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悠々ライフ
勇者編 1
しおりを挟むドンドンドン! ドンドンドン!
門を叩く男が鳴り響く中、門番である俺はとりあえず質問した。
「おい、どうしたんだ? 何があった? 」
それはマニュアル通りの対応で、こんな夜更けに来るような奴が碌な奴な訳も
ないのだ。だから面倒臭さが声に出ていたのかもしれない。
「もうそんなのはどうでもいいから、誰か居ないの? 早くヒーラーを連れて来て
頂戴! 回復を回復を、このままじゃあ勇者が、勇者が……死んじゃう! 」
王宮へと帰って来た魔法使いがそう叫んだ事で何か大変な事が起こっていると
知ったのは確かだった。俺はすぐに門を開けて彼女達を中へ入れるとマニュアル
通りに上官へと報告をする。
ただ上官も考える事は同じで、始めは面倒臭そうにしていたが事の重大さを理解
してからはすぐに行動に移ったのは有能だったという事なのだろう。ただ俺は
しばらくしてから思い出したのだ、あの者の姿を。あれが本当に勇者だったのか
という事が自分ではまったく判断がつかなかった。
確かに勇者の顔は知っている。
当然である。何度も何度も見る機会はあったし、言葉を交わした事だってある。
それが少なからずある俺の自慢でもあったのだ。でもあの姿は……到底人の顔
とも言えないような形に変形していた。あれが勇者だと言われても信じる事が
出来るのは身内ぐらいだろう。
*****
「誰だ、こんな夜更けに」
私は苛立っていた。
当然だろう、こんな時間にドアを叩くとか常軌を逸しているとしか思えない。
そもそも私が起きていたからいいものの、寝ている時だったら完全に無視をして
いただろう。たまたま師匠の遺品として受け取ったのパズルを解くのに夢中に
なっていたから起きていただけだ。
この立体型のパズルをどのようにすればいいのかをずっと考えていた。
見た目はなんて事のないように見えるが実際はそんな事はない、端々に見える
技術は一級品だ。これを作った人物の凄さが一発で分かる、天才だ! こんな
ものを作れるなんてどんな人なのだろうか? そんな事を考えながらもずっと
パズルを弄っていたら気付かぬうちにこんな時間になっていた。食事すら忘れて
こんなにも夢中になったのはいつぶりだっただろうか? 師匠に弟子入りした時
以来の興奮だった。
「すいませんパシュリダ。至急、来て頂きたいと……王命です」
それならば逆らう事など出来ないではないか! とは思ったが何も無かったかの
ように私は呼びに来た兵士を待たせてゆっくりと着替えた。これぐらいの嫌がら
せはいいだろ。まったく何があったらこんな時間に呼び出す事になるだろうか?
といろいろと考えてはみたが、まったくと言っていい程思い浮かばなかった。
そもそも今、この国にとっての一大事なんて事が起こりようがないくらいに平和
であった。
そもそも勇者パーティーが魔王を討伐してまだ二年も経っていなかったのでは?
なんておぼろげな記憶をたどってみる。正直、私は勇者パーティーに何の興味も
なかったのだ。あんな半端者の寄せ集めが勇者などと笑わせる。まともな者など
誰一人としていなかった。まあ唯一マシだったのはヒーラーぐらいだったか?
それもそれでグラウス家の秘蔵っ子などとは言っていたが、精々私程度の能力
しかなく、師匠の足元に及ばない程度でしかなかったのだ。
それでも魔王を討伐したらしいという事を聞いた時は驚いたものだ。
魔王ってそんなに弱いの? って私が師匠に聞かれて返事をするのに困ったのを
よく覚えている。本当にあの人は御茶目な人だったなと今更思い出してにやけて
しまう私はあの人の事が大好きだった。人として師匠として最高の人物だったと
思っている。本当に残念だった。
「待たせたね。では行こうか」
私は正装に着替えると兵士の後について歩く。
当然のように足取りは重く憂鬱だった。面倒な事でなければいいが、出来るだけ
早く終わらしたい。そしてすぐにパズルを解きたいと言うのが私の願望だった。
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