天使は誰

玄糸雨楽

文字の大きさ
16 / 80
些細なはじまり

ー優大ー君の大切なブレスレット 2

しおりを挟む
『何考えてるんだよ優大。俺を怒らせて楽しいか』

何考えてるんだよ、はこっちの台詞なんですけど。
なんで死んだ人間なのに、恋しちゃってんの。
本当に笑える。 

死んだら何にも残らないんだよ。1つとしてね。
それに得るものだってない。
失う他ないんだよ、それが死というものだ。

滑稽すぎるでしょ。
叶わない恋なんかしなければ良いのにね。
悲しくなるだけ。それなら、恋愛なんてしなければいい。

なのに彼は手にいれようとしてるんだから、ずる過ぎるよ。

あっくんの為にも、真希ちゃんは奪わなきゃならないね。
このままだと不幸になる、きっと。 

絶対に結ばれてはいけないんだよ。


2人の幸せの為に、別れさせるんだ。
あれ? 僕、結構優しくない?
性格悪いのに、って自分で言うのもなんだけど。

「怒ってるあっくんも、中々良いね。やっぱりあっくんは、かっこよくなくっちゃね」

うわあ、今凄く悪い顔してるな。自分で分かる。
楽しくてしょうがない。彼をおちょくるのが。
このまま僕の玩具おもちゃになってもらおう。

『馬鹿にすんなよ! どんな形でも真希の傍に居る! 俺が彼女を護らなかったら誰が護るんだよ! 』

自分の存在な真希ちゃんにとって必要だって、本気で思ってんの?
そんなの甘すぎるよ。相手のことを全く考えてないんだね。

護りたいとか言っておきながら、自分のためなんじゃないの。
必要とされるために、その立場でありたいんだよね、きっと。

それって何もかも間違ってるよ。
 
真希ちゃんが大好きで仕方ないんだね。

本当に彼女のためを思うなら、死んでる自分は要らないって思うでしょ。

それをいい気になって、真希ちゃんを困らせようとしてるんだからしょうもないよ。

邪魔でしかないんだ。あっくんって存在が、真希ちゃんにとっては。だって幽霊なんだから。

生きていれば話は別だけどね。生き返るなんて出来ないし。


「だから、僕が居るんじゃないの。第一さあ、気味悪くない? 幽霊が自分を好きだったら。僕だったら怖すぎて震えちゃうな、本当に気持ち悪い。嫌すぎるでしょ」

真希は俺の存在を受け入れてくれてる。
それに、彼女は俺だけのものだ。そう言ってみせるあっくんに言い返す。

「受け入れられてると、思い込みたいんだ。あっくんは、真希ちゃんにとって必要ないと思うけどな」

『そんな事ない』

あっくんは強く否定してきた。
表情が暗い。
なんだか可愛そうにも思えてくる。だって、実らない恋だって全く分かってないから。

真希ちゃんは彼の気持ちがここまで強いのを、知ってるんだろうか?

独占欲が強いことさえ、きっと知らないだろうな。

化けの皮、剥がしてやりたいな。彼女の前であっくんの本性を教えてやりたい。

真希ちゃん、怯えるかな。悲しむかな。
いずれにせよ僕は真希ちゃんを手に入れるんだ。

あっくんには嫌われてもらう。
彼女はあっくんの本性なんてきっと知らないし、大好きだろうからズタズタに引き裂いてやらなくては。


自分の大切にしてる関係なんてね、簡単に壊れるから。僕はそれを沢山経験してきた。

どんなにお互い、心地よくたって必ず終わりは来る。
本当の自分を見せただけですぐに嫌われるよ。
だから、人間はみんな仮面を被るんだ。


本音で居続けるなんて、正しいはずがない。

『真希が俺を必要としなくなったら、もう1度死んだって良い』

あのさあ、馬鹿も大概にしてほしいんだけど。
本当に情熱的ですこと。
熱すぎてこっちが恥ずかしくなってくる。
そんなに本気になるような相手なんだね。


というかさ、2度も死なれたら大迷惑だよ。
ただでさえ1度死んでしまって、それによってバンドが活動出来なくなってしまったのに。

あっくんが死んでから、バンドの時間は止まったままだ。活動なんて、とても出来ない。

彼がボーカルじゃなきゃ、意味が無いから。
ジグソーパズルと同じ。ひとつなくなったら、もう完成しない。

4人で咲き誇って群青なんだから。
あっくんの居ない咲き誇って群青なんて、活動しないままで良いんだ。

ねえ。自分の気持ちが本気であればあるほど、後悔するんだよ。

止めれば良いのにね、何故分からないかな。
彼は、自分で自分の首を絞めてるよ。凄く苦しいはずだ。

あっくん。本当は気づいてるんでしょう?自分の存在が要らないって。

気づかない振りしてないでさ、僕が教えてあげようか?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました

せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~ 救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。 どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。 乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。 受け取ろうとすると邪魔だと言われる。 そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。 医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。 最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇ 作品はフィクションです。 本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...