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ヒート2 ※
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俺の中心に先輩が優しくそっと触れてくれて、体がびくりと跳ねた。
「んぁあっ」
さっきまで自分でどれだけ触っていても絶頂を迎えることが出来ず、もどかしく、際限を知ることのなかったそこは、先輩に触れられただけでいとも簡単に勢いよく白濁が飛び出した。
「道……」
「せんぱい」
先輩の声は低くかすれて、俺の腹の奥に甘く響く。
視界は涙で霞んで、先輩がよく見えなかったけど、今の俺は先輩の匂いで全身を包まれていてとにかく今までの人生で一番幸せだと感じていた。
「っ……、みち、入れるぞ」
「ぁあっ、せんぱいっ……ぁっ、せんぱいが、入ってる」
ここ最近プラトニックなお付き合いをしていたにも関わらず俺のそこは濡れそぼり、簡単に先輩を受け入れた。けれど今までのセックスとは比べものにならないくらいに気持ちがよく、頭の中は真っ白でふわふわしていた。
グチュ、ヌチュ、パチュパチュ
部屋の中に卑猥な音が響き渡る。
「ぁっ、きもちいっ、きもち……せんぱっ、好きっ、せんぱ、んん」
「はぁ、はぁ。道……俺も、道が好きだ……、道……、道……」
俺を好きだと言ってくれる先輩の声に、俺はなぜだか悲しくなった。
「せんぱっ、やらぁ……やら……せんぱい……ぅぅ、んんぁ」
「道? 何が、嫌なんだ……?」
先輩は俺のぐちゃぐちゃになった頬を撫でて、涙を拭ってくれた。
頭はふわふわして、幸せだけど悲しくて。
あれ? 何が嫌なんだっけ。
「せんぱいっ、んんッ……もっとして、もっと……、ぁあ、うごいて」
「道、何が嫌なのか、教えてくれ」
涙を拭われ少しだけクリアになった視界の先で、先輩も動きたいように見えるのに、眉間にシワを寄せて辛そうに耐えながら真剣な目をして俺を見た。けれど、分からない。
「わから、なっ、んん……せんぱいっ」
「っ、はぁ、道……」
先輩は耐えきれないというように動いてくれて、それから何度も何度もイッた。
疲労困憊で、もう体は一ミリも動かせそうにない。
「……道」
微睡む俺に、先輩の優しく落ち着いた声が響いてきて、額に張り付いた髪の毛をそっと解かしてくれるのが分かる。暖かいものに包まれて、全身を先輩の匂いが覆ってて。けれどまるで雲の上にいるみたいにふわふわするから、今は多分夢の中だ。いつもの悪夢じゃない。あの人たちが居なくて先輩が出てくる幸せな夢。
「ごめんな……道」
頭の上の方から、先輩が謝る声が聞こえた。
「せんぱい……?」
「何が嫌だったのか教えてくれるか?」
何が嫌なのか。さっきは分からなくなったけど、今は何が嫌だったのか分かる。
「おれ、せんぱいと、はなれたくない。好きなのに、せんぱいも好きって言ってくれるのに」
夢の中だからなのか、声が出し辛かった。
「だったら離れなければ良い。ずっと、一生一緒にいよう」
俺はかなり良い夢を見ているらしい。
だって先輩と一生一緒になんて居られるわけないのに。
「いっしょういっしょ。ふふ。プロポーズみたい」
「プロポーズだ。まだ、就職もしてない身だが、道を苦労させないようにするから、そうしたら結婚してくれ」
「ふふ。本当……そうなったらどんなに」
どんなに良いのか。
けれど、俺はあの人たちから逃げられない。
逃げたらお世話になった義母さんたちに迷惑がかかってしまうから。
「そうしよう? な?」
「ふふ」
いつにも増して優しい声音で、けれどどこか必死さを帯びている様に感じて俺は何だか面白くなった。
「笑ったな? なぁ、もう俺は道なしでは生きていけなそうだぞ。責任とって俺と結婚してくれ」
嬉しい。夢の中だとはいえ、先輩にここまで求められたら死んでも良いと思うくらい嬉しい。
だけど。
「おれ……無理だよ」
「え?」
「夢の中だから、本当のこと言えるけど、おれ、本当は……、先輩に抱いてもらえる様な綺麗な体じゃない」
「道は綺麗だ……って、夢? 道、もしかして夢だと思って話しているのか?」
すかさず返ってくる返事は、俺が言って欲しい言葉なのだろう。夢というのは本当に便利だ。
夢だと気がついているから、これは明晰夢というやつなのかもしれない。夢の中の住人である先輩がそこに疑問を持っていることも面白く感じた。
「ふふ……、ここは夢の中だよ」
「……そうか。ここは夢の中か」
「うん」
「なら。ここが夢の中なら、教えてくれるか? どうして道が綺麗な体じゃないと言ったのか」
「いいよ。俺が汚いのはね。俺が父さんと兄さんを誘惑したオメガだから」
「っ、どういうことだ」
普段から低い方の先輩の、聞いたこともないくらい低い声を聞いた。
「俺のはじめては、父さん。無理やりされて、そのあと兄さんにも。ふふ……そんなだから俺、汚いでしょ。今でもあの頃のこと、夢に見る。あ……、だけど最近は、先輩が助けてくれる時もあるよ、夢の中の先輩だから、いつもお礼言えないけど、今日は言える、いつもありがとう」
「道……」
「先輩、俺、見つかっちゃって。一緒に居られなくなっちゃうけど、夢の中ではこうしてまた会えるかな。そしたら俺、あの地獄でも耐えられるかも」
「ダメだ。行かせない」
「ふふ」
「道」
笑う俺を咎める様な先輩の声を聞きながら、俺はスーッと深い眠りについた。
「んぁあっ」
さっきまで自分でどれだけ触っていても絶頂を迎えることが出来ず、もどかしく、際限を知ることのなかったそこは、先輩に触れられただけでいとも簡単に勢いよく白濁が飛び出した。
「道……」
「せんぱい」
先輩の声は低くかすれて、俺の腹の奥に甘く響く。
視界は涙で霞んで、先輩がよく見えなかったけど、今の俺は先輩の匂いで全身を包まれていてとにかく今までの人生で一番幸せだと感じていた。
「っ……、みち、入れるぞ」
「ぁあっ、せんぱいっ……ぁっ、せんぱいが、入ってる」
ここ最近プラトニックなお付き合いをしていたにも関わらず俺のそこは濡れそぼり、簡単に先輩を受け入れた。けれど今までのセックスとは比べものにならないくらいに気持ちがよく、頭の中は真っ白でふわふわしていた。
グチュ、ヌチュ、パチュパチュ
部屋の中に卑猥な音が響き渡る。
「ぁっ、きもちいっ、きもち……せんぱっ、好きっ、せんぱ、んん」
「はぁ、はぁ。道……俺も、道が好きだ……、道……、道……」
俺を好きだと言ってくれる先輩の声に、俺はなぜだか悲しくなった。
「せんぱっ、やらぁ……やら……せんぱい……ぅぅ、んんぁ」
「道? 何が、嫌なんだ……?」
先輩は俺のぐちゃぐちゃになった頬を撫でて、涙を拭ってくれた。
頭はふわふわして、幸せだけど悲しくて。
あれ? 何が嫌なんだっけ。
「せんぱいっ、んんッ……もっとして、もっと……、ぁあ、うごいて」
「道、何が嫌なのか、教えてくれ」
涙を拭われ少しだけクリアになった視界の先で、先輩も動きたいように見えるのに、眉間にシワを寄せて辛そうに耐えながら真剣な目をして俺を見た。けれど、分からない。
「わから、なっ、んん……せんぱいっ」
「っ、はぁ、道……」
先輩は耐えきれないというように動いてくれて、それから何度も何度もイッた。
疲労困憊で、もう体は一ミリも動かせそうにない。
「……道」
微睡む俺に、先輩の優しく落ち着いた声が響いてきて、額に張り付いた髪の毛をそっと解かしてくれるのが分かる。暖かいものに包まれて、全身を先輩の匂いが覆ってて。けれどまるで雲の上にいるみたいにふわふわするから、今は多分夢の中だ。いつもの悪夢じゃない。あの人たちが居なくて先輩が出てくる幸せな夢。
「ごめんな……道」
頭の上の方から、先輩が謝る声が聞こえた。
「せんぱい……?」
「何が嫌だったのか教えてくれるか?」
何が嫌なのか。さっきは分からなくなったけど、今は何が嫌だったのか分かる。
「おれ、せんぱいと、はなれたくない。好きなのに、せんぱいも好きって言ってくれるのに」
夢の中だからなのか、声が出し辛かった。
「だったら離れなければ良い。ずっと、一生一緒にいよう」
俺はかなり良い夢を見ているらしい。
だって先輩と一生一緒になんて居られるわけないのに。
「いっしょういっしょ。ふふ。プロポーズみたい」
「プロポーズだ。まだ、就職もしてない身だが、道を苦労させないようにするから、そうしたら結婚してくれ」
「ふふ。本当……そうなったらどんなに」
どんなに良いのか。
けれど、俺はあの人たちから逃げられない。
逃げたらお世話になった義母さんたちに迷惑がかかってしまうから。
「そうしよう? な?」
「ふふ」
いつにも増して優しい声音で、けれどどこか必死さを帯びている様に感じて俺は何だか面白くなった。
「笑ったな? なぁ、もう俺は道なしでは生きていけなそうだぞ。責任とって俺と結婚してくれ」
嬉しい。夢の中だとはいえ、先輩にここまで求められたら死んでも良いと思うくらい嬉しい。
だけど。
「おれ……無理だよ」
「え?」
「夢の中だから、本当のこと言えるけど、おれ、本当は……、先輩に抱いてもらえる様な綺麗な体じゃない」
「道は綺麗だ……って、夢? 道、もしかして夢だと思って話しているのか?」
すかさず返ってくる返事は、俺が言って欲しい言葉なのだろう。夢というのは本当に便利だ。
夢だと気がついているから、これは明晰夢というやつなのかもしれない。夢の中の住人である先輩がそこに疑問を持っていることも面白く感じた。
「ふふ……、ここは夢の中だよ」
「……そうか。ここは夢の中か」
「うん」
「なら。ここが夢の中なら、教えてくれるか? どうして道が綺麗な体じゃないと言ったのか」
「いいよ。俺が汚いのはね。俺が父さんと兄さんを誘惑したオメガだから」
「っ、どういうことだ」
普段から低い方の先輩の、聞いたこともないくらい低い声を聞いた。
「俺のはじめては、父さん。無理やりされて、そのあと兄さんにも。ふふ……そんなだから俺、汚いでしょ。今でもあの頃のこと、夢に見る。あ……、だけど最近は、先輩が助けてくれる時もあるよ、夢の中の先輩だから、いつもお礼言えないけど、今日は言える、いつもありがとう」
「道……」
「先輩、俺、見つかっちゃって。一緒に居られなくなっちゃうけど、夢の中ではこうしてまた会えるかな。そしたら俺、あの地獄でも耐えられるかも」
「ダメだ。行かせない」
「ふふ」
「道」
笑う俺を咎める様な先輩の声を聞きながら、俺はスーッと深い眠りについた。
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