15 / 21
14 彼女
しおりを挟む
それから桜介は目を閉じた。
もうこれ以上蓮の言葉を聞きたくなかった。
「寝た……のか? お前、なんでこんなタイミングで」
蓮が困ったように呟いた。
桜介の頭を優しく撫でて、それから桜介の腕の中から”レン”を取りベッドに寝かせてくれた。
胸がズキズキと痛み、気を抜くと嗚咽を漏らしてしまいそうだった。
それから目蓋越しでも、蓮が電気を消したのが分かり、その後すぐにベッドの横のあたりで寝息が聞こえ始めた。
しばらく寝付けなかった桜介も外が白み始めた頃には眠りについた。
翌朝、というよりも昼ごろに目を覚ますと机の上には蓮の無骨な文字で置き手紙が書いてあった。
ーー大事な話があるから、都合のいい日を教えてくれ
「都合なんていつでもつくこと知ってんでしょ」
このタイミングでの大事な話なんて一つしかない。
蓮は桜介との付き合いをこれっきりにしたいのだ。
連絡を取らず、自然消滅のような形で付き合いをやめれば簡単なのに、そういうことを蓮はしたくないのだろう。
桜介に対しても誠実に気持ちを伝えて、友人関係を終わらせようとしているのだ。
桜介はそう思った。
ならばそういう時、桜介はどのような反応を返せば良いのだろうか。
笑って「分かった」と言えばいいのだろうか。
それとも「嫌だ」と言ってもいいのだろうか。
そうしたら蓮は桜介との友人関係を続けてくれるのだろうか。
桜介の考えは少しもまとまらず、気がつけば蓮が置き手紙を残した日から1週間が経とうとしていた。その間、桜介はまた配達の仕事を他の駅周辺で行い、蓮と遭遇しないようにしていた。
「あなた、篠崎桜介さん?」
駅前のファーストフード店の前で待機していた桜介に話しかけてきたのは、あの写真に写っていた女性だった。
「そ、うですけど、あなたは?」
「安藤洋子と言います。蓮沼蓮さんとお付き合いさせていただいています」
「そうですか。それで俺に何の用件ですか」
桜介の心は嫉妬でいっぱいで、少し冷たくすら聞こえるような言い方をしてしまったが、安藤にそれを気にした様子はなかった。
「実は、彼に逆プロポーズをしようと思って。彼って奥手なとこがあるでしょう? だから年上の私が引っ張ってあげようと思ってるの」
「……はあ。それで何で俺に声を?」
「彼を呼び出してもらいたいの。ほら、私からの呼び出しじゃない方がサプライズ感あるでしょう?」
「何で俺が」
そう言った桜介に対し、安藤はニヤリと馬鹿にしたような笑い方をした。
「だって君だって、蓮さんに幸せになってほしいでしょ? 好きな人には幸せになってもらいたいものでしょ?」
「は……?」
「貴方のこと、いろいろ調べさせてもらったの。結婚するなら相手のことも周りのことも、知っておくべきでしょ?」
「意味が分からない」
桜介は吐き捨てた。
「貴方が蓮さんのことを好きでいるのは、勝手にしてもいいけどその代わり私に協力しなさいって言ってるの。蓮さんがゲイだって署内で噂を流されたくはないでしょう?」
「あんた、何言って」
この女性は自分の好きな人のそんな噂を平気で流そうと言うのか。
「あら、何もおかしなことはないでしょう? だって、そんな噂が回れば、女性の敵が減るんだもの」
ーー蓮さんはこんな人と結婚したいの?
いや、確かに蓮はそろそろ結婚したいと言っていたではないか。
蓮が結婚できるとすれば、このように女性側からグイグイくるタイプなのかもしれない。
「大丈夫。私と結婚すれば絶対に蓮さんを幸せにしてあげるから!」
安藤は自信満々と言った顔をした。
蓮を幸せに。それは確かに桜介にはできない事だった。
桜介はズキリと痛む胸を押さえ深く息を吐いた。
「サプライズって何すんの」
安藤は桜介のその言葉にパッと顔を明るくして嬉々としてサプライズの内容について話し出した。
正直、桜介はそこまで詳しく聞くつもりはなかった。
半分以上は頭に入ってこないその話を聞いた後、桜介は静かに「分かった」と言った。
それから桜介は女性に言われるがまま1週間後に日時と場所を指定し、蓮を呼び出した。
もうこれ以上蓮の言葉を聞きたくなかった。
「寝た……のか? お前、なんでこんなタイミングで」
蓮が困ったように呟いた。
桜介の頭を優しく撫でて、それから桜介の腕の中から”レン”を取りベッドに寝かせてくれた。
胸がズキズキと痛み、気を抜くと嗚咽を漏らしてしまいそうだった。
それから目蓋越しでも、蓮が電気を消したのが分かり、その後すぐにベッドの横のあたりで寝息が聞こえ始めた。
しばらく寝付けなかった桜介も外が白み始めた頃には眠りについた。
翌朝、というよりも昼ごろに目を覚ますと机の上には蓮の無骨な文字で置き手紙が書いてあった。
ーー大事な話があるから、都合のいい日を教えてくれ
「都合なんていつでもつくこと知ってんでしょ」
このタイミングでの大事な話なんて一つしかない。
蓮は桜介との付き合いをこれっきりにしたいのだ。
連絡を取らず、自然消滅のような形で付き合いをやめれば簡単なのに、そういうことを蓮はしたくないのだろう。
桜介に対しても誠実に気持ちを伝えて、友人関係を終わらせようとしているのだ。
桜介はそう思った。
ならばそういう時、桜介はどのような反応を返せば良いのだろうか。
笑って「分かった」と言えばいいのだろうか。
それとも「嫌だ」と言ってもいいのだろうか。
そうしたら蓮は桜介との友人関係を続けてくれるのだろうか。
桜介の考えは少しもまとまらず、気がつけば蓮が置き手紙を残した日から1週間が経とうとしていた。その間、桜介はまた配達の仕事を他の駅周辺で行い、蓮と遭遇しないようにしていた。
「あなた、篠崎桜介さん?」
駅前のファーストフード店の前で待機していた桜介に話しかけてきたのは、あの写真に写っていた女性だった。
「そ、うですけど、あなたは?」
「安藤洋子と言います。蓮沼蓮さんとお付き合いさせていただいています」
「そうですか。それで俺に何の用件ですか」
桜介の心は嫉妬でいっぱいで、少し冷たくすら聞こえるような言い方をしてしまったが、安藤にそれを気にした様子はなかった。
「実は、彼に逆プロポーズをしようと思って。彼って奥手なとこがあるでしょう? だから年上の私が引っ張ってあげようと思ってるの」
「……はあ。それで何で俺に声を?」
「彼を呼び出してもらいたいの。ほら、私からの呼び出しじゃない方がサプライズ感あるでしょう?」
「何で俺が」
そう言った桜介に対し、安藤はニヤリと馬鹿にしたような笑い方をした。
「だって君だって、蓮さんに幸せになってほしいでしょ? 好きな人には幸せになってもらいたいものでしょ?」
「は……?」
「貴方のこと、いろいろ調べさせてもらったの。結婚するなら相手のことも周りのことも、知っておくべきでしょ?」
「意味が分からない」
桜介は吐き捨てた。
「貴方が蓮さんのことを好きでいるのは、勝手にしてもいいけどその代わり私に協力しなさいって言ってるの。蓮さんがゲイだって署内で噂を流されたくはないでしょう?」
「あんた、何言って」
この女性は自分の好きな人のそんな噂を平気で流そうと言うのか。
「あら、何もおかしなことはないでしょう? だって、そんな噂が回れば、女性の敵が減るんだもの」
ーー蓮さんはこんな人と結婚したいの?
いや、確かに蓮はそろそろ結婚したいと言っていたではないか。
蓮が結婚できるとすれば、このように女性側からグイグイくるタイプなのかもしれない。
「大丈夫。私と結婚すれば絶対に蓮さんを幸せにしてあげるから!」
安藤は自信満々と言った顔をした。
蓮を幸せに。それは確かに桜介にはできない事だった。
桜介はズキリと痛む胸を押さえ深く息を吐いた。
「サプライズって何すんの」
安藤は桜介のその言葉にパッと顔を明るくして嬉々としてサプライズの内容について話し出した。
正直、桜介はそこまで詳しく聞くつもりはなかった。
半分以上は頭に入ってこないその話を聞いた後、桜介は静かに「分かった」と言った。
それから桜介は女性に言われるがまま1週間後に日時と場所を指定し、蓮を呼び出した。
357
あなたにおすすめの小説
【BL】声にできない恋
のらねことすていぬ
BL
<年上アルファ×オメガ>
オメガの浅葱(あさぎ)は、アルファである樋沼(ひぬま)の番で共に暮らしている。だけどそれは決して彼に愛されているからではなくて、彼の前の恋人を忘れるために番ったのだ。だけど浅葱は樋沼を好きになってしまっていて……。不器用な両片想いのお話。
目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?
綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。
湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。
そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。
その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。
当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。
マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。
いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。
こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。
続編、ゆっくりとですが連載開始します。
「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)
好きとは言ってないけど、伝わってると思ってた
ぱ
BL
幼なじみの三毛谷凪緒に片想いしている高校二年生の柴崎陽太。凪緒の隣にいるために常に完璧であろうと思う陽太。しかしある日、幼馴染みの凪緒が女子たちに囲まれて「好きな人がいる」と話しているのを聞き、自分じゃないかもしれないという不安に飲まれていく。ずっと一緒にいたつもりだったのに、思い込みだったのかもしれない──そんな気持ちを抱えたまま、ふたりきりの帰り道が始まる。わんこ攻め✕ツンデレ受け
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
文章がおかしな所があったので修正しました。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄をするから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる