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09 責任
しおりを挟む「――エイル!? どうしてここに……」
それと同時に誰かが部屋に乱入し、グレンに乗り上げて拳を振りかざしていた男はエイルの攻撃を受けて寝台から転げ落ちる。
自由になったグレンが身を起こすと、能力低下の効果も消えていた。
「グレンさん! 大丈夫ですか!?」
「ひよっこだけじゃなくて俺もいるぞ」
「サルファまで!? 一体どういう……」
エイルがグレンを助けてくれている間に、サルファがスライムを作った男を捕縛で捕らえていて、外も怒号が飛び交っている。状況が全く掴めない。
「あの時、何か不味そうな雰囲気だったので……でも、悔しいけど、俺だけじゃ助けるのは無理そうだと判断して、出来るだけ跡をつけて……俺、知り合いがあんまりいないので。喧嘩されてましたけど、グレンさんの知り合いっぽかったので、あの人に」
苦虫を噛み潰したとはこういうことを言うんだろう。見本のようなその顔をしたエイルとは反対に、サルファは上機嫌だ。いつもの揶揄うような軽薄な笑みではなく、本気で嬉しそうに笑っている。
「自分のプライドより、確実にグレンを助けられる方を選んだんだ。いい判断で俺は好きだぞひよっこ」
「あんたに好かれたって嬉しくない!」
「そう言うなよ」
何があったのかは分からないが、なんでこんな感じなんだとグレンが首を傾げていると、部屋に新手がやって来る。それをものともせず、エイルを揶揄うサルファがにぃっと笑って手を振ると、途端に持つ武器に雷が落ちたり、服が燃えたりして男達がのたうち回る。
エイルも不満げな顔のまま、それでもサルファの魔術に合わせて剣を振るい、敵と戦い始める。対人は随分と得意なようで、魔物を相手取るよりかなり強い。
自分も戦わなくてはと、グレンも誰かが落とした剣を拾い、振るった。自分の愛用のものではないので、扱いづらいが気も使わなくていい。使い潰すつもりで使って戦えば、すぐに片付いた。そのタイミングでサルファが「そろそろか」と呟く。
「何だ?」
「いや、後続が。――おい、遅えぞ!」
「申し訳ありません!!」
サルファの苛立った雰囲気から、グレンは新手がくるのかと身構えていたが、やって来たのはギルドの人間と騎士だ。グレンは再び首を傾げた。
「……これは一体どういう状況だ?」
「遅くなって申し訳ありませんでした! 先日グレンさんに新人の引率を依頼したダンジョンは、ご存じの通り、初心者向けとして敢えて残しているものです。国からの許可を得て、ギルドが管理している物件で許可のない立ち入りは禁止されています」
「――不法侵入並びに魔物飼育の違反、この様子だと他にも色々ありそうだかんな」
「なるほど……」
サルファはそういう理屈と罪状でギルドと騎士を引っ張ってきたのかと、グレンは素直に感心し、お陰で助かったと息を吐いたのだった。
「二人ともありがとう。助かった……」
ギルドと騎士の介入によって男達は捕まり、一旦は事なきを得たグレンだが、スライムと融合してしまった自身の身体については、全く何も解決していない。
「だが最悪だ……」
「何だどうした」
あの男の言うことが本当ならば、自分は今後、体液――血だか子種だか、その辺りを定期的に摂取する必要がある。サルファに対しては怒っていたが、助けてもらったことだし事情も……というよりは、状況がグレンの許容量を超えてしまった。サルファには言いたくない気持ちを、自分の許容から溢れた何かが洗い流してしまう。気づけばグレンは、事情をつらつらと吐き出してしまっていた。
自分の新しい体質を考えれば、別段輪姦されても問題はなかったといえばなかった。むしろ生きるのに必要な糧だ。それでもそれは自分の尊厳的なものが死ぬ。そういう意味でも2人のおかげで助かったが、今後についてどうしたらいいのか不安は尽きない。
「そんなに悲観しなくても、あの魔術師から騎士団が何か情報引き出して治して貰えるかもしれないし、大丈夫だろ」
「だが治らないかもしれないし、治るとして、それが一体いつになるのか……」
結局治るまでの間は、生きるためにどうにかして定期的に体液を摂取しなければならないわけだ。グレンは泣きそうになってぐっと堪えた。
「俺フリーだし、俺がここに注ぎまくってやるよ」
「腹に触ろうとするな! 断わ……」
断りたいのはやまやまだが代替案もない。でも嫌だとグレンは呻く。
「うぅぅ……」
「ぐ、グレンさん! こんな事になったのはそもそも俺のせいです……俺、責任とります……!」
「責任……!? いや、それはいい……」
責任とか、こんな若い冒険者の将来を貰うのは、正直もっときついからそれは本当にいい。逆にそのことに対して責任が持てないとグレンが首を振ると、エイルは予想外に食い下がる。
「いや!責任感でこんな年上の、しかも男とか無理するな。いいからいいから」
「責任はと思ってますけど、無理は違います! 俺はグレンさんの事がっ……!」
「……?」
「それを言うなら俺だってグレンが好きだぞ。グレンが男がイケるクチじゃないと思っていたから今まで言わなかっただけで」
「おい! 横入りなんて卑怯だぞ!」
「俺はこいつと十年近い付き合いなんだ。横入りはお・ま・え」
「一体何の話だ!? 今だって別にいける口なわけじゃない!」
「物理的にはいける口になってるだろ。上も下も」
「「最低過ぎる!」」
こんな若者のエイルも嫌だし、サルファも嫌だ。かといって不特定多数を相手取るのも嫌だ。そもそもどうして突然こんな突然選択肢が強制的に男のみになってしまうのか。血を摂取するなら女性が相手でもいいかもしれないが、かなりの血が必要だし、猟奇的過ぎるし、そもそも血を飲む行為自体が嫌だ。精液も当然嫌ではあるが、その2択しかないのなら、泣く泣く精液を選ぶ。
「一体俺が何したって言うんだ……どうしたら……」
言い合いをしている二人の横で、グレンは考え込む程に自分の目がどんどん死んでいくのを感じていて――もう、涙すら出そうになかった。
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