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親衛隊②
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ーーキーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
ああ、1限目が始まってしまった。
「あのさぁ千葉くんってこの際、土曜に会長と出掛けたのかは置いておいて、君は会長のことが好きなんでしょう?」
「……それが?」
「ははっ、へぇ、やっぱり好きなんだ」
「別に俺が誰を好きだって親衛隊隊長さんに何の関係があるんです」
「そりゃあ、僕たちは会長の親衛隊なんだから、会長を好きな人はちゃーんと取り締まらないといけないんだよ。抜け駆け禁止なんだからね」
「へー、それで俺が抜け駆けしたと?」
「まぁしたんじゃないのかな? だって君って……ねぇ」
親衛隊の他の生徒もクスクスと笑ってくる。
「何だよ」
「いやね、かわいそうだなぁと思って。だってここにいる親衛隊員はみんな聞いてるんだから。会長が千葉日向に告白するところ」
「だから何が言いたいんですか」
「さっきは会長を脅したんだろなんて気が立ってたからつい言ってしまったけど。僕だって君の脅しに会長が屈するなんて思ってないよ。だから気がついたんだ……君は、千葉日向と双子なんでしょう? だから君はきっと会長を脅したんじゃない…………ただ話を持ち掛けただけなんだろ?」
「は?」
「日向の代わりに俺を抱いてくれって」
「!!」
「ふふ、まさか図星?」
「っ、そんなわけ」
「だよねぇ。いくら好きな人の好きな人が自分に似てたとしても代わりだなんてそんな惨めなこと普通は出来ないよねぇ」
「っ」
「でもさぁ、君はできるんだよね、きっと。だってビッチなんでしょう?」
「俺は、ビッチじゃない」
「えー? だって君のお兄さんの千葉日向がそう言っていたんだよ? 情報源は確かだと思わない?」
「日向が……」
「あれー? 驚かないんだー? 今頃、千葉日向は蓮水会長にあの時の返事をしているところだと思うよ」
「……返事?」
「告白されたときの返事さ。会長のアプローチは凄かったからね」
「日向と会長が付き合うってなっても、あんたらそれでいいの?」
「……嫌だよ。嫌に決まってるじゃないか! だけどビッチって噂の君が、千葉日向に似てるからと言って、のうのうと会長の隣にいる方が許せないんだよ!」
俺はこの人の気持ちを聞いて納得してしまった。
確かに……。確かに俺もそう思うよ。
確かに俺みたいなの……。
そう思った時、俺は無意識に服で隠すようにつけたネックレスを服の上から触った。
『本当に俺は柚紀が大切なんだ。大切な人を悪く言われるのは嫌なんだ』
前に重鷹さんに言われたその言葉が頭に響いた。
あの時の重鷹さんの言葉に、目に嘘はなかった。
重鷹さん、俺、俺は……
「俺は、会長のことが好きだ。だから会長に好きになってもらえるようにアピールだってする。それを会長以外の人にやめろだなんて言われる筋合いはない、と思う。あんたらだってアピールすればいいと思う。もしも、日向が今、会長に告白の返事をして……それで、日向と付き合ったとしても、俺は…………俺は、その時は、身を……引く」
「何で!? 意味わかんない! 付き合っても諦めなきゃいいじゃん! 日向を脅して別れさせたらいいんじゃん!」
親衛隊長がそう叫んだ。
「ありきたりでつまんない言葉かもしれないけど、俺は、会長のことが大好きだから会長に幸せになってもらいたいんだ。会長が日向を選ぶというなら、今の俺にはどうすることもできない。会長の気持ちは会長にしか変えられないからだ。でも俺は、身を引くけど、諦めたりはしない。会長が俺のことを好きになるように、俺は虎視淡々と狙って努力する」
「へー。かっこいいこと言ってるところ悪いけど、会長はビッチなんて好きにならないと思うなぁ」
「っだから、俺はビッチじゃない!」
「ビッチじゃないねぇ。それが事実かどうかは関係ないな。今から事実になるからね」
「……どういうこと?」
「あれ? 分かんないかな? 君って主席入学のくせに頭悪いんだねぇ」
教室のドアが開いてごつい生徒が何人か入ってきた。
全員ニタニタと俺を見てる。
「っまさか」
「ようやく分かった? 君がビッチかどうかなんて関係ない。君が努力しようが関係ない。今から起こることの写真を撮って会長に見せたら、会長はどう思うのかな?」
「やめろ!!」
「あーあ。泣いちゃった」
「嫌だ! やめて!」
ごつい生徒たちが俺を取り囲んで服を脱がせにかかってくる。
会長は日向になんて返事したのかな。
最初から俺のことが好きだったって、日向じゃなくて俺だったって言ってくれたけど。
今まで過去2回襲われたことがあって、2回とも重鷹さんが助けてくれた。
でも今回は、助けにはきてくれない。
そもそも授業始まってるし。
ああ、俺、重鷹さん以外に突っ込まれるのか。
重鷹さんにその写真を見られるのか。
上半身は脱がされて、ごつい生徒たちが下半身を脱がそうと取り掛かろうとした時。
ーーーーバンッ!!!!
すごい音がして全員が教室の入り口を見た。
重鷹さんが汗だくで凄い形相で立っていた。
「何やってんだ」
地を這うような低い声だった。
ああ、1限目が始まってしまった。
「あのさぁ千葉くんってこの際、土曜に会長と出掛けたのかは置いておいて、君は会長のことが好きなんでしょう?」
「……それが?」
「ははっ、へぇ、やっぱり好きなんだ」
「別に俺が誰を好きだって親衛隊隊長さんに何の関係があるんです」
「そりゃあ、僕たちは会長の親衛隊なんだから、会長を好きな人はちゃーんと取り締まらないといけないんだよ。抜け駆け禁止なんだからね」
「へー、それで俺が抜け駆けしたと?」
「まぁしたんじゃないのかな? だって君って……ねぇ」
親衛隊の他の生徒もクスクスと笑ってくる。
「何だよ」
「いやね、かわいそうだなぁと思って。だってここにいる親衛隊員はみんな聞いてるんだから。会長が千葉日向に告白するところ」
「だから何が言いたいんですか」
「さっきは会長を脅したんだろなんて気が立ってたからつい言ってしまったけど。僕だって君の脅しに会長が屈するなんて思ってないよ。だから気がついたんだ……君は、千葉日向と双子なんでしょう? だから君はきっと会長を脅したんじゃない…………ただ話を持ち掛けただけなんだろ?」
「は?」
「日向の代わりに俺を抱いてくれって」
「!!」
「ふふ、まさか図星?」
「っ、そんなわけ」
「だよねぇ。いくら好きな人の好きな人が自分に似てたとしても代わりだなんてそんな惨めなこと普通は出来ないよねぇ」
「っ」
「でもさぁ、君はできるんだよね、きっと。だってビッチなんでしょう?」
「俺は、ビッチじゃない」
「えー? だって君のお兄さんの千葉日向がそう言っていたんだよ? 情報源は確かだと思わない?」
「日向が……」
「あれー? 驚かないんだー? 今頃、千葉日向は蓮水会長にあの時の返事をしているところだと思うよ」
「……返事?」
「告白されたときの返事さ。会長のアプローチは凄かったからね」
「日向と会長が付き合うってなっても、あんたらそれでいいの?」
「……嫌だよ。嫌に決まってるじゃないか! だけどビッチって噂の君が、千葉日向に似てるからと言って、のうのうと会長の隣にいる方が許せないんだよ!」
俺はこの人の気持ちを聞いて納得してしまった。
確かに……。確かに俺もそう思うよ。
確かに俺みたいなの……。
そう思った時、俺は無意識に服で隠すようにつけたネックレスを服の上から触った。
『本当に俺は柚紀が大切なんだ。大切な人を悪く言われるのは嫌なんだ』
前に重鷹さんに言われたその言葉が頭に響いた。
あの時の重鷹さんの言葉に、目に嘘はなかった。
重鷹さん、俺、俺は……
「俺は、会長のことが好きだ。だから会長に好きになってもらえるようにアピールだってする。それを会長以外の人にやめろだなんて言われる筋合いはない、と思う。あんたらだってアピールすればいいと思う。もしも、日向が今、会長に告白の返事をして……それで、日向と付き合ったとしても、俺は…………俺は、その時は、身を……引く」
「何で!? 意味わかんない! 付き合っても諦めなきゃいいじゃん! 日向を脅して別れさせたらいいんじゃん!」
親衛隊長がそう叫んだ。
「ありきたりでつまんない言葉かもしれないけど、俺は、会長のことが大好きだから会長に幸せになってもらいたいんだ。会長が日向を選ぶというなら、今の俺にはどうすることもできない。会長の気持ちは会長にしか変えられないからだ。でも俺は、身を引くけど、諦めたりはしない。会長が俺のことを好きになるように、俺は虎視淡々と狙って努力する」
「へー。かっこいいこと言ってるところ悪いけど、会長はビッチなんて好きにならないと思うなぁ」
「っだから、俺はビッチじゃない!」
「ビッチじゃないねぇ。それが事実かどうかは関係ないな。今から事実になるからね」
「……どういうこと?」
「あれ? 分かんないかな? 君って主席入学のくせに頭悪いんだねぇ」
教室のドアが開いてごつい生徒が何人か入ってきた。
全員ニタニタと俺を見てる。
「っまさか」
「ようやく分かった? 君がビッチかどうかなんて関係ない。君が努力しようが関係ない。今から起こることの写真を撮って会長に見せたら、会長はどう思うのかな?」
「やめろ!!」
「あーあ。泣いちゃった」
「嫌だ! やめて!」
ごつい生徒たちが俺を取り囲んで服を脱がせにかかってくる。
会長は日向になんて返事したのかな。
最初から俺のことが好きだったって、日向じゃなくて俺だったって言ってくれたけど。
今まで過去2回襲われたことがあって、2回とも重鷹さんが助けてくれた。
でも今回は、助けにはきてくれない。
そもそも授業始まってるし。
ああ、俺、重鷹さん以外に突っ込まれるのか。
重鷹さんにその写真を見られるのか。
上半身は脱がされて、ごつい生徒たちが下半身を脱がそうと取り掛かろうとした時。
ーーーーバンッ!!!!
すごい音がして全員が教室の入り口を見た。
重鷹さんが汗だくで凄い形相で立っていた。
「何やってんだ」
地を這うような低い声だった。
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