双子の兄になりすまし単位を取れと言われたが、おいおい何したらこんなに嫌われんの?

いちみやりょう

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40 生徒会の仕事

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相変わらず廊下を歩けばチラチラとこちらを見てヒソヒソと話す連中もいたが、それが日を追うごとに増していった。非常に不快だが、小坂たちのように俺に水をぶちまけたりするわけではないので、放っておいた。

東堂には偽装交際をやめることを伝えるために久々に会いに行くと疲れ切った顔をしていた。

「東堂、久しぶり」
「ああ。本当に久しぶりだな。体は大丈夫なのか?」
「え? ああ。刺されたとこは傷も浅かったし全然平気。なんかやつれてない?」
「まぁな。行事もいろいろ重なって今は忙しいんだ。ここに来るなんて珍しいな。何かあったか?」

チラリと俺を見た後は、書類と格闘する東堂の顔にはすっかりと隈ができており、ここ最近の忙しさを思わせていて、見ているだけで可哀想になってくる。

「いや、偽装交際を辞めようと伝えにきたんだけど、東堂のその様子を見たらそれどころじゃないな。他の生徒会メンバーはどうしたんだ?」
「他のメンバーは都合が悪いと言っているが、ちょっとした喧嘩をしたからな。まぁ、私と顔を合わせるのが気まずいんだろう。それよりどうして偽装交際を辞めに?」
「今まで大きな嫌がらせも減って、感謝してる。だけど、そろそろ良いかなって」

なんならそれのせいで絡まれることすらあったしな。

「それに俺と偽装交際していることは改めて考えても東堂にはなんのメリットもないわけだし」
「メリットならある。私は紫と話すのが好きだ。その上、紫と付き合っている噂のおかげで告白される数も減っている」

東堂がぺらりと紙をめくる音が響く。
それをなんとはなしに見ていると、東堂の眉間にシワがより、辛そうに眉間を指で押した。

「働きすぎなんじゃないの。俺も手伝おうか?」
「……いや。紫も忙しいだろう? 文化祭ではバンドをやると聞いた」
「まぁ。人脈作りにいいって踊らされて。だけど、案外楽しんでる。早く一人前になりたいって、退院してから勉強ばかりしてたけど、こういう学生生活って感じのも楽しいよ」
「……そうか」

サラサラ

紙の上をペンが走る音だ。

本当にずいぶんと忙しそうだ。

「ちょっとした喧嘩ってどんな? 東堂が怒ってるところなんて想像つかないけど」
「まぁ、いろいろな」

踏み込みすぎたみたいだ。
怒ってはいないっぽいが、苦笑して話を濁された。
だけどこんな様子じゃ、他のメンバーはかなりの間来ていないだろうし、今後も来そうにないだろう。

「やっぱ手伝うよ。こういうのも将来の役に立つだろ?」

東堂は書いていた手を止めて俺を見た。
そして一つ息を吐いた。

「……そうか。助かる」
「おう! 任せろ!」

書類整理などを手伝うと、確かにめんどくさそうな仕事が山積みだった。

けどこういう経験はきっとどこかしらが将来の役に立つのだろう。
そうすれば将来は少し余裕ができて、黒月さんとイチャイチャできるというものだ。

目の前の書類を種類ごとに分けたり、まとめたりホッチキスで止めたり。
雑談をしながらすれば間違いが増えるかもしれないが、雑談でもしなければ次の瞬間には気絶してしまいそうな東堂に話しかけたり逆に話を振られたりして仕事を進めた。

「そうだ、今まで偽装交際してくれてたお礼をしたいんだけど、何が良い?」
「今手伝ってくれているので十分だ。それ以外のお礼は特にいらないな。欲しいものがあれば自分で買える」

そうだろうけど。
そうは言われても、何か必要だろう。

「それじゃ俺がすっきりしないからさ」
「んー。なら、偽装交際を止めてもこうして友人でいてくれ。こうして何も考えずに話せる相手は貴重だからな」
「そりゃ、もちろん俺も東堂と友人でいたいし、いるつもりだけど、それじゃお礼にならないだろ?」
「そんなことはない。これも人脈というやつだろう?」
「……それならまぁ、じゃあ、それで」

頷くと東堂は満足そうに頷いた。

思えばこうして人とちゃんと友人になったことなどなかったように思える。
この学園に来てからめんどくさい思いもしたし、嫌な思いもしたけど、それ以上に生きてるんだと実感できている気がする。

それから勉強して、歌って、東堂の仕事を手伝って、勉強して、歌ってを繰り返して忙しい日々を過ごしていたけど、文化祭前日になっても黒月さんは戻らなかった。
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