ご主人様のオナホール

いちみやりょう

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目が覚めて エロなし

『目を覚ませ。方一』

誰かが僕を呼んでいる。

『目を覚ませ。方一がいなければ、私は生きていけない』

聞き覚えがある声。
だけど、その声の持ち主は、そんなことを言ったりはしないことを知っている。
だから、これは夢だ。
とっても良い夢。
こんな良い夢なら目覚めたくない。

『方一、頼む。なぁ』

辛そうな声だ。
僕の手はまるで誰かにずっと握られているみたいに暖かい。
この声の人にもこの暖かさを分けてあげられたらいいのに。

『方一……。方一。私を一人にしないでくれ』

僕と同じ名前を、この人はずっと呼んでいる。
僕の大好きな人の声で。
今にも泣きそうな声でずっと。

『愛してる、方一。愛してる』
『方一の言っていた“大切に抱く”というのは、私にはどうすればいいのか分からない。目を覚まして、教えてくれ』
『私は、方一が大切なんだ。私の愛し方は間違っているんだろう? 方一が正しいと思うものを教えてくれ……目を覚ましてほしい。お願いだ……お願いだ』

ご主人様みたいな声の他にも、ときおり鳥の鳴き声とか、慶太の遊んでいる声が聞こえてくる。
慶太は無事だったんだ。よかった。

『方一のお腹の中にいた子も、元気に育っているよ』
『起きて、あの子の名前を呼んでやってくれ』

ああ、無事だったんだ。
お腹の子も無事だった。
名前はなんというのだろう。
僕の大切な子。

長い眠りから目を覚ますと、ご主人様が切断面を包み込むように僕の手を握ってベッドに突っ伏すように眠っていた。

頭がズキズキする。

ご主人様は眉を寄せ、薄らと目を開いた。

「方一……」

僕と目が合うと、ご主人様は信じられないようなものを見る目で僕の名前を呟いた。

「方一っ! 方一!! ああ、よかった……。よかった」
「ご主人様……?」

ご主人様はもともと細身だったけど、今は随分と痩せ細って、やつれていると言うのが正しい感じだった。
その日は一日中ご主人様に包み込まれながら過ごしたけど、抱かれることはなかった。

次に目を覚ますと、僕の記憶よりもだいぶ大きくなった慶太と、慶太よりも少し小さい女の子が僕の部屋にやってきた。

「お母さん」

慶太は僕を見ると安心したように笑った。

「慶太?」
「そうだよ。7歳になったんだ」
「そっか……。本当に大きくなったね」

アルファゆえか、慶太は7歳ですでに大人びていた。

「おかあさん……?」

女の子が、僕に呼び掛けた。

「明日香だよ。お母さん」

慶太が横から教えてくれて僕はやっとあの時お腹の中にいた子の名前を知ることができた。

「明日香……。こっちにおいで」

明日香はおずおずと僕の元まで近づいてきて、広げた僕の腕の中に入ってくれた。

「明日香は5歳になったのかな。幼稚園に行っている?」
「うん」
「そうか、友達はできた? 楽しい?」
「うん。楽しいよ」
「お父さんはちゃんと遊んでくれてる?」
「うん。かっこいいお父さんだねって友達にも羨ましがられる」
「そっか、それは嬉しいね?」
「うん、だけど、お母さんが目を覚ましてくれたことの方が、わたしは嬉しい」
「っ、今まで寂しい思いをさせてしまってごめんね。これからはたくさん遊ぼうね」
「うん!」
「慶太もおいで」

慶太は恥ずかしそうにしていたけど、それでも大人しく僕に抱きついてくれた。
ちゃんとしっかりと抱き返せないのがもどかしい。

「慶太も学校楽しい?」
「うん。友達もできたよ」
「そっか、本当によかった」

慶太と明日香と1日中話した。
僕が起きたばかりで疲れるからと、夜になって2人がご主人様に連れられて部屋を出ていくまでずっと。
明日香はおそらくベータだろう。
見た目も僕に似ていた。
けれど明日香は僕とは違い、まともに生きている。
心から安心した。
ご主人様のおかげだ。

しばらくして子供たちを寝かしつけ終わったのだろうご主人様が、僕の部屋に戻ってきた。

「子供たちと、たくさん話せたかい?」
「はい。僕が目を覚さない間、子供たちを大切に育ててくださってありがとうございました。慶太も、明日香もとてもいい子に育っていて、ほっとしました」
「そうか」

ご主人様は昨日よりはとても顔色が良さそうだ。
ひょっとしたら今日は抱かれるかもなんて思ったけど、そんなことはなくご主人様は僕をそっと抱きしめて寝る体制に入った。

「あ、あのご主人さま?」
「ん? なんだい?」

ご主人様は眠たげな声で、返事をした。

「しないんですか……?」
「ああ。もちろん、方一は目が覚めたばかりなんだから、今はそんなことを気にせずに元気になることだけを考えてくれ」
「でも」
「ほら、もうおやすみ。羊が1匹……羊が2匹…‥」

ご主人様が低く、穏やかな声で羊を数えながら、一定の感覚で僕の体をトントンと叩いてくれて僕は早々に眠くなった。

ご主人様はとてもやつれていたから、きっと仕事が忙しかったのかもしれない。
それにしても抱かない日があるなんて珍しいけど、それほどに疲れているんだ。

ご主人様に包み込まれて眠るまでの間、僕はそう結論ずけた。
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