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特別編8
第5話『たくさん食べてくださいね。』
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それからも、氷織と水をかけ合ったり、俺が持ってきたビーチボールを使って何回トスできるか挑戦したりするなどして遊んでいく。
ビーチボールのトスは一番多いときには100回以上続き、その際には何人もの海水浴客から注目を集めた。100回を超えたときには拍手を送られて。それが嬉しくて、終わったときには氷織とハイタッチした。
もちろん、暑い屋外にいるので、レジャーシートでスポーツドリンクを飲みながら休憩も挟む。氷織とのデートなので、休憩の時間を含めてずっと楽しい。
――ぐううっ!
海の浅いところで、水鉄砲を使って氷織と遊んでいると、俺のお腹が大きく鳴った。
「結構鳴ったな」
「ふふっ、そうですね。お腹が空きましたか?」
「ああ。お腹がペコペコだ。氷織はどうだ?」
「私も結構お腹が空いています。そろそろお昼にしましょうか」
「そうしよう。氷織が作ってくれたお昼ご飯が楽しみだな」
その後、俺達はレジャーシートに戻る。スマホで時刻を確認すると……今は午後12時半過ぎか。これなら、お腹が空くのも無理ないか。
氷織はお手洗いに行きたいと言ったので、氷織はレジャーシートから見えるお手洗いへ。その間に俺はスポーツドリンクを飲んだり、持参したウェットティッシュに手を拭いたりして氷織の帰りを待った。
プールデートのときは氷織はお手洗いに行った後にナンパに遭ったし、みんなで行った海水浴では火村さんがあのお手洗いから戻る途中でナンパに遭った。ただ、氷織は何事もなくレジャーシートに戻ってきた。
氷織はランチバッグから大きめのタッパーと小さなタッパー、アルミホイルに包まれたおにぎり、小さなペットボトルの麦茶を出した。
大きなタッパーを開けると、中には玉子焼きや唐揚げ、タコさんウィンナーといったお弁当の定番のおかずが入っている。小さなタッパーにはキュウリの漬物が入っている。
「おぉ、どれも美味しそうだ」
「ありがとうございます。あと、おにぎりはアルミホイルを留めるためのシールの色で、中身の具が分かるようにしています。オレンジが鮭、茶色がおかか、紫が梅です」
「そうなんだ。こんなにもたくさん用意してくれて嬉しいよ。ありがとう」
「いえいえ。作るのが楽しかったですし」
「そうか。……写真撮っておこう」
俺はスマホで氷織の手作りお昼ご飯の写真や、大きなタッパーを持った氷織の写真などを撮影した。それらの写真は氷織のスマホに送った。
写真で見ても、お昼ご飯がとても美味しそうだ。ますますお腹が空いて、食欲が湧いてくる。
「じゃあ、食べようか」
「はいっ。では、いただきます」
「いただきます」
どれも美味しそうだから、何から食べようか迷うなぁ。でも……氷織特製の玉子焼きがとても美味しいのを知っているので、まずは玉子焼きからいただこう。
俺は氷織が用意してくれたピックのうち、青いピックを手に取り、玉子焼きに刺す。一口サイズの大きさになっているので、俺は玉子焼きを口の中に入れた。
口に入れた瞬間、玉子焼きの甘味が口の中に広がっていって。咀嚼していくと、その甘味に深みが増して。あと、暑い中で遊んだから、保冷剤などでちょっと冷えているのもいいなって思う。
「やっぱり、氷織の玉子焼きは美味しいな」
「ありがとうございますっ! 嬉しいです」
氷織は言葉通りの嬉しそうな笑顔でそう言う。その笑顔を見ると、玉子焼きの甘味がより増した気がした。
「電車の中で、玉子焼きがあることを嬉しがっていたので、玉子焼きを最初に食べそうだなと思っていました」
「ははっ、そうか。どれも美味しそうだから迷ったんだけど、大好きな玉子焼きを最初に食べようって決めたんだ」
「ふふっ、そうでしたか。玉子焼きも他のものもたくさん食べてくださいね」
「うん。じゃあ、次は……おにぎりをいただこうかな」
鮭もおかかも梅も好きだけど……その中でも特に好きなおかかを手に取った。
茶色のシールを剥がして、アルミホイルを開けると……中には海苔が巻かれた三角おにぎりが。おにぎりも美味しそうだ。
また、氷織もおにぎりを持っている。俺が食べるからだろうか。氷織の持っているおにぎりのアルミホイルにはオレンジ色のシールが付いているので、氷織は鮭のおにぎりか。
俺はおかかのおにぎりを一口食べる。おかかまで届いたようで、持っているおにぎりにはおかかが見えている。
ちょっと冷たさも感じるけど、ご飯は適度な粘り気やもっちりさがあって美味しい。甘辛い味付けのおかかとも合っている。
「おかかおにぎり美味い」
「良かったです! 今日は外で遊ぶので、おかかの味付けを濃くしたんです」
「そうなんだ。おかかが特に好きだし、本当に美味しいよ。あと、冷たさも感じるけどご飯がもっちりしてて美味しいな」
「嬉しいです。うちで食べるお米は冷めても美味しい種類みたいで。あと、小さい頃に、お母さんから冷めても美味しく食べられる握り方を教えてもらっていて」
「そうだったんだな。さすがは氷織だなって思うよ」
「ありがとうございますっ」
嬉しそうな笑顔でそう言うと、氷織は鮭のおにぎりを食べる。笑顔でモグモグと食べているのでとても可愛い。
「明斗さんに美味しいと言ってもらえたので、おにぎりがより美味しく感じられます」
「ははっ、そうか。……あと、しっとりとした海苔もいいな」
「一昨日のお家デートでも、海苔はしっとり派と言っていましたもんね。それを思い出しながら、おにぎりを握っていました」
「そうだったんだ」
自分のことを思いながら作っていてくれたと知ると嬉しい気持ちになるな。おかかおにぎりを食べると、さっきよりも味わい深く感じられた。
おかかおにぎりを食べ終わったので、またおかずを食べようかな。
「おかずを食べたいですか?」
「ああ」
「食べたいおかずを言ってください。私が食べさせてあげますっ」
氷織はワクワクとした様子でそう言ってくる。学校の昼休みでのお弁当とか、デート中の食事などでも氷織に食べさせてもらうことはある。今はデート中だし、自分が作ったお昼ご飯だから俺におかずを食べさせたい気持ちが強いのかも。
「分かった。お願いするよ。じゃあ……唐揚げをお願いできるかな」
「分かりました」
氷織は楽しげな様子でそう返事し、持っている水色のピックで唐揚げを刺す。その唐揚げを俺の口元まで運ぶ。
「はい、あ~ん」
「あーん」
俺は氷織に唐揚げを食べさせてもらう。
衣はカリッとしていて、鶏肉はジューシーで美味しい。あと、一口サイズで食べやすいのもいい。
「唐揚げも美味しい」
「ありがとうございます」
「氷織も何か俺に食べさせてほしいものがあったら、遠慮なく言ってくれよ」
「ありがとうございます。では、玉子焼きをお願いできますか?」
「玉子焼きだな。分かった」
俺はさっき自分で使った青いピックで玉子焼きを刺し、氷織の口元まで運ぶ。
「はい、氷織。あーん」
「あ~ん」
氷織に玉子焼きを食べさせる。
氷織はゆっくりと玉子焼きを咀嚼しながら、笑顔で「うんっ」と可愛い声を漏らす。玉子焼きを食べさせたのもあって、凄く可愛く思える。小動物的な可愛らしさも感じられて。
「美味しいです。朝作ったときに味見もしましたけど、明斗さんに食べさせてもらうととても美味しいですね」
「氷織の作ったものだけど、嬉しい気持ちになるな。食べさせて良かったよ」
「ふふっ。ありがとうございます」
氷織は嬉しそうにお礼を言った。
それからも、俺と氷織は氷織の作ってくれたお昼ご飯を食べる。時々、互いにおかずを食べさせ合いながら。
氷織の作ってくれたおにぎりやおかずはどれも美味しくて。だから、どんどん食べられる。今日のデートやみんなで行った海水浴、6月に行ったプールデートの話題を中心に話が盛り上がるのもあって楽しさも感じられて。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした。ごちそうさまでした」
美味しかったのもあり、氷織と一緒にお昼ご飯を難なく完食することができた。
氷織は嬉しそうな様子で、空になったタッパーをランチバッグにしまう。
「明斗さんに美味しく食べてもらえて嬉しかったです」
「本当に美味しかったよ。ありがとう」
そうお礼を言い、氷織にキスをした。美味しいお昼ご飯を作ってくれた感謝を込めてちょっと長めに。食事をした直後だからか、氷織の唇がしっとりとしていて。
