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両親
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目が覚めると俺は重鷹さんの部屋にいて、重鷹さんが俺の頭を優しく撫でていた。
「柚紀、起きたか?」
「はい。俺」
「ごめん、柚紀。晶馬が持っていたデータは俺が全て回収したから」
「ぁ、ぅん」
「柚紀。俺、どうしたら柚紀に心の底から信じてもらえるかなって考えたんだ」
「ごめん、重鷹さん。俺もう、疑ったりしないよ」
「いや、俺はこうすればいいって考えが1つあるんだ」
「え」
「柚紀、俺の両親に会ってくれないか?」
「重鷹さんのご両親に……?」
「ああ。そして紹介してもいいか? 俺が一生添い遂げたい相手だって」
「ぁ、だけど、俺、男だし」
「大丈夫だ。俺の両親は2人とも可愛いものとか可愛い人とか大好きだし」
「いや、それとこれとは別だと思うけど」
「なぁ、ダメか?」
「い、いつですか?」
「いつなら大丈夫だ?」
「お、俺は、いつでも! 重鷹さんのご両親の都合の良い日に合わせるよ」
そう言うと重鷹さんは嬉しそうに笑った。
「よかった。じゃあ、今夜にしよう。善は急げだ」
「え”、今夜?」
「ああ。実はもう学園に来ているんだ」
「そんな……、ちょっと心の準備が」
「大丈夫だから。な?」
「うぅ……分かりました」
ーーピンポンパンポーン
『2年A組千葉柚紀くん、お客様がお待ちです。至急応接室までお越しください』
「えっ? もう来たんですか?」
突然の放送での呼び出しに、慌てて重鷹さんの方を見る。
「いや、夜7時にって言ってたから俺の両親じゃないと思う」
「じゃあ誰だろう」
「とりあえず行ってみるか」
「え? 重鷹さんも来てくれるんですか?」
「もちろん」
そして2人で応接室に向かうとそこには俺の両親がいた。
「柚紀。元気にしてたか?」
父がそう言った。
「あー、まぁ元気だけど。何で俺? 日向は?」
「まぁまぁ。良いじゃないの。たまには柚紀と3人で話したかったのよ。ところでそちらの方は?」
「3人で話したかった? ふーん。この人は俺の大切な人だよ」
「そ、そうなのか! これはこれは立派な……」
両親は重鷹さんを見てやけに嬉しそうな顔をしている。
「何?」
「いやー。実は会社で失敗してしまってね。お金が無いんだよ」
「へー。そうなんだ」
「だからすこーしだけで良いからお金をくれないか?」
「は」
「いやぁね、柚紀がお金を持ってるなんて思ってないわ。でもここにはお金持ちの子がたくさん通っているでしょう? だからね、そちらのお友達のおうちから融資してもらえないかしらって思って」
「何言ってんの? 重鷹さんに集らないでよ」
「いや、俺は柚紀の家のためなら……」
「ダメ」
「柚紀! お前! このお友達はいいと言ってくれてるんだぞ! お前ごときが邪魔するんじゃない!!」
「はぁ。ねぇ父さん、母さん。俺ね、今アプリ開発で結構儲けているんだ」
「え、柚紀が?」
2人とも掌を返したように嬉しそうな顔になった。
でも俺はこの2人のことは一生許せそうに無い。
「うん。今や、父さんの会社なんて余裕で買収できちゃうくらいにはお金あるよ」
嘘だけど。まぁ、このままいけばそうなる可能性もあるから、完全な嘘ではないけど。
「柚紀、なんて良い子なのかしら! あなたを産んでよかったわ!」
「ははっ、何言ってんの?」
俺は2人を見下したように見た。
「柚紀?」
「俺が父さんたちを助けるメリットって何かある?」
「メリット!? お前よくそんなことが言えるな! 家族が困ってるんだ! 助けるのが当たり前じゃ無いのか!」
「そうよ! よくそんな非道なことが言えるわね、なんて冷たい子なの!? 親が大事じゃ無いの!!」
大きな声で騒ぎ出す2人の声で耳が痛い。
「ねぇ父さん。母さん。俺はあなたたちのことを、大事だとは思えない。さっき俺が言った、父さんたちを助けてもメリットが無いって、父さんが先に俺に言ったんだよ。『お前に金を出すメリットを感じられない』ってさ。俺のことを非道だと言う資格は父さんたちにだけは無いよ」
「俺たちを助けないって言うのか?」
「そうだよ。2人が大事に大切に育てた日向が2人のこと助けてくれるといいね。ま、無理だと思うけど」
「ひどい……ひどいわ」
「はっ、まぁ確かに俺はひどい人間かもね。だって俺、今腹の底から2人が不幸な目にあって嬉しいって思ってる。ざまぁ見ろって思ってるよ。このままずっと不幸に生きてね」
2人は絶望した顔をしている。
まさか俺にそんなことを言われるとは思わなかったって顔だ。
2人を残して応接室を出たら重鷹さんに抱きつかれた。
「がんばったな」
「え」
「柚紀は偉いな」
「俺、両親を見捨てたのに?」
「見捨てられるべくして見捨てられた人たちだ。柚紀がそうしたいって思ったんだから、柚紀が正しいんだ」
「俺のこと、嫌いにならないの……?」
「俺は何があっても柚紀を嫌いになったりしない」
何だか、緊張していた体から力が抜けて、涙が溢れ出してくる。
「ぅ……ぁぁ、ぅ、ぁぁ」
「柚紀はいい子だ。優しい子だ。偉い、いい子、いい子」
重鷹さんのゆっくりと話すその低い声が俺の中に響いて、ずっと冷えていた胸に暖かいものが流れ込んでくる気がした。
重鷹さんの部屋に戻って、少し腫れてしまった目を冷やした。
19時になって、重鷹さんとまた応接室に向かった。
緊張する俺の手を重鷹さんの暖かい手が包み込んだ。
重鷹さんがドアを開ける間に深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
中にいたのは少し重鷹さんの面影がある厳格そうな男性と、キャリアウーマンみたいな女性だった。2人とも厳しそうに見えて俺は身がすくむのを抑えるのに必死だ。
「柚紀、この2人が俺の両親の貴久と美智子だ。父さん、母さん、この子が俺が一生を添い遂げたいと思っている柚紀だ」
「はじめまして。重鷹の父の貴久と申します」
「はじめまして、私は母の美智子です」
2人も見た目とは裏腹に優しい声で優しい顔で自己紹介をしてくれた。
「はっ、はじめまして! お、僕は、千葉柚紀と申します!!」
だけど俺が自己紹介をしたら2人も固まったように動かなくなった。
何か失敗しただろうか。少しどもったのがきもかったのかも。
「……ぃ」
「え、な、何でしょうか」
またどもってしまった。
「なんて……なんて可愛らしいんだ!!」
「本当に!! 可愛いすぎるっ」
「へ……?」
「え? え? 本当にうちの重鷹と付き合ってくれてるのか!?」
「え、は、はい」
「なんて! なんて光栄なんだ!」
「やったわね重鷹!! 一生大事にしなさい!!」
「もちろんだ」
「はぁ~、可愛い。すんごい可愛い」
重鷹さんのいつもの変なテンションの時とそっくりのご両親を見て、俺は遺伝の強さを思い知った。
俺はその後、重鷹さんのご両親にもみくちゃにされて、高級なレストランで夕食をご馳走になった。
ご両親は帰っていって、俺たちはまた重鷹さんの部屋に帰った。
「柚紀」
「なに? 重鷹さん」
重鷹さんは俺の左手を持って、スッと薬指に指輪を通した。
シンプルな銀の指輪だ。
「え」
「柚紀、日本では俺たちは結婚はできないけど、俺は柚紀とずっと一緒だって形に残るものがほしい。だから卒業したら俺と養子縁組してくれないか? そして、結婚式もあげたいんだ。柚紀愛してる」
「俺、嬉しい。俺も重鷹さんを愛してる」
「俺の籍に入ってくれるか?」
「はいっ!」
「柚紀、起きたか?」
「はい。俺」
「ごめん、柚紀。晶馬が持っていたデータは俺が全て回収したから」
「ぁ、ぅん」
「柚紀。俺、どうしたら柚紀に心の底から信じてもらえるかなって考えたんだ」
「ごめん、重鷹さん。俺もう、疑ったりしないよ」
「いや、俺はこうすればいいって考えが1つあるんだ」
「え」
「柚紀、俺の両親に会ってくれないか?」
「重鷹さんのご両親に……?」
「ああ。そして紹介してもいいか? 俺が一生添い遂げたい相手だって」
「ぁ、だけど、俺、男だし」
「大丈夫だ。俺の両親は2人とも可愛いものとか可愛い人とか大好きだし」
「いや、それとこれとは別だと思うけど」
「なぁ、ダメか?」
「い、いつですか?」
「いつなら大丈夫だ?」
「お、俺は、いつでも! 重鷹さんのご両親の都合の良い日に合わせるよ」
そう言うと重鷹さんは嬉しそうに笑った。
「よかった。じゃあ、今夜にしよう。善は急げだ」
「え”、今夜?」
「ああ。実はもう学園に来ているんだ」
「そんな……、ちょっと心の準備が」
「大丈夫だから。な?」
「うぅ……分かりました」
ーーピンポンパンポーン
『2年A組千葉柚紀くん、お客様がお待ちです。至急応接室までお越しください』
「えっ? もう来たんですか?」
突然の放送での呼び出しに、慌てて重鷹さんの方を見る。
「いや、夜7時にって言ってたから俺の両親じゃないと思う」
「じゃあ誰だろう」
「とりあえず行ってみるか」
「え? 重鷹さんも来てくれるんですか?」
「もちろん」
そして2人で応接室に向かうとそこには俺の両親がいた。
「柚紀。元気にしてたか?」
父がそう言った。
「あー、まぁ元気だけど。何で俺? 日向は?」
「まぁまぁ。良いじゃないの。たまには柚紀と3人で話したかったのよ。ところでそちらの方は?」
「3人で話したかった? ふーん。この人は俺の大切な人だよ」
「そ、そうなのか! これはこれは立派な……」
両親は重鷹さんを見てやけに嬉しそうな顔をしている。
「何?」
「いやー。実は会社で失敗してしまってね。お金が無いんだよ」
「へー。そうなんだ」
「だからすこーしだけで良いからお金をくれないか?」
「は」
「いやぁね、柚紀がお金を持ってるなんて思ってないわ。でもここにはお金持ちの子がたくさん通っているでしょう? だからね、そちらのお友達のおうちから融資してもらえないかしらって思って」
「何言ってんの? 重鷹さんに集らないでよ」
「いや、俺は柚紀の家のためなら……」
「ダメ」
「柚紀! お前! このお友達はいいと言ってくれてるんだぞ! お前ごときが邪魔するんじゃない!!」
「はぁ。ねぇ父さん、母さん。俺ね、今アプリ開発で結構儲けているんだ」
「え、柚紀が?」
2人とも掌を返したように嬉しそうな顔になった。
でも俺はこの2人のことは一生許せそうに無い。
「うん。今や、父さんの会社なんて余裕で買収できちゃうくらいにはお金あるよ」
嘘だけど。まぁ、このままいけばそうなる可能性もあるから、完全な嘘ではないけど。
「柚紀、なんて良い子なのかしら! あなたを産んでよかったわ!」
「ははっ、何言ってんの?」
俺は2人を見下したように見た。
「柚紀?」
「俺が父さんたちを助けるメリットって何かある?」
「メリット!? お前よくそんなことが言えるな! 家族が困ってるんだ! 助けるのが当たり前じゃ無いのか!」
「そうよ! よくそんな非道なことが言えるわね、なんて冷たい子なの!? 親が大事じゃ無いの!!」
大きな声で騒ぎ出す2人の声で耳が痛い。
「ねぇ父さん。母さん。俺はあなたたちのことを、大事だとは思えない。さっき俺が言った、父さんたちを助けてもメリットが無いって、父さんが先に俺に言ったんだよ。『お前に金を出すメリットを感じられない』ってさ。俺のことを非道だと言う資格は父さんたちにだけは無いよ」
「俺たちを助けないって言うのか?」
「そうだよ。2人が大事に大切に育てた日向が2人のこと助けてくれるといいね。ま、無理だと思うけど」
「ひどい……ひどいわ」
「はっ、まぁ確かに俺はひどい人間かもね。だって俺、今腹の底から2人が不幸な目にあって嬉しいって思ってる。ざまぁ見ろって思ってるよ。このままずっと不幸に生きてね」
2人は絶望した顔をしている。
まさか俺にそんなことを言われるとは思わなかったって顔だ。
2人を残して応接室を出たら重鷹さんに抱きつかれた。
「がんばったな」
「え」
「柚紀は偉いな」
「俺、両親を見捨てたのに?」
「見捨てられるべくして見捨てられた人たちだ。柚紀がそうしたいって思ったんだから、柚紀が正しいんだ」
「俺のこと、嫌いにならないの……?」
「俺は何があっても柚紀を嫌いになったりしない」
何だか、緊張していた体から力が抜けて、涙が溢れ出してくる。
「ぅ……ぁぁ、ぅ、ぁぁ」
「柚紀はいい子だ。優しい子だ。偉い、いい子、いい子」
重鷹さんのゆっくりと話すその低い声が俺の中に響いて、ずっと冷えていた胸に暖かいものが流れ込んでくる気がした。
重鷹さんの部屋に戻って、少し腫れてしまった目を冷やした。
19時になって、重鷹さんとまた応接室に向かった。
緊張する俺の手を重鷹さんの暖かい手が包み込んだ。
重鷹さんがドアを開ける間に深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
中にいたのは少し重鷹さんの面影がある厳格そうな男性と、キャリアウーマンみたいな女性だった。2人とも厳しそうに見えて俺は身がすくむのを抑えるのに必死だ。
「柚紀、この2人が俺の両親の貴久と美智子だ。父さん、母さん、この子が俺が一生を添い遂げたいと思っている柚紀だ」
「はじめまして。重鷹の父の貴久と申します」
「はじめまして、私は母の美智子です」
2人も見た目とは裏腹に優しい声で優しい顔で自己紹介をしてくれた。
「はっ、はじめまして! お、僕は、千葉柚紀と申します!!」
だけど俺が自己紹介をしたら2人も固まったように動かなくなった。
何か失敗しただろうか。少しどもったのがきもかったのかも。
「……ぃ」
「え、な、何でしょうか」
またどもってしまった。
「なんて……なんて可愛らしいんだ!!」
「本当に!! 可愛いすぎるっ」
「へ……?」
「え? え? 本当にうちの重鷹と付き合ってくれてるのか!?」
「え、は、はい」
「なんて! なんて光栄なんだ!」
「やったわね重鷹!! 一生大事にしなさい!!」
「もちろんだ」
「はぁ~、可愛い。すんごい可愛い」
重鷹さんのいつもの変なテンションの時とそっくりのご両親を見て、俺は遺伝の強さを思い知った。
俺はその後、重鷹さんのご両親にもみくちゃにされて、高級なレストランで夕食をご馳走になった。
ご両親は帰っていって、俺たちはまた重鷹さんの部屋に帰った。
「柚紀」
「なに? 重鷹さん」
重鷹さんは俺の左手を持って、スッと薬指に指輪を通した。
シンプルな銀の指輪だ。
「え」
「柚紀、日本では俺たちは結婚はできないけど、俺は柚紀とずっと一緒だって形に残るものがほしい。だから卒業したら俺と養子縁組してくれないか? そして、結婚式もあげたいんだ。柚紀愛してる」
「俺、嬉しい。俺も重鷹さんを愛してる」
「俺の籍に入ってくれるか?」
「はいっ!」
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