6 / 21
5 デート
しおりを挟む
「わりぃ、待たせたか?」
デート当日、桜介の前に現れたのはきちんと髪までセットしたデート仕様の出立の蓮だった。
「い、いや。俺も今きたとこ!」
「ぷっ。そりゃデートの常套句だな。どっか行きたいとこあるか?」
「ううん。特に決めてないけど、水族館とか博物館とか?」
「じゃあ水族館にするか。この間行った海の近くにあるし、そこでいいか?」
「うん!」
それから桜介と蓮は、海の近くの公園の中にある水族館を目指して電車に乗った。
今回、この間と違うのは、今日のデートが桜介の為だけのものだと言うことだ。
水族館の最寄駅に着き、そこから続く広い石畳の上を歩くだけでドキドキとうるさい心臓に、桜介は必死で平常心を保とうとした。
「チケット、俺買ってくるね」
「あ、待て。俺が払うから」
「俺が誘ったんだから俺が払うって!」
俺の我がままに付き合って貰ってもらってるんだしさと付け加え走り出そうとする桜介の腕を、蓮は引き留めた。
「こんくらい俺に払わせろ。今日はデートなんだろ?」
「そりゃ、そうだけど。俺は女の子じゃないんだから奢ったりはしなくていいんだよ」
「アホか。こういうのに男も女も関係ないっての。強いて言うなら俺のが8つも年上なんだから、俺が払うべきだ」
「んー。じゃあさ、ここは俺が払うから中で食べるご飯は奢ってよ」
「それだったら逆がいいな。俺がチケットを払おう」
「?……まぁそれでもいいけど。じゃあ、お願いします」
チケットを買いに向かった蓮を見送り、桜介は失敗したなと頭を抱えた。
ーーデートだし素直に甘えた方が可愛いかったかな
ーーでも、俺とのデートをなるべく負担に思われたくない
蓮はすぐに戻って来て、満足げな顔で桜介にチケットの1枚を手渡した。
「ありがとう」
「おう」
入り口すぐのエスカレーターを降りて中に入ると、水族館特有の薄暗らさになり、大きな水槽の中に悠然と泳ぐ魚が現れる。
その中でも、マグロは桜介のお気に入りになった。
普段食べる際は意識したことのなかったその体の大きさで桜介の前を横切る姿に桜介は圧倒された。
「すっご~。見て蓮さん! すごい! マグロってこんなでかいんだ! あ! あいつ頭があんな凹んでるのに普通に泳いでるよ!」
「ああ、すごいな」
そうしてマグロの前でマグロを観察すること30分。
「わ、こんな時間経ってたよ。すごい、マグロって見てて全然飽きないんだもん。ごめんね、次いこう!」
「ああ」
ニッコリ笑った蓮に、桜介はどうしても顔が赤くなるのを抑えられない。
ーーでも、薄暗いしバレてないよね?
告白はしてしまったし、赤面していることがバレていても状況は変わらないのだが、桜介はただ何となく気恥ずかしくて、顔を逸らした。
その後も魚を見て周り、レストランまで着いた。
「わあ。何食べようかな。蓮さん決まった?」
レストランの入り口のメニューの前で立ち止まり、桜介は蓮を見上げた。
蓮も割と真剣に選んでおり、んーと唸り声を上げた。
「よし、俺はハンバーグセットに決めた。桜介はどうするんだ?」
「俺はまぐろカツカレーにする!」
「お前……あんなにはしゃいでマグロ見てたのに」
「そ、それとこれとは別だって! だって美味しそうじゃんマグロカツ……」
「ははっ、まぁいいけどよ。じゃあ買ってくるから席取っといてくれ」
「うん! って……俺が行くから蓮さんが席取っといてよ! ……蓮さん! ったく」
蓮は桜介の呼びかけに応えることはなく、レジの方に向かって行ってしまい、桜介は仕方なく空いている席に腰を下ろした。
席を取ると言っても、平日なのでさほど混み合っている事もなく、手持ち無沙汰の桜介はソワソワと落ち着かない。
「ほら、待たせたな。マグロカツカレーと、あと、ケーキと飲みもん」
「わっ、こんなに? えっと、ありがとう」
「おう」
桜介が受けとると蓮はまた満足そうに笑った。
デート当日、桜介の前に現れたのはきちんと髪までセットしたデート仕様の出立の蓮だった。
