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4.僕は敵
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今日は僕の8歳の誕生日。
別棟の窓から庭を見ると、幸せそうな家族が一家揃って散歩していた。
『あら、ドニ。もう木登りがしたいとは言わないの?』
『うん! だって僕はお兄様になるんだから、落ち着いてかっこいいセドリックお兄様みたいになるんだぁ』
ドニが無邪気にマリーのお腹に手を当てて笑ってる。
『嬉しいことを言ってくれるねドニ。ドニがお兄様になっても、僕がドニのお兄様なことは変わらないのだから、甘えてもいいんだよ?』
お兄様はドニが甘えてくれなくなるんじゃないかと心配している感じかな。
そのお兄様に対して、ドニはむぅっと口を尖らせてる。
『もうっ。僕もう甘えないもんっ』
『ははは。セドリックみたいなお兄様になるならそんな口調は良くないかもな』
お父様も、幸せそうだ。
羨ましい。妬ましい。
最近はそんな感情が浮かぶようになった。
こんな感情がいけないことだって分かってるけど、自分の感情なのにうまくコントロールできなくて心がぐちゃぐちゃで。
だから僕は絵を描くことにした。
僕の心の支えになってくれている絵本の絵みたいに、綺麗な絵はかけないけど、絵を描いていると不思議と何も考えずに済む。
もちろん、絵具や紙なんてなくて最初はどうしようかって思ったけど、壁に描けばいいんだって気がついた。この別棟は僕しか住んでいないし、僕にパンを届けてくれる使用人も、次からはドアの前に置いておいてくれればいいと言ったら、嬉しそうに了承してくれた。
いつしか、眠れない夜のお供は絵本じゃなくて、絵を描くことになった。
そうして眠れないまま明け方になり、僕はふらりと庭に出た。
そういえばここ2、3日はぴーちゃんがきてくれていない。
ぴーちゃんが飛んでいないかと空を見るけど、少しどんよりとした空が広がっているだけだ。
明け方の冷たい風が頬を撫で、寒いような心地いいような。
どうせこんな明け方に誰も庭に出てはいないと鷹をくくり目を閉じて風を感じていると、屋敷の方が騒がしくなった。
『産気づかれたっ!!』
『助産師を呼べ!! 早く!!』
使用人が慌てたように指示を飛ばしている。
ああ。そうか。生まれるのか。
なら、こんなところにいたら、誰かに見られてしまう。
早く戻らないと。
踵を返そうと振り返ると、そこにはドニが立っていた。
両手をめいいっぱい広げて、僕を睨んでいる。
久しぶりに近くで見て気がついたけど、ドニは3歳年上ではあるけどオメガの僕と同じくらいの身長になっていた。
「ドニ、様。おはようございます」
「ダメだよ!! 僕の弟を傷つけさせたりなんかさせないんだからっ。僕が弟を守るんだから!!」
僕を見る目には怯えがあって、行手を阻むように広げた両手もプルプルと震えていた。
僕が赤子をどうにかすると思っているのか。
ズンと心臓に矢が刺さったように痛みが走った。
「……何を、おっしゃっておられるのか……分かりませんが、私は傷つけたりなど」
「こないで! お屋敷に入らないでっ。僕の大事な弟が生まれるんだからっ」
「屋敷に入ったりなど」
「何してる! ……カミーユ……。ドニ、どうしたんだ?」
騒ぎを聞きつけたのか、セドリックが来た。
「僕の弟、守るんだ!!」
「ドニ、どういうことだ?」
ドニは必死な様子で僕から弟を守ろうとしていて、僕は頭が真っ白になった。
けれど、ここから早く立ち去らないといけないことだけは分かる。
「ぁ……、ぁ……ぇっと、すみません。しつれいします」
別棟の窓から庭を見ると、幸せそうな家族が一家揃って散歩していた。
『あら、ドニ。もう木登りがしたいとは言わないの?』
『うん! だって僕はお兄様になるんだから、落ち着いてかっこいいセドリックお兄様みたいになるんだぁ』
ドニが無邪気にマリーのお腹に手を当てて笑ってる。
『嬉しいことを言ってくれるねドニ。ドニがお兄様になっても、僕がドニのお兄様なことは変わらないのだから、甘えてもいいんだよ?』
お兄様はドニが甘えてくれなくなるんじゃないかと心配している感じかな。
そのお兄様に対して、ドニはむぅっと口を尖らせてる。
『もうっ。僕もう甘えないもんっ』
『ははは。セドリックみたいなお兄様になるならそんな口調は良くないかもな』
お父様も、幸せそうだ。
羨ましい。妬ましい。
最近はそんな感情が浮かぶようになった。
こんな感情がいけないことだって分かってるけど、自分の感情なのにうまくコントロールできなくて心がぐちゃぐちゃで。
だから僕は絵を描くことにした。
僕の心の支えになってくれている絵本の絵みたいに、綺麗な絵はかけないけど、絵を描いていると不思議と何も考えずに済む。
もちろん、絵具や紙なんてなくて最初はどうしようかって思ったけど、壁に描けばいいんだって気がついた。この別棟は僕しか住んでいないし、僕にパンを届けてくれる使用人も、次からはドアの前に置いておいてくれればいいと言ったら、嬉しそうに了承してくれた。
いつしか、眠れない夜のお供は絵本じゃなくて、絵を描くことになった。
そうして眠れないまま明け方になり、僕はふらりと庭に出た。
そういえばここ2、3日はぴーちゃんがきてくれていない。
ぴーちゃんが飛んでいないかと空を見るけど、少しどんよりとした空が広がっているだけだ。
明け方の冷たい風が頬を撫で、寒いような心地いいような。
どうせこんな明け方に誰も庭に出てはいないと鷹をくくり目を閉じて風を感じていると、屋敷の方が騒がしくなった。
『産気づかれたっ!!』
『助産師を呼べ!! 早く!!』
使用人が慌てたように指示を飛ばしている。
ああ。そうか。生まれるのか。
なら、こんなところにいたら、誰かに見られてしまう。
早く戻らないと。
踵を返そうと振り返ると、そこにはドニが立っていた。
両手をめいいっぱい広げて、僕を睨んでいる。
久しぶりに近くで見て気がついたけど、ドニは3歳年上ではあるけどオメガの僕と同じくらいの身長になっていた。
「ドニ、様。おはようございます」
「ダメだよ!! 僕の弟を傷つけさせたりなんかさせないんだからっ。僕が弟を守るんだから!!」
僕を見る目には怯えがあって、行手を阻むように広げた両手もプルプルと震えていた。
僕が赤子をどうにかすると思っているのか。
ズンと心臓に矢が刺さったように痛みが走った。
「……何を、おっしゃっておられるのか……分かりませんが、私は傷つけたりなど」
「こないで! お屋敷に入らないでっ。僕の大事な弟が生まれるんだからっ」
「屋敷に入ったりなど」
「何してる! ……カミーユ……。ドニ、どうしたんだ?」
騒ぎを聞きつけたのか、セドリックが来た。
「僕の弟、守るんだ!!」
「ドニ、どういうことだ?」
ドニは必死な様子で僕から弟を守ろうとしていて、僕は頭が真っ白になった。
けれど、ここから早く立ち去らないといけないことだけは分かる。
「ぁ……、ぁ……ぇっと、すみません。しつれいします」
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