天使は誰

玄糸雨楽

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ー真希ー選んだのは 2

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優大君とは、もう恋愛出来ない。

ハル君の思いが私の心に響いてるから。

「私、優大君をもう好きになれない」
 

「何で? もう好きになれないって、どうして決めつけるの」

私の言葉で優大君は悲しい表情になった。顔を見るのが怖くて目をそらす。

ハル君を見ると真剣な顔をしていた。

「優大さんに俺の気持ちを越えられるなら、どうぞ真希を連れて行ってください。まあ無理かと」


「言ってくれるよな。お前の諦めの悪さには本当に参るよ。でもさ、あの時のような酷い真似する奴に真希ちゃんを任せられない」


「俺は真希をどうしようもない位に愛してるんです。この気持ちなら誰にも負けない。絶対に」


「……なんでお前にそんなこと言えるんだよ。僕の方が真希ちゃんを大事にしてるから」



2人がそこまで言ってくるなんて、正直思ってなかった。

優大君が、私をまだ好きなのは分かるけど。

でも、でも。ハル君の気持ちが、心を強く揺さぶってくる。

「真希、俺を選んでほしい」  

「ちょっと待ってよ僕だって……」

「黙ってください。今、真剣な話をしてるんです」
 
「いや、こっちだって真剣なんだけど」


「言っておくけど。俺は諦めが悪いからね。なんなら、優大さん選んだら略奪するし。きっと真希のことだから、どちらも傷つけたくないって思ってるでしょう。だったら俺が幸せな方へ導いてあげる」


導いてくれるの? 私を?


「心の底から真希を愛してるよ。幸せになる道を歩んで欲しいと思ってる。だから俺を選んでほしい」


優大君がため息をついた。

「……真希ちゃんが決めることだよ。僕だって真希ちゃんが好き。ていうか、いい加減諦めてよね」


隣に居るハル君の目を見た。

さっき目が合った時より優しいし微笑んでくれた。

「真希が俺を選ばないなら、今ここで死んでも構わないよ」

え? 本気で言ってるの?

「本気で死んだって……構わないから……っ」


……ハル君、私に笑いかけてるのに泣いてる。

あの時の顔に似てる。藍来と一緒に満月を見た夜に悲しみを溶かしたような目をしてた、あの感じ。

ああ、藍来を宿したハル君を好きになってもいいの?


涙を流すハル君がとても綺麗に見えて、胸が高鳴った。 

そこまで言われたら、私……

「ハル君を好きでもいいの?」


「真希、好きになってくれないと。俺、死んじゃう。選んでくれなかったら、本当に……っ」


そんなに私を好きだから弱い人なんだね、きっと。

ハル君を守りたくなっちゃった。
 
だって本当に死んでしまいそうなんだもの。

大切にしなきゃって思ってしまう。

「私が居ないと駄目なんだね」


優大君まで泣きそうな顔してる、でも言わないと。

「ねえ、優大君。ハル君の傍に居たい」

「止めてよ、こんな奴なんか真希ちゃんを不幸にするだけだよ」

ううん。不幸になんかならない。私は首を横に振った。

「私がハル君を守りたいし、幸せにする」

「え……なんで真希ちゃんにそんなこと言わせるんだよ。晴、ねえ……なんでそこまで真希ちゃんを好きなの」

 「俺は真希しか愛せない。だって、愛しくてたまらないんだ。真希の全てが俺のものであってほしい」

「そう……真希ちゃん。本当に後悔しない? 」


「しないよ。だって私が居ないとハル君は駄目なの」

「僕にしといた方が良いと思うけどな」  

「だって放っておけない。ハル君は弱い人だから、私が傍にいるの」



そっか。じゃあ諦めるしかないかって、優大君まで泣いてしまった。

私も涙が止まらない。

優大君。私、ハル君を好き。

いつも1番に思ってくれて、怖いこともされたけど。それは本当に私を愛してるから。行き過ぎてしまう。

私が大切に守ってあげなきゃ。

今までそうしてくれた藍来みたいに。



優大君、私は自分が居なきゃ駄目って言ってくれるハル君を愛したい。



だから、ごめんね。って言うしかなかった。

しばらくして、私達は泣き止んだ。


「真希ちゃんを好きになれて良かった。友達に戻るよ。少しずつ。晴の真剣な所を見たら任せたくなったからね。どうかお幸せに」

優大くんはとびきりのかっこいい笑顔を見せて帰っていった。   


ねえ、優大君。

出会えて、恋ができて良かった。
思い出すだけであたたかい気持ちになる。


私は別の人を選んだ。

でも、優大君との思い出は大切なままだよ。

本当にありがとう。


    
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