「い、いや。俺も今きたとこ!」
「ぷっ。そりゃデートの常套句だな。どっか行きたいとこあるか?」
「ううん。特に決めてないけど、水族館とか博物館とか?」
「じゃあ水族館にするか。この間行った海の近くにあるし、そこでいいか?」
「うん!」
それから桜介と蓮は、海の近くの公園の中にある水族館を目指して電車に乗った。
今回、この間と違うのは、今日のデートが桜介の為だけのものだと言うことだ。
水族館の最寄駅に着き、そこから続く広い石畳の上を歩くだけでドキドキとうるさい心臓に、桜介は必死で平常心を保とうとした。
「チケット、俺買ってくるね」
「あ、待て。俺が払うから」
「俺が誘ったんだから俺が払うって!」
俺の我がままに付き合って貰ってもらってるんだしさと付け加え走り出そうとする桜介の腕を、蓮は引き留めた。
「こんくらい俺に払わせろ。今日はデートなんだろ?」
「そりゃ、そうだけど。俺は女の子じゃないんだから奢ったりはしなくていいんだよ」
「アホか。こういうのに男も女も関係ないっての。強いて言うなら俺のが8つも年上なんだから、俺が払うべきだ」
「んー。じゃあさ、ここは俺が払うから中で食べるご飯は奢ってよ」
「それだったら逆がいいな。俺がチケットを払おう」
「?……まぁそれでもいいけど。じゃあ、お願いします」
チケットを買いに向かった蓮を見送り、桜介は失敗したなと頭を抱えた。
ーーデートだし素直に甘えた方が可愛いかったかな
ーーでも、俺とのデートをなるべく負担に思われたくない
蓮はすぐに戻って来て、満足げな顔で桜介にチケットの1枚を手渡した。
「ありがとう」
「おう」
入り口すぐのエスカレーターを降りて中に入ると、水族館特有の薄暗らさになり、大きな水槽の中に悠然と泳ぐ魚が現れる。
その中でも、マグロは桜介のお気に入りになった。
普段食べる際は意識したことのなかったその体の大きさで桜介の前を横切る姿に桜介は圧倒された。
「すっご~。見て蓮さん! すごい! マグロってこんなでかいんだ! あ! あいつ頭があんな凹んでるのに普通に泳いでるよ!」
「ああ、すごいな」
そうしてマグロの前でマグロを観察すること30分。
「わ、こんな時間経ってたよ。すごい、マグロって見てて全然飽きないんだもん。ごめんね、次いこう!」
「ああ」
ニッコリ笑った蓮に、桜介はどうしても顔が赤くなるのを抑えられない。
ーーでも、薄暗いしバレてないよね?
告白はしてしまったし、赤面していることがバレていても状況は変わらないのだが、桜介はただ何となく気恥ずかしくて、顔を逸らした。
その後も魚を見て周り、レストランまで着いた。
「わあ。何食べようかな。蓮さん決まった?」
レストランの入り口のメニューの前で立ち止まり、桜介は蓮を見上げた。
蓮も割と真剣に選んでおり、んーと唸り声を上げた。
「よし、俺はハンバーグセットに決めた。桜介はどうするんだ?」
「俺はまぐろカツカレーにする!」
「お前……あんなにはしゃいでマグロ見てたのに」
「そ、それとこれとは別だって! だって美味しそうじゃんマグロカツ……」
「ははっ、まぁいいけどよ。じゃあ買ってくるから席取っといてくれ」
「うん! って……俺が行くから蓮さんが席取っといてよ! ……蓮さん! ったく」
蓮は桜介の呼びかけに応えることはなく、レジの方に向かって行ってしまい、桜介は仕方なく空いている席に腰を下ろした。
席を取ると言っても、平日なのでさほど混み合っている事もなく、手持ち無沙汰の桜介はソワソワと落ち着かない。
「ほら、待たせたな。マグロカツカレーと、あと、ケーキと飲みもん」
「わっ、こんなに? えっと、ありがとう」
「おう」
桜介が受けとると蓮はまた満足そうに笑った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
259
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる