代わりにくらいなれると思った

いちみやりょう

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日向サイド②

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僕は会長が柚紀を憎むように必死に仕向けた。
柚紀にいじめられてるって言ったし、ビッチって噂も流したのに。

まさか、柚紀が会長とうまく言ってるなんてさ。
せっかく僕が会長の気持ちをうまくかわしてたのに意味ないじゃん。

月曜日に学校へ行くと会長と柚紀が土曜日にデートしてたって噂が流れていた。
だから僕は会長の親衛隊をけしかけた。
そして僕は会長に告白しにいった。
会長のことなんて好きでもなんでもないけど、柚紀と付き合ってしまうくらいだったらと思って。
会長を呼び出して、わざわざ柚紀が呼び出されたところから会長が見えるように、でも会長からは柚紀が見えないように立った。

「会長、前に僕に告白してくれた時の」

僕がとびっきりの笑顔を作ってそう言ったのに会長に「すまない」と遮られてしまった。

「あれはもう気にしないで欲しい。俺は、勘違いしていたんだ。君たちの入学から1年ほど前、俺が会ったのは柚紀だったんだ。あの時、俺は柚紀に恋をしたんだ。君じゃなかった。勘違いで煩わしくアプローチしてしまって申し訳ない」
「え、で、でも! 僕の方が柚紀より可愛いでしょう!?」
「いや、今の俺には柚紀の方が断然可愛く見える。君の方が可愛いと言ってくれる人間もいるだろう。そっちをあたってくれ」
「な、なんで、そんなこと言うの……? 僕じゃダメなの?」
「君は、柚紀の悪い噂を流した張本人だろう? 俺はまだそれを許していない。それに踊らされて俺も柚紀にひどいことを言ったこともあった。これからは柚紀を大切にしていくつもりだ」

チラリと柚紀の方を見ると引きずられて移動するところのようだ。

でも……え、なんで……なんで柚紀の背中は……なんで……

まさか刃物まで持ち出すとは、ああ、ねぇ、ねぇ無事だよね……?

「おい、どうした? そんなにショックか? でもお前俺のことなんて別に好きじゃないだろう?」
「あ、あ、ぅぁ、ゆ、ずき」

僕が、僕が親衛隊をけしかけたせいなの?
僕のせいで柚紀が死んじゃうの?
やだ。

「おい! 何があった!?」
「柚紀が、あ、死んじゃう」
「は!? なぜだ!!」
「さっき、親衛隊の人に、あ、あっちの、下で、あっちで、ああ」
「おい、落ち着け」
「刃物、持ってて、それで、柚紀を…・」

そこまで言うと会長はどこかに電話をかけながらすっ飛んでいった。

そんなつもりじゃなかったんだ。
僕は会長と柚紀がうまく行かなければいいって、そう思ってただけなんだ。
柚紀を殺すつもりなんて。
柚紀、柚紀、柚紀。ずっと僕のそばにいてよ。
”可哀想な子”だなんて僕を見ない柚紀に、ずっと一緒にいて欲しいんだ。
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