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第69話『打上花火-後編-』
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僕は明日香のことが好きであり、恋人として付き合いたい気持ちを伝えた。その瞬間に、これまで抱いていた緊張が一気に抜けていって。
明日香の手の握りが僅かに強くなったことが分かってすぐに、
「……ずっとこのときを待っていたよ、つーちゃん。私からの告白を受け入れてくれてありがとう。とても嬉しいよ。もちろん、つーちゃんの告白を受けます。これからは……恋人としてよろしくお願いします」
目に涙を浮かばせながら、嬉しそうな表情を浮かべてそう言ってくれた。その瞬間に打ち上げられた花火によって、明日香の笑みがより煌めいて。
「最高のタイミングだね、つーちゃん。とっても幸せです」
明日香は僕のことをぎゅっと抱きしめて、僕らの告白を約束するかのようにキスしてきた。さっき、明日香は屋台でいちごのかき氷を食べていたからか、いちごの甘い香りがしてきて。
これまで何度も口づけしているのに、彼女の唇の柔らかさ、温かさ、匂いにとても癒やされ、ドキドキさせてくれる。いつまでもこうしていられるように、これから頑張らないと。
唇を離すと明日香は照れた様子だけど、にっこりと笑う。
次々と打ち上げられる花火が、僕らを祝福しているようにも思えた。
「ねえ、つーちゃん。もし、お互いに東京にある志望大学に合格できたら、そのときは一緒に住みたいなって思うんだけど……どうかな?」
「もちろんいいよ。明日香からそう言ってくれるなんて嬉しいな。もちろん近いうちに明日香と一緒に住みたいって僕も思っていたけど。じゃあ、そのためにもお互いに受験を頑張らないといけないね」
「……うん。来年の春からはずっと一緒に暮らそうね。じゃあ、その約束を込めてもう一度口づけしようよ。今度は……つーちゃんからしてほしい」
「……いいよ」
明日香のおねだり通り、僕からキスする。たぶん、咲希達がこの様子を見ているはずだろうし、そう考えると恥ずかしさもある。
ただ、そんなことは知らない明日香は、キスで興奮してきたからか、軽く舌を絡ませてきて。灯りは近くの街灯しかないし、誰か来るときには足音が聞こえるから大丈夫とでも思っているのかな。
「つい見入っちゃった。翼! 明日香! おめでとう!」
『おめでとう!』
咲希のそんな声が聞こえて、拍手をしながらみんなが僕達の前に姿を現した瞬間、
「きゃああっ!」
明日香はそんな悲鳴を上げて、慌てて僕から離れる。物凄く恥ずかしい表情をして、自然をちらつかせている。果てには僕の後ろに隠れてしまう。
「ううっ、恥ずかしいよ。でも、おめでとうってことは……」
「そうだよ。みんな、僕が明日香に恋人として付き合いたいって告白することを知っていたんだ。もちろん、咲希には最初にその想いを伝えたよ。旅行から帰ってきた翌日に。みんなに頼んで明日香には内緒にしてもらっていたんだ」
「そうだったんだ。全然気付かなかったな……」
明日香にバレぬまま告白できたことに安心するけど、何よりも進路を決めた上で明日香に想いを伝えることができたことを嬉しく思う。
「まあ、翼からそれを話されたときはショックだったけど、明日香が一番好きでずっと一緒にいたいっていう翼の想いは揺るがないってすぐに分かったから、翼と明日香のことを応援することに決めたんだよ」
「この場所がいいって提案したのはあたし。この前の喧嘩のお詫びもそうだけど、想いを伝えるんだったら2人きりになれて、祭りの風景を一望できるこの場所がいいんじゃないかと思ってね」
「私がセッティングして、みなさま以外の方が入らないように警備しておりました」
「そうでしたか。素敵な場所を用意していただいてありがとう、みなみん、凛さん」
「……うん。これで本当にスッキリできたよ、おめでとう、明日香。蓮見君、明日香を悲しませたりしたら許さないんだからね」
「うん。明日香のことはしっかりと守っていくよ」
できるだけ明日香が笑顔でいられるように頑張りたい。
あと、明日香は常盤さんと東京にある同じ美術大学に志望しているけれど、東京には何があるか分からないからな。イベントで羽村と何度か東京に行ったことがあるけど、どこもかしも人ばかりだし。
「しっかし、さっきの蓮見と朝霧の様子を見ていると、陽乃と俺のときも同じような感じだったのかなって思うよ」
「ただ、あのときは会長が体調を崩していましたからね。そんな私も、お二人がキスをしたのを見たとき、会長に告白したときのことを思い出してかなりドキドキしました」
「あたしもドキドキしたよ、陽乃ちゃん。翼君に告白したとき、勢いでキスしたから……」
「そうだったんですか! 蓮見先輩に告白したのは知っていましたが……」
「口づけすれば翼君の気持ちがあたしに向いてくれるかなって。結局フラれちゃったけれどね。でも、そのときにはもう、恋人にするなら明日香ちゃんか咲希ちゃんのどっちかって言っていたから。……うん、その通りになって本当に良かった。翼君と明日香ちゃん、おめでとう」
あのときのことを思い出しているのか、鈴音さんは照れくさそうに笑みを見せる。鈴音さんから告白されたのも2ヶ月近く前で、かなり昔のように思えるけれど、あのときの口づけの感覚ははっきりと覚えている。
僕らがどう見えていたかは分からないけど、三宅さんが羽村に告白したときはとても微笑ましい感じがした。
「お兄ちゃんと明日香ちゃんが付き合い始めるのはとても嬉しい。ただ、2人とも第一志望の大学に合格したら東京に行っちゃうんだね。それは何だか寂しいな……」
「芽依ちゃんは蓮見君や明日香ちゃんのことが大好きなんだね。私も教え子が桜海から離れるのは寂しいけど、本人が一番行きたいところに行けるなら教師としてサポートするよ。蓮見君は理系学部だから、現役での合格はかなりハードルが高くなるけど」
「……ええ、頑張ります」
「まあ、蓮見君と羽村君ならどこの学部でも受かる気がするけどね。あと、蓮見君と明日香ちゃん、教師として2人には清く正しく付き合いなさいって言いたいところけど……今は夏休みで、花火大会の真っ最中。1人の女性として送るわ。温かく、優しく、そして楽しく付き合いなさい! いつか結婚式に招待してよ! おめでとう!」
松雪先生は優しい笑みを浮かべて、僕と明日香に祝福の拍手を今一度贈る。それが連鎖したのか咲希達も拍手を贈ってくれる。
――ぐううっ。
拍手の中、誰かのお腹が盛大に鳴った。僕は思わず咲希の方を見てしまったけど、
「おっ、花火に負けないくらいに大きく鳴ってしまった」
これはお恥ずかしい、と羽村は笑う。
「いやぁ、陽乃とは輪投げとか射撃とか遊ぶ系の屋台を中心に回ったから、あまり食べていなかったんだ。ここに来る途中に焼きそばとか焼き鳥は買ってきたんだが」
「羽村君達も焼き鳥を買ったんだ! あたし達はその他につくねとか、イカ焼きとか、焼きとうもろこしとか。今の羽村君の音を聞いたらあたしもお腹減ってきたよ」
「4人で回ったときもたくさんたべたのに、もうお腹空いたの? さすがは咲希」
常盤さんも咲希の大食いぶりには慣れてきたか。確かに、4人で回ったときもたくさん買っていたけれど、僕や明日香、常盤さんに分けてくれたのでその分、お腹の空くのが早いのかも。
「あたし達は唐揚げやフランクフルト、あとは大判焼きを買ったよ。まあ、里奈さんにおねだりして買ってもらったけれどね」
「優しい先生ですよねぇ」
「よしてよ、照れちゃうって。鈴音ちゃんと芽依ちゃんがあまりにも可愛かったから、ここは大人としてお代を出そうと思って。あとはラムネとビールを買ってきた」
可愛いものが好きな松雪先生のことを見抜いて、芽依と鈴音さんは甘えたのだろうか。まあ、先生がとても気分が良さそうなので、そこは訊かないでおこう。
「さあ、蓮見と朝霧が恋人になった祝いも込めて、みんなでこの夜を楽しもうじゃないか!」
『おー!』
僕らは屋台で買ったものを食べながら、打上花火を楽しむことに。あと、こういうところでみんなをまとめるとはさすが生徒会長。
多くの人が来ているこの催しなのに、僕ら10人でのんびりと過ごせるなんて。本当に贅沢で有り難い限りだ。
明日香と恋人になったこともあってか、焼きそばや唐揚げなどを食べさせ合ったり、明日香のことを後ろから抱きしめて一緒に「たーまやー!」と叫んだり。そのことで気持ちが盛り上がったのか、明日香から口づけされたり。そんなところを咲希や常盤さんに写真を撮られたり。
高校最後の花火大会は、恋人の明日香、ひさしぶりに再会した咲希、もちろん羽村や常盤さん達も一緒だったおかげもあって一番楽しいものになったと思う。
だからこそ、寂しさや切なさも同時に抱いてしまって。そんな気持ちを少しでも無くしたいがために、僕は明日香のことを何度も抱きしめたのであった。
明日香の手の握りが僅かに強くなったことが分かってすぐに、
「……ずっとこのときを待っていたよ、つーちゃん。私からの告白を受け入れてくれてありがとう。とても嬉しいよ。もちろん、つーちゃんの告白を受けます。これからは……恋人としてよろしくお願いします」
目に涙を浮かばせながら、嬉しそうな表情を浮かべてそう言ってくれた。その瞬間に打ち上げられた花火によって、明日香の笑みがより煌めいて。
「最高のタイミングだね、つーちゃん。とっても幸せです」
明日香は僕のことをぎゅっと抱きしめて、僕らの告白を約束するかのようにキスしてきた。さっき、明日香は屋台でいちごのかき氷を食べていたからか、いちごの甘い香りがしてきて。
これまで何度も口づけしているのに、彼女の唇の柔らかさ、温かさ、匂いにとても癒やされ、ドキドキさせてくれる。いつまでもこうしていられるように、これから頑張らないと。
唇を離すと明日香は照れた様子だけど、にっこりと笑う。
次々と打ち上げられる花火が、僕らを祝福しているようにも思えた。
「ねえ、つーちゃん。もし、お互いに東京にある志望大学に合格できたら、そのときは一緒に住みたいなって思うんだけど……どうかな?」
「もちろんいいよ。明日香からそう言ってくれるなんて嬉しいな。もちろん近いうちに明日香と一緒に住みたいって僕も思っていたけど。じゃあ、そのためにもお互いに受験を頑張らないといけないね」
「……うん。来年の春からはずっと一緒に暮らそうね。じゃあ、その約束を込めてもう一度口づけしようよ。今度は……つーちゃんからしてほしい」
「……いいよ」
明日香のおねだり通り、僕からキスする。たぶん、咲希達がこの様子を見ているはずだろうし、そう考えると恥ずかしさもある。
ただ、そんなことは知らない明日香は、キスで興奮してきたからか、軽く舌を絡ませてきて。灯りは近くの街灯しかないし、誰か来るときには足音が聞こえるから大丈夫とでも思っているのかな。
「つい見入っちゃった。翼! 明日香! おめでとう!」
『おめでとう!』
咲希のそんな声が聞こえて、拍手をしながらみんなが僕達の前に姿を現した瞬間、
「きゃああっ!」
明日香はそんな悲鳴を上げて、慌てて僕から離れる。物凄く恥ずかしい表情をして、自然をちらつかせている。果てには僕の後ろに隠れてしまう。
「ううっ、恥ずかしいよ。でも、おめでとうってことは……」
「そうだよ。みんな、僕が明日香に恋人として付き合いたいって告白することを知っていたんだ。もちろん、咲希には最初にその想いを伝えたよ。旅行から帰ってきた翌日に。みんなに頼んで明日香には内緒にしてもらっていたんだ」
「そうだったんだ。全然気付かなかったな……」
明日香にバレぬまま告白できたことに安心するけど、何よりも進路を決めた上で明日香に想いを伝えることができたことを嬉しく思う。
「まあ、翼からそれを話されたときはショックだったけど、明日香が一番好きでずっと一緒にいたいっていう翼の想いは揺るがないってすぐに分かったから、翼と明日香のことを応援することに決めたんだよ」
「この場所がいいって提案したのはあたし。この前の喧嘩のお詫びもそうだけど、想いを伝えるんだったら2人きりになれて、祭りの風景を一望できるこの場所がいいんじゃないかと思ってね」
「私がセッティングして、みなさま以外の方が入らないように警備しておりました」
「そうでしたか。素敵な場所を用意していただいてありがとう、みなみん、凛さん」
「……うん。これで本当にスッキリできたよ、おめでとう、明日香。蓮見君、明日香を悲しませたりしたら許さないんだからね」
「うん。明日香のことはしっかりと守っていくよ」
できるだけ明日香が笑顔でいられるように頑張りたい。
あと、明日香は常盤さんと東京にある同じ美術大学に志望しているけれど、東京には何があるか分からないからな。イベントで羽村と何度か東京に行ったことがあるけど、どこもかしも人ばかりだし。
「しっかし、さっきの蓮見と朝霧の様子を見ていると、陽乃と俺のときも同じような感じだったのかなって思うよ」
「ただ、あのときは会長が体調を崩していましたからね。そんな私も、お二人がキスをしたのを見たとき、会長に告白したときのことを思い出してかなりドキドキしました」
「あたしもドキドキしたよ、陽乃ちゃん。翼君に告白したとき、勢いでキスしたから……」
「そうだったんですか! 蓮見先輩に告白したのは知っていましたが……」
「口づけすれば翼君の気持ちがあたしに向いてくれるかなって。結局フラれちゃったけれどね。でも、そのときにはもう、恋人にするなら明日香ちゃんか咲希ちゃんのどっちかって言っていたから。……うん、その通りになって本当に良かった。翼君と明日香ちゃん、おめでとう」
あのときのことを思い出しているのか、鈴音さんは照れくさそうに笑みを見せる。鈴音さんから告白されたのも2ヶ月近く前で、かなり昔のように思えるけれど、あのときの口づけの感覚ははっきりと覚えている。
僕らがどう見えていたかは分からないけど、三宅さんが羽村に告白したときはとても微笑ましい感じがした。
「お兄ちゃんと明日香ちゃんが付き合い始めるのはとても嬉しい。ただ、2人とも第一志望の大学に合格したら東京に行っちゃうんだね。それは何だか寂しいな……」
「芽依ちゃんは蓮見君や明日香ちゃんのことが大好きなんだね。私も教え子が桜海から離れるのは寂しいけど、本人が一番行きたいところに行けるなら教師としてサポートするよ。蓮見君は理系学部だから、現役での合格はかなりハードルが高くなるけど」
「……ええ、頑張ります」
「まあ、蓮見君と羽村君ならどこの学部でも受かる気がするけどね。あと、蓮見君と明日香ちゃん、教師として2人には清く正しく付き合いなさいって言いたいところけど……今は夏休みで、花火大会の真っ最中。1人の女性として送るわ。温かく、優しく、そして楽しく付き合いなさい! いつか結婚式に招待してよ! おめでとう!」
松雪先生は優しい笑みを浮かべて、僕と明日香に祝福の拍手を今一度贈る。それが連鎖したのか咲希達も拍手を贈ってくれる。
――ぐううっ。
拍手の中、誰かのお腹が盛大に鳴った。僕は思わず咲希の方を見てしまったけど、
「おっ、花火に負けないくらいに大きく鳴ってしまった」
これはお恥ずかしい、と羽村は笑う。
「いやぁ、陽乃とは輪投げとか射撃とか遊ぶ系の屋台を中心に回ったから、あまり食べていなかったんだ。ここに来る途中に焼きそばとか焼き鳥は買ってきたんだが」
「羽村君達も焼き鳥を買ったんだ! あたし達はその他につくねとか、イカ焼きとか、焼きとうもろこしとか。今の羽村君の音を聞いたらあたしもお腹減ってきたよ」
「4人で回ったときもたくさんたべたのに、もうお腹空いたの? さすがは咲希」
常盤さんも咲希の大食いぶりには慣れてきたか。確かに、4人で回ったときもたくさん買っていたけれど、僕や明日香、常盤さんに分けてくれたのでその分、お腹の空くのが早いのかも。
「あたし達は唐揚げやフランクフルト、あとは大判焼きを買ったよ。まあ、里奈さんにおねだりして買ってもらったけれどね」
「優しい先生ですよねぇ」
「よしてよ、照れちゃうって。鈴音ちゃんと芽依ちゃんがあまりにも可愛かったから、ここは大人としてお代を出そうと思って。あとはラムネとビールを買ってきた」
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「さあ、蓮見と朝霧が恋人になった祝いも込めて、みんなでこの夜を楽しもうじゃないか!」
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多くの人が来ているこの催しなのに、僕ら10人でのんびりと過ごせるなんて。本当に贅沢で有り難い限りだ。
明日香と恋人になったこともあってか、焼きそばや唐揚げなどを食べさせ合ったり、明日香のことを後ろから抱きしめて一緒に「たーまやー!」と叫んだり。そのことで気持ちが盛り上がったのか、明日香から口づけされたり。そんなところを咲希や常盤さんに写真を撮られたり。
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