双子の兄になりすまし単位を取れと言われたが、おいおい何したらこんなに嫌われんの?

いちみやりょう

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「ほう。それで生徒会長の東堂くんと偽装の恋人になって良いかということですか?」
「いや、なっていいかっていうか、一回断ったんだけど、一応彼氏にも聞いておいてくれって東堂が言うからさ。でも、黒月さんだって良い気はしないでしょ?」
「まぁ、良い気はしないですね。私に相談する前に昨日今日会ったばかりの東堂くんに相談するところが非常に」

黒月さんはもしかしたら怒ってるのかもしれない。
もしかしたらと言うのは、話している内容的には怒っているようなのに口調的にはいつもの鉄仮面な話し方だからだ。

「お、怒ってる?」
「ええ」
「あ、えっと。ごめん」

謝ると、黒月さんは一瞬言葉に詰まったように息を飲んだ。

「はぁ……違います。謝らなければならないのは私の方ですね。すみません。私は、紫様に頼られたかったんです。いつもなんでもご自分で解決なさってしまう紫様が、今回のことは東堂くんに相談したのかと思うと、紫様の力になることのできない自分が不甲斐なくて」
「なっ。違うよ! 東堂に相談したわけじゃないんだ。東堂が、自分にできることはないか聞いてきたから、“なら俺に関わらないでくれ”ってすっごく失礼なお願いをしちゃって。だって、東堂と関わったら退学するって、東堂の親衛隊? の人たちに宣言しちゃったから。俺が頼りたいのも、大好きだって思うのも、かっこいいって思うのも全部黒月さんだけだよ!」

必死に言い募って、あれこれと説明をすると黒月さんはやっとふっと笑ってくれた。

「すみません。子供みたいなことを言ってしまって。偽装の恋人の件、分かりました。ぜひお願いしますと東堂くんに伝えてください」
「えっ。いいの?」
「はい。この特殊な学園で教師の立場では紫様を守れるか不安がありますから。紫様に少しでも危険が少ない方が良い」
「危険って、俺、これでも結構強いよ?」
「でも、上から水をかけられれば冷たくて風邪を引くかもしれませんし、教科書やノートがビリビリに破られたりしたら、心が傷ついたり、傷つかなかったにしてもめんどくさい思いはされると思います。そういったことから、紫様を守るためには東堂くんの恋人ということにした方が、都合が良いと思います」
「そうなのか」
「もちろん、嫉妬はします。わがままかもしれませんが、東堂くんと必要以上のスキンシップは……」
「もちろん、しないよ。俺のこと考えてくれてありがとう。この学園のこと、まだいまいちよく分かってないから、その方が良いって言うならそうする」
「この学園は、偏差値も高く教育的な設備も整っています。紫様にはこちらに通っていただきたいと思っていたくらいです。ですので余計なことに気を取られずに勉学に励んでいただきたいと思っています」
「分かった。勉強は嫌いじゃない。せっかくこの学園に来たんだから俺も頑張って勉強する」
「はい」

黒月さんはにっこりと笑いうなずいた。

「あ、のさ。どうして黒月さんはあのクソみたいな父さんの下についているの? 確かに柊グループは大きい会社かもだけど、黒月さんなら他にもたくさん引き抜きとかあったでしょ?」
「そうですね。実は私は紫様のお父上には大恩があるのですよ」
「え? そうなの?」
「はい。そのあたりについては、いずれ時が来たら全てお話しいたします」
「……そっか。分かった。気になるけど、その時ってのを待ってるね」
「はい」

あの父親が黒月さんに大恩を売れるなど想像ができない。
黒月さんがいなければまともに仕事も出来なそうだといつも思っていたから。


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