代わりにくらいなれると思った

いちみやりょう

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デートのお誘い

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重鷹さんと付き合うことになった日から数日がたった。
大切なものを作ってしまった。
あれから重鷹さんは毎日部屋に来いと言われた。遅くなってもいいから毎日きてほしいと言われて俺はすごく嬉しかった。それに重鷹さんは毎日おいしいご飯を作って待っていてくれた。
だから最近何だか肌艶が良くなった気がする。
俺は食費を出そうと何度も試みたんだけど、毎回断られて、あの手この手を使っても重鷹さんに食費を払うことが出来なかったから、何か別の方法で返せないかと模索中だ。
そんなこんなで、今は毎日重鷹さんと居るものだからセフレの頃は1週間に1回呼び出されていたけど、それに比べたら7倍もの時間重鷹さんと過ごせるんだ。
廊下でもすれ違ったりするし、その度に話しかけてくれたりお弁当をくれたりする。
でも俺はちゃんと勉強もバイトも疎かにしないように気をつけた。

付き合い始めて2週間くらい経って重鷹さんの部屋にいる時のこと。

「今度の土曜日空いてるか? バイト入ってるか?」
「土曜は早朝だけのバイトです」
「じゃあ、もしよかったらデートに行かないか?」
「で、デートですか? 行きたいです!」
「どこか行きたいところとかあるか?」
「俺、良く分かんないんで重鷹さんの行きたいところに行きたいです」
「じゃあ、遊園地に行かないか?」
「遊園地!! 行ってみたいです!!」
「ふっ、そうか、じゃあ朝、10時に部屋の前まで迎えに行くな?」
「はい! 楽しみだなぁ」
「俺も楽しみにしてる」
「おお、なんか恋人っぽい!……いて」

急に軽くチョップされて顔を上げると重鷹さんが呆れ顔をしていた。

「恋人っぽいじゃなくて恋人だろ?」
「だって、俺こういうの初めてで」
「まぁ可愛いからいいけどな」
「!? 会長、そんなキャラでしたっけ?」
「俺はもともと愛情表現はするタイプだ」

愛情表現するタイプか。元カノとかの話かな。

「なにブスくれてんだ? もしかして嫉妬してるのか?」
「ブスくれてないです。嫉妬もしてない! ただ元カノの話かなって思っただけです」
「それを嫉妬と言うんだろう? 嫉妬してもらえて嬉しいな。だが、俺はちゃんとお付き合いするのは柚紀が初めてだ。愛情表現してたのはうちの飼い猫に対しての話だしな」
「えーそれは無理がありますよ。大丈夫です。俺、会長が今ちゃんと俺が1番好きならそれでいいし」
「本当の話なんだがな」

会長は俺の頭をワシワシと混ぜ返して困ったような笑顔でそう言った。

「柚紀こそどうなんだ?」
「え? 何がですか?」
「誰かと付き合ったことがあるのか?」
「な、ないですよ、俺と付き合ってくれる心の広い人なんてそうそう転がってるわけないじゃないですか」
「柚紀、自分がかわいい自覚を少しは持て」
「可愛いわけないです。日向ならまだしも」
「だが、その」

会長が言い淀むなんて珍しい気がする。

「だから、慣れてるって言ってだだろ?」
「あ、ああ。あれは日向の代わりになるのがって意味でしたけど、そっちの意味でも慣れてるって言った方が会長も気にせず俺を使えると思って」
「使うとか言うな」
「だって、あの時会長俺を使ってやるって言ってましたよ」
「うぐ、すまない。本当に。だが本当に俺は柚紀が大切なんだ。大切な人を悪く言われるのは嫌なんだ」
「会長……ごめんなさい。会長に大切な人って言ってもらえて嬉しいです。だからもう言いません」
「俺はこうやって柚紀と話し合える関係になれて本当に嬉しい。ありがとう」
「俺も嬉しい。重鷹さんありがとうございます」
「ところで、柚紀、一つ俺のお願いを聞いてほしいんだが」
「? 俺にできることですか?」
「柚紀にしか出来ないことだ」
「なんですか?」
「ボディクリームを全身に塗ってもいいか?」
「へ?」
「柚紀の全身にボディクリームを塗ってもいいですか?」
「え、は? 俺が、重鷹さんに塗るんじゃなくて?」
「俺が、柚紀に塗りたい。本当は柚紀の口に入れるものは全部俺が作りたいし柚紀のお肌は俺が守りたいし柚紀が着る服は全部俺が揃えたいし柚紀が」
「あ、ああ!! もういいもういいですから!!」
「柚紀、そんなに赤くなって。なんて可愛いんだ」
「本当、いきなりでてくるそのキャラはなんなんですか?」
「すまない。時折抑えきれなくなるんだ」

そんなことを言われて俺は終始恥ずかしがりながら重鷹さんにボディクリームを塗ってもらった。セックス以外で肌を触られるのはなんだか気恥ずかしいんだけど、重鷹さんが嬉しそうに塗ってたから俺は何も言えずおとなしく塗られるくらいしか出来なかった。

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