78 / 80
幸せのために
ー晴ー 一生をかけて 3
しおりを挟む
俺の両親はもう亡くなっていて、兄さんしか居ない。
性格が似ておらず、落ち着いてる。
ミュージシャンで好き勝手やってる自分と違って、会社員だ。役職についていて仕事が楽しいと言ってた。部下を育てるので毎日忙しいって。
時間を作ってもらい、真希と結婚すると伝えた。
兄が泣くものだから焦ったよね。
「まさか、晴にいい人居たなんて。羨ましい。兄さんが真希ちゃんと結婚したいくらいだ」
馬鹿言うんじゃない。いくら兄さんでも冗談が過ぎるよ。
真希が楽しそうに笑ってくれたから、いいけどね。
挨拶は済んだが、まだやることがある。
結婚指輪を選ばないと。真希がピンクダイヤモンドに憧れているのを知ってるから、それにしようと考えてる。
指輪を選ぶ段階で緊張しまくりで、自分で言うのもなんだけど大丈夫かなって。
いや、真希が傍に居るんだから大丈夫だ。
店の名前は、lacrima pure(ラクリマ ピュア)
ここはピンクダイヤモンドを専門的に扱ってるらしい。
店に入ると真面目そうな雰囲気な男性の店員が対応してくれた。
「この度はおめでとうございます。一生もののピンクダイヤ、ご案内致しますね」
ピンクダイヤモンドには大きさやクラリティだけでなく、色味も重要だと真希が教えてくれた。
濃さでも幅があるがパープリッシュピンク、オレンジッシュピンクと色彩が広くあるらしい。
俺は濃すぎない優しいピンクが似合うなって。そう話すと彼女もその色味が良いと言っていた。
店員は丁寧に接客してくれる。似合うピンクを見つけてもらい、候補をいくつか出たのでよく見せてもらった。
あ、と2人で声を出した。絶対にこれ。
そう、同時に同じダイヤを選んだ。
甘くて上品で優しいピンクが煌めいてる。
これしかない。
俺のリングにはオレンジッシュピンクのダイヤを彼女が候補の中から決めてくれた。
この店にして本当に良かった。店員も親切だし、やたら高いのを勧めたりせずその人に合う色を探してくれたから。
真希の幸せそうな顔を見て、俺も笑顔が零れる。
ウェディングドレスはどんなのがいいとか楽しく話しながら家に向かった。
そういや。まだ、話していなかったな。
晴ではなく、藍来として。
俺はお別れしなければならない。
もうすぐ魂が消滅する。成仏はもう出来ない。
晴に取り憑いた時から気づいてた。もう時間がない、消えかかってるって。
だから、消滅する前に真希に伝えたい。
絶対幸せになってほしい。永遠に愛してると。
晴、悪いけど少しだけ時間をくれないかと頼んだ。
彼も気づいていたようで了承してくれた。
ちょうど、家で1番景色が良く見える所。満月だ。
真希とあの時見た月によく似た美しさ。
ぼんやりとしてる、今の俺の存在みたいに。
もの悲しくなるけど。
もう全て、この月の形みたいに丸く収まるんだな。
そう。これから俺は、この満月みたいに静かに見守るしか出来ない。
泣いたら駄目だ。いつも真希が笑うみたいに、最後は……
真希に大事な話があるときりだした。
「何?ハル君改まって……」
晴じゃないよ。俺だよと言わなくても、もう分かるよね。
「真希、幸せかい? 」
「藍来!うん、すっごい幸せだよ! 」
「よかった。俺も凄く幸せ。死んでからこんな、こんな幸せ……」
駄目だ。泣くつもりなんてないのに。涙が次から次へと溢れてしまう。
今までで1番の笑顔で別れるつもりだったのに。
分かってたし、覚悟してた。
でも、気持ちが止められなくて。
永遠にお別れなんて嫌だ。
「ごめんな、ごめん。真希」
優しく抱きしめてくれた。凄くあたたかい。
出会えて本当によかった。
ずっと居られるなら、どんなに幸せか。
でも、出来ない。俺は死んでいるんだから。
「ずっと居てくれるよね、藍来」
「ううん。それは出来ない」
真希が泣いてしまった。泣かせるつもりなかったんだけどな。
「お願いだから、ずっと一緒に……」
「大丈夫だよ、晴が傍に居る」
無理にでも微笑む、でも上手く笑えない。
「消滅する前に、神様に捧げるよ。真希の永遠の幸せを願って。俺の魂をね」
「そんなこと、しなくていいよ。私はもう沢山の幸せもらってるんだから。藍来に恩返ししたいの」
「いいんだ。その気持ちを、晴に注いでやって」
ああ、消えてしまう。まだここに居たいのに。
「愛してる、真希。永遠に、ずっと」
さよならは言わないよ。
いつかまたはないけれど、永遠を誓うから。
こんなに愛せて、本当に幸せだ。
最後に、彼女のために魂を捧げる。
俺は真希にとって、天使のように柔らかな存在だった?
分からない。でも俺は真希にとっての永遠になりたい。
ありがとう、最後にもう1度だけ言うね。
心の底から愛してる。
性格が似ておらず、落ち着いてる。
ミュージシャンで好き勝手やってる自分と違って、会社員だ。役職についていて仕事が楽しいと言ってた。部下を育てるので毎日忙しいって。
時間を作ってもらい、真希と結婚すると伝えた。
兄が泣くものだから焦ったよね。
「まさか、晴にいい人居たなんて。羨ましい。兄さんが真希ちゃんと結婚したいくらいだ」
馬鹿言うんじゃない。いくら兄さんでも冗談が過ぎるよ。
真希が楽しそうに笑ってくれたから、いいけどね。
挨拶は済んだが、まだやることがある。
結婚指輪を選ばないと。真希がピンクダイヤモンドに憧れているのを知ってるから、それにしようと考えてる。
指輪を選ぶ段階で緊張しまくりで、自分で言うのもなんだけど大丈夫かなって。
いや、真希が傍に居るんだから大丈夫だ。
店の名前は、lacrima pure(ラクリマ ピュア)
ここはピンクダイヤモンドを専門的に扱ってるらしい。
店に入ると真面目そうな雰囲気な男性の店員が対応してくれた。
「この度はおめでとうございます。一生もののピンクダイヤ、ご案内致しますね」
ピンクダイヤモンドには大きさやクラリティだけでなく、色味も重要だと真希が教えてくれた。
濃さでも幅があるがパープリッシュピンク、オレンジッシュピンクと色彩が広くあるらしい。
俺は濃すぎない優しいピンクが似合うなって。そう話すと彼女もその色味が良いと言っていた。
店員は丁寧に接客してくれる。似合うピンクを見つけてもらい、候補をいくつか出たのでよく見せてもらった。
あ、と2人で声を出した。絶対にこれ。
そう、同時に同じダイヤを選んだ。
甘くて上品で優しいピンクが煌めいてる。
これしかない。
俺のリングにはオレンジッシュピンクのダイヤを彼女が候補の中から決めてくれた。
この店にして本当に良かった。店員も親切だし、やたら高いのを勧めたりせずその人に合う色を探してくれたから。
真希の幸せそうな顔を見て、俺も笑顔が零れる。
ウェディングドレスはどんなのがいいとか楽しく話しながら家に向かった。
そういや。まだ、話していなかったな。
晴ではなく、藍来として。
俺はお別れしなければならない。
もうすぐ魂が消滅する。成仏はもう出来ない。
晴に取り憑いた時から気づいてた。もう時間がない、消えかかってるって。
だから、消滅する前に真希に伝えたい。
絶対幸せになってほしい。永遠に愛してると。
晴、悪いけど少しだけ時間をくれないかと頼んだ。
彼も気づいていたようで了承してくれた。
ちょうど、家で1番景色が良く見える所。満月だ。
真希とあの時見た月によく似た美しさ。
ぼんやりとしてる、今の俺の存在みたいに。
もの悲しくなるけど。
もう全て、この月の形みたいに丸く収まるんだな。
そう。これから俺は、この満月みたいに静かに見守るしか出来ない。
泣いたら駄目だ。いつも真希が笑うみたいに、最後は……
真希に大事な話があるときりだした。
「何?ハル君改まって……」
晴じゃないよ。俺だよと言わなくても、もう分かるよね。
「真希、幸せかい? 」
「藍来!うん、すっごい幸せだよ! 」
「よかった。俺も凄く幸せ。死んでからこんな、こんな幸せ……」
駄目だ。泣くつもりなんてないのに。涙が次から次へと溢れてしまう。
今までで1番の笑顔で別れるつもりだったのに。
分かってたし、覚悟してた。
でも、気持ちが止められなくて。
永遠にお別れなんて嫌だ。
「ごめんな、ごめん。真希」
優しく抱きしめてくれた。凄くあたたかい。
出会えて本当によかった。
ずっと居られるなら、どんなに幸せか。
でも、出来ない。俺は死んでいるんだから。
「ずっと居てくれるよね、藍来」
「ううん。それは出来ない」
真希が泣いてしまった。泣かせるつもりなかったんだけどな。
「お願いだから、ずっと一緒に……」
「大丈夫だよ、晴が傍に居る」
無理にでも微笑む、でも上手く笑えない。
「消滅する前に、神様に捧げるよ。真希の永遠の幸せを願って。俺の魂をね」
「そんなこと、しなくていいよ。私はもう沢山の幸せもらってるんだから。藍来に恩返ししたいの」
「いいんだ。その気持ちを、晴に注いでやって」
ああ、消えてしまう。まだここに居たいのに。
「愛してる、真希。永遠に、ずっと」
さよならは言わないよ。
いつかまたはないけれど、永遠を誓うから。
こんなに愛せて、本当に幸せだ。
最後に、彼女のために魂を捧げる。
俺は真希にとって、天使のように柔らかな存在だった?
分からない。でも俺は真希にとっての永遠になりたい。
ありがとう、最後にもう1度だけ言うね。
心の底から愛してる。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました
せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~
救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。
どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。
乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。
受け取ろうとすると邪魔だと言われる。
そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。
医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。
最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇
作品はフィクションです。
本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる