設定はどうでもいいから、どうか報われますように

metta

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本編

19 ハッピーエンド(終)

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「――よかったなぁぁぁ! セルジュっっ!」
「あ、ありがとうございます……」 
「な? だから言ったろう」 

 ありがたい……ありがたいんだが……圧が強いし暑苦し過ぎる。
 騎士団の先輩やら同僚やら城内の知り合いやら、俺とフィリス様のことを知ったみんながみんな、この調子である。先輩はじめ、泣いている人もいて、王子様も引き気味に苦笑していた。

「お前は本当に口を開けば、すぐフィリス様フィリス様ってぇ! もう殿下とフィリス様が結婚したら、それに殉じるんじゃないかって……」
「何に殉じるんですか!? 死んだりなんかしませんよ!?」

 さすがにそれでは死なないぞ! 祝いにも水を差すし。

「いや……初恋に殉じてしまうんじゃないかと……」
「分かる。一生結婚しないんじゃないかってみんなで心配してた」
「えぇ……」

 さすがにそれはない……と言いたいところだが自信はない。
 正直なあ、無事記録更新された感はあるけど、それがなければあの初めての経験は一生引き摺るような気配がしなくもない。罪な人だよ全く。
 祝福ムードに少し疲れて部屋で休憩していると、さっさと菓子や茶を腹に収めた王子様が、俺の目の前で書類を広げ始める。

「――で、凱旋と結婚のパレードの話なのだが」
「え」

 そんな祝福の余韻が一気に冷えて現実に戻されてしまう。

「うぇ……パレード……嫌だ……! どうにかならないんですか」
「本来ならば帰ってすぐに凱旋の予定だったのだが、お前……主役の回復をみんな待っていたんだぞ。大体世界を救った勇者がひっそりこっそり結婚なんて出来るわけがないだろうが。 パレードにしたって2回やるところを1回で済む。私の婚姻の影に隠れることができるだけ、マシだと思え。これも仕事だ」
「……はい……」

 王子様の言うことは正論でしかないので俺は黙るしかない。そういったわけで、俺達は婚礼衣裳を4人で選ぶことになった。

「人の国と竜の国で婚姻による縁を結ぶというのは、長い歴史の中でも初めてですからね。お陰様で我々だけが悪目立ちしなくて済んで、大変助かりました」
「私も一緒で助かりました。フィリスさんに色々教えも請うことができますし」

 そう仲良くフィリス様……フィリスと仲良く話しているのは、竜の国の公子だ。フィリスと雰囲気の近い、線の細いイケメンである。白い竜体は綺麗ではあったが、かなり巨きな竜だったので、人の形とかなりのギャップがある。
 フィリスとは違って人懐っこくて、ほんの少しだけあざと可愛い雰囲気があるが、社交的なので人見知りがちなフィリスとも仲良くしてくれている。案外バランスがとれているように見えるし、個人的な感想として、2人が仲良くしてると何ていうか……百合感があって目の保養になる。
 なお、この婚姻は後継が他にいる王子様が、いずれは竜の国に行く形になるのだが、公子は待ちきれずにやってきて、こちらに滞在している。しかしいきなり好感度Maxなのが凄い。俺も一緒に戦ったはずなのにこの眼中にない感じ。いや、眼中にあってほしいわけじゃないので、王子様がさすがというだけだ。
 俺の方の衣裳合わせはとっくに終わり、今は3人に付き合っている形だ。みんなどの衣裳を着ても本当に素晴らしいので、どんどん美しく目立って俺を目立たなくしてくれ。
 王子様達は休憩を挟んで第2戦に入るそうだが、フィリスはもうほぼ当たりがついたっぽい。

「フィリスが着たの、どれも似合ってて俺には決めかねますね……いっそ全部着ます?」
「パレードは嫌だとか目立ちたくないとか言ってるくせに」
「俺自身はね? でも着飾ったフィリスは見たいし見て欲しいので……ところで眼鏡はかけておくんですか?」
「ああ」
「でも外したのもちょっと見たいです」
「分かった」

 眼鏡をかけても違和感ないけど、ほんの少しだけ本音を言えば、婚礼衣装ともなると、ない方がいい気がしないでもないが、フィリスがかけていたいなら、全然かけてくれていい。

「……もしかして変か?」
「まさか」
「よかった。せっかくだし、 余すところなく見たいから……お前がこれをくれたおかげで、物理的にも精神的にも色んなものが見えるようになった気がするから、出来ればかけていたい――って何だ」
「全くもう……何でそんな事言うんですか」

 思わず抱き締めてしまったら「こら」と怒られ額を軽く叩かれてしまった。いや、今のはどう考えてもフィリスが悪いと思う。
 でも本気で怒っているわけではなく、すぐにふっと柔らかい表情に変わった。

「悩むが……やっぱり今着ているこれにしよう。セルジュが選んだものと1番調和が取れ……どうした?」
「いえ、可愛いなあって」
「何だそれ」

 呆れたように笑うその眼鏡姿。
 むしろ、眼鏡を外した姿がこれからめちゃくちゃレアになるのでは。そう思うと何となく悪い気もしない。
 本来の流れとはきっと違うのだろうけど、俺だけじゃなく、みんなそれぞれいい方向に向いた。
 報われた結果だけがゴールではなく、これからの歩みが最終結果だと思うけど、きっとそれもいいものになるだろうと、俺は思っている。

「――何で泣いている!? お前、最近涙腺が緩すぎやしないか……」
「フィリスのせいですよ……」
「ええ……? まったく……ああほら、何で泣いてるか分からんが、泣くならせめて帰ってからにしろ。私以外の前で泣くな」
「格好いい……」
「人前で勇者が泣くのはみっともないからな」

 酷い。でもこれは照れ隠しだ。
 そう思うとおかしくなって、俺の涙も止まった。
 記憶の中の目つきの悪いフィリスはもうどこにもいない。
 呆れながら帰ろうと言って差し出したフィリスの手を、俺はしっかりと握り返した。
 
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