天使は誰

玄糸雨楽

文字の大きさ
42 / 80
衝動と散らばる感情

ー晴ー俺の愛しい

しおりを挟む
「活動を再開した咲き誇って群青と、人気急上昇中のロックバンドVanillaです」

咲き誇って群青の隣にVanillaが座ることになった。
偶然にも俺の隣に、優大さんが居る。
威圧感を感じるような。別に気にしないけどね。
びびるわけないでしょう。この俺が。


サングラスをかけた男性司会者がインタビューをする。

「まずは咲き誇って群青、何で活動再開したの?」

「いい曲が出来たからですかね。今回は優大が詞も曲も作ってきたんですが、めちゃくちゃ良くて」

康太さんが答えた後、快さんにまわってきた。

「メンバーが3人しかいないですが。この曲、やりてぇなって話になったんです。なっ、優大」

「はい。心を込めて、大切な人の為に作りました」


随分自信があるみたいだ。過信だということを教えてやりたい。

俺だって、それはもう大切に思いながら一生懸命作ったよ。

それに比べたら大した曲じゃないだろう。


彼女をより大切に思うのは優大さんじゃなくて、俺だ。

それを真希に教えてあげよう。

「新曲なので、期待ですね。演奏が楽しみです。優大君がボーカルです」

男性司会者がそう言ったあと、女性の司会が喋った。

「ここでランキングです。今週の1位はどの曲でしょうか?」
 
シングルランキングが上位まで発表されて、2位と1位がこれから出る。


No.2 咲き誇って群青 愛しい存在

2年半ぶりに活動を再開した、咲き誇って群青。新曲がランキング入り。



No.1 Vanilla 奪いたい衝動

最近勢いが止まらないモンスターバンドが、まさかの1位。今回、初出演で奪いたい衝動を初披露。


手応えがあったから、そんな気はしてた。

優大さん、きっと悔しいだろうな。
自分たちが2位だもんな。

生意気を言った俺の曲が1位。

生放送にも関わらず、にやけてしまいそう。

1番なら、きっと真希も気づいてくれるはずだ。
放っておけない存在にならなくては意味が無い。

ランキングの後、咲き誇って群青のパフォーマンスが終わり、Vanillaの番に。

インタビューに答える。

「今回自信作なんですよ。大切な人を思って作りました」

優大さんのインタビューに被せるように言った。

「大切な人の全てを奪いたい衝動に駆られたんですか」

サングラスの司会者が聞いてきたから、
全力の笑顔で答えた。

「いや、俺は奪われた側なんですよ。だから奪い返したい。そんな衝動で作りました」

「かっこいい衝動ですね。スタンバイお願いします」

司会者の言葉に俺とメンバーは席を立った。

真希は咲き誇って群青を見てるはず。
でも俺を、俺だけを見てほしい。
誰よりもかっこよく歌うから。

愛する気持ちだけは誰にも負けない自信があるんだ。

真希との思い出1つ1つ、鮮明に思い出せる。
どれが欠けてもいけない。
俺自身を形づくるピースだから。
彼女が与えてくれたものをちゃんと返したい。全力の気持ちで。

至って真剣だ。パフォーマンスには手を抜かない。魅せるために努力だってしてきた。

怖いものなんて何もない。


もう1度、俺だけの真希であってほしい。
髪をかき上げた瞬間にスイッチが入る。


ーー 瞬間 奪ってしまいたい 衝動が俺の胸に 深く爪痕を残す 愛してるのにね 君は他の男の腕の中 今すぐにkissして俺だけのものにしたい ジェラシー感じずにはいられない 愛してくれ 俺だけを ーー


奪われたものは、どんな手を使ってでも奪い返す。
やり方なんていくらでもある。
この気持ちは誰にも譲れない。愛してるよ。

たまんない。
歌い終えた後に舌なめずりをした。

それもパフォーマンスだと思われたみたいで、歓声と悲鳴があがる。

真希を思うと身体が熱くなってきた。
体の温度が上がってとろけそうになっている自分に軽く笑った。


    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました

せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~ 救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。 どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。 乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。 受け取ろうとすると邪魔だと言われる。 そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。 医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。 最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇ 作品はフィクションです。 本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...