俺から唇を離すと、氷織はほんのりと赤くした顔に持ち前の優しい笑みを浮かべる。
「いえいえ。こちらこそありがとうございます。楽しいお昼ご飯でした」
「楽しかったな」
お昼ご飯を楽しめたし、お腹いっぱい食べたから午後も氷織と一緒に思いっきり遊べそうだ。そんなことを考えていると、
「ふああっ……」
と、あくびがつい出てしまう。あくびをしたのもあり、急に眠気が襲ってきた。
また、目の前で俺があくびをしたからか、氷織はクスッと笑った。ちょっと恥ずかしい。
「眠くなっちゃいましたか?」
「ああ。お昼ご飯を食べたからかな」
「いっぱい食べていましたもんね。お昼寝していいですよ」
「いいのか? せっかくのデート中なのに」
「かまいませんよ。明斗さんの寝顔を見るのが好きですし。むしろ、明斗さんに膝枕をしたいくらいです」
「そこまで言ってくれるなら……お言葉に甘えて昼寝をしようかな。氷織の膝枕で」
「そうしましょう。食休みも大切ですし、眠たいときは寝た方がいいですから。お昼を食べた直後ですし、日陰にいますからお昼寝しても熱中症の心配はないでしょう」
「そうだな。じゃあ……昼寝をするか」
「はいっ」
氷織はニコニコとした様子でレジャーシートの上で正座をして、膝の上をポンポンと叩く。
「さあ、どうぞ」
「……失礼します」
俺はレジャーシートの上仰向けの状態になり、氷織の膝の上に頭をそっと乗せた。
氷織の生足の上に頭を乗せているから、後頭部に感じる感触が柔らかい。そして、段々と優しい温もりも。
パラソルで日陰になっているけど、ビキニに包まれた氷織のFカップの胸のおかげもあり、顔付近はより日陰になっている。氷織の大きな胸のおかげで眩しさを感じることなく眠れそうだ。
氷織は少しかがんだ状態で俺を見下ろしてくる。
「どうですか? 明斗さん」
「……凄くいいよ。あと、胸の存在感が凄い」
「ふふっ。明斗さんらしい感想です」
「……じゃあ、俺は寝るよ。おやすみ」
「おやすみなさい、明斗さん」
俺はゆっくりと目を瞑る。
目を瞑った瞬間、ふわふわとした感覚になっていく。氷織の手なのか、定期的にお腹のあたりに優しく何かが当たって。それも気持ちがいい。呼吸をする度に氷織の甘い匂いを感じられるのも心地良くて。なので、それから程なくして眠りについた。
ビーチボールのトスは一番多いときには100回以上続き、その際には何人もの海水浴客から注目を集めた。100回を超えたときには拍手を送られて。それが嬉しくて、終わったときには氷織とハイタッチした。
もちろん、暑い屋外にいるので、レジャーシートでスポーツドリンクを飲みながら休憩も挟む。氷織とのデートなので、休憩の時間を含めてずっと楽しい。
――ぐううっ!
海の浅いところで、水鉄砲を使って氷織と遊んでいると、俺のお腹が大きく鳴った。
「結構鳴ったな」
「ふふっ、そうですね。お腹が空きましたか?」
「ああ。お腹がペコペコだ。氷織はどうだ?」
「私も結構お腹が空いています。そろそろお昼にしましょうか」
「そうしよう。氷織が作ってくれたお昼ご飯が楽しみだな」
その後、俺達はレジャーシートに戻る。スマホで時刻を確認すると……今は午後12時半過ぎか。これなら、お腹が空くのも無理ないか。
氷織はお手洗いに行きたいと言ったので、氷織はレジャーシートから見えるお手洗いへ。その間に俺はスポーツドリンクを飲んだり、持参したウェットティッシュに手を拭いたりして氷織の帰りを待った。
プールデートのときは氷織はお手洗いに行った後にナンパに遭ったし、みんなで行った海水浴では火村さんがあのお手洗いから戻る途中でナンパに遭った。ただ、氷織は何事もなくレジャーシートに戻ってきた。
氷織はランチバッグから大きめのタッパーと小さなタッパー、アルミホイルに包まれたおにぎり、小さなペットボトルの麦茶を出した。
大きなタッパーを開けると、中には玉子焼きや唐揚げ、タコさんウィンナーといったお弁当の定番のおかずが入っている。小さなタッパーにはキュウリの漬物が入っている。
「おぉ、どれも美味しそうだ」
「ありがとうございます。あと、おにぎりはアルミホイルを留めるためのシールの色で、中身の具が分かるようにしています。オレンジが鮭、茶色がおかか、紫が梅です」
「そうなんだ。こんなにもたくさん用意してくれて嬉しいよ。ありがとう」
