21 / 99
19:お迎え
なんとなく気まずい思いをしながらも、なんとか自己紹介や入学説明を聞き終えた。
今日はこれで終わりで、本格的な授業などは明日かららしい。
「アール伯爵令息殿、サムソン男爵令息殿。よろしければこの後食堂でお茶をしていきませんか?」
「嬉しいお誘いですが、すみません。この後は約束がありまして」
ヨハイドの誘いにそう答えると、ヨハイドは特に気を悪くした様子もなく頷いた。
「そうですか。ではサムソン男爵令息殿は何かご予定は?」
「すみません。誘っていただけてとても光栄なのですが、お、私も約束があるのです。また、機会があれば誘っていただけると嬉しいです」
「そうなのですね。残念ですが、仕方がありません。では、僕はいきますね。また明日」
「はい。また明日」
ヨハイドがカバンを持って出て行ったあと、教室の入り口がわずかに騒がしくなった。
「バトラル」
「……クライブ様?」
「迎えにきたよ。入学式はどうだった? 友達はできたみたいだが」
クライブはチラリとコリンの方を見やってそう言った。どうやら入学式の最中に話していたところを見ていたみたいだ。紹介して欲しそうにしているし、やっぱりゲーム通りじゃない所があるのはたまたまで、もしかしたらクライブはコリンのことが気になっているのかもしれない。そこまで考えて俺は頷いた。
それなら、いわゆるノンケであるコリンの気持ちを思えば申し訳ないけど、やっぱりクライブはコリンを好きになる可能性もあるのかもしれないなと考えた。ピンク頭を隠したくらいで、ヒロインの輝きは隠せないものなのかもしれない。
「はい。彼はコリン・サムソン男爵令息殿です。コリン殿、ご存知だと思いますが、こちらはクライブ・ボートルニア皇太子殿下です」
紹介すると、クライブはコリンに向かってにっこりと笑って手を差し出した。
「サムソン男爵令息殿。バトラルと仲良くしてくれてありがとう。クライブ・ボートルニアだ」
「お、お初にお目にかかります。サムソン男爵が息子、こ、コリン・サムソンと申します」
コリンはクライブにかなり萎縮しながらも差し出された手をそっと握り返している。
「そう身構えないでくれ。私の大事な婚約者のご友人なら、是非とも私とも仲良くしていただきたい。ね?」
「は、はいっ、ぜ、是非」
コリンは目を泳がせ、声を震わせながら何度も頷いた。
「あの、僕も紹介していただけますか?」
「え、ファブランド公爵令息殿?」
いつの間にか、クライブが教室に入る前に帰っていったはずのヨハイドが後ろに立っていた。
「実は、忘れ物を取りに戻ってきたんです」
本当かどうかは分からないが、ヨハイドはそう言って微笑んだ。
「彼は?」
クライブがそう聞いたので、俺はヨハイドをクライブに紹介した。
「彼はヨハイド・ファブランド公爵令息殿です。僕が転んだときに手を差し伸べてくださって仲良くしていただけることになりました。ファブランド公爵令息殿、こちらはクライブ・ボートルニア皇太子殿下です」
「ファブランド公爵令息殿、私の大切な婚約者であるバトラルと仲良くしてくれてありがとう。それにバトラルを助けてくれてありがとう。クライブ・ボートルニアだ」
先ほどからクライブは、“大切な”だの“大事な”だのと恥ずかしげもなく言っているが、いずれ俺を断罪することになった時に、差し障りが出てくると思うので、できればやめて欲しい。俺がドMだと言っても、まるで愛されているかのような言葉をさらりと言われれば普通に恥ずかしいし照れる。
「お初にお目にかかります。ファブランド公爵が息子、ヨハイド・ファブランドと申します。よろしくお願いいたします」
ヨハイドはそう言って美しい所作でお辞儀をした。
それに対して、クライブはニコリと微笑んでよろしくと返してから、俺に向き直った。
「それで、転んだって? 怪我はない?」
クライブは俺の足元に膝をついて、俺の足に触れ痛い所がないのか確認してくる。
「大丈夫です。受け身はとれましたから、怪我をするほどじゃありませんでした」
多少痣になっていそうな部分はあるが、押されても少し気持ちいいくらいの痛みしかない。
「本当かな。バトラルは怪我をしても体調を崩しても内緒にしてすぐに無理をするから」
「こ、今回は本当に大丈夫ですから」
「……バトラルがそう言うなら、今のところはそういうことにしよう」
クライブはそう言って俺の手を取り、自分のひじに添えさせた。
アルファ男性やベータ男性が女性、もしくはオメガ男性をエスコートなどする時の定位置だ。
そうして俺はクライブにエスコートをされながら、コリンとヨハイドに別れを告げて、朝と同じく皇族の馬車に乗りこんだ。
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。