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藤井
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スマホからリズミカルな呼び出し音が聞こえ、すぐに義母が出てくれた。
「もしもし? 何かあった?」
『何にもないけど、ちゃんと元気かなぁと思って』
「あはは。元気だよ。ありがとう。義母さんは? 2人とも元気?」
『そりゃあもう、私たちはいっつも元気溌剌ってもんよ』
「ふふ。だよね」
スマホ越しに聞こえる声はいつも快活で、元気のない声なんて聞いたことがない。
けれど、しばらく近況を話し合って、それから義母さんは何か言いたそうに口籠った。
『……あの、さ。道。最近、ちゃんと眠れてる?』
「もちろん! ……もう大丈夫だよ、俺は。でも、心配してくれてありがとうね」
義母が心配する声に、俺は即答した。
本当の親ではないのに、俺のことをとても心配してくれる、良い人たちに俺は引き取ってもらえた。けれど、だからこそ心優しい彼女たちに無駄に心配はかけたくなかった。
『本当に、ちゃんと眠れているの? 最近は病院に来てくれてないって先生がおっしゃってたけど』
「大丈夫だよ。本当、心配症なんだから」
『ねぇ、道。辛いことがあったら、すぐに電話してきなさいね。私たちがそんなのすっとばしてあげるんだから。居場所がないって思わないでね。私たちは、いつだって道の帰りを待ってるんだよ』
「……うん。ありがとう義母さん」
その優しさにぐっと喉が鳴りそうになった。
義母さんの言葉はいつも俺を優しく包んでくれる。
義母さんから電話があった日は、不思議といつもより悪夢がマシになるし、いつもいつも助けられてばっかりだ。
義母さんは、名前ははるみさん。そして俺にはもう一人凛子さんと言う義母さんがいる。彼女たちはベータ同時で結婚していて一緒に俺を養育してくれている。
2人して心配性だから、心配させないようにするのも大変だった。
尚も心配する義母さんに、タジタジになりながら返事をして電話を切って息を吐いた。
話し込んでいる間に外は昨日と同じですっかり夕焼け色になっていた。
夕焼けに染まった校舎の中に1人なのはなんだか不気味で俺は急いで踵を返し寮へ向かった。
ドンッ
「わぁっ」
「わっ。あー。ごめん、大丈夫?」
角を曲がれば下駄箱というあたりで何かにぶつかり尻餅をついた俺を、どうやらぶつかった相手らしい男子生徒が心配そうに手を差し伸べてくれた。
「こちらこそごめん。ありがとう」
「いえいえ」
そう言った男子生徒の顔はなんとなく見覚えがあるような気がした。
「はぁ、でも人でよかったぁ。夕方の校舎に1人って、怖くない?」
俺がそう聞くと、そいつは「え?」と困惑した顔をした。
「ほんのちょっと怖かったから急いでたんだ。ぶつかったのが人間でよかった。って、人間だよね?」
「あっはは。人間だよ。つーか、同じクラスだし。失礼なやつだな」
そいつはおかしそうに笑った。
「そ、そうなの? ごめん。俺は市原道」
「あはは。だから知ってるってば。俺は藤井雄大だよ。ちゃんと覚えてね」
「もちろん。もう二度と忘れないよ。そうだ、寮まで一緒に帰らない?」
「怖いんだろ? しょうがないな」
藤井はそう言って頷いてくれた。
帰る道すがら会話は途切れることはなく、こんなに気の合う人がクラスにいたのかと、俺は嬉しくなった。
その日は無事に寮について、藤井とは部屋の前で別れた。
けれど次の日、寮から出たところでまた藤井に会った。
「よ。おはよう。一緒に行こうと思って待ってたんだ」
「まじ? 昨日言ってくれたら時間合わせたのに! なんか待たせてごめんね」
昨日の帰り道がとても楽しかったので、藤井の申し出が嬉しかった。
「今朝思い立ったからさ。ほら、行こうぜ」
「うん」
その日は1日そんな感じで藤井と一緒で、逆に律葉は他の人に囲まれて楽しそうにしていたので、話す機会がなかった。
「もしもし? 何かあった?」
『何にもないけど、ちゃんと元気かなぁと思って』
「あはは。元気だよ。ありがとう。義母さんは? 2人とも元気?」
『そりゃあもう、私たちはいっつも元気溌剌ってもんよ』
「ふふ。だよね」
スマホ越しに聞こえる声はいつも快活で、元気のない声なんて聞いたことがない。
けれど、しばらく近況を話し合って、それから義母さんは何か言いたそうに口籠った。
『……あの、さ。道。最近、ちゃんと眠れてる?』
「もちろん! ……もう大丈夫だよ、俺は。でも、心配してくれてありがとうね」
義母が心配する声に、俺は即答した。
本当の親ではないのに、俺のことをとても心配してくれる、良い人たちに俺は引き取ってもらえた。けれど、だからこそ心優しい彼女たちに無駄に心配はかけたくなかった。
『本当に、ちゃんと眠れているの? 最近は病院に来てくれてないって先生がおっしゃってたけど』
「大丈夫だよ。本当、心配症なんだから」
『ねぇ、道。辛いことがあったら、すぐに電話してきなさいね。私たちがそんなのすっとばしてあげるんだから。居場所がないって思わないでね。私たちは、いつだって道の帰りを待ってるんだよ』
「……うん。ありがとう義母さん」
その優しさにぐっと喉が鳴りそうになった。
義母さんの言葉はいつも俺を優しく包んでくれる。
義母さんから電話があった日は、不思議といつもより悪夢がマシになるし、いつもいつも助けられてばっかりだ。
義母さんは、名前ははるみさん。そして俺にはもう一人凛子さんと言う義母さんがいる。彼女たちはベータ同時で結婚していて一緒に俺を養育してくれている。
2人して心配性だから、心配させないようにするのも大変だった。
尚も心配する義母さんに、タジタジになりながら返事をして電話を切って息を吐いた。
話し込んでいる間に外は昨日と同じですっかり夕焼け色になっていた。
夕焼けに染まった校舎の中に1人なのはなんだか不気味で俺は急いで踵を返し寮へ向かった。
ドンッ
「わぁっ」
「わっ。あー。ごめん、大丈夫?」
角を曲がれば下駄箱というあたりで何かにぶつかり尻餅をついた俺を、どうやらぶつかった相手らしい男子生徒が心配そうに手を差し伸べてくれた。
「こちらこそごめん。ありがとう」
「いえいえ」
そう言った男子生徒の顔はなんとなく見覚えがあるような気がした。
「はぁ、でも人でよかったぁ。夕方の校舎に1人って、怖くない?」
俺がそう聞くと、そいつは「え?」と困惑した顔をした。
「ほんのちょっと怖かったから急いでたんだ。ぶつかったのが人間でよかった。って、人間だよね?」
「あっはは。人間だよ。つーか、同じクラスだし。失礼なやつだな」
そいつはおかしそうに笑った。
「そ、そうなの? ごめん。俺は市原道」
「あはは。だから知ってるってば。俺は藤井雄大だよ。ちゃんと覚えてね」
「もちろん。もう二度と忘れないよ。そうだ、寮まで一緒に帰らない?」
「怖いんだろ? しょうがないな」
藤井はそう言って頷いてくれた。
帰る道すがら会話は途切れることはなく、こんなに気の合う人がクラスにいたのかと、俺は嬉しくなった。
その日は無事に寮について、藤井とは部屋の前で別れた。
けれど次の日、寮から出たところでまた藤井に会った。
「よ。おはよう。一緒に行こうと思って待ってたんだ」
「まじ? 昨日言ってくれたら時間合わせたのに! なんか待たせてごめんね」
昨日の帰り道がとても楽しかったので、藤井の申し出が嬉しかった。
「今朝思い立ったからさ。ほら、行こうぜ」
「うん」
その日は1日そんな感じで藤井と一緒で、逆に律葉は他の人に囲まれて楽しそうにしていたので、話す機会がなかった。
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