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5 幼い頃の俺と黒月さん
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誠との電話を終えると、俺は一気に疲れた。
居間のソファで両手両足を投げ出して寝転がって深く息を吐いた。
それにしても、あの口ぶりからしたら誠はおそらく黒月さんだけではなく生徒会長にも迷惑をかけていたようだ。
会ったこともない相手だが、申し訳ない気持ちになった。
誠は黒月さんに執着している。
幼い頃から何でもかんでも買い与えてもらえた誠が、初めて手に入れられなかったものだからだ。それに幼い頃の出来事がいまだに尾を引いているのかもしれない。
『くろつきさんっ、大好き、僕……くろつきさんとケッコンするっ!!』
幼い頃の俺がそう言った現場には、誠も両親もいた。
もちろん、男同士とかそう言ったことを考えることはないくらい小さな頃の出来事だ。
結婚すればずっと一緒にいられるという認識くらいしかなかった幼い俺の言葉に、黒月さんはあの鉄仮面を崩しふわりと笑ってくれたのだ。
『紫様、光栄です』
そう言ってくれたあの時のことを、俺は忘れられていない。
男の子からの愛の告白にも優しく対応できる男の余裕だ。
だが、あの時も誠がすぐに横から入ってきた。
『くろつきはボクとずっと一緒にいるんだよっ。ボクは長男でお父さんのあとを継ぐから、くろつきはボクのものなんだ!』
そう言われてドンと突き飛ばされた幼い頃の俺は泣いた。
黒月さんはそんな俺をあやすように芝生の上に胡座をかいて座って、その自分の足に座らせてくれた。
『誠様、人を突き飛ばしてはいけません。自分がされて嫌なことは誰に対してもしてはけないのですよ』
黒月さんは俺を庇ってくれて、誠を叱ってくれた。
だけど、誠は黒月さんが分かっていないんだと言うように驚いた顔をして嬉々として話し出した。
『あ、あのね。ボクは長男なんだよ! おとうとはおまけだからこの家には要らないんだよ。だから黒月も、こいつに構わなくていいんだよ。ねぇ、おとうさん』
『ああ。誠の言う通りだ。ほら、紫。いつまでも泣いて黒月に抱かれてないで立ちなさい。みっともない』
父は冷たい顔でそう言ってのけた。
『大体、黒月と結婚できるわけないでしょう。男同士なんだから。本当に頭が悪いのね』
と、母親も俺を蔑むような目で見ていた。
『黒月も、うちの誠ちゃんを誘惑しないで頂戴。じゃないとクビにするわよ』
黒月さんをキッと睨んだ母親がそう言うのも構わず黒月さんは俺を抱き上げて起こしてくれて、持っていたハンカチで目元を拭ってくれた。
『誠様を誘惑などしておりません。あいにく私にも選ぶ権利くらいありますので』
『まぁ!! 使用人の分際で生意気にも程があるわ!! ねぇあなた黒月をクビにしてくださいな!』
母はそう言って叫んでいたが、父はなぜかそれに対しては同意しなかった。
『まぁ、クビは流石に。黒月はこれでいろいろと使えるからな』
しどろもどろにそう言った。
そうして、黒月さんはいまだに父の元で働いている。
居間のソファで両手両足を投げ出して寝転がって深く息を吐いた。
それにしても、あの口ぶりからしたら誠はおそらく黒月さんだけではなく生徒会長にも迷惑をかけていたようだ。
会ったこともない相手だが、申し訳ない気持ちになった。
誠は黒月さんに執着している。
幼い頃から何でもかんでも買い与えてもらえた誠が、初めて手に入れられなかったものだからだ。それに幼い頃の出来事がいまだに尾を引いているのかもしれない。
『くろつきさんっ、大好き、僕……くろつきさんとケッコンするっ!!』
幼い頃の俺がそう言った現場には、誠も両親もいた。
もちろん、男同士とかそう言ったことを考えることはないくらい小さな頃の出来事だ。
結婚すればずっと一緒にいられるという認識くらいしかなかった幼い俺の言葉に、黒月さんはあの鉄仮面を崩しふわりと笑ってくれたのだ。
『紫様、光栄です』
そう言ってくれたあの時のことを、俺は忘れられていない。
男の子からの愛の告白にも優しく対応できる男の余裕だ。
だが、あの時も誠がすぐに横から入ってきた。
『くろつきはボクとずっと一緒にいるんだよっ。ボクは長男でお父さんのあとを継ぐから、くろつきはボクのものなんだ!』
そう言われてドンと突き飛ばされた幼い頃の俺は泣いた。
黒月さんはそんな俺をあやすように芝生の上に胡座をかいて座って、その自分の足に座らせてくれた。
『誠様、人を突き飛ばしてはいけません。自分がされて嫌なことは誰に対してもしてはけないのですよ』
黒月さんは俺を庇ってくれて、誠を叱ってくれた。
だけど、誠は黒月さんが分かっていないんだと言うように驚いた顔をして嬉々として話し出した。
『あ、あのね。ボクは長男なんだよ! おとうとはおまけだからこの家には要らないんだよ。だから黒月も、こいつに構わなくていいんだよ。ねぇ、おとうさん』
『ああ。誠の言う通りだ。ほら、紫。いつまでも泣いて黒月に抱かれてないで立ちなさい。みっともない』
父は冷たい顔でそう言ってのけた。
『大体、黒月と結婚できるわけないでしょう。男同士なんだから。本当に頭が悪いのね』
と、母親も俺を蔑むような目で見ていた。
『黒月も、うちの誠ちゃんを誘惑しないで頂戴。じゃないとクビにするわよ』
黒月さんをキッと睨んだ母親がそう言うのも構わず黒月さんは俺を抱き上げて起こしてくれて、持っていたハンカチで目元を拭ってくれた。
『誠様を誘惑などしておりません。あいにく私にも選ぶ権利くらいありますので』
『まぁ!! 使用人の分際で生意気にも程があるわ!! ねぇあなた黒月をクビにしてくださいな!』
母はそう言って叫んでいたが、父はなぜかそれに対しては同意しなかった。
『まぁ、クビは流石に。黒月はこれでいろいろと使えるからな』
しどろもどろにそう言った。
そうして、黒月さんはいまだに父の元で働いている。
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