恋人、はじめました。

桜庭かなめ

文字の大きさ
191 / 209
夏休み小話編

『ツンデレ氷織』

しおりを挟む
『ツンデレ氷織』


 夏休みが始まってから数日ほど。
 今日は自宅で、恋人の青山氷織あおやまひおりとお家デートをしている。
 古典の夏休みの課題をキリのいいところまでやり、今は休憩を兼ねて、氷織と寄り添いながら、昨晩の放送されたラブコメのアニメを観ている。氷織と一緒にキャラクターやストーリーのことなどで話しながら。これがお家デートでの定番の過ごし方だ。
 このアニメは氷織も俺・紙透明斗かみとうあきとも好きな作品なので、自然と話が盛り上がって。だから、氷織も楽しそうな笑顔をたくさん見せてくれる。そのことに嬉しい気持ちになって。もちろん、話すのも楽しくて。だから、氷織とアニメを観るのは俺がとても好きなことの一つだ。

「今週も面白かったですね!」
「面白かったな」

 アニメはもちろんのこと、氷織と話しながら観るのも楽しいので、あっという間にエンディングになっていた。

「今週のエピソードから登場した女の子が可愛かったですね」
「可愛かったな。ツンデレなところも良かった」
「そうでしたね。『別に○○じゃないんだからね』とツンデレな言葉が可愛かったです」
「そうだな。あと……今の氷織のツンとした口調も可愛かったぞ。氷織はツンデレじゃないから新鮮な感じがして」
「ありがとうございます」

 ふふっ、と氷織は嬉しそうに笑う。

「今の氷織のツンとした口調が可愛かったから、ツンデレな感じの氷織を見たくなってきた」
「ふふっ。では……今観たアニメの女の子を参考に、ツンデレの演技をしてみましょうか。明斗さんの希望に応えたいですし。それに、小説執筆の参考になるかもしれませんから」

 氷織はいつもの優しい笑顔でそう言ってくれる。
 氷織は蒼川小織あおかわこおりというペンネームで、小説投稿サイトで作品を公開している。ツンデレを演じてみることで、キャラクター作りとかの参考になるかもしれないと考えているのだろう。

「ありがとう、氷織」
「いえいえ。……ツンデレな演技ができそうな流れを思いついたのでやってみますね」
「ああ」

 ツンデレな雰囲気の氷織がどんな感じなのか楽しみだ。
 氷織はそっと俺に体を寄りかかり、俺の肩に頭を乗せてくる。
 氷織は俺のことを見上げると、ちょっと照れくさそうな表情になり、

「ちょ、ちょっと疲れたから寄りかかっただけです。別に明斗さんとくっつきたいわけじゃないんですからね。明斗さんの温もりとか匂いを感じたいからでもないんですからね」

 俺のことを見つめながらそんな言葉を言ってきた。おぉ、ツンとしているな。あと、アニメでのツンデレキャラの女の子も、今の氷織のように照れくさそうな感じでツンとした言葉を言っていたな。
 普段は穏やかで優しいから、ギャップもあってキュンとくる。あと、氷織らしく敬語で喋るのもいいな。

「ただ……こうしていると気持ちいいです。疲れが取れてきました。明斗さんに寄りかかって良かったです」

 氷織は微笑みながらそう言ってきた。ツンとした言葉を言ったから、今度はデレの言葉を言ってみたのかな。あと、ツンとした言葉を言った後なので、デレた今の言葉がかなりグッとくる。
 ツンデレな演技をする氷織……凄く可愛いぞ。だから、

「可愛いな……」

 気付けばそう声を漏らしていた。それが聞こえたのか、氷織は「あうっ」と可愛らしい声を漏らして、体をピクッと震わせた。

「い、今のは……明斗さんの不意打ちの声に驚いただけで、可愛いと言われてキュンとなったわけじゃないんですからねっ」

 と、ツンとした感じで言う氷織。頬が赤いし、口元も緩んでいるから……本当はキュンとなったんだろうな。俺が不意に漏らした言葉にもツンとした雰囲気で反応できるとは。さすがは氷織だ。

「ははっ、そっか。ただ、ツンデレな氷織は本当に可愛いぞ。普段とのギャップにキュンときたよ。あと、氷織らしく敬語で喋るところもいいなって思った。あと、俺が漏らした言葉にもツンとした感じで反応するのもさすがだな」

 ツンデレな演技をする氷織について、素直に感想を言った。
 俺の感想が嬉しいのか、氷織はニッコリとした笑顔になって、

「そ、そんなに褒められても……別に嬉しくないんですからねっ」

 と言った。言葉と表情が全く合っていないな。ただ、口では否定しているのに顔には出ちゃうのは、デレている気持ちがとても強いツンデレキャラって感じがして可愛い。

「嬉しくないって言っているけど、顔では隠しきれていないな。本心では嬉しいんだってすぐに分かるよ」

 俺がそう言うと、氷織は「ふふっ」と声に出して笑う。

「凄く褒めてくれましたからね。それが嬉しくて。頬が緩んじゃいますよ。ただ、ツンデレの演技中だったので、嬉しくないと言ってみました」
「ははっ、そっか。でも、嬉しい気持ちが隠せてないツンデレキャラって感じがして可愛かったよ」
「ふふっ、そうでしたか。……ツンデレな言葉を何回か言ってみましたが、どうでしたか?」
「凄く良かったよ。可愛かった。ツンとした言葉を言ったときは、普段の氷織とは違った感じがしてギャップもあったし。満足だ」
「そうですか。明斗さんにそう言ってもらえて嬉しいです。私もツンデレの演技をして楽しかったです」

 氷織は可愛らしい笑顔でそう言ってくれた。

「そっか。……ツンデレな氷織もいいけど、今みたいに気持ちを素直に言葉にするいつもの氷織が一番いいなって思うよ」
「えへへっ、嬉しいです。ありがとうございます」

 そう言うと、氷織の笑顔は嬉しそうなものに変わって。そんな氷織の笑顔が段々と俺に近づいてきて、やがて、俺の唇に柔らかいものが触れた。この独特の感触は氷織の唇であるとすぐに分かった。
 氷織の唇から伝わる柔らかさや温もりはとても心地いい。
 数秒ほどして、氷織の方から唇を離す。すると、目の前には頬を中心に赤みを帯びた氷織の嬉しそうな笑顔があった。

「今の明斗さんの言葉がとても嬉しかったので、キスしました」
「そっか。……キスしてくれるのもいいなって思うよ」

 俺がそう言うと、氷織は「ふふっ」と声に出して笑った。
 ツンデレな演技をする氷織を見て、いつもの氷織がとても素敵だと改めて思えた。
 その後は、古典の課題の続きをしていく。氷織と一緒に観たアニメが楽しかったし、普段とは違うツンデレな可愛い氷織を見られたから、休憩前よりも課題を頑張れた。



『ツンデレ氷織』 おわり
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

ルピナス

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。  そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。  物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。 ※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。  ※1日3話ずつ更新する予定です。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

処理中です...