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第14話『キャンパス-後編-』
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食堂に桜海大学OGの松雪先生がいた。しかも、文学部国文学科卒業ってことは、
「あたしの先輩ということですか!」
「……うん? こちらのキュートなガールは?」
キュートなガールって国文学科卒の国語教師とは思えない言葉選びだ。
「松雪先生が卒業された桜海大学文学部の国文学科に通っている宮代鈴音さんです。彼女、僕がバイトしている喫茶店の新人さんで……」
「あぁ、あの喫茶店で働いているんだ。そういえば、今年度になってからまだ行っていないな……」
松雪先生はたまにシー・ブロッサムに来店してくれ、僕の作った料理やコーヒーを提供したこともある。そういえば、初めて彼女とお店で会ったとき、茶道部顧問なのに喫茶店に来るんだと訊いたら、コーヒーも紅茶も大好きなんだと断言されたっけ。
「初めまして、国文学科1年の宮代鈴音です! ええと、お姉さん……じゃなくて、先輩さんは蓮見君達とはどのようなご関係で?」
「私は桜海高校に勤めている国語教師で、彼ら4人の担任でもあるんだよ。初めまして、松雪里奈といいます。今年で28歳になるから、鈴音ちゃんよりも9期先輩になるのかな」
「そうなんですね! 里奈さん、もっと若いと思っていました! 綺麗な顔立ちもしていますし、スタイルもいいですし! せいぜい25歳くらいかと……」
「嬉しいことを言ってくれるじゃない、鈴音ちゃん。そういうことを言われちゃうと、あなたのことを彼女にしたくなっちゃうなぁ。その可愛い顔も私好みだし。……どう?」
そう言うと、松雪先生は妖艶な笑みを浮かべて右手で鈴音さんの頬に触れる。そういえば、前に生徒のことを狙っているかもしれないっていう噂を聞いたことがあるけれど、それって本当だったのかも。
「まさか、ここに可能性があったとは!」
羽村は興奮して、鈴音さんと松雪先生の写真をスマートフォンで撮っている。
「ご、ごめんなさい! あたし……好きな人がいるので!」
鈴音さんは顔をとても赤くして、松雪先生にそう言った。
「……そっか、残念。卒業した後に出会った子の中では、指折りで私のタイプの子だったから勢いで告白しちゃったよ。そんな私の言葉に真剣に返事してくれるなんてね。そのことでますます好きになったよ。ありがとう」
松雪先生はいつもの明るい笑みを浮かべながら、鈴音さんの頭を優しく撫でた。そのことで鈴音さんも、頬の赤みが消えないものの普段の可愛らしい笑みを取り戻す。
「ここまで後腐れのない告白シーン、フィクションでもなかなか見ないな」
「事実は小説よりも奇なり、という言葉そのものかもね」
今の告白はもちろんのこと、高校の担任教師が大学の食堂に1人でいることもそれに当てはまる気が。
あと、鈴音さんには好きな人がいるんだな。大学で出会った人なのかな。それについてはいずれ訊くことにするか。
「そういえば、ずっと気になっていたんですけど、松雪先生……どうしてここにいるんですか? 誰かと会う約束でも?」
「ううん、お昼ご飯を食べに来ただけだよ。あとは学生という若人を眺めに」
「な、なるほど」
コメントするのに困る回答だな。アラサーという実年齢よりも年上に思える。
「私、大学に進学したタイミングで、桜海大学の近くのアパートに住んでいてね。今も土曜日はここに来ることが多いよ。安くてボリュームもあるからね。それに、大学の雰囲気も好きで、学生を見ると元気をもらえるから」
「近くにそういう場所があると心強いですね」
「うん。先生に成り立ての頃は不安いっぱいで疲れて、教授やここに通っていた後輩に会いに行って元気をもらったよ」
「そうだったんですか。何だか意外ですね。いつも明るくて落ち着いているので」
「そうなれたのは、蓮見君達が入学したときくらいからよ。それだけ『教師』になれてきたからかもしれないけど」
そう言う松雪先生は照れ笑い。入学当初から彼女はとてもしっかりしている教師であり、この人が担任に良かったことが何度もあった。そんな彼女にも『教師』という職に不安な時代があったんだな。
「ここは食堂だ。お昼ご飯を食べよう。美味しいし、メニューも豊富だよ。席も空いてきたし、6人一緒に食べられそうだ。さあ、それぞれ食べたいものを取ろう」
僕らはそれぞれ食べたいものを取りに行くことに。
僕はパスタを食べたい気分なので麺類のコーナーへ。同じような気分なのか、すぐ側には松雪先生がいた。
「蓮見君も麺類?」
「ええ。パスタを食べたくて。……あっ、ナポリタンがあるのでそれにしようかな。バイトしている喫茶店とどう違うのか気になります」
どうやら、麺類は注文してから作るようで時間がかかりそうだ。丼や定食の方と違って列の流れがあまり良くない。
「すっかりと料理人だね、蓮見君は。喫茶店での料理は美味しかったし……先生、あまり料理は得意な方じゃないから、これからは蓮見君が私のご飯を作ってくれると嬉しいな」
そう言って、松雪先生は僕に腕を絡ませてくる。僕の料理に期待しているのかいつになく上目遣いで僕のことを見てきて。思い返せば、この2年で先生も来店して、僕の作った料理を美味しそうに食べてくれたな。
「バイトは今月で終わりなので、今月はシー・ブロッサムに来店しお金を払った上で。それ以降は……受験勉強がありますからね。気分転換に料理はするんでしょうけど。食べたくなったら連絡ください」
「……本当に料理だけについて返事をしたな、こいつ。先生は私と恋人として付き合ったり、結婚したりしてほしいっていう意味で言ったんだよ。私が受け持った生徒の中じゃ5本指に入るくらいに素敵な生徒だからさ。蓮見君ならいいかなって」
その気持ちは有り難いけど、それならさっきの鈴音さんのときみたいにストレートに言えばいいじゃないか。
「先生と恋人として付き合ったり、結婚したりするつもりはないですよ。というか、在学中の教え子にそんなことを言うのは問題ですって。生徒を狙っているという噂……本当だったんですね」
僕がそう言うと、先生は特に怒ったり焦ったりすることもなく、クスクスと笑った。
「あぁ、そんな噂がうちの学校にあるのは知ってる。そうだね……素敵だって思う生徒はたくさんいるよ。この子と一緒にいられるといいなと思うこともたまにある。ただ、その想いを伝えたいほどに素敵な人はそうそういない。そういう意味では、君達5人は粒ぞろいだよ。仮に想いが重なっても、そこは法に触れることのないように、教師としてきちんとした付き合い方をするよ」
「……そうですか」
とりあえず、先生がしっかりした考えを持っていることが分かって一安心。今の話を聞いてからご飯を作ってくれって言われたら、少しはキュンとしたのかもしれない。
「そっち関連の進路の話は一旦置いといて。桜海大学を見学してみてどう思ったかな。進路の参考になった? 確か、進路希望では桜海大学の名前も書いていたよね」
「そうですね。去年のオープンキャンパスは人が多すぎて、キャンパスの中をじっくりと観られなかったので、そのときに比べたら、この大学はいいなと思えました。文系学部に進むならここかなって感じです。明日香も同じみたいですね。早くから東京の大学を志望する羽村もここはいい大学だと言っていました」
「そっか。OGとして嬉しいよ」
文学部であれば、松雪先生や鈴音さんが先輩であるから心強い。
「あと、咲希は当初から桜海大学を強く希望しているみたいで、キャンパスを歩いているときはずっと楽しそうでした。彼女は言語学の方らしいですが」
「そうなんだ。転入の際に進路希望についても提出してもらって、桜海大学を第一志望にしていることは知っていたけど、そこまで強く希望していたとはね。前の学校の天羽女子で文系科目と英語の成績はかなり良かったから、このままいけば桜海大学も合格できるんじゃないかな」
「そうなんですね。先生がそう言うってことは天羽女子って頭がいいんでしょうね」
「首都圏にある女子校の中では指折りの進学校だよ。部活も盛んみたいだし。そういう高校もいいだろうけれど、あたしは桜海高校のゆったりとした雰囲気の方が好きかな」
「……そうですか」
東京の方は旅行やイベント以外で行ったことはないけれど、僕も桜海の優しい雰囲気は好きだ。10年ぶりに咲希が帰ってきてその想いに変化があるかと思ったけれど、そんなことはなかった。桜海に咲希が溶け込んでくれている気がして。
「蓮見君も成績や模試の結果がかなりいいから、羽村君のように東京の大学に挑戦してみてもいいし、桜海でもいいし。文系じゃなくて理系でも通用すると思うし。まあ、美波ちゃんのように芸術系になると微妙かもしれないけれど。迷わせるつもりはないよ。ただ、君にはたくさんの選択肢が持てるほどの能力があるって先生は思ってる。それを伝えたくて」
「随分と高く評価してくれるんですね、僕のこと」
「いいじゃない。3年連続受け持っている教え子なんだから。……よく考えて、高校を卒業した後の行き先を決めてほしいな」
「……分かりました」
今のところ、朧気に桜海大学に通っている未来が見えている。
ただ、東京の大学でもやっていけると言われたとき、何か寒気がした。それは故郷であり、大好きな街でもある桜海市を離れなければならないからだろうか。色々な人との別れを余儀なくされるからだろうか。進路を決めるとき、そこを考慮してもいいのだろうか。
「蓮見君。そろそろ注文しようか」
「は、はい」
僕はナポリタン、松雪先生は冷やし中華を頼んだ。
僕と先生が会計を済ませると、明日香達4人が既に僕らの席を確保していてくれた。みんなの笑顔を見ると安心するな。
その後、僕らは6人で楽しく昼食を食べた。そのときの話題はもちろん桜海大学のことがメインで。ちなみに、ナポリタンは値段の割にはボリュームもあって味も良かったのでとても満足。
来年の春からはこうした時間も過ごすのは難しくなるのかも。そんなことを考えるキャンパス見学になったのであった。
「あたしの先輩ということですか!」
「……うん? こちらのキュートなガールは?」
キュートなガールって国文学科卒の国語教師とは思えない言葉選びだ。
「松雪先生が卒業された桜海大学文学部の国文学科に通っている宮代鈴音さんです。彼女、僕がバイトしている喫茶店の新人さんで……」
「あぁ、あの喫茶店で働いているんだ。そういえば、今年度になってからまだ行っていないな……」
松雪先生はたまにシー・ブロッサムに来店してくれ、僕の作った料理やコーヒーを提供したこともある。そういえば、初めて彼女とお店で会ったとき、茶道部顧問なのに喫茶店に来るんだと訊いたら、コーヒーも紅茶も大好きなんだと断言されたっけ。
「初めまして、国文学科1年の宮代鈴音です! ええと、お姉さん……じゃなくて、先輩さんは蓮見君達とはどのようなご関係で?」
「私は桜海高校に勤めている国語教師で、彼ら4人の担任でもあるんだよ。初めまして、松雪里奈といいます。今年で28歳になるから、鈴音ちゃんよりも9期先輩になるのかな」
「そうなんですね! 里奈さん、もっと若いと思っていました! 綺麗な顔立ちもしていますし、スタイルもいいですし! せいぜい25歳くらいかと……」
「嬉しいことを言ってくれるじゃない、鈴音ちゃん。そういうことを言われちゃうと、あなたのことを彼女にしたくなっちゃうなぁ。その可愛い顔も私好みだし。……どう?」
そう言うと、松雪先生は妖艶な笑みを浮かべて右手で鈴音さんの頬に触れる。そういえば、前に生徒のことを狙っているかもしれないっていう噂を聞いたことがあるけれど、それって本当だったのかも。
「まさか、ここに可能性があったとは!」
羽村は興奮して、鈴音さんと松雪先生の写真をスマートフォンで撮っている。
「ご、ごめんなさい! あたし……好きな人がいるので!」
鈴音さんは顔をとても赤くして、松雪先生にそう言った。
「……そっか、残念。卒業した後に出会った子の中では、指折りで私のタイプの子だったから勢いで告白しちゃったよ。そんな私の言葉に真剣に返事してくれるなんてね。そのことでますます好きになったよ。ありがとう」
松雪先生はいつもの明るい笑みを浮かべながら、鈴音さんの頭を優しく撫でた。そのことで鈴音さんも、頬の赤みが消えないものの普段の可愛らしい笑みを取り戻す。
「ここまで後腐れのない告白シーン、フィクションでもなかなか見ないな」
「事実は小説よりも奇なり、という言葉そのものかもね」
今の告白はもちろんのこと、高校の担任教師が大学の食堂に1人でいることもそれに当てはまる気が。
あと、鈴音さんには好きな人がいるんだな。大学で出会った人なのかな。それについてはいずれ訊くことにするか。
「そういえば、ずっと気になっていたんですけど、松雪先生……どうしてここにいるんですか? 誰かと会う約束でも?」
「ううん、お昼ご飯を食べに来ただけだよ。あとは学生という若人を眺めに」
「な、なるほど」
コメントするのに困る回答だな。アラサーという実年齢よりも年上に思える。
「私、大学に進学したタイミングで、桜海大学の近くのアパートに住んでいてね。今も土曜日はここに来ることが多いよ。安くてボリュームもあるからね。それに、大学の雰囲気も好きで、学生を見ると元気をもらえるから」
「近くにそういう場所があると心強いですね」
「うん。先生に成り立ての頃は不安いっぱいで疲れて、教授やここに通っていた後輩に会いに行って元気をもらったよ」
「そうだったんですか。何だか意外ですね。いつも明るくて落ち着いているので」
「そうなれたのは、蓮見君達が入学したときくらいからよ。それだけ『教師』になれてきたからかもしれないけど」
そう言う松雪先生は照れ笑い。入学当初から彼女はとてもしっかりしている教師であり、この人が担任に良かったことが何度もあった。そんな彼女にも『教師』という職に不安な時代があったんだな。
「ここは食堂だ。お昼ご飯を食べよう。美味しいし、メニューも豊富だよ。席も空いてきたし、6人一緒に食べられそうだ。さあ、それぞれ食べたいものを取ろう」
僕らはそれぞれ食べたいものを取りに行くことに。
僕はパスタを食べたい気分なので麺類のコーナーへ。同じような気分なのか、すぐ側には松雪先生がいた。
「蓮見君も麺類?」
「ええ。パスタを食べたくて。……あっ、ナポリタンがあるのでそれにしようかな。バイトしている喫茶店とどう違うのか気になります」
どうやら、麺類は注文してから作るようで時間がかかりそうだ。丼や定食の方と違って列の流れがあまり良くない。
「すっかりと料理人だね、蓮見君は。喫茶店での料理は美味しかったし……先生、あまり料理は得意な方じゃないから、これからは蓮見君が私のご飯を作ってくれると嬉しいな」
そう言って、松雪先生は僕に腕を絡ませてくる。僕の料理に期待しているのかいつになく上目遣いで僕のことを見てきて。思い返せば、この2年で先生も来店して、僕の作った料理を美味しそうに食べてくれたな。
「バイトは今月で終わりなので、今月はシー・ブロッサムに来店しお金を払った上で。それ以降は……受験勉強がありますからね。気分転換に料理はするんでしょうけど。食べたくなったら連絡ください」
「……本当に料理だけについて返事をしたな、こいつ。先生は私と恋人として付き合ったり、結婚したりしてほしいっていう意味で言ったんだよ。私が受け持った生徒の中じゃ5本指に入るくらいに素敵な生徒だからさ。蓮見君ならいいかなって」
その気持ちは有り難いけど、それならさっきの鈴音さんのときみたいにストレートに言えばいいじゃないか。
「先生と恋人として付き合ったり、結婚したりするつもりはないですよ。というか、在学中の教え子にそんなことを言うのは問題ですって。生徒を狙っているという噂……本当だったんですね」
僕がそう言うと、先生は特に怒ったり焦ったりすることもなく、クスクスと笑った。
「あぁ、そんな噂がうちの学校にあるのは知ってる。そうだね……素敵だって思う生徒はたくさんいるよ。この子と一緒にいられるといいなと思うこともたまにある。ただ、その想いを伝えたいほどに素敵な人はそうそういない。そういう意味では、君達5人は粒ぞろいだよ。仮に想いが重なっても、そこは法に触れることのないように、教師としてきちんとした付き合い方をするよ」
「……そうですか」
とりあえず、先生がしっかりした考えを持っていることが分かって一安心。今の話を聞いてからご飯を作ってくれって言われたら、少しはキュンとしたのかもしれない。
「そっち関連の進路の話は一旦置いといて。桜海大学を見学してみてどう思ったかな。進路の参考になった? 確か、進路希望では桜海大学の名前も書いていたよね」
「そうですね。去年のオープンキャンパスは人が多すぎて、キャンパスの中をじっくりと観られなかったので、そのときに比べたら、この大学はいいなと思えました。文系学部に進むならここかなって感じです。明日香も同じみたいですね。早くから東京の大学を志望する羽村もここはいい大学だと言っていました」
「そっか。OGとして嬉しいよ」
文学部であれば、松雪先生や鈴音さんが先輩であるから心強い。
「あと、咲希は当初から桜海大学を強く希望しているみたいで、キャンパスを歩いているときはずっと楽しそうでした。彼女は言語学の方らしいですが」
「そうなんだ。転入の際に進路希望についても提出してもらって、桜海大学を第一志望にしていることは知っていたけど、そこまで強く希望していたとはね。前の学校の天羽女子で文系科目と英語の成績はかなり良かったから、このままいけば桜海大学も合格できるんじゃないかな」
「そうなんですね。先生がそう言うってことは天羽女子って頭がいいんでしょうね」
「首都圏にある女子校の中では指折りの進学校だよ。部活も盛んみたいだし。そういう高校もいいだろうけれど、あたしは桜海高校のゆったりとした雰囲気の方が好きかな」
「……そうですか」
東京の方は旅行やイベント以外で行ったことはないけれど、僕も桜海の優しい雰囲気は好きだ。10年ぶりに咲希が帰ってきてその想いに変化があるかと思ったけれど、そんなことはなかった。桜海に咲希が溶け込んでくれている気がして。
「蓮見君も成績や模試の結果がかなりいいから、羽村君のように東京の大学に挑戦してみてもいいし、桜海でもいいし。文系じゃなくて理系でも通用すると思うし。まあ、美波ちゃんのように芸術系になると微妙かもしれないけれど。迷わせるつもりはないよ。ただ、君にはたくさんの選択肢が持てるほどの能力があるって先生は思ってる。それを伝えたくて」
「随分と高く評価してくれるんですね、僕のこと」
「いいじゃない。3年連続受け持っている教え子なんだから。……よく考えて、高校を卒業した後の行き先を決めてほしいな」
「……分かりました」
今のところ、朧気に桜海大学に通っている未来が見えている。
ただ、東京の大学でもやっていけると言われたとき、何か寒気がした。それは故郷であり、大好きな街でもある桜海市を離れなければならないからだろうか。色々な人との別れを余儀なくされるからだろうか。進路を決めるとき、そこを考慮してもいいのだろうか。
「蓮見君。そろそろ注文しようか」
「は、はい」
僕はナポリタン、松雪先生は冷やし中華を頼んだ。
僕と先生が会計を済ませると、明日香達4人が既に僕らの席を確保していてくれた。みんなの笑顔を見ると安心するな。
その後、僕らは6人で楽しく昼食を食べた。そのときの話題はもちろん桜海大学のことがメインで。ちなみに、ナポリタンは値段の割にはボリュームもあって味も良かったのでとても満足。
来年の春からはこうした時間も過ごすのは難しくなるのかも。そんなことを考えるキャンパス見学になったのであった。
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