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本編
18 報われる想い
しおりを挟む「そうだ。あの後体調大丈夫でした?」
「首は大丈夫だったが、正直……あの……」
「ああ……」
恥ずかしそうに口元を隠して黙り込むフィリス様。
あれは痛かっただろうね。半分くらいしか入ってなかったし、何なら俺もちょっと痛かったからね。
王子様の執務室から追い出された俺は、フィリス様を連れて自分の部屋に戻っていた。
フィリス様が俺の部屋に来るのは初めてじゃないけど、最後に来たのはあの、ギリギリアウトなセックスをした日だ。それを少し思い出しては頭から振り払う。
「フィリス様……あの……」
さっきは勢いで言ったけれど、本当に言っていいのだろうか。
決して「よし」と言われることのない「待て」を、自分自身に課していたものを……突然「よし」と言われた。
一度いいんだと思ってしまったら、自分の気持ちに形がついたら。自分が飢えに飢えている事に気がついて、反対に、胸はいっぱいで苦しい。
本当は言いたかった。
ずっと言いたかったんだと、やっと気づいた。
「……好きです。ずっとずっと好きでした……」
心から押し出されるように、零れ落ちる様に小さな声が出た。まるで自分のものではないような小さな小さな声。何かもっと気の利いた事を言いたいけれど、それぐらいしか出てはこない。
「……私も、随分と前からお前の事が好きだった。だが私は殿下の婚約者で、お前は私が王配になるために守ってくれたり環境を整えてくれて、線を引いてくれていたから、私はその引いてくれる線の上をずっと歩いてきた」
白くて滑らかな手が俺の頭を撫で、頬を撫でる。
鼻の奥が痺れる感覚に不味いと思ったが、最初の一粒が零れてしまえばあとはもう、とめどがなかった。
そんな俺の頬を、フィリス様は何も言わずに拭い続ける。目が溶けたみたいに熱くて、段々肌が痒くなってきたけど、それでも止まらなくて。埒が明かないと思ったのか、手は頬で動きを止め、綺麗な顔が近づいてくる。
これは……
「――ちょ、ちょっと待って!」
キスをされそうになっているのが分かって、俺は慌ててそれを止めてしまった。そんな混乱を通り越して錯乱し始めている俺に、フィリス様は気分を害した様子もない。
「あの、俺……」
「お前がもう線を引くことなく、引き返せなくなったという証をくれないか」
「……!」
「ただお前の性格だから、待てというなら、待つ。今度は私が待つ番……っ……!」
言葉の余韻ごと待てずに、喰らいついて吸い込んでがっついてしまう。薄い唇だけど柔らかくて矢継ぎ早に口をつけてしまう。緊張しながら舌を差し込めば、ぴくりと細い肩が跳ねて伏し目に睫毛の影が落ちていく。
俺も経験があるわけではないけど、ついてくる薄い舌の必死さは同じように感じる。フィリス様もきっと経験がないんだろう。服をぎゅっと掴む手が力を入れ過ぎて震え、やがて力をなくしていった。
くったりと胸にもたれかかったフィリス様をそっと腕に収めると、やはりいい匂いがしていて、もう色々とヤバイ。先日のあれこれよりも、ずっとずっと。
でもいくら「よし」と言われたとはいえ、婚約も結婚もすっ飛ばしていきなり押し倒すような真似はどうなんだろうと理性がつっついてくる。いや、先日のだって未遂じゃないじゃん、ギリギリアウトだから今さらという本能の声もする。
「っ――ずっと、我慢してくれていたんだなぁ……」
嬉しい、と息を整えながら、フィリス様が笑い泣きを溢す。ちょっと酷いようにも聞こえるけど、俺もそれを喜んでもらえているなら嬉しい。
「こんなに長く婚約して城に住んでいた私が真っさらだとは、誰も思っていない。経験があろうがなかろうが、どうせ出戻りの扱いを受けるのは見えていたから、お前に、貰ってもらおうと思って……この間は、それで、だから……」
本当に、この人は酷い人だ。人が必死で繋ぎ止めている理性をすぐちょん切ろうとする。でももう待てをする必要がなくなっている今は。
もうそれ以上は何も言わず、俺はフィリス様をお姫様抱っこしてベッドに運び、そうっと置いた。ヤバい。これ以上はないかと思ってたのにもっと緊張してきた。本当にこれは現実なんだろうかって、実は魔王と戦う時に死んでるんじゃないかとか、往生際悪く混乱している。
でも目の前でぽつりぽつりと自らシャツのボタンを外そうとしている姿は紛れもない現実で、慌てて俺はそれを止めた。
こういうのは閨教育で相手に任せましょうと言われるもんだが、俺があまりに情けないから自分でし始めたっぽい。だからか抵抗せずに引き継ぎ任せてくれた。申し訳ない。
少しずつ現れた白い肌に顔を近づけると、いつもの甘い香りがする。舌を這わせてもやっぱり甘い気がした。淡い色の乳首を口に含んで吸ってみると、小さく息を呑んで呻いている。感じるとまではいかなさそうだけど、割と敏感そうな様子が目に入って、下半身へ更に血が集まってくる。
「っ……あ、セルジュ……ちょっと、慣らさないと……香油を取らせてくれ」
「どこですか?」
指さした引き出しから取り出して手に取る。これもフィリス様の香りだ。
「あの、自分でするから……」
「何で? 俺がします」
「何でもやってもらうのは、もう、ちょっと」
「日々に関しては対等のバランスに徐々に。でもこういうのは、譲らない。俺が、やりたいので……やっと、やっと触れられるんですよ……俺のだ、って言える」
「……っ! ……ぅ」
そう、やっと、触れられる。
思い切り優しく触れて甘やかして大手を振って、俺のだって言える。
そう言うと弱々しい抵抗は止み、いい気になった俺は。きめ細かな白い肌を散々舐めて食んで味わって、下着に手を掛けた。下ろすと同時に勃ち上がったそれは、想像より大きさはあるが、綺麗だ。下の毛も銀で整えているから余計、こんなところまで綺麗なのかと感心しながら先走りを舐め取り、自分の突き入る場所を探っていく。
先日途中までは入ってたけど、痛そうだったから丁寧に……でも何かちょっとすぐに指を増やせる感じ……フィリス様のことだから、張り型なんかで練習でもしてそう。
指は入れたまま再びキスに戻ると、白い顔はすっかり赤く涙目で煽情的だ。キスをすると中がとろとろしつつも、きゅうっと絞めてくる。あぁヤバい。突っ込みたくて堪らない。でも、もうちょい。もうちょいだから頑張れ、俺。
「――んっ、んんっ! あっ、あぁっ――」
「は、気持ち、いいですか……?」
「……っ……きく、なぁっ……」
互いに舌を絡ませ合い、一足早いピストンのように指を動かすと、ちゅくちゅくといやらしい音と一緒に腿がびくびくと痙攣している。
「ん、んぅっ――」
指で達したフィリス様は、焦点の合わない蕩けた目で、はぁはぁと息を整えている。半勃ちくらいになったものからは、とろとろと射精の余韻がゆっくりと流れ落ちていく。
「……大丈夫ですか?」
「……ん」
こくりと頷き頭を撫でた手に摺り寄せるその仕草。さすがにもう、本当の本当に限界だ。ぱんぱんで張り詰めすぎて痛い。
くちくちと先っぽで狙いを定めて撫でるが、力は抜けているようで、変に硬くはなっていない。
「いれますよ……」
「ああ……、――っ……」
やっぱりちょっときついけど、痛くはない。いや俺が痛いのはどうでもいいよ。フィリス様が痛くないかどうかだ。旅行前にあれも持ったかこれも持ったか、忘れていることはないかと混乱するような落ち着きのなさが情けない。
「だい、じょうぶですか? 痛くない?」
「だい、じょ、ぶ……あ、あぁっ……」
ゆっくり、ゆっくり。でも一気に、止まることはなく。頭が溶けそう。
「ん、う゛ぅっ、ん……! あ、あ……」
揺する度に零れる声が、どんどん頭を溶かしていく。可愛い、気持ちいい。
正直フィリス様の中にいるだけで気持ちいい。ぼんやり蕩けた頭で腰を揺すると、すぐ真下に焦がれた人の痴態が見えるとか、もう何なの。
見えない、顔を見せて。
座って細い腰をつかんで揺すっていると、そうねだって手を伸ばす。眼鏡を掛けていないから、多分ぼんやりとしか見えないのだろうけど、もう、本当にヤバい。可愛い過ぎる。リクエストに応えるために、押し潰すような形でぐうっと顔を近づけると盛大に身体が跳ねた。
「あ、んっ……! や、っやぁ、だ、め……」
「駄目……? いたい……?」
「――ひ、や……ちが、ちがう……」
「いいですよ、イってください……可愛い、見たい」
「や、嫌だ……一緒に、イきた……」
「――――~~っ!」
一緒にイきたいとか言って、それはもう完全に暴発を狙ってるだろ……悪気なく本当に酷い。
ぎりぎりのところで何とか耐えて、出来るだけ優しく押し潰すように穿つと、挟まれて擦れているものが、ひくつき震えている。
何とか一緒にというリクエストに応える事ができた後は、身体を拭いたりしたところで、俺も限界を迎えていた。体力は充分なんだけど色々いっぱいいっぱい過ぎだし、起きてるならともかく、寝ている間にがっつきたくはないし、寝てる姿も見たい。
もうシーツとか服はどうしたらいいかが分からなかったので、新しいものを掛けてその上にフィリス様を寝かせ、汚れた方は丸めて隅っこに置いた。あとでこっそりウォルに聞こう。
「ん……」
ベッドに戻って寝顔をガン見しながら頭を撫でているとフィリス様が目を覚ました。
「どうした……?」
「何か、噛み締めてました」
「噛み締めて……」
「フィリス様が俺……って――俺の、って言うのも何か失礼かなとも思うんですけど……」
「そうか? 私はお前を私のものだと言えるのは嬉しいけどな。私はお前のもので、お前は私のもの。お互いを所有しあえばいいと思うが」
「なるほど……フィリス」
「ん、何だ?」
様をつけずに呼ぶのは初めてだ。さらっと自然に返事をする姿に感極まってしまう。
「フィー……」
「……ん」
フィリス様の頬にかっと赤みが差し、俺も釣られて恥ずかしくなる。ちょっと勢いで調子に乗りました。
「あ、これ……めちゃくちゃ恥ずかしい……!」
「照れるな……まあ、でも……おいおい慣れてくれ。まだ時間はたっぷりあるんだから……どうか末永く、よろしく頼む」
「勿論……! こちらこそ、どうかよろしくお願いします」
ピロートークは最後真面目な感じになって、お互い笑ってしまう。
でも、こんなやり取りがこれから続いていくのかと思うと、それはとても幸せだなと思った。
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