天使は誰

玄糸雨楽

文字の大きさ
2 / 80
些細なはじまり

ー藍来ー守りたいその笑顔 1

しおりを挟む
俺は幽霊で、エンジェルフェザークォーツに宿っている存在。って言っても理解できる人なんて誰も居ないだろう。

そもそもエンジェルフェザークォーツとは何か。
簡単に説明すると水晶の内部構造の欠陥により、天使の羽のようなものが見える。
諸説あるらしいが、まあちょっと変わった水晶だ。

欠陥、そう、俺は欠陥だらけの駄目な奴だった。
彼女、真希に出会うまでは。

持ち主である彼女の幸せを強く願っている。

何故、パワーストーンに宿っているかって?

真希を心の底から愛しているから、守りたい。それ以外の理由なんて無い。

真希を幸せにすると心に誓った。

エンジェルフェザークォーツは、真希が最も大切にしている、水晶のブレスレット。


仕事の時はスーツのポケットの中に入れてお守りにしていて、休みの日は必ず左手に身に付ける。

彼女はよくつけているブレスレットをじっ、と見つめることがある。どうやら水晶の中にヒビがあり、そこから生じる美しい虹を見ているらしい。

様々な色が見られるのは万華鏡を覗いてるみたいで楽しいって言ってた。

特に青色が見えたら嬉しいんだって。
他にもピンクや緑がキラキラしてるから、カラフルで面白みがあるみたい。


真希の二重でぱっちりとした大きな目。透き通ってる綺麗な瞳が大好きなんだ。


エンジェルフェザークォーツ。
エンジェルがつくくらいなら真希にとって、俺は天使みたいに柔らかな存在か。

まさか、そんなの柄じゃないし。
天然石に宿る幽霊だから。

でも正直なところ俺は、そんな曖昧な感じって好きじゃない。
見えないものを存在としてとらえるなんて、普通の人間はしないだろう。

まあ信じる信じないは別として、自分は真希に認識してもらえている。

だからこうして一緒に居られるわけだ。

真希は繊細な性格で人に影響されやすい。
他人から放たれたマイナスエネルギーを持って帰って来て、精神的な落ち込みが激しくなる。

エンジェルフェザークォーツの浄化の力で癒したりもする。


それだけでない。彼女に近づこうとする男は誰であろうと、水晶の魔除けの力で関わらせない。

真希は、悪いものをはらう力が水晶にある事を知っているが、俺がその力を使って男を追い払ってるのは知らないだろう。

いやきっと知ってしまったら、嫌がって身につける石を変えてしまうな。それは非常に困るから黙っておこう。



幽霊で真希の傍に居る、俺の名前は佐野藍来さのあいく

ロックバンドのボーカリストだった。

やっていたバンドは長くファンをやっている人が結構居るみたいで、違うバンドの仲間達や、先輩からもいい曲をやってるって評判が良かった。

切ない曲や激しい歌が沢山あり、ポップで明るい感じの曲は無いことはないが、比較的少ない。

万人受けはしないけれど、好きな人にはどこまでも刺さるらしい。

とにかくもう大好きです。
万人受けしない所が聴衆に媚びなくて素晴らしい。
そんな所がかっこよくて痺れる。
曲もひたすら切なかったり、この上なく激しいのもあり、その幅広さ凄く良いで。 唯一無二の存在感が強いですね。

って確か、他のバンドのギターをやってる後輩がそう言っていたような。

バンドメンバーと一生懸命やってきた道のりは、無駄じゃなかったんだろう。ついてきてくれる人間は多かった。

まあ、特にメンバーが頑張ってた。俺はそれに乗っかっただけ。

それでも自分たちを信じてくれる人たちのために、引っ張って行かなきゃいけなかった。

メジャーデビューをして8年目の矢先に俺は……

「藍来」

真希の澄んだ綺麗な声が聞こえた。

「おはよう、藍来。うーん眠いなあ」


ベッドから起き上がり彼女は欠伸をした。
動きのひとつひとつが、たまらなく愛しい。
ずっと見ていたくなるくらいに。
んー、と身体を伸ばしてる。

俺が昔、好きだった猫みたいだ。
飼っていたんだ。キャラメルって名前で。
彼女の仕草がそうとしか思えない。
もふもふしてたら完全にそう見えるだろう。

腰より少し上くらいの、さらさらストレートの茶髪に少し寝癖がついてる。寝癖でさえも可愛く思えてくる。

『おはよう真希、今日もよろしく。寒いからあたたかくして仕事に行こうな、って今日……』

土曜日である今日は、仕事が休みである事を思い出した。

「あれ? 今日ね、私仕事休みだよ」

『そうだった。あ、ねえ。藍来じゃなくてあっくんって呼んで。名前もいいけどね。でも……』

あっくんって可愛い声で呼んで欲しくなったんだ。

「なんで? 藍来でいいじゃん」


藍来よりも、たまにあっくんて呼ばれる方が特別感があって良い。なんか彼氏みたいに思えてくるから。

『たまに藍来って呼んでくれないと、なんか寂しい』

「藍来」

『あっくんって呼んでよ。藍来じゃなくてさ』

「藍来は藍来でしょ」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました

せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~ 救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。 どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。 乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。 受け取ろうとすると邪魔だと言われる。 そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。 医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。 最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇ 作品はフィクションです。 本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...