと同じように、青薔薇も茶道部のお茶会に行っていたのか。
――プルルッ。
さっきと同じメロディーが鳴っているので、花園さんのスマートフォンが鳴っているのか。
「非通知ですね。誰だろう? ……もしもし。……えっ?」
そう声を漏らした瞬間、花園さんの顔色が一気に青ざめて、目を見開いてしまう。
「どうしたの、花園さん」
すると、花園さんの両眼から涙が浮かび、
「美春ちゃんが……誘拐されました」
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※この作品だけを読まれても普通に面白いです。
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