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律葉視点 律葉の恋11
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「じゃあ、5人とも今日からよろしくね」
会長がそう言って、僕を含めた5人の書記候補生は、大きく頷いた。
結果的に、僕は会長補佐になり、山根くんは副会長補佐、中井くんが広報について、中居くんの補佐として佐藤くん、書記は鈴木くんがつくことになったのだ。
僕が考えていた案では1人余りが出て、誰かが諦めないといけないと思っていた。
そうして、その余った1人は自分だろうと思っていたけど、会長は校長に5人分の枠を増やす許可を取ってきてくれた。
会長は書記や補佐が増えたのにも相変わらず、放課後の遅い時間まで仕事をしているので、僕は距離感を大事にしながら、それを手伝った。
いつものように、会長にコーヒーを出しながらそっと息をついた。
任命されたからには、全力で取り組むつもりではあるけど、本当に会長補佐なんて僕がやっても良いのかどうか、不安だった。
「どうしたの?」
「え?」
「いや、何か悩んでるみたいに見えたから」
いつの間にか書類から顔を上げていた会長と目があった。
「いえ……。その。本当に僕まで生徒会に入ってよかったのかなぁって思っただけです。それに、会長補佐なんて務まるか不安だなって」
「俺の補佐は嫌だった?」
「っ、嫌なわけないです! じゃなくて、僕なんかより中井くんとかの方が向いている気がするし」
「そうかな? 中井くんは広報向きだと思うよ。彼は居るだけで華があるし、それこそ広報として表に出てくれれば学園のイメージを上げてくれるだろうからね」
「確かに」
会長の言葉に納得して頷くと、会長はふっと笑って続けた。
「それに、俺は律葉くんは生徒会長向きだと思って会長補佐に任命したんだけど」
「僕がですか?」
驚いて尋ねると、会長はまたふふっと笑った。
「そうだよ。俺は人に仕事を振るのは苦手だけど、律葉くんはそこのところとてもうまいからね」
「自分じゃ何も出来ないだけです」
せっかく会長が褒めてくれているらしいのに、そんなちっとも可愛くないことを言ってしまっても会長はただ優しく目を弓なりにして笑った。
「律葉くんは自分に自身がないようだけど、これ、見てみてよ」
「え? あ、これって」
会長に手渡されたのは、書記を決める時にみんなが書いた投票用紙だった。
そして僕が書いた紙以外は全部、“野田律葉”と記入されていた。
「全員律葉くんの名前を書いていたんだよ。人に認めてもらうのはとても大変なことだと思う。でも、律葉くんは、少なくとも4人からは認められてるんだよ。だから、もう少し自信を持っても良いんじゃないかな?」
「そう……ですね」
みんなが僕の名前を書いてくれていた事実を知って、すごく嬉しくなった。
そして、会長が僕にそのことを教えてくれたこともとても嬉しかった。
「会長、ありがとうございます」
僕の言葉に、会長はにっこり笑うだけで応えた。
他の生徒からスパダリと言われる所以は、こういう所なんだろうかと、気がついた。
きっと皆んなこの優しい雰囲気と笑顔を好きになるんだろうな。
「会長がモテるの、分かるなぁ」
「えぇ? あはは。それは光栄だなぁ」
否定をしない、その軽い返事が、本当にモテていることを物語っている。けれどその後会長は続けた。
「ああ、だけど俺、一度も付き合ったことないんだよ?」
「え? そうなんですか? 意外です」
「そ。だってさあ、あんまりぐいぐい来られるの怖いでしょ?」
「……そうですね」
確かに、好きじゃない相手から迫られれば怖い。
けれど仮に、会長から迫られたらと思うと、その想像だけで体の中心が甘く痺れるような感覚があった。
会長がそう言って、僕を含めた5人の書記候補生は、大きく頷いた。
結果的に、僕は会長補佐になり、山根くんは副会長補佐、中井くんが広報について、中居くんの補佐として佐藤くん、書記は鈴木くんがつくことになったのだ。
僕が考えていた案では1人余りが出て、誰かが諦めないといけないと思っていた。
そうして、その余った1人は自分だろうと思っていたけど、会長は校長に5人分の枠を増やす許可を取ってきてくれた。
会長は書記や補佐が増えたのにも相変わらず、放課後の遅い時間まで仕事をしているので、僕は距離感を大事にしながら、それを手伝った。
いつものように、会長にコーヒーを出しながらそっと息をついた。
任命されたからには、全力で取り組むつもりではあるけど、本当に会長補佐なんて僕がやっても良いのかどうか、不安だった。
「どうしたの?」
「え?」
「いや、何か悩んでるみたいに見えたから」
いつの間にか書類から顔を上げていた会長と目があった。
「いえ……。その。本当に僕まで生徒会に入ってよかったのかなぁって思っただけです。それに、会長補佐なんて務まるか不安だなって」
「俺の補佐は嫌だった?」
「っ、嫌なわけないです! じゃなくて、僕なんかより中井くんとかの方が向いている気がするし」
「そうかな? 中井くんは広報向きだと思うよ。彼は居るだけで華があるし、それこそ広報として表に出てくれれば学園のイメージを上げてくれるだろうからね」
「確かに」
会長の言葉に納得して頷くと、会長はふっと笑って続けた。
「それに、俺は律葉くんは生徒会長向きだと思って会長補佐に任命したんだけど」
「僕がですか?」
驚いて尋ねると、会長はまたふふっと笑った。
「そうだよ。俺は人に仕事を振るのは苦手だけど、律葉くんはそこのところとてもうまいからね」
「自分じゃ何も出来ないだけです」
せっかく会長が褒めてくれているらしいのに、そんなちっとも可愛くないことを言ってしまっても会長はただ優しく目を弓なりにして笑った。
「律葉くんは自分に自身がないようだけど、これ、見てみてよ」
「え? あ、これって」
会長に手渡されたのは、書記を決める時にみんなが書いた投票用紙だった。
そして僕が書いた紙以外は全部、“野田律葉”と記入されていた。
「全員律葉くんの名前を書いていたんだよ。人に認めてもらうのはとても大変なことだと思う。でも、律葉くんは、少なくとも4人からは認められてるんだよ。だから、もう少し自信を持っても良いんじゃないかな?」
「そう……ですね」
みんなが僕の名前を書いてくれていた事実を知って、すごく嬉しくなった。
そして、会長が僕にそのことを教えてくれたこともとても嬉しかった。
「会長、ありがとうございます」
僕の言葉に、会長はにっこり笑うだけで応えた。
他の生徒からスパダリと言われる所以は、こういう所なんだろうかと、気がついた。
きっと皆んなこの優しい雰囲気と笑顔を好きになるんだろうな。
「会長がモテるの、分かるなぁ」
「えぇ? あはは。それは光栄だなぁ」
否定をしない、その軽い返事が、本当にモテていることを物語っている。けれどその後会長は続けた。
「ああ、だけど俺、一度も付き合ったことないんだよ?」
「え? そうなんですか? 意外です」
「そ。だってさあ、あんまりぐいぐい来られるの怖いでしょ?」
「……そうですね」
確かに、好きじゃない相手から迫られれば怖い。
けれど仮に、会長から迫られたらと思うと、その想像だけで体の中心が甘く痺れるような感覚があった。
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