「いえいえ。作るのが楽しかったですし」
「そうか。……写真撮っておこう」
俺はスマホで氷織の手作りお昼ご飯の写真や、大きなタッパーを持った氷織の写真などを撮影した。それらの写真は氷織のスマホに送った。
写真で見ても、お昼ご飯がとても美味しそうだ。ますますお腹が空いて、食欲が湧いてくる。
「じゃあ、食べようか」
「はいっ。では、いただきます」
「いただきます」
どれも美味しそうだから、何から食べようか迷うなぁ。でも……氷織特製の玉子焼きがとても美味しいのを知っているので、まずは玉子焼きからいただこう。
俺は氷織が用意してくれたピックのうち、青いピックを手に取り、玉子焼きに刺す。一口サイズの大きさになっているので、俺は玉子焼きを口の中に入れた。
口に入れた瞬間、玉子焼きの甘味が口の中に広がっていって。咀嚼していくと、その甘味に深みが増して。あと、暑い中で遊んだから、保冷剤などでちょっと冷えているのもいいなって思う。
「やっぱり、氷織の玉子焼きは美味しいな」
「ありがとうございますっ! 嬉しいです」
氷織は言葉通りの嬉しそうな笑顔でそう言う。その笑顔を見ると、玉子焼きの甘味がより増した気がした。
「電車の中で、玉子焼きがあることを嬉しがっていたので、玉子焼きを最初に食べそうだなと思っていました」
「ははっ、そうか。どれも美味しそうだから迷ったんだけど、大好きな玉子焼きを最初に食べようって決めたんだ」
「ふふっ、そうでしたか。玉子焼きも他のものもたくさん食べてくださいね」
「うん。じゃあ、次は……おにぎりをいただこうかな」
鮭もおかかも梅も好きだけど……その中でも特に好きなおかかを手に取った。
茶色のシールを剥がして、アルミホイルを開けると……中には海苔が巻かれた三角おにぎりが。おにぎりも美味しそうだ。
また、氷織もおにぎりを持っている。俺が食べるからだろうか。氷織の持っているおにぎりのアルミホイルにはオレンジ色のシールが付いているので、氷織は鮭のおにぎりか。
俺はおかかのおにぎりを一口食べる。おかかまで届いたようで、持っているおにぎりにはおかかが見えている。
ちょっと冷たさも感じるけど、ご飯は適度な粘り気やもっちりさがあって美味しい。甘辛い味付けのおかかとも合っている。
「おかかおにぎり美味い」
「良かったです! 今日は外で遊ぶので、おかかの味付けを濃くしたんです」
「そうなんだ。おかかが特に好きだし、本当に美味しいよ。あと、冷たさも感じるけどご飯がもっちりしてて美味しいな」
「嬉しいです。うちで食べるお米は冷めても美味しい種類みたいで。あと、小さい頃に、お母さんから冷めても美味しく食べられる握り方を教えてもらっていて」
「そうだったんだな。さすがは氷織だなって思うよ」
「ありがとうございますっ」
嬉しそうな笑顔でそう言うと、氷織は鮭のおにぎりを食べる。笑顔でモグモグと食べているのでとても可愛い。
「明斗さんに美味しいと言ってもらえたので、おにぎりがより美味しく感じられます」
「ははっ、そうか。……あと、しっとりとした海苔もいいな」
「一昨日のお家デートでも、海苔はしっとり派と言っていましたもんね。それを思い出しながら、おにぎりを握っていました」
「そうだったんだ」
自分のことを思いながら作っていてくれたと知ると嬉しい気持ちになるな。おかかおにぎりを食べると、さっきよりも味わい深く感じられた。
おかかおにぎりを食べ終わったので、またおかずを食べようかな。
「おかずを食べたいですか?」
「ああ」
「食べたいおかずを言ってください。私が食べさせてあげますっ」
氷織はワクワクとした様子でそう言ってくる。学校の昼休みでのお弁当とか、デート中の食事などでも氷織に食べさせてもらうことはある。今はデート中だし、自分が作ったお昼ご飯だから俺におかずを食べさせたい気持ちが強いのかも。
「分かった。お願いするよ。じゃあ……唐揚げをお願いできるかな」
「分かりました」
氷織は楽しげな様子でそう返事し、持っている水色のピックで唐揚げを刺す。その唐揚げを俺の口元まで運ぶ。
「はい、あ~ん」
「あーん」
俺は氷織に唐揚げを食べさせてもらう。
衣はカリッとしていて、鶏肉はジューシーで美味しい。あと、一口サイズで食べやすいのもいい。
「唐揚げも美味しい」
「ありがとうございます」
「氷織も何か俺に食べさせてほしいものがあったら、遠慮なく言ってくれよ」
「ありがとうございます。では、玉子焼きをお願いできますか?」
「玉子焼きだな。分かった」
俺はさっき自分で使った青いピックで玉子焼きを刺し、氷織の口元まで運ぶ。
「はい、氷織。あーん」
「あ~ん」
氷織に玉子焼きを食べさせる。
氷織はゆっくりと玉子焼きを咀嚼しながら、笑顔で「うんっ」と可愛い声を漏らす。玉子焼きを食べさせたのもあって、凄く可愛く思える。小動物的な可愛らしさも感じられて。
「美味しいです。朝作ったときに味見もしましたけど、明斗さんに食べさせてもらうととても美味しいですね」
「氷織の作ったものだけど、嬉しい気持ちになるな。食べさせて良かったよ」
「ふふっ。ありがとうございます」
氷織は嬉しそうにお礼を言った。
それからも、俺と氷織は氷織の作ってくれたお昼ご飯を食べる。時々、互いにおかずを食べさせ合いながら。
氷織の作ってくれたおにぎりやおかずはどれも美味しくて。だから、どんどん食べられる。今日のデートやみんなで行った海水浴、6月に行ったプールデートの話題を中心に話が盛り上がるのもあって楽しさも感じられて。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした。ごちそうさまでした」
美味しかったのもあり、氷織と一緒にお昼ご飯を難なく完食することができた。
氷織は嬉しそうな様子で、空になったタッパーをランチバッグにしまう。
「明斗さんに美味しく食べてもらえて嬉しかったです」
「本当に美味しかったよ。ありがとう」
そうお礼を言い、氷織にキスをした。美味しいお昼ご飯を作ってくれた感謝を込めてちょっと長めに。食事をした直後だからか、氷織の唇がしっとりとしていて。
俺から唇を離すと、氷織はほんのりと赤くした顔に持ち前の優しい笑みを浮かべる。
「いえいえ。こちらこそありがとうございます。楽しいお昼ご飯でした」
「楽しかったな」
お昼ご飯を楽しめたし、お腹いっぱい食べたから午後も氷織と一緒に思いっきり遊べそうだ。そんなことを考えていると、
「ふああっ……」
と、あくびがつい出てしまう。あくびをしたのもあり、急に眠気が襲ってきた。
また、目の前で俺があくびをしたからか、氷織はクスッと笑った。ちょっと恥ずかしい。
「眠くなっちゃいましたか?」
「ああ。お昼ご飯を食べたからかな」
「いっぱい食べていましたもんね。お昼寝していいですよ」
「いいのか? せっかくのデート中なのに」
「かまいませんよ。明斗さんの寝顔を見るのが好きですし。むしろ、明斗さんに膝枕をしたいくらいです」
「そこまで言ってくれるなら……お言葉に甘えて昼寝をしようかな。氷織の膝枕で」
「そうしましょう。食休みも大切ですし、眠たいときは寝た方がいいですから。お昼を食べた直後ですし、日陰にいますからお昼寝しても熱中症の心配はないでしょう」
「そうだな。じゃあ……昼寝をするか」
「はいっ」
氷織はニコニコとした様子でレジャーシートの上で正座をして、膝の上をポンポンと叩く。
「さあ、どうぞ」
「……失礼します」
俺はレジャーシートの上仰向けの状態になり、氷織の膝の上に頭をそっと乗せた。
氷織の生足の上に頭を乗せているから、後頭部に感じる感触が柔らかい。そして、段々と優しい温もりも。
パラソルで日陰になっているけど、ビキニに包まれた氷織のFカップの胸のおかげもあり、顔付近はより日陰になっている。氷織の大きな胸のおかげで眩しさを感じることなく眠れそうだ。
氷織は少しかがんだ状態で俺を見下ろしてくる。
「どうですか? 明斗さん」
「……凄くいいよ。あと、胸の存在感が凄い」
「ふふっ。明斗さんらしい感想です」
「……じゃあ、俺は寝るよ。おやすみ」
「おやすみなさい、明斗さん」
俺はゆっくりと目を瞑る。
目を瞑った瞬間、ふわふわとした感覚になっていく。氷織の手なのか、定期的にお腹のあたりに優しく何かが当たって。それも気持ちがいい。呼吸をする度に氷織の甘い匂いを感じられるのも心地良くて。なので、それから程なくして眠りについた。
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