双子の兄になりすまし単位を取れと言われたが、おいおい何したらこんなに嫌われんの?

いちみやりょう

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41 文化祭

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『次は皆さんお待ちかね!! サーズデイウッドの登場ですっ!!』

テンションの高いアナウンスが流れ、客席は「わぁ!!!」やら「きゃああ!!」やらの歓声が上がった。

「え、お前らって人気なんだな」

袖口から客席を覗き、俺は森たちに呟いた。

「えー? これは俺たちも多少はあるけど、ほとんど柊木のファンだよ」
「はい? そんなわけあるか。さすがに騙されないぞ」

お世辞にしても無理がある。
俺は今回初めてステージに上がるわけだし、俺にファンなどつくわけがないのに。
だが、森たちはそんな俺を見て呆れたような顔をして3人で顔を見合わせた。

「まぁ、柊木もあそこに立って歌い始めたら分かるよ。ほら、もう行かないと」

ステージではサーズデイウッドの簡単な説明が終わり、出てくるのを待っている生徒が手拍子をしている。
森に背中を押され、まずは俺がステージ上に出ると、「きゃぁああ!!!」とけたたましい叫び声に包まれた。「かっこいい」やら、「素敵」やら飛び交っていて、森たちの言うように、それらは全部俺に向かっているらしい。中でも特に大きな声で黄色い声援を向けている生徒がいた。

「柊木っ、がんばれ!!」

客席の最前列を陣取り、俺の名前入りの横断幕をバッと掲げたのは、小坂だ。
あいつ、何俺の応援してるんだ? 東堂の親衛隊長だろう。
その横には俺に絡んできた体格の良い生徒たちで、俺が過去遠慮なく叩きのめした奴らが頭に俺の名前入りの鉢巻きを巻いてペンライトを持っている。
一緒に勉強をすることのあるクラスメイトもニコニコ顔で見ているし、なんなら東堂のことを好きなあの双子も俺の名前入りのTシャツを着ている。

森を見ると、ほらな? と言わんばかりのドヤ顔をかましているし、林も杉村も同様にやれやれというように首を竦めている。

なんだかよく分からないが、とにかく歓迎されている雰囲気なのは伝わった。

『あー、サーズデイウッドです』

ボーカルの義務として、名を名乗った。途端、「きゃ~~!!」と歓声が上がる。
叫び声が落ち着くのを見計らってからまた口を開いた。

『俺は今回からサーズデイウッドにヴォーカルとして入った柊木です……そしてギターの森……ベースの杉村……ドラムの林』

紹介のタイミングで各々パフォーマンスをして、叫ばれて、それから曲の前奏に入った。

結局、黒月さんと仲直りしてないまま文化祭まで来ちゃったけど、黒月さんには見てて欲しかったな。

俺、この3ヶ月の間、めっちゃ頑張ったよ。
だから黒月さんに見てもらって、褒めてもらいたかったな。
みんなに見せる鉄仮面じゃなくて、俺だけに見せるあの優しい微笑みで「さすがです」と言って欲しい。
ここに黒月さんはいないけど、俺は黒月さんに向けて歌うから。

その時だった。入り口に黒い塊が言葉通り転がり込んできたのが見えた。

え……?

それはすぐに起き上がり、客席の方に歩いてくる。
ステージ上は視界がいいからよく見えるけど、相手は俺をまっすぐ見つめながら近づいてくる。
俺は、自分の口角が上がるのを感じた。
俺の単純な心は、まだ3ヶ月も前から仲直りもしていないということなどすっかり忘れて胸に喜びが湧き上がる。
そして俺はその人に向かいながら歌い始めた。

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