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本編
第35話『声明-前編-』
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4月26日、木曜日。
昨日とは違って、今日はよく晴れていて気持ちのいい春の陽気だ。
ミッションの期限までは今日を入れてあと5日。菅原と決着を付けるための上手い方法はなかなか見つからない。
今日も公園を通ると、いつものベンチで茶トラ猫がのんびりしていた。
「また、アリスさんと一緒に君と戯れるときが来るのかな」
「にゃーん」
茶トラ猫は元気に鳴いてくれる。今のは……またそういうときが来ると思うよって解釈してもいいよね。
「学校に行ってくるからな」
僕は学校へと向かい始める。
そういえば、僕がこうして高校に通っているように、琴葉をいじめた生徒達もどこかの高校に通っていたり、働いていたりしているんだよな。今も彼らのせいで、琴葉のようにいじめられてしまっている人がいなければいいけれど。
「何としてでもやらないといけないな」
きっと、アリスさんと琴葉は色々なことを考えて、菅原と決着を付けるという最後のミッションを沙奈会長と僕に課したんだ。
月野学園の校舎が見え始めてきた。少なくとも、生徒会メンバーの前では自然体でいられるといいな。
「すみません。あなた……2年前に同級生に重傷を負わせて逮捕された逢坂玲人さんですか?」
僕の目の前にメガネをかけたスーツ姿の男性が現れる。細身で背は僕よりも少し低いくらいで、年齢は30代だろうか。横には部下らしき女性がICレコーダーを僕に向けている。
それにしても、今の一言で……面倒な事態になりそうだと予想できた。まさか、これはアリスさんの仕業か? それとも、別の理由で?
「僕が逢坂玲人であるかどうかを答える前に、僕はあなた方に2つ訊きたいことがあります。本当のことを知りたいなら、包み隠さず答えてください。まず、あなたは何者ですか? まずは自己紹介すべきでしょう」
「失礼いたしました。私、こういう者です」
そう言って、男性は僕に名刺を差し出してきた。
週刊文秋の記者……やっぱり、メディア関係の人間だったか。週刊文秋って確か、事件直後に僕や琴葉の家族にしつこく取材した雑誌の1つだ。そ
「では、もう1つ質問します。どうして、僕が2年前に同級生へ重傷を負わせたことで逮捕された逢坂玲人だと思ったのか。その根拠を示していただけますか。普通に高校生活を送る人に対して前科者だと言っているのです。まさか、何のソースもなしに僕を逢坂玲人だと言っているわけがありませんよね?」
月野学園の校舎が見えるところで、記者達は僕のことを待っていた。ということは『2年前に逮捕された逢坂玲人は今、月野学園高校に通っている』という情報がどこかに存在しているはず。そのことを確かめたかったのだ。
「仕方ありませんね。いいでしょう。ソースはSNSの公開アカウントですからね。スクリーンショットはしていますが」
男性記者はスマートフォンを操作している。何でこの記者は上から目線なんだろうか。俺が高校生だからか? 段々とイライラしてきたけれど、感情的になったら彼らの思う壺。冷静に対応しないと。
「これです」
ええと、これはTubutterというSNSへの投稿ツイートか。教室で僕がスマートフォンを弄っているときの写真が添付されている。この呟きをしたのはユーザーネーム『かなこ』さん。名前からして女性かな。
『別のクラスの男子だけどすっごいイケメン!
恐いっていう子も多いけど、私は好き!』
好意的な内容なのはいいけれど、勝手に写真を撮ってSNSにアップしないでほしい。現にこうして週刊誌の記者に見つかってしまったし。たくさん「いいね」がついており、しかも拡散もされている。
「このツイートへの返信に、あなたのことが書かれているツイートがあって」
該当する返信ツイートを見せてもらう。ユーザーネームは『K.S.』さん。
『こいつ、髪の色は変わっているけど逢坂玲人っていうんだ。
同級生の女子を意識不明にさせて逮捕された物凄く恐いヤツだぜ。ちなみにどこの高校なの?』
という内容のツイートだった。このツイートをした人は、僕と同じ中学に通っていた人と考えて間違いないだろうな。それに、この『K.S.』という名前……『Kazuki Sugawara』とも解釈できる。
ちなみに、この返信ツイートに対する『かなこ』さんのツイートもあって、
『月野学園高校です!』
堂々と高校名を応えてしまっている。この『かなこ』さんにはTubutterの使用を禁止させて、ネットの基本的なことから勉強させた方がいいな。
「……なるほど、そういうことでしたか」
ついに、恐れていたことが起こり始めてしまったんだ。
月野学園に通っている逢坂玲人が、過去に罪を犯したことが知られていくこと。覚悟はしていたけれど、実際にそういう状況になると息苦しくなってくるな。
「それで、結局……あなたは逢坂玲人さんなんですか?」
「はい、僕が逢坂玲人です」
すると、男性記者は嘲笑しながら僕のことを見てくる。きっと、僕を前科者として見ているんだな。
「それで、僕が逢坂玲人だと知ったところで、どのような記事を書きたいのですか? 過去に罪を犯した高校生に取材しても、何の面白みもないと思いますが」
僕がそう言うと、男性記者はふっと笑う。
「……面白み? あなたから面白さなど期待していません。1人でも多くの人間に、うちの雑誌に興味を持ってもらうか。その餌の1つとして、あなたを使わせてもらうんです」
餌と言っている時点で、この男性記者は読者も人間だと思っていないだろうな。
「興味を抱かれそうな記事を書いて、より多く金を稼ぎたい気持ちは分かります。ただ、それなら、取材費を僕にいただけるんでしょうね? 僕は高いですよ。あなた方は人一人の高校生活やプライバシーに踏み込もうとしている。僕の貴重な時間をあなた方に割くのですから、その対価を払うべきでしょう。そうでなければ、僕はこの取材は受けませんし、僕の平穏な高校生活が脅かされるような記事を書いた場合は、法的措置も辞さない考えです」
このくらいのことを言わないと相手側のペースになってしまう。そういうことは、警察の取り調べなどから学んだことだ。
「被害者の女性は今も意識不明のままという情報もあります。事件さえなければ、その子も今頃、楽しい高校生活を送れていたかもしれないのに。あなたは禁固1年の刑を受けたにも関わらずのうのうと高校生活を送っている。反省の気持ちはないのですか?」
「彼女やご家族に対して、事件直後から何度も謝意を伝えており、今も反省の気持ちは持っています。月野学園高校からは、試験を受けた上で高校生活を送っていいという許可をいただきました。ですから、僕は月野学園でしっかりと学校生活を送ることに決めました。高校生活を送っているから反省していないと言われる筋合いは全くありません」
「そ、それは……」
「それに、反省していないのはそちらでしょう。事件直後、週刊文秋さんを含めた多くのメディアが、僕の家族や被害者家族のことを突き止め、執拗な取材を行ない、それによって心身共に多大な疲労を与えたと聞いています。取材を断れば、関係者を傷つけるような捏造記事を書いたとか。その記事を書いたら、関係者にどんなことが起きるのか想像できますか。何が起こっても、あなた方がきちんと責任を取っていただけるのですか。せいぜい、責めるつもりで書いたわけではないと言い逃れをするだけでしょう。責任を取れない記事を書かないでいただきたいですね」
メディアの執拗な取材により、僕の家族や琴葉の家族がどれだけ苦しんだことか。断れば非難するような記事を勝手に書いて。事の発端は僕だけれど、メディアには不信感もあるし、恨んでもいる。
「前科者が何言ってるんだよ」
そう吐き捨てて、男性記者は僕のことを睨んでくる。高校生相手にムキになってどうするんだ。思わず笑ってしまう。
「確かに僕は前科者です。ただ、僕は間違ったことを言ったつもりはありません。あと、仮に僕が前科者ではない普通の高校生だとしたら、あなた方はさっきの僕の言葉にどう反論しますか。大人として、社会人として高校生の僕に教えていただけませんか。言葉巧みに記事を書いている週刊誌記者なら、そのくらいのことはちゃんと教えられますよね? そもそも、前科者かどうかを問わずに僕の言ったことが間違っているからこそ、何言っているんだと言ったんですよね?」
僕は過去にあった事実と、そこから考えたことについて自信を持って言っただけだ。それに対する反論があるならきちんと言えるはず。少なくとも、前科者が何を言っているんだとは言わないはず。
「くそっ……」
男性記者はそう漏らすだけでそれ以上は何も言ってこない。何も思い浮ばずに考え中なのか、それとも反論してきた僕に怒っているのか。
「何も言えないんですね。何か反論してくると思いましたが……」
まあ、その程度の記者だったんだろう。後で僕のことを非難する記事が書かれるかもしれないけれど……仕方ない、こればかりは。
「用もあるので、そろそろ学校に行かせてもらえませんか。本来、あなた方に割く時間なんて1秒たりともないのですよ。これ以上しつこくつきまとうなら……僕に対する侮辱やストーカーで警察に被害届出すぞ。覚悟しとけ」
「……帰るぞ!」
「は、はいっ! お時間を取らせてしまって申し訳ありませんでした! 失礼します!」
きちんと謝り、挨拶をして立ち去っていくだけ、女性記者はまともに思えた。将来、あの男性記者のようにならないことを祈るばかりだ。
「このことを知らせておこう」
今はネット記事だってある。今日中にこのことが発信されるかもしれない。家族にはすぐに知らせておかなければ。
『週刊文秋の記者に僕が月野学園に通っていることがバレた。ネットで僕のことが広まり始めているみたい。これから色々と迷惑がかかるかも。本当にごめん』
家族のグループトークにメッセージを送っておく。家族に事件直後のような目には遭わせたくない。月野学園にこの波が押し寄せるのも時間の問題かな。
『謝る必要はないよ、玲人。お姉ちゃんは大丈夫』
『麻実の言う通り。でも、辛くなったら連絡してね。お母さんは家にいるから』
『玲人、無理だけはするな。困ったり、辛くなったりしたら生徒会の方や先生を頼りなさい。あと、父さんも色々と動いてみる』
姉さんも、母さんも、父さんも……すぐにそう返信してくれた。心強い家族だ。
それにしても、父さん……色々と動いてみると言っているけどどうするんだ? 父さんの勤める株式会社SKTTに頼れる人がいるのかな? 何日か前に、今月異動してきた若手社員が凄いと酔っ払いながら言っていたのは覚えているけれど。
『ありがとう』
そう返信して、僕は月野学園高校へと向かっていく。とりあえず、僕はなるべく普段通りに学校生活を送ることにしよう。
昨日とは違って、今日はよく晴れていて気持ちのいい春の陽気だ。
ミッションの期限までは今日を入れてあと5日。菅原と決着を付けるための上手い方法はなかなか見つからない。
今日も公園を通ると、いつものベンチで茶トラ猫がのんびりしていた。
「また、アリスさんと一緒に君と戯れるときが来るのかな」
「にゃーん」
茶トラ猫は元気に鳴いてくれる。今のは……またそういうときが来ると思うよって解釈してもいいよね。
「学校に行ってくるからな」
僕は学校へと向かい始める。
そういえば、僕がこうして高校に通っているように、琴葉をいじめた生徒達もどこかの高校に通っていたり、働いていたりしているんだよな。今も彼らのせいで、琴葉のようにいじめられてしまっている人がいなければいいけれど。
「何としてでもやらないといけないな」
きっと、アリスさんと琴葉は色々なことを考えて、菅原と決着を付けるという最後のミッションを沙奈会長と僕に課したんだ。
月野学園の校舎が見え始めてきた。少なくとも、生徒会メンバーの前では自然体でいられるといいな。
「すみません。あなた……2年前に同級生に重傷を負わせて逮捕された逢坂玲人さんですか?」
僕の目の前にメガネをかけたスーツ姿の男性が現れる。細身で背は僕よりも少し低いくらいで、年齢は30代だろうか。横には部下らしき女性がICレコーダーを僕に向けている。
それにしても、今の一言で……面倒な事態になりそうだと予想できた。まさか、これはアリスさんの仕業か? それとも、別の理由で?
「僕が逢坂玲人であるかどうかを答える前に、僕はあなた方に2つ訊きたいことがあります。本当のことを知りたいなら、包み隠さず答えてください。まず、あなたは何者ですか? まずは自己紹介すべきでしょう」
「失礼いたしました。私、こういう者です」
そう言って、男性は僕に名刺を差し出してきた。
週刊文秋の記者……やっぱり、メディア関係の人間だったか。週刊文秋って確か、事件直後に僕や琴葉の家族にしつこく取材した雑誌の1つだ。そ
「では、もう1つ質問します。どうして、僕が2年前に同級生へ重傷を負わせたことで逮捕された逢坂玲人だと思ったのか。その根拠を示していただけますか。普通に高校生活を送る人に対して前科者だと言っているのです。まさか、何のソースもなしに僕を逢坂玲人だと言っているわけがありませんよね?」
月野学園の校舎が見えるところで、記者達は僕のことを待っていた。ということは『2年前に逮捕された逢坂玲人は今、月野学園高校に通っている』という情報がどこかに存在しているはず。そのことを確かめたかったのだ。
「仕方ありませんね。いいでしょう。ソースはSNSの公開アカウントですからね。スクリーンショットはしていますが」
男性記者はスマートフォンを操作している。何でこの記者は上から目線なんだろうか。俺が高校生だからか? 段々とイライラしてきたけれど、感情的になったら彼らの思う壺。冷静に対応しないと。
「これです」
ええと、これはTubutterというSNSへの投稿ツイートか。教室で僕がスマートフォンを弄っているときの写真が添付されている。この呟きをしたのはユーザーネーム『かなこ』さん。名前からして女性かな。
『別のクラスの男子だけどすっごいイケメン!
恐いっていう子も多いけど、私は好き!』
好意的な内容なのはいいけれど、勝手に写真を撮ってSNSにアップしないでほしい。現にこうして週刊誌の記者に見つかってしまったし。たくさん「いいね」がついており、しかも拡散もされている。
「このツイートへの返信に、あなたのことが書かれているツイートがあって」
該当する返信ツイートを見せてもらう。ユーザーネームは『K.S.』さん。
『こいつ、髪の色は変わっているけど逢坂玲人っていうんだ。
同級生の女子を意識不明にさせて逮捕された物凄く恐いヤツだぜ。ちなみにどこの高校なの?』
という内容のツイートだった。このツイートをした人は、僕と同じ中学に通っていた人と考えて間違いないだろうな。それに、この『K.S.』という名前……『Kazuki Sugawara』とも解釈できる。
ちなみに、この返信ツイートに対する『かなこ』さんのツイートもあって、
『月野学園高校です!』
堂々と高校名を応えてしまっている。この『かなこ』さんにはTubutterの使用を禁止させて、ネットの基本的なことから勉強させた方がいいな。
「……なるほど、そういうことでしたか」
ついに、恐れていたことが起こり始めてしまったんだ。
月野学園に通っている逢坂玲人が、過去に罪を犯したことが知られていくこと。覚悟はしていたけれど、実際にそういう状況になると息苦しくなってくるな。
「それで、結局……あなたは逢坂玲人さんなんですか?」
「はい、僕が逢坂玲人です」
すると、男性記者は嘲笑しながら僕のことを見てくる。きっと、僕を前科者として見ているんだな。
「それで、僕が逢坂玲人だと知ったところで、どのような記事を書きたいのですか? 過去に罪を犯した高校生に取材しても、何の面白みもないと思いますが」
僕がそう言うと、男性記者はふっと笑う。
「……面白み? あなたから面白さなど期待していません。1人でも多くの人間に、うちの雑誌に興味を持ってもらうか。その餌の1つとして、あなたを使わせてもらうんです」
餌と言っている時点で、この男性記者は読者も人間だと思っていないだろうな。
「興味を抱かれそうな記事を書いて、より多く金を稼ぎたい気持ちは分かります。ただ、それなら、取材費を僕にいただけるんでしょうね? 僕は高いですよ。あなた方は人一人の高校生活やプライバシーに踏み込もうとしている。僕の貴重な時間をあなた方に割くのですから、その対価を払うべきでしょう。そうでなければ、僕はこの取材は受けませんし、僕の平穏な高校生活が脅かされるような記事を書いた場合は、法的措置も辞さない考えです」
このくらいのことを言わないと相手側のペースになってしまう。そういうことは、警察の取り調べなどから学んだことだ。
「被害者の女性は今も意識不明のままという情報もあります。事件さえなければ、その子も今頃、楽しい高校生活を送れていたかもしれないのに。あなたは禁固1年の刑を受けたにも関わらずのうのうと高校生活を送っている。反省の気持ちはないのですか?」
「彼女やご家族に対して、事件直後から何度も謝意を伝えており、今も反省の気持ちは持っています。月野学園高校からは、試験を受けた上で高校生活を送っていいという許可をいただきました。ですから、僕は月野学園でしっかりと学校生活を送ることに決めました。高校生活を送っているから反省していないと言われる筋合いは全くありません」
「そ、それは……」
「それに、反省していないのはそちらでしょう。事件直後、週刊文秋さんを含めた多くのメディアが、僕の家族や被害者家族のことを突き止め、執拗な取材を行ない、それによって心身共に多大な疲労を与えたと聞いています。取材を断れば、関係者を傷つけるような捏造記事を書いたとか。その記事を書いたら、関係者にどんなことが起きるのか想像できますか。何が起こっても、あなた方がきちんと責任を取っていただけるのですか。せいぜい、責めるつもりで書いたわけではないと言い逃れをするだけでしょう。責任を取れない記事を書かないでいただきたいですね」
メディアの執拗な取材により、僕の家族や琴葉の家族がどれだけ苦しんだことか。断れば非難するような記事を勝手に書いて。事の発端は僕だけれど、メディアには不信感もあるし、恨んでもいる。
「前科者が何言ってるんだよ」
そう吐き捨てて、男性記者は僕のことを睨んでくる。高校生相手にムキになってどうするんだ。思わず笑ってしまう。
「確かに僕は前科者です。ただ、僕は間違ったことを言ったつもりはありません。あと、仮に僕が前科者ではない普通の高校生だとしたら、あなた方はさっきの僕の言葉にどう反論しますか。大人として、社会人として高校生の僕に教えていただけませんか。言葉巧みに記事を書いている週刊誌記者なら、そのくらいのことはちゃんと教えられますよね? そもそも、前科者かどうかを問わずに僕の言ったことが間違っているからこそ、何言っているんだと言ったんですよね?」
僕は過去にあった事実と、そこから考えたことについて自信を持って言っただけだ。それに対する反論があるならきちんと言えるはず。少なくとも、前科者が何を言っているんだとは言わないはず。
「くそっ……」
男性記者はそう漏らすだけでそれ以上は何も言ってこない。何も思い浮ばずに考え中なのか、それとも反論してきた僕に怒っているのか。
「何も言えないんですね。何か反論してくると思いましたが……」
まあ、その程度の記者だったんだろう。後で僕のことを非難する記事が書かれるかもしれないけれど……仕方ない、こればかりは。
「用もあるので、そろそろ学校に行かせてもらえませんか。本来、あなた方に割く時間なんて1秒たりともないのですよ。これ以上しつこくつきまとうなら……僕に対する侮辱やストーカーで警察に被害届出すぞ。覚悟しとけ」
「……帰るぞ!」
「は、はいっ! お時間を取らせてしまって申し訳ありませんでした! 失礼します!」
きちんと謝り、挨拶をして立ち去っていくだけ、女性記者はまともに思えた。将来、あの男性記者のようにならないことを祈るばかりだ。
「このことを知らせておこう」
今はネット記事だってある。今日中にこのことが発信されるかもしれない。家族にはすぐに知らせておかなければ。
『週刊文秋の記者に僕が月野学園に通っていることがバレた。ネットで僕のことが広まり始めているみたい。これから色々と迷惑がかかるかも。本当にごめん』
家族のグループトークにメッセージを送っておく。家族に事件直後のような目には遭わせたくない。月野学園にこの波が押し寄せるのも時間の問題かな。
『謝る必要はないよ、玲人。お姉ちゃんは大丈夫』
『麻実の言う通り。でも、辛くなったら連絡してね。お母さんは家にいるから』
『玲人、無理だけはするな。困ったり、辛くなったりしたら生徒会の方や先生を頼りなさい。あと、父さんも色々と動いてみる』
姉さんも、母さんも、父さんも……すぐにそう返信してくれた。心強い家族だ。
それにしても、父さん……色々と動いてみると言っているけどどうするんだ? 父さんの勤める株式会社SKTTに頼れる人がいるのかな? 何日か前に、今月異動してきた若手社員が凄いと酔っ払いながら言っていたのは覚えているけれど。
『ありがとう』
そう返信して、僕は月野学園高校へと向かっていく。とりあえず、僕はなるべく普段通りに学校生活を送ることにしよう